The Divide   作:粋刺@翻訳

69 / 132
Chap.11-06 柴関ラーメン

連邦生徒会所有の弾薬物資と設備が搬入されている間、シャーレのメカニックはアビドスで回収された物品の点検をしていた。

 

正確には連邦生徒会ではなくシャーレのものを搬入している。しかしマテオの無関心さが起因して、シャーレの弾薬物資をアビドス用という名目で、連邦生徒会経由で転送させていた。こんなことがあっていいのだろうか?あってはならないはずだ。だが彼はそのことを気にかけているのだろうか?

生徒が大丈夫ならばそれでいい──それが彼だ。アヤネはこの件を把握していない。代わりに彼女はラーメンを啜りながら、クラスメイトたちを睨みつけていた。「みなさん…どうしてあんな提案ばかりを…」

 

「アヤネちゃんも人のこと言えないでしょ。」ニヤリと笑みを浮かべて言い返すホシノ。そのことを思い出し、アヤネは身震いする。「ノートパソコン壊しちゃってさー…もーどうやって責任取るのー?」

 

「ん、もっと寛容になるべき。」同意するシロコ。

 

「最初からきちんとやっていればあんなことには──!」顔を赤くしながらアヤネは反論し始めるが、ため息をつく。「…もういいです。」顔をうつむかせ、ラーメンを啜る。

 

「よしよし~」と言いながらノノミは彼女を撫でる。アヤネの眉はぴくついていた。

 

「子供扱いしないでください!」そう叫ぶアヤネ。セリカはそれを怪訝そうに眺めていた。

 

「まあまあこのぐらいにして、ていうかなんでまた来たの…?」そんな疑問をこぼして、セリカは店内の対策委員会を見回す。

 

「アヤネ、チャーシューいる?」シロコが聞く。

 

少し噛みながら、「ひゃい」とアヤネは答える。

 

柴関ラーメンの扉が開かれ、セリカは笑顔で接客をする。「いらっしゃいま──えっ。」

 

そこには便利屋68が立ち尽くしていた。他の対策委員たちも目を向ければ、顔が明るくなっていた。「こ、こんにちは」と、以前よりもショットガンをぎゅうと抱きしめていたハルカが挨拶する。

 

「また会えたわね、対策委員会。」アルは周囲を見回し、だんだんと落ち着きを失っていく。「先生はいないみたいね…」

 

「あれれ?」とムツキが口を開き、アルの横へと身を傾けた。「がっかりしてる?」

 

「ちっ、違うわ!」アルは顔を赤く染める。

 

「うへ~また会えるなんてねー」と便利屋に大きく手を振るホシノ。「ほら、こっちこっち、座って。これぐらいしかできないけど、あの時のお礼として奢ってあげる。」

 

「そ、そうね…」どこか罪悪感が生まれ、アルはそっぽを向くが、礼は受け取る「そう言うのなら。」

 

ほどなくして、店内では便利屋68と対策委員会は隣り合わせで座っていた。「いやー…あの時来てくれたのは本当に奇跡だったよね。」視線をカヨコとムツキに向けたホシノが話を切り出す。二人は視線に気付き、カヨコは姿勢を正し、ムツキはよりいたずらっぽく笑みを浮かべた。

 

「そうですね。」笑顔で応じるアヤネ。一方のアルは恥じらいが深まっていき、引きつった笑いを浮かべて、背後ではムツキがくふりと笑っていた。「みなさんがいなければ、先生はどうなっていたのでしょうね…」

 

「ですね~」頬を掻きながらノノミは相槌を打つ。「最後の最後でビナーにやられちゃいましたからね。」

 

「ん。」とうなずくシロコ。

 

「ま、まあ…」アルはどもるが、内心では叫ぶ。「通りすがりだっただけよ。」

 

「ゲヘナの生徒だよね?」とホシノは尋ね、水が入ったコップを一口飲み、目を細めてコップの端からアルを見つめていた。「なんで遠くからこんな砂まみれの僻地に来たの?」

 

「えっと、そうね…」とアルは口を開くも、ふと会話を止めたくなってしまう。だが拳を咳をして答えを出そうとする。「任務よ…」

 

アヤネの目は見開かれ、頭を下げる。「すみません!私が頼み込んだせいで邪魔をしてしまって…」

 

「全然大丈夫!あの時の依頼主ならメガネちゃんからの依頼は断れって言うはずだったしね!」

 

ずんと、ムツキの言葉でラーメン屋の空気が重苦しくなる。セリカは他の客の注文を取っていたが、会話を止めて、ホシノの目は細められ、ノノミの眉はひそめられ、シロコはガンラックに置かれた銃を眺め、アヤネも眉をひそめた。

 

周囲の客でさえ一瞬沈黙したように見えたが、柴大将だけはそんな空気に流されず、ひたすら麺を茹でていた。

 

前のめりになり、ホシノはそっとコップをテーブルに置いた。「そう?で、あの時の依頼主っていうのは?」

 

「そ、それは…その…」対策委員会の視線を一斉に浴びて、どもるアル。「ク、クライアントの機密よ…」と言えば、ため息をついていたカヨコにアイコンタクトを送った。

 

「社長、契約はアビドスを支援したせいで切られたから、心配しなくても大丈夫。」とカヨコが助け舟を出す。

 

「カヨコ!」と叫んだアルをカヨコは呆れながら見つめる。

 

「ちょっと残念だったね。」と笑いながらムツキは言う。「あれのせいで報酬はしばらくお預けかもしれないけど、まあでも先生から貰ったお金ならもって一ヶ月ってくらいだし、その後はまた仕事を探す生活に戻るから──」

 

「ムツキ!」とアルは叫ぶ。あの余裕は消え去っていた。ため息をつくカヨコ。笑うムツキ。困惑しながら周囲を見渡すハルカ。

 

ホシノは眉をひそめるが、その目は優しくなり、そして背もたれにもたれかかる。そんな彼女に皆は一安心した。「うえぇ~なんか前よりも怖くないね。」

 

「ん。」とシロコはうなずき、アルは衝撃で口を大きく開ける。「昨日の方が強そうだった。」

 

「どうぞ。」とセリカは複雑な表情を浮かべ、ラーメンを置いた。「召し上がって。」

 

一方、便利屋は──トッピングの量、香り、クオリティに目を見張れば、腹の虫が鳴り、口からよだれが垂れていた。ムツキですらもあの小悪魔ぶりが消えていた。「あの、すみません、注文とは違う──」とカヨコが尋ねようとする。

 

「こいつはウチからのおごりだ。」柴大将が言った。低く深いバリトンの声が、店内に響き渡った。「そういう"お客さん"かもしれんが、それでも自分がやるべきことをやったんだ──連邦生徒会の半数すらもまともにやれないことを、成し遂げてくれた。誰も手を貸そうともしなかった場所に、全力で手を差し伸べてくれた漢を助けてくれたんだ。本当にありがとう。」柴犬はそう言って頭を下げ、客数名も同様に頭を下げて、再び食べ始めた。

 

「大将の言う通りだね。」ホシノが言う。その目は真剣そのものだった。「あの時来なかったら…………」

 

"間"が生まれるが、カヨコはすぐにその"間"が理解できた。

 

────先生は死んでいたかもしれない。

 

「だ、大丈夫よ。」照れくさそうにアルは言った。

 

「食べないの?」ホシノにはいつものだらけた笑顔が戻っていた。「麺伸びちゃうよ?」

 

「ん、美味しいよ。」

 

「あー気にしないで。」と言いながらムツキは箸を持つ。

 

「こ、こんな私が食べてもいいのでしょうか…」ハルカは箸を持ったままそう尋ねる。

 

「これは無事に依頼を遂行できた打ち上げよハルカ!…いただきます!」とアルは声高らかに上げ、目には誇りで輝き、他の便利屋たちも歓声を上げるが、カヨコだけはやけに気が進まない様子で麺を口に運ぶ。

 

便利屋が食べる中、アヤネは眉をしかめた。「変ですね…」

 

「どうかしましたか?」ノノミがそう聞けばアヤネはタブレットを凝視していた。

 

「電波の調子が…先生が初めて訪れる前と同じくらい悪くなっています。地震もいくつか発生しています。」

 

「震源は?」とシロコが尋ねれば、アヤネはそれを特定しようとする。

 

数分も経たないうちに、便利屋はラーメンを完食した。「美味しかった~」とムツキがうめけば、ハルカはうなずいた。

 

「は、はい。ですが本当に食べてよかったのでしょうか…?」とハルカが問えば、カヨコは肩をすくめた。

 

「事前に連邦生徒会が把握していたら、報酬はもっと増えていたかも。先生のことだし。」カヨコが指摘する。

 

「どういうことかしら?」アルが聞けば、カヨコは息を吐く。

 

「何でもない。」と手を振るカヨコだが、聞き覚えのあるアドレスをアヤネが口にしたのを便利屋は耳にする。「今のって…?」カヨコが尋ねると、アヤネは落ち着きを取り戻した。

 

「はい?あっその、地震が起きているみたいで、それに原因は不明ですがカイザーの部隊が派遣されているようでしたので…」

 

便利屋68の動きは鈍くなり、そしてその意味を理解した。

 

「ごめんなさい!」とアルは叫び、一目散に逃げ出す。他の便利屋の面々も後に続いていった。対策委員会はお互いに顔を見合わせていた。

 

そしてすぐにホシノ、シロコ、ノノミが駆け出し、数秒後にはドローンも追跡していった。

 

ほどなくして、三人と一機は目的地に到達した。既にカイザー部隊の姿は消え、わずかな痕跡が残るばかりだった。星野は口笛を吹く。「あれま…」

 

「助けなくても良かったみたい。」そう言いながら、シロコはアサルトライフルを背中に背負う。

 

話を続けようとした矢先、電話が鳴り始め、ホシノが手に取って明るい声で答えた。「どったの先生~?」そう言うと、シロコとノノミはホシノの方に向く。

 

“特に何も、ただ様子を確認したかっただけだ。どうした?便利屋に会ったのか?”

彼がそう尋ねれば、ホシノは軽く笑う。

 

「そそ、ほんとに元気一杯だったよ。」そう答え、地面にショットガンを置いて寄りかかった。

 

“次会ったら、学校に来るようにと伝えてくれないか?”

その言葉に三人は興味を示した。

 

「なんで?」

 

“次の計画を練る必要がある。アイデアは多少あるが、本格的にやるとなれば多少の人手が欲しい。”

 

「おぉ~」と興味津々になるホシノ。「分かった。そうしとくねー」

 

“分かった。また明日、会おう。”

そう言って、彼は電話を切る。

 

「何を話してたの?」シロコが尋ね、星野は騒ぎの方に近づく。

 

「次の作戦。便利屋がいるんだって。」

 

「ハルカちゃんが向こうのビルに爆弾仕掛けてて良かったね。」とビルの中からムツキの声が聞こえると、続いてアルの叫び声が聞えた。

 

「へへへっ…アル様の物を奪い去ろうとした報いです。」ハルカが言えば、カヨコはため息をついた。

 

「人が来る前に早く片付けよう。」カヨコが言えば、便利屋の物であっただろう何かを片付けていた。そしてホシノ、ノノミ、シロコを見つけると立ち止まった。

 

「やっほ~、泊まるとこいる感じかな?」

 

困惑しながら、便利屋68はホシノを見つめていた。

 


 

武器や物の組立や修繕、あるいは一部の装備品のアップグレードは出来るが、それでも俺はSHDの研究開発部門には属さなかった。支援部門に属していて、その後にはフィールドエージェントとして活動していた。だから書類仕事や後方での指揮は得意で、酷い怪我を負った時は時折サポートエージェントとして活動したこともあった。

 

キヴォトスにあるような薬品があれば、一日足らずで俺は現場に戻されていたのだろう。

 

「すっかり治ってきましたね。」とセリナが言えば、視線は俺の動きに向けられていた。「嬉しいです!」

 

“まあ。”

レーションバーをかじりながら、答える。

“前にも言ったように、俺はすぐに治る。だから薬の効きも速かったんだろう。”

 

「はい!では無理に動かずにそのまま──」

 

“駄目だ。やることがある。”

 

「先生!まだお怪我は治っていませんよ!しばらくは安静になっていてください。」そう注意されるも、手を振って聞き流す。

 

“仕事が終われば安静になるさ。”

そう答える。仕事、もちろんアビドスに関わることだ。

 

何か言いたげだったようだったか、止めたみたいだ。「…仕方ないですね。」俺が立ち上がろうとすると、セリナが止めた。「それなら、検診は定期的に受けるようにしてください。」

 

“分かった。”

そう答え、シッテムの箱に手を伸ばしてセリナの申請書にサインをすれば、セリナは微笑んだ。

 

「ありがとうございます!ではそろそろトリニティに戻らなければいけませんので、先生、ご都合の良い時にお越しください!」とセリナは一礼して去っていく。

 

ため息をついて、そんな不思議な子が出ていく姿を見ながら再びため息をつく。

“不思議な子だな…”

 

それはそれとして、シッテムの箱に視線を戻して顎に手を当てる。

”さて、何が出来る?”

 

一つ問題がある──カイザーだ。だが答えは"どうやって"見つけ出せばいい?カイザーはどうやってアビドスが最重要事項だという結論にたどり着けた?

 

もちろん、兵器の試験場として砂漠地帯であるアビドスがうってつけだというのは事実だ。だが他にも理由があるはずだ。ビナーや潜在的な問題に耐えてもいいような、何かがそこにあるのか?

 

そして何よりも、どうやってアビドスのような場所は興せばいい?

 

電波を妨害されていた…あのアンテナ、恐らくカイザーのせいだ。

 

第一に、彼女たちは送られたものを手を付けている段階で、それに関する報告は全て受け取っている。

 

そしてこの地域に対するカイザーの支配力を弱める必要がある。アンテナの再設定もだ。更に、正当化も必要だ。カイザーはいくつかのエリアを所有しているが、まだアビドスのものだ。だから明確に法を犯しているという証拠が必要だ。

 

ようやく、メッセージを送信した。

 

俺に関することだ。どのみち実戦にも必要になってくるが、報復が…

 

物理的な手段でしか報復できないはずだ。法的に報復するとなっても、こちらが証拠を得れば、こちらから逆に追い詰められる。たとえカイザーが法で訴えたとしても、それは侵略行為だと受け取られ──

 


 

──法廷でも、カイザーは窮地に立たされる。

 

自分が向けた視線に震え上がるカイザーPMC理事を眺めながら、黒服は思考にふけっていた。ロボットごときが自分や先生のような大人に対抗できると思い上がっている様は、実に滑稽なものだった。

 

黒服でさえ、あの男への対処に苦慮していた。マテオには法的な罪を犯していないが故に、法的な対決に持ち込めない。だからといって挑発行為を仕掛けるべきではない。生徒を守る為なら、マテオはすぐに不可解極まりない行動を起こす。

 

いつの間にか、黒服は残念そうにため息を漏らしていた。実験を断念せざるを得ない可能性がある。残念だ。

 

しかしこれでは別の問題が発生する。アビドス自体がカイザーの支配下である、つまりほとんどの店舗は──

 


 

──カイザーに従わざるを得ない。たとえ支配から脱却したとしても、治安維持組織が無ければ復興はありえない。

 

これだと…

 

ふむ………………

 

あれなら…

 

あれならいけるか──いや、一度法律を確認する必要がある。だが──

 


 

──復興と返済、その二つの両立は不可能に近い。

 

故に彼は、長時間のゲームプレーを強いられる。

 


 

調査という調査をして、証拠をかき集め、そして対話で解決するよう努める。大人として当然の対応だ。

 

マスクの下、思わず笑みがこぼれてしまう。故郷に戻った気分だ。

 


 

搾取という搾取をする。そそられるものだ。




[作者あとがき]
やあ皆、ディビジョンのアップデートが来たけど最初は相当腹が立ったよ。今は落ち着いているし、まだ遊んではいないけど…そんなところ。最近FF(FanFiction.net)でアンケートを投稿したよ。内容はマテオの恋愛関係で、投票は終わりましたがハーレム展開が多かったです。皆はどうですか?あくまでもアンケートはFFのコミュニティの意見を聞くためにしたものです。
さて、今回のチャプターを楽しんでくれたのなら幸いです。
【編集】文法を僅かに修正
[訳者あとがき]
わぁ(最後の場面転換を見た感想)
わぁ(Vol6読んだ感想)
次回は26日に投稿します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。