The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.2-02 D.U.外郭地区 路地

連邦生徒会長が話していた先生のことが気になっていたとき、リンはあの時、オフィスに現れた男に目をやった。

 

例の失踪事件のことによる記者やその他のやり取りを対処し、彼女は戻ってきたばかりだった。やがてオフィス内で銃声が響き、ガラスが割れる音を聞くとパニックに陥った。椅子が一脚消え、窓も割れた様子を目撃した際には混乱はさらに深まっていた。だが、割れた窓へ近づき、視線を下へ落としたときに消えた椅子はすぐに見つかった。それでも、リンは誰がこれを、いやどうやってやったのかを考えずにはいられなかった。

 

首の後ろに冷たいものを感じたのはそのときだった。彼女はホルスターに手を伸ばしたが、ピストルがないことに気づく。後ろにいる者がそれを彼女の頭に当てていたのだろう。

 

そしてその者が口を開いた。声はざらつき、くぐもっていて、少し掠れていた。彼が話す様子に反して、驚くほど存在感が薄いことに彼女は驚嘆していた。

 

『荒々しい』────それがマテオ・ヴェルネスに対して抱いた第一印象だった。

 

第二印象ははるかに良かった。 口はガスマスクで覆われ、オレンジがかった茶色の目が困惑した様子で彼女を見ていた。 清潔な周囲に比べてかなり汚れており、土と汗と火薬の臭いが際立っていた。彼もまた武装しており、バックパックには小物で詰め込まれていて、そしてアサルトライフルとショットガンが固定されていた。太ももにはピストルが入ったホルスターを着けており、また、ヘイローがないのでそれを補うためか、細身だが分厚いアーマーを身に着けていた。

 

しかし、本当に際立っていたのは、若々しくも老けて見えていたことだった。目を閉じて首を傾げたときに見せた微笑みの時の顔立ちは若々しかった。その目は数々の戦いの経験を物語っており、年老いた退役軍人のようなある種の諦めと安らぎを感じさせた。 このことは、彼が他の少女たちの前でマスクを外したときに初めて確認出来た。

 

第三印象は、経験豊富な男性だということだった。どこかリラックスしたようなトーンで話す彼は、命令を下すときには威厳を帯び、戦闘中には目が細められ、鋭さを増した。その瞳に浮かぶオレンジ色は輝きを増すように見えた。何か問題が起きても、彼はただ一瞥をくれて冷静な口調で命令を下すだけだった。それはまるで、プロの動きを目の当たりにしているようだった。

 

そして同時に、彼には何かが欠けていた。軍人であったことは明らかだったが、リンは彼に軍人特有の無愛想さがないことに気づいた。彼の人事記録は完全に黒塗りとなっており、唯一確認できるのは、『エージェント』としての肩書だけだった。しかし、彼のスタンスは自己流にしてはあまりにも緩かった。

 

もしかしたら、特殊部隊に所属しているかもしれない…

 

リンは眉をひそめた。マテオが自動販売機に前腕を叩きつけると、缶コーヒーが出る。それを掴み取ると、彼は缶を回して内容を読んだ。下顎を覆うマスクを着けていたにもかかわらず、彼の失望は、彼が率いる政府関係者や治安維持の関係者たちにはっきりと伝わった。

 

「先生」ユウカは平然と言う。「一体何を…?」

 

“ん?”

マテオは、集まった生徒たちの失望した視線を浴びながら、困惑するユウカの方へと振り向いた。 手に持っていた缶コーヒーに目をやりながら、困惑したように首を傾げた。

“飲むか? カフェインは眠くなるんでな”

 

「そうじゃなくて!」ユウカが言い返す。

 

“なんでだ?俺が敵を漁っていた時には何も言ってなかったのに。”

マテオは困惑した様子で言う。

“つまりこれは、そういうことだ”

 

スズミとチナツは、片方が自警団所属で、もう片方がキヴォトスで一番混沌とした自治区の生徒であるため、この行為にあまり気にしていないようだった。 前者は粘着された状況での軽犯罪を犯してきており、後者は政府に相当する組織から粘着されている委員会の救護担当であった。

 

ユウカはこんな人が自分たちの先生になることを、恥ずかしく思っていた。

 

一方、ハスミはため息をついて首を振っていた。「先生」こう言わなければならないことに、少し不信感を抱きながら、優しく話す。「略奪行為や窃盗は流石に犯罪です。」

 

“SHDの規則では────”

まるで暗記するほど何度も同じことを繰り返してきたかのように、平然と喋り始める。

 

生徒会長は彼をどこでどうやって探し出したのだろうかと心配していたリンは、あることに気づいた。

 

彼のファイルには、日付が連続している箇所があり、それが4年ほど伸びていた。 それぞれの日付が何らかの紛争や注目すべき出来事だとしたら、彼はどれくらいの期間戦ってきたのだろうか?

 

「先生?」 リンが話しかけ、マテオがまばたきをして首を振った。 「大丈夫ですか?」

 

“ああ”

マテオは深呼吸をする前に言う。

“思考停止しながら言ってただけだ。”

ハスミに向いて、きまりが悪そうに笑う。

“悪い、俺はそうやって訓練されてきたし、もうすっかり癖になってしまったんだ。”

 

ハスミは立ち止まり、首を振った。「大丈夫です先生、続けましょうか?」

 

“略奪行為を?”

マテオはリンに恥じることなくそう尋ね、立ち上がり、壊れた店先に入る。

“当然さ”

 

彼は戦争の基本的なルールをいくつも破っていた、それらは馬鹿げたものでもあった。熟練し、規律を重んじる者が、簡単な規則や法律を無視することが、彼女には理解できなかった。にもかかわらず、誰も恥ずかしさを感じるだけで、彼の戦闘と戦術における効率性を否定する者はいなかった。

 

だが、彼は親切だった。彼が倒した生徒から弾薬を奪い、一緒にいた生徒たちに渡す様子を彼女は見ていた。 コソコソするより戦った方が早いのは明らかなのに、彼は生徒たちを戦闘から遠ざけていた。 生徒たちがマテオと親しくなるのをリンは見守っていた。

 

彼女はまた、彼が敵を一発で倒す様を、手榴弾が投げられる前にピストルで撃つ様を、同じピストルで、最適射程をはるかに超えた距離から敵の頭を撃ち抜く様を見てきた。

 

彼がユウカと一緒に遮蔽物に隠れているのを彼女は見ていた。 ツインテールのセミナーのメンバーはバリアを展開し、敵が横から攻撃する。銃弾は無駄に弾かれ、ユウカとマテオが応戦する。マテオは側面に倒れ込み、球状のバリアを迂回して敵を倒すと、ユウカを掴み自分と一緒に引き倒した直後に爆発が起きた。

 

「わっ!?先生何を!?」彼女は慌てた様子で話し始める。

 

“グレネードだ”

先生はそう指摘し、顔を赤らめたユウカと立ち上がった。

 

「でも私は食らっても平気なんですよ!」

 

“つい癖でな”

ユウカが首を振る間に、彼はM4からM870に持ち替え、顔をのぞかせ、近づきすぎた敵を吹き飛ばした。

 

その出来事はマテオが脆い存在であることを知らしめただけだった。たった一発の銃弾でも彼を殺すのには十分だ。にもかかわらず、自分にさえ当たらないであろう爆発を前にして、彼は味方を引きずり下ろして守った。

 

彼は21歳だと言っており、ファイルには17歳の記録から始まっていた。

 

一行の後を追いながら、彼女は不思議に思わずにいられなかった。彼は短期間で一体何を乗り越え続けて、これほどの経験を積んできたのだろうか?

 

“なあリン”

シャーレの部室近くの店の奥の部屋に他の女の子たちが入ってくると、彼は心配そうにこう尋ねた。

“調子はどうだ?”

 

リンは心配そうに自分を見ている男をちらっと見た。────生徒の心配を優先する大人を。一部の生徒は疲れているようだったが、彼だけは全く平気そうに見えた。

 

「大丈夫です。」首を振ってそう言い、彼女はこう返す。「先生は?」

 

“戦車とやりあうのはマジでごめんだ”

彼は首を振りながら認め、目を閉じて体をぐったりとさせた。彼女はその様子に気づきつつも、笑いをこらえなければならなかった。

“TAC-50があれば話は別だが…”

リンがまばたきをすると、彼は言葉を濁し、肩をすくめた。

 

「…すみません、確かTAC-50はアンチマテリアルライフルですよね?」彼女は悟ったように聞き、彼はうなずく。

 

…謎は深まるばかりである。

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