The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.12-02 アビドス高校

マーシレスは…変な武器だ。元々はフルオートのアサルトライフルのAK-Mだが、バイナリートリガーがマーシレスに組み込まれている。その結果"セーフ"以外の発射モードの切り替えが完全に排除されていて、ライフルのようなものになっている。それでも分解するたびに、名前通りの射程とストッピングパワーを伏せ持つライフルだということが分かる。

 

それに汚れた包帯がそこかしこに巻かれているが、これはハイエナのせいで、自作した垂直グリップも装着されている。

 

ただ武器を変えただけでは…十分な変装にならないし、何よりも俺の場合は非常に難しい。問題は二つ、一つ目は、生徒よりも背が高くて身体も大きい。二つ目は、タトゥーを彫っていて、その内の一つは首元にある。更に武器を一種類だけ使っている生徒とは違い、俺は大量の武器を使う。武器以外の道具もだ。

 

そう、いつものシャープシューターアウトフィットだ。

 

TAC-50と一緒に入手したもので、タン色のパンツ、迷彩柄のセーター、他にも様々なものがある。首元のタトゥーを隠すのには十分で、周りからはミリタリーにハマった奴だと思われるような格好だ。

 

そしてマスクは…まあ、エンジェルマスクに惹かれていたが、俺には普段使いにしている友人からの贈り物がある。

 

だがそれだけでは十分じゃない。ニーパッドと太もものホルスターとゴーバッグを外して、セリカを助けた時に買ったスリングバッグを使う。弾薬とグレネードは全てそれに移し、SHDテックはここに置いていく。でないと勘付かれる。そしてISACブリックを付けた後、ボディアーマーの上にセーターを羽織り、スリングバッグを背負う。

 

アダムの鍵をシャープシューター93Rに変えて、新しいホルスターにしまってうなずく。後はマスクを付ければ二つ目の問題は解決する。鏡を見つめる。

 

マスクのスクリーンの真ん中にオレンジ色の円が浮かび上がる。キヴォトスにどこにでもいそうなロボットの姿だ。

 

素早く確認して、うなずき、マーシレスを背中に掛けて、他の皆の様子を見に行く。

 

皆して驚いて俺を見ていた。「先生?」とシロコが最初に聞いてくる。髪はポニーテールにまとめ上げ、両手にはグローブをはめて、マフラーをと黒色のシャツとスカートを着ていて、グレーのジャケットを羽織っていた。

 

“うん?”

僅かにボイスチェンジャーが掛かった俺の声が響く。

“どうした?”

 

「一瞬誰かと思っちゃったよ…」とケブラーベストを着ながら、ホシノが言う。髪をポニーテールにまとめ、目の上にサングラスをかけていた。そして俺をざっと見やる。

 

ノノミは黒のスカートと白のシャツ、黒のジャケットを羽織っていて、指ぬきグローブをはめていた。「バッチリですね!」

 

「顔隠してるのにどうして分かるのよ…」セリカが反論する。髪はツインテールではなく、下ろした状態で、グレーのカーディガンを黒いシャツの上に着ていた。

 

“これで…準備は出来たな。いくぞ。”

 


 

こういったいかにも怪しいような場所へは…昔からある種の興味を抱いていた。ある意味、そういった経験はジャレッドとキャシーぐらいしかなかったかもしれない。それか、ブラックマーケットを野放しにして、この規模までに成長させてしまった連邦生徒会への怒りを抑えようとしているだけなのかもしれない。

 

こういった場所は初めてではないが、キヴォトスで"ブラックマーケット"とみなされる場所では、アメリカでは主流な物々交換や信用取引ではなく、一般市場と同じような現金取引が主になるようだ。ほぼほぼ除染ゾーンやダークゾーンといったところか。どちらも、低温下になるとドルインフルと同等の殺傷力を持った非常に危険な毒に変わるDC-62に汚染された場所だ。

 

あまり好みの場所ではなかったが、定期的に足を運ぶこともあった。とはいえそこまで頻繫には行っていなかったが。エリア全域が汚染されてたとはいえ、そこで見つかる戦利品はどれも凄くて、適切に除染すれば民間モデルを改造したものでも、軍用と引けを取らないものになる。まあ、スコーピオも、俺が持っている高品質な"名無し"の武器もほとんどはここで手に入れた。そのため、必ずしも軍用(ミリタリー)警察用(ポリス)という名がついているからといって、優秀なものであるとは限らない。ただし、民間用のM4をフルオートに改造する場合、元からフルオートで撃てるM4と比べて整備に大変苦労する。

 

ここでの"商品"の中には見覚えがある──俺がいた世界で昔売られていた"違法"な改造品や、化学兵器と言えるものといった様々なものだ。

 

やれやれ、ガスマスクをそのまま着けておきたかった。

 

俺の後ろでは、対策委員会が恐怖感を覚えながらも興味深く周囲を見渡していた。「触るだけでも犯罪になりそうね…」

 

“金も消し飛ぶことになるぞ。”

背後のセリカに視線を送る。

“こういった場所での常套手段として、"無料"サンプルをあげた後、無理矢理購入するように迫ってくる。”

 

「うえぇ、いやらしいね。」とEye of Horusのグリップをきつく握るホシノ。特徴的な塗装は汚い包帯で隠されている。「セリカちゃん分かった?はぐれないでね?」

 

「なんで私だけ!?」とセリカが叫び、周りを見渡すが誰一人として異議を唱えていなかった。

 

「この中だと一番ちょろいから。」とシロコが言えば、ノノミがくすりと笑った。

 

「チョロイン~」とノノミが追い打ちをかける。

 

「だからなんで私だけ──!」とセリカが言い終わる前に、イヤーピースに声が入る。

 

「いいですか、私たちはヘルメット団の雇用主の痕跡を探しに来たんですよ。」とアヤネが注意する。

 

“時間が掛かるんだろ?”

ため息をつく。結局のところ、ヘルメット団はハイエナやアウトキャストのようなものだ。だからカイザーに雇われたとすれば、何もかも似すぎてて、やりすぎだという感覚がある。

“ならすぐに──”

 

「うわぁー!ついてこないでくださぁいー!」その声が割り込んでくる。困惑すると共に俺は銃声が鳴った方向に向く。

 

「逃げんな!」と不良の集団の一人が叫びながら追いかける。追いかけられている生徒は見覚えのある制服でライトブラウンのローツインテール、明るい黄色の目で…奇妙なバックパックを背負っていて、そこにはトリニティの校章が入ったマガジンとグレネードがいくつかあった。

 

待てよ…カトリック系の女学生の格好をした人物がブラックマーケットのど真ん中にいるのはどうしてだ。

 

ISACが彼女の名前を示してくれた。阿慈谷ヒフミだ。こっちに近づいてくる「そんなー!人質だなんてー!」

 

彼女は前に向くと、目が見開かれる。「すみませぇぇん!」と叫びながら俺たちの間を縫って走る。そしてシロコとぶつかり倒れる。「わっ、ごめんなさい…」と言葉を濁しながら後ろから迫ってくる不良達の姿を見ている。

 

「おい!人質はあそこだ!やっちまえ!」リーダーがそう叫び、ヒフミを掴もうとする。

 

だが掴む前に、逆に俺がその手を掴む。その瞬間、耳をつんざくような音が響き渡り、不良は混乱に陥る。「うっ──があっ!」

 

ショッカーパンチは非常に便利なホルスターだ。太もものホルスター用としては勿論、必要となればテーザーや除細動器も使える。どちらも俺や他のエージェントでは重宝していたものだ。

 

一番前に出ていた敵のヘイローが点滅した後、消えて、膝から崩れ落ちていく。意識を失った敵をゆっくりと横にさせると、取り巻きは後ずさる。「な、なんだよ今の!?」

 

テーザーをしまって、93Rを握る。

“こいつは警告だ。一歩でも動いてみろ、次はお前だぞ。”

そう警告すると取り巻きが睨む。

 

「あぁん?何様なんだ──!」一人が言えば、その後ろにいた同じ服装をした取り巻きが一斉に倒れ込む。ホシノとノノミは気絶した取り巻きの上に立ち、敵は俺の方に振り返って銃を構える。

 

敵が撃つ前に足を上げて銃口をずらして、振りかぶって、グローブをはめている拳を顎に叩きつける。ヘイローは消えて、地面に打ち付けられた。俺はため息をつき、首を振って僅かに感じる痛みを誤魔化す。BSAVが投与される前でも、敵を殴って気絶させるのは簡単なことだった。こんなことは楽勝だった。

 

“これで…終わったな。”

そう呟いた後、しゃがんで気絶した敵の身体を撫でる。

“少々気の毒のように感じるが。”

 

「そうだね。」とシロコが同意を示して、俺に加わる。敵を漁る俺達の姿に、トリニティの生徒はただ驚くだけだ。

 

「あ、ありがとうございました。みなさんがいなかったら、学園に迷惑をかけちゃうところでした…でもこれってやってもいいんでしょうか…?」先ほどの生徒が尋ねると、俺は動きを止めて、彼女に向けば、後ろへよろめいたようだった。

 

そういえば、普段からとても感情豊かな方だとよく言われるのだが、個人的にはかなり控えめな方だと思っている。だが今は、フルフェイスマスクを着用しているが、感情は…伝わるはずだ。

 

“ポット。”

喋り始め、漁った物を仕舞いながら立ち上がる。

“俺はケトルだ。”

そう付け加え、グローブをはめた手を差し出す。

 

困惑しながら瞬きをして、俺が暗示した内容を気付くと表情を変えた。「ポットじゃありません、阿慈谷ヒフミです…」

 

「ねえヒフミちゃん。」興味深くヒフミを見ながら、ホシノが口を開く。「トリニティ生がわざわざここで何してるの?」

 

「えっと、それはですね…」とヒフミが言葉を濁せば、さっきと似た格好の敵がこちらを指差す。そしてその足音を俺は聞きつける。

 

“場所を変えよう。”

周囲を見渡しながら伝えると、皆の視線も俺に続いてセリカは鼻で笑う。

 

「別に特殊部隊と戦うわけじゃないからやれる──!」セリカの銃は包帯で巻かれたままだった。

 

「駄目です!ブラックマーケットで騒ぎを起こしたら、ここを管理している治安機関に見つかってしまうかもしれません!」とヒフミが警告をする。

 

シロコは何も言わないが、耳を立ててゆっくりと俺たちを振り向く。手は包帯が巻かれた自分の武器に伸ばされていた。俺はため息をつく。

“よせシロコ、私兵部隊との戦闘は出来る限り避けろ。”

 

シロコはゆっくりと顔をしかめ、口をマスクで隠せば、ヒフミが俺たちの注意を引き付けた。「こっちです。行きましょう!」

 

ど、どうしてこんなに物知りなんだ?

 

その…

 

犯罪に関する知識を思い返して、俺は肩をすくめる。物知りではない。だからブラックマーケットに手を出すなとは分かっている。俺自身も決して無敵というわけでもなかった。

 

それはさておき、トリニティ生の後をついていき、ブラックマーケットのサツを避けて、興味を惹かれる場所がないか周囲を見回していく。

 

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