The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.12-04 ブラックマーケット

酒は嫌いだ──頭にそんな考えがよぎる中、チョコレート入りのたい焼きを一個だけは自分の口に、他はゴーバッグにしまい込む。それと似た形のスイーツが入った袋をシッテムの箱経由でアロナに手渡す。ギャングになりたい奴みたいに、頭にバンダナを巻いていたアロナは俺に銃口を向けていた。

 

“ほら、いいぞ。”

 

「やったー!」

 

“明日は買ってあげないからな。”

そう付け加えると落胆していた様子だった。

 

「えっちょ──」接続を切れば、対策委員会が来る姿が見え、口にガムを滑り込ませる。これで酒臭さを誤魔化せるといいが。

 

“なあ皆。”

もう一袋あったたい焼き入りの袋を、全員に見せつける。

“いるか?”

 

「さんきゅ~!」と遠慮なくホシノが袋を掴んで、俺の方に向く。「これ買ったの?」

 

“ああ。とても美味かったぞ。”

シロコが鼻をひくつかせているのを無視して、そう答える。

“アヤネもどうだ?何か買ってこようか?”

 

「いえ、大丈夫です。お菓子ならアルさんも買ってきてくれました。」とアヤネが言えば、アルが声を上げる。

 

「あなたの力、私たちの任務でも大きな助けになってくれたわ。」そしてムツキの微かな笑い声が聞こえる。

 

「ついつい独り占めしちゃわないか気にしてるだけだからね。」そしてそう付け加えると、アルは狼狽える。

 

「ムツキ!」とアルは叫び、アヤネはため息をつく。

 

「でもまあ、実際のブラックマーケットがあんなのだったとはね。」とセリカが言う。

 

“まずは完全に違法なものではなく多少問題があるものを並べて、無警戒の生徒の好奇心を刺激させた後に引きずりこませて、脅しの材料や誘拐したり、人質にするのがブラックマーケットだ。”

そう指摘すれば、皆はたい焼きを見ながら顔をしかめる。

“ああいった所では、皆潔白ではない。ただ自分の罪の数を数えながら、他が罪を犯すのを待つハメになる。”

どのみち、情報と黄金の価値は等しい。

 

一瞬、静寂が訪れた後、アルの呟き声が聞こえた。「ほんっとにアウトローみたいだったわ!」

 

何かを書き記していく音がちらほら聞こえ、ムツキは軽く笑ってカヨコはため息をつく。無視することにした。

“それでアヤネ、そっちは順調か?”

 

「それが…上手くいっていません…」俺はため息をつきながらうなずく。

 

「おかしいですね…」たい焼きに集中しながら、ヒフミは喋り始める。「武器や改造パーツはここでも見つかるものなのに、探しているものだけがピンポイントでないんです…領収書等の書面上でのやり取りもないですし。」

 

“まるで存在そのものが消され──”

 

「先生、なんでお酒臭いの?」とセリカに聞かれ、俺は硬直する。セリカの目がゆっくりと細められ、ホシノは興味を持って身を乗り出す。

 

「あーそういうことだったんだね。」ホシノが口を開けば、手の甲を額に当てる。「生徒がせっせと働いてるっていうのに先生だけは飲んでて!酷い大人だよもう。」

 

「せんせぇ~」とアヤネが唸り声を上げる。

 

「うわ~任務中にお酒飲むなんて大胆~」とムツキがいたずらっぽく言う。

 

「さっきから的外れなことばかりね。情報収集をしていたのは明らかよ。」自信満々にアルは擁護する。

 

“ああ、ドリンクはただのおまけだ。”

肩をすくめながら、そう認める。

“で、ヒ、ヒフミ?”

そう尋ねると、突然ヒフミの目が大きく開かれる。

 

「まさか、先生ですか?」それに気付いたようで、恐怖を示している。

 

“どのくらい首を突っ込みたいかによるが…こいつら全員にだ。”

そう答え、俺たち全員に指差す。

“突っ込む気がないなら、それでいい。その時は郊外まで送る。質問は一切しないから安心してくれ。”

 

「ええと…」自信を取り戻して、口を開き始める。「このことを先生は誰にも言わず、私はトラブルに巻き込まれずに済むということですか?」

 

“そうだ。”

 

「モモフレンズ博士じゃないって言ったことも内緒にしてくれますか?」どこか照れくさそうに言った。面白そうだ。

 

“あのことは…まあ俺の好みじゃないがヒフミの好きなものだからな。”

肩をすくめて言えば、ヒフミの頬が膨らむ。

“これからも愛を注げるつもりだろうし、俺もそんな君を止めるつもりはない。二人の間に起こる問題は人間と人間で起きるものであって、生徒と先生で起きるものじゃない。”

 

ヒフミはリラックスしたようで微笑む。「なら、私も力になりたいです。」と決意に満ちた口調で言う。

 

“じゃあ、知っての通り、ヴェルネス マテオだ。皆の名前はもう既に知っているが、こっちがアビドス廃校対策委員会で、聞いたことがあるかもしれないが作戦指揮の便利屋68、フィクサー集団だ。今は一緒にアビドス高校を攻撃したヘルメット団の雇用主の特定をしているところだ。”

 

「わぁ…多様性、ですね。先生。」ヒフミは感服していたようだった。

 

“そこまで驚くようなことじゃないな。”

肩をすくめると、ヒフミは前のめりになる。

 

「いえ、凄いことなんです!」目を輝かせる。「実感できなくても、学園間は常に緊張しているので以前から協力するのは難しいってナギサ様が言っていました。」

 

“つまるところ…”

言葉を濁し、肩をすくめる。

“よく分からんな。ツイてただけか。”

 

これと、非常に…ややこしいグループを引き連れた経験がある。時折DZ(ダークゾーン)で出会う友好的なローグやルイス大尉率いるトゥルーサンズ、反政府勢力といったところだ。

 

「そういうのは後でやってくれないかしら。」セリカの声が割り込む。声からは明らかに苛立ちが募っていて、それによってヒフミは恥ずかしさで顔が僅かに赤くなる。

 

「そそ、ナンパは後でね~」ホシノがからかう。僅かに赤かったヒフミの顔は今や爆発しそうなまでに真っ赤だ。

 

「ナ、ナンパ──」

 

ヒフミの言葉が続く前に、俺は指を鳴らして視線を俺に戻す。

“それで、俺たちは企業や犯罪組織が支配している場所の記録を完全に消した。なら実行犯は誰だ?”

 

「"誰が"というより"どうして"の方が問題だと思います。ブラックマーケットでは当然のように企業が違法な取引を行っています。例えば向こうにある闇銀行がそうです。」そう言えば、ヒフミはひときわ手入れが行き届いている建物を指差す。人の出入りが活発だった。

 

ISACが輪郭を表示させると、興味が引かれ、更なる情報が出て来た。ヒフミの話を聞きながらそれを読む。「ブラックマーケット最大級の銀行で、キヴォトス内での犯罪活動で得た総金額の15%はあの銀行に預けられています。」

 

15%?冗談きついぞ?目が開かれるような感覚がして、ヒフミを見る。さっき言った情報はISACが出してくれたのと似ている。「恐喝や強盗、誘拐等で得たお金を非合法の武器や兵器に使って、更なる犯罪を起こすサイクルが出来ています。」

 

“ずっと続くな。”

思わず周囲を歩き回ってしまう。

 

「なるほど…銀行もグルだったということなんですね。」と声に出したノノミの表情は曇っていた。、

 

「そうです。銀行そのものが犯罪組織の一つと考えることも出来ます。」ヒフミが更に言えば、俺は苛立ちが募り始め、早歩きになる。

 

シロコは何も言わず、セリカは怒って叫ぶ。「そんなの馬鹿げてるわ!なんで連邦生徒会は何にもしないのよ!?」

 

「あそこにもあそこなりの理由があると思うよ。よくわかんないけどね。」ホシノが言う。俺としてはもう我慢の限界だ。

 

“ああ、そうだ。ブラックマーケットという仕組みで街が動いている理由がそこにはある。”

小声で呟いて、怒りを抑える。セリカ、ノノミ、ヒフミは心配してこちらを見つめると、俺は歩みを止める。

 

リンなら…見て見ぬふりは絶対にしない。キヴォトスの利益になるから見逃している…ぐらいしか思いつかない。これ以上考えない方がいい。

 

A 近くに装甲車があります。

そしてアヤネの声が響く。

 

「皆さんお待ちください!こちらに武装勢力が向かってきています。まだ気付かれていませんが、念のため隠れておいてください。」

 

そしてすぐに、大型車両が走ってきて、周囲を厳重な護衛部隊が取り囲む。俺たちは動き出すが、ヒフミだけはじっとしていて、諦めたかのように目を見開いていた。「マーケットガード!?」と恐怖で身を震わせる。

 

「マーケットガード?」とノノミが尋ねる。

 

「あの時言った治安機関です!早く行きましょう!」ヒフミはそう言いながら俺たちを先導します。物陰に隠れた瞬間、装甲トラックが目に入り、思わず動きを止めてしまう。

 

あのナンバープレート…

 

今朝、30分間も見ていたアレと同じ番号だ。

 

感覚が消え、ISACが喋っている中それを見つめる。アロナも現れて、恐怖で手を口に当てていた。

A あれは対策委員会が支払った現金が輸送されている車両です。

 

そして、少女たちもどこか見覚えのある顔を見て、息を呑む──あの銀行員だ。

 

少女たちのお金が──犯罪の連鎖を生む銀行に運ばれている。

 

銀行員と護衛が少し会話をしながら署名している。俺はというと、どうすればあの建物を木端微塵に爆破出来るかの計算に夢中で、時間の感覚を忘れていた。

 

そうして、奴らが建物の中に入れば皆立ち上がって、世界がぐるぐる回っているかのような感覚に襲われる。

 

“ヒフミ。”

口を開く。だが声色はいつもの落ち着いたものではなかった。どんな様子だったというのは…自分でも良く分からない。ただ耳の中で血潮が脈打つ音しか聞こえなかった。

 

「え、あっはい?」ヒフミが返事するが、怖気づいていて他の生徒も怖がっていたようだ。「何でしょうか?」

 

“カイザーローンはカイザーコーポレーションの子会社だよな?”

グローブが引っ張られる感触を感じながら、拳を握りしめ、壁に寄りかかる。

“そのコーポレーションとやらは後ろめたい歴史があるよな?”

 

「は、はい?その──」俺は手を掲げて、言葉を止めさせる。

 

必死に、心の底から冷静さを保とうとしていた。した。だがダムは持ち堪えられなかった。既に決壊してしまったからだった。

 

ただ無言で壁を殴る。耳障りな亀裂が入っていく音が響けば対策委員会とヒフミは衝撃を受けて、壁から手を離して空気の塊を吐き出す。痛みが意識を集中させてくれて、手を振り払って痛さを誤魔化して、亀裂を見つめる──手が痛まずに、俺が殴って残したそれを。

 

カイザーが黒幕かどうかは関係ない。少女たちが汗水垂らして心血注いで稼いだお金が犯罪資金に────それどころか自分たちの学校の襲撃に使われるんだぞ!

 

まるでアメリカに戻ったような気分だ──元々は1と0のAIであるISACの規定内で必死に活動して、支援してくれるはずの組織の創設者が味方じゃないと気づいたような気分だ。ドルインフルの流行はもっと早くに食い止められたはずなのに、政府はアマーストの問題を認知していたのにも関わらずに何一つ策を講じなかった!

 

静寂だけが漂い、俺は足音を立てる。「せ、先生!?どこいくの!?」とセリカが聞く。

 

“ここを爆破する。”

 

「はいぃ!?」とヒフミは叫び、俺を止めようと他は動き出す。「無理じゃ──」

 

“"無理"と"しない方がいい"は違うものだぞ、ヒフミ。確かに君の言う通りだ。無理だ。でも、だいたいの問題はありったけのC4で吹っ飛ばせる。”

 

「先生、これは──」ホシノが言おうとするも、俺は止めさせる。

 

“問題、と?”

歯を食いしばって、声色を落ち着かせようとする。怒りを、苛立ちを見せてもどうにもならない。

“そうか?違法とな?多分な。だが俺としては更地にした方がスッキリする。”

 

「先生。」シロコが俺の目の前に立って口を開く。俺の視線に気づくと、まるで気が進まないように、仕方ないという様子で言い始める。「もっといい方法がある。」

 

俺が聞き返す前に、シロコがバッグの中からマスクを──青地のそれに2という数字が記されたものを取り出す。静寂が広がり、全員、俺の答えを待っているようだったが俺は黙っていた。

 

“いや。”

そっとマスクを押しのける。

“それはしないぞ。”

 

シロコの耳が垂れて、生徒たちのやる気も下がる感覚がした。

 

優しく、手をシロコの手に重ねる。

“俺が願っていることだ。”

 

通常、バラクラバというのは銀行強盗というイメージある。俺のやり方でも、シャープシューターのやり方でもない。だが一人の人間としては。

 

外交は得意分野の一つだ。

 

偶然なことに、詐欺も事件の一つとして関わってくる。ペテン師や詐欺師から学んだことだ。

 

“もしやるのなら。”

そう言うとシロコが顔を上げ、俺は自分のマスクを優しくずらして、微笑む。

“気付かれることなく徹底的に盗み尽くしたい。”

 

シロコは考えに目を輝かせ、頭の中の歯車が回り始めたのが見て取れる。「どうやってやる?」

 

“やり方次第だ。”

そう認め肩をすくめる。

“マーケットガードや点検員として潜入するか、重要人物としてなりすまして入ることも出来る。どっちでもいいが、いずれにせよ準備と時間がいる。”

バッグに手を突っ込んで、エンジェルバリスティックマスクを取り出す。

“今はそんな余裕がない。”

 

シロコの口角が上がり、自分のマスクを手にする。

 

他も安堵の息をつき、視線を送り合う。「えっと…」緑のマスクを手にしたノノミが喋り始める。「銀行強盗をするか、先生に任せるか、ですね。」

 

「他の方法じゃ駄目なんでしょうか?」とヒフミは不満げに訴える。「ナギサ様にどう説明すればいいんでしょうか…」

 

「それなら簡単。」とホシノはピンクのマスクを手に取る。「やらない。」

 

「ヒフミもやったとしたら…」セリカは赤のマスクを手に取る。「そのナギサっていう人はどうするの?怒るの?私たち、正義の味方なんだけど?」

 

“俺たちは銀行を襲うんだぞセリカ。”

割り込んで、軽く笑いながら首を振る。

“それが"正義"とみなされる世界なんてないぞ。”

 

アヤネはため息をついて、ホログラムで現れる。アヤネと共に後ろにいる困惑したムツキ、カヨコ、ハルカ、アルも現れる。「他に選択肢はないようですね…」

 

その時、カヨコが飲み物を噴き出して、ムツキの緊張が解けて微笑み、アルは目を大きく開けて、アヤネは黄色のバラクラバを被る。「ではこれより、覆面水着団とします。」

 

“死んでもお断りだ。”

顔をしかめて言い返す。

 

「えっ私もなんですか?」

ヒフミが聞けば、俺たちはそこに向く。

 

“ああ。まさか襲いたくないのか?”

そう聞き返すと、ヒフミはひどく動揺して俺の方を向く。

 

「嫌です!」

 

“どうした。”

ヒフミのバックパックを指差す。

“もう準備万端そうじゃないか。少し考えてみろ。ペロなんとかの新商品が生まれるきっかけになるかもしれんぞ。”

 

反論したかったようだったが、止めたようだ。「それも…」言葉を濁し、そわそわし始める。「悪くなさそうですね…」

 

「ブラックマーケットの銀行を襲おうとしてるの?」カヨコが割り込む。「なら計画を練った方がいいよ。一筋縄ではいかないから。」

 

「ん。」とシロコはカヨコに計画を説明して、互いに意見を交わし合っていく。

 

一方、「はいっ!」とノノミはヒフミに紙袋を被せる。「ヒフミちゃんのマスクです!」

 

「えぇ!」とヒフミは驚き、ホシノが近づいていく。

 

「まあ、最初からヒフミちゃんの分なんてないし、こっちも責任全部、トリニティにぶん投げられないしね。」

 

「駄目じゃないですか!」

 

「ねえ!ねえ!うちらも入れてくれる?」とまるではしゃぎすぎている子供みたいに、ジャンプしながらムツキが手を挙げれば、アルは慌てる。

 

「駄目。」シロコが割り込む。「すぐにやる必要がある。」

 

「え~~~」ムツキが呟けば、アルは安堵と落胆が入り混じった表情を浮かべたようだ。

 

“ならこういうのはどうだ。俺たちが十分間待って、それまでに間に合えば一緒にやる。”

 

「本当!?」アルは驚く。

 

“ああ。”

気の抜けた笑顔を浮かべる。

“そうだな…リハーサルだと思え、それに全員いるとかなり楽になる。”

 

「私も私も~!」アルを引っ張りながらムツキは言う。「アウトローデビューだよアルちゃん!」

 

「ちょ、ちょっと!マスクは!?マスクは!?」

 

そんなアルを気にも留めずにムツキは引っ張り続け、ハルカは後に続く。一人残されたカヨコはため息をつく。「先生、自分がやろうとしていること、分かってるといいけど。」

 

“心配するな。それと──”

不敵な笑顔を浮かべる。

“偽札を詰めたバッグをいくらか持ってきてくれ。”

 

意図に気付いたのか、カヨコの目が見開かれる。「…15分。これがブラックマーケットまでに掛かる時間。」

 

“ああ。”

猛々しく、笑みを浮かべる。

“じゃ、また会おう。”

 

カヨコはうなずき、後を追った。

 

「先生。」シロコが口を開く。「先陣、切れる?」

 

“今からでいいのか?それとも計画を聞いてからか?”

 

「今から。」

 

うなずき、皆の方に向くとマスクの下では不敵に笑う。

“では淑女諸君、強盗(給料日)といこうか!”

 




[訳者あとがき]
次回は11日に投稿します
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