The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.13-02 ???

本当に信じられない…

 

馬鹿みたいに!めちゃくちゃ!凄かった!!

 

完全に違法で、危険ではあったが凄かった。こういうのをいつかやりたかった。皆して同じ感情だったのか、誰も眉をひそめなかった。そして合流地点に着けば、便利屋が待っていた。

 

車を停めれば、便利屋68には軽い傷やアザがあったが、誰一人として深刻な怪我を負っていなかった。薬と十分な睡眠を取れば治る。

 

俺は車から降りて、興奮を一切隠さないままバッグから現金を取り出す。

“皆、本当によくやった。大成功だ。”

そう言ってダッフルバッグをもう一つ持ち出す。他の皆も同じようにして、俺は積まれたバッグとその中身を確認する。

“多少穴は空いているが、中はまだぎっしりある。”

 

自分のズボンやバックパックに忍び込ませた分も含めて、強盗で得た金は全てバッグの中にある。一束百万円とテープには書かれていて、破れた札もある。ダッフルバッグはどれも膨れ上がっているから総額は…

 

「これは…」と息を吞むカヨコ。「多すぎ…」

 

「凄いわ先生──!」と興奮したセリカが言い切る前にISACの予測が終わる。

 

“約五億円。便利屋の分や他の費用などを差し引くとそれよりも少ないが。”

誇らしげに笑みを浮かぶが防弾マスクで周りからは見えない。元々付けていたマスクはゴーバッグにしまっている。

 

「これを私達が…」と浮足立った様子で呟くアル。「いや、やったのはあなた達ね…」

 

“君達の助けも重要だったぞ。”

俺は口を挟んで、アルにうなずく。

“個人的には便利屋だけでも十二分にやれると思うけどな。”

 

「そんな、えっと私は──」とアルが言いかけるが、俺は首を振って止めさせる。

 

“まあそう思われたいのならそれでいい。とにかくありがとう。”

顎を掻きながらそう伝える。

“銀行が爆発されたことについては何か知っているか?”

 

「あの…す、すみません…」ハルカが一歩前に出る。さっきまでの上機嫌さは無くなりショットガンのグリップを握りしめる。「わ…私なんかが──」と言い終える前に、頭に手を置いて笑顔で髪を撫でまわす。途中でギャリソンハットが落ちてしまうが。

 

“ハルカだったのか?良い爆発っぷりだった。よくやった。”

そう褒めるとハルカは驚く。

 

「あ、あの…」困惑しながらも、俺の手の方に身を乗り出す。「怒っていないんですか…?」

 

“ああいう奴らが気に食わないとはっきり言ったはずだったけどな。”

肩をすくめて、手を下げる。

 

「でもやった奴にキスしたいぞっていうのははっきり言ってたのに?」とホシノがからかえばハルカは顔を真っ赤にして飛び上がり、俺はホシノに向けて目を狭める。

 

“本気でやるわけじゃないんだぞ…”

そう言って首を振る。

 

「まっそれはいいとして、これどうするの?」とホシノが複雑な感情を浮かべてバッグを指させば、セリカが興奮しながら口を挟む。

 

「借金返済に決まってるでしょ!」と断言すれば、シロコは顔をしかめ、ホシノは不満げな表情を浮かべる。「元から私たちのものだし。」

 

ホシノは俺を見つめると、その目からは葛藤が見えていて俺はあることに気付いた。皆を現実から守るために声を上げたかった──エージェント時代、生徒たちに現実を隠してきた俺のように。

だがホシノは既に俺の立場を、頑固さを分かっている──自分の部の顧問。誰からも信頼されている存在。深手を負っても戦い続ける頑固者で、決断はもう決まりきっている。

 

今までの選択は全て──他の選択もあると自覚しながら選んできた。

今までの選択は全て──暴力という名の単純明快な選択と交渉という名の気の遠くなるような選択から片方を選んできた

俺の両手は既に何人もの血で、様々な境遇にいた人の血で、数え切れない罪で染められている。

 

「よね、先生?」とセリカが尋ね、俺は振り向いてため息をつく。

 

皆をこの事態に巻き込ませたいのか?巻き込むべきか?手持ちの物で一体何ができる?

 

“違う。”

セリカが驚くとある考えが浮かぶ。

“これは借金返済の為のものじゃない。”

バッグを持ち上げて中身を見る。

“まず。”

札束を何十枚か取り出し、便利屋の方に向いてアルの所へ歩く。

“はい。”

それを渡す。

“これが今回の君たちの取り分だ。残りは後で支払う。とりあえず今は、これで取引完了ということで。”

 

「えっ?これで…いいのかしら?」とアルは驚けば俺はうなずく。

 

“そうだ。”

スリングバッグを外し、スペースブランケットを手に取り、展開したそれにゴムバンドを巻き付けて即席のバッグを作る。

“これを。本当はこれで現金を運ばせたくないが、今はこうするしかない。君たちのプロフェッショナルな姿勢には心から感謝しているし、素晴らしい活躍だった。”

そして俺の目は僅かに輝く。

“俺の役に立ちたいなら、もう少し上乗せしてやるぞ。”

 

「ちょっと先生、どういう──」セリカが言い始めるが、手を挙げて止めさせる。

 

「役に立ちたいっていうのは?」カヨコが尋ねて、ホシノも興味深く見る。

 

“手を貸して欲しいことがある…”

俺が前かがみになれば、便利屋も同じ姿勢になる。

“ちょっとした…噂をばら撒いてくれないか。”

そう答える。

“そう、こんな大金だ。当然マネーロンダリングが必要になってくる。三日後までに…”

動きを止めて、苦い顔でノノミの方向を向く。

“覆面水着団とファウストとサンドマンがそれぞれ違う場所で受け渡しを行う。つまりマネーロンダリングの担当ということだ。五億円という額は低く見積もっているがそれでも大金だ。周囲から狙われる。”

 

「何をするつもりなの?まだ──」カヨコが言いかける。

 

“いや、何も。帰宅してゆっくり休め。だが噂の方は広めておいてくれ。”

そう伝え、カヨコはうなずく。

“必要なら録音データも送っておく。だがまずは君達の意思の確認からだ。やるか?”

 

「あら、それだけ?なら──」アルが言いかけるが。

 

“やると?”

そう割り込んで、アルがうなずく。

“ならこれを。”

そう言ってバッグの山をアルに預けて

“よし、この二つは俺が預かっておく。”

 

“セリカ、ホシノ。やりたいことじゃないのは分かってるし、信頼に置ける存在だっていうのもまだ完全に証明できていない。それでも二人の信頼が必要なんだ。”

 

「えっ──そ、そうね…いいわよ!先生。」とセリカは戸惑いながらも、真っ直ぐに受け入れてくれた。

 

「いいよ。」と自信を持って断言するホシノ。「色んなことをしてもらったからにはもうね。でも先生も信じてね?そうすればこっちもどう動けばいいか分かるから。」

 

“さあどうかな。”

ある考えを思い付くが、敵を葬るだけのものにしか思えない。

“少し確認と調査をしたいところだが、今は保留。そろそろ帰るがいいか?”

 

全員うなずいて、俺もうなずく。

“それじゃあ、帰るぞ。アヤネが待っているからな。”

 


 

帰る時の道のりは…控えめに言ってややこしかった。電車内では現金を隠す必要があって、タイミングをずらして降りなければいけなかった。複雑怪奇だった。最終的には俺とヒフミの二人になり、ヒフミの方は席に座ればすぐに緊張を解いて、俺は隣に座ってマスクを外す。

「疲れたぁ…」とヒフミが呟き、俺は軽く笑う。

 

“だな。お疲れ。ヒフミもここまでよく頑張ってくれた。”

労いの言葉をかけるとヒフミも軽く笑った。

 

「楽しかったです。ありがとうございました、先生。」「これが終わったら…どうしますか?」

 

“どうするって…家に帰って休む。明日のことは明日の自分に任せる。それとこれ。”

スリングバッグから札束を三つ渡す。

“ヒフミの分。”

 

「むむむ無理です!そんなの受け取れませんしもし見つかっちゃったらどうなっちゃうんですか!?」

 

“さあ。”

肩をすくめる。

“道ばたで拾ったことにすればいい。ひとまず、ここに留まったということは対策委員会や俺と友達になった。ヒフミがそう思うならという話ではあるが。”

 

「いいんですかそれで!?」とヒフミが驚くが俺は肩をすくめる。

 

“銀行強盗で友達を作るなんてのは俺でも初めてだ。だからよく分からない。でもペロロっていうのを奪うとなれば俺も参加するしシロコも乗り気になるはずだ。”

 

「で、でも皆さんほど凄くないですよ。」せわしない様子で身体を動かしながら、ヒフミはそう言い返す。「私なんて普通の人ですから…」

 

“なら俺も普通の人だ。”

そう答えるとヒフミは驚いて俺の方を見る。

“疑っているか?”

 

「ま、まあ、はい。先生は…そうですね…自信に満ちていてリーダーシップもあって、空気に流されずに意見も言えますし。更に私や今まで見てきた人よりもずっと百発百中で、計画も臨機応変にできてそれに…」

 

“最初から全部出来てた訳じゃないぞヒフミ。"

若干顔をしかめる。興味を持ったヒフミが俺を向く。

“俺も一人のティーンエイジャーだった時期がある、そうだろ?元々は積極的に提案をするようなタイプじゃなかったが、友達と一緒にバカをやっていた。この頃からもう先生のやりがいに気付いていたのかもしれないな。”

 

俺はいつも兄弟みたいに接していると言われてきたが、ドルインフル前までは自覚していなかった。流行ってからは様々な形で頻繫に使われてたが、本質自体は決して変わらなかった。俺は変わった。だが全てが起こった後でも、俺は俺のままだ。

 

「そうなんですか?」その言葉に俺はうなずく。

 

“昔の俺は同年代と比べてひと回り大きかった。”

ニヤリと笑う。

“身長、体重両方共にだ。怖がられることもまあまああって先生からは時々問題児扱いされていたし、短気な性格がそれに拍車を掛けていた。まあそれもある先生に会うまでのことだったが。”

 

カーター先生──やんちゃな子供たちへ愛を注いで教鞭をとっていた一人の男性。俺は数少ない落ち着きのある生徒だった。今でも先生の忍耐力には感服するもので、先生が学校を去る時にはクラス全員が泣く程の敏腕だった。そしてドルインフルのリスクを冒してまで看取りに行った時のことは今でも忘れられない。

もちろん先生方全員や、そして教えてくれたことにも敬意を持っているが、カーター先生だけは感謝してもしきれないほどだった。

 

「先生の学生時代…」とヒフミは少し考えた後、くすっと笑う。「なんだが想像できないですね。」

 

“だな。とりあえず、降りるまで今はリラックスだ。”

 

「あの、いくつか質問してもいいですか?」ヒフミの視線は俺のバッグに向いていた。

 

“いいぞ。”

そう言って真っ直ぐ立つ。

 

「どうすれば先生みたいにカバンに色んなものが沢山入りますか?私も色々と入れ過ぎてて、その…」

 

“動きづらいのか?”

そう尋ねると、ヒフミはうなずく。

“そうだな、俺はいつも改造しがちだが、絶対にしないことが一つだけある。それはどんな形でも箱自体を入れることだ。”

 

「そうですか…救急キットも入れていないんですか?」

 

“転がり回ったり、匍匐したりといつも激しく動き回ってるから箱だと壊れやすい。だから救急キットはIFAK(アイファク)という箱じゃなくてポーチに入れたものを使っている。”

他の戦闘用薬物については何も言わず、ヒフミはうなずく。

 

「成程…」と合点がついてうなずくヒフミ。「あの時出した銀色のシートみたいなものは何ですか?」

 

“スペースブランケットだ。”

そう答えるとヒフミは戸惑った。

“俺がいた場所では主に防寒対策として使っていた。アルミシートが熱を遮断するから寒い時は体温を維持できるし、体温を隠すこともできる。”

 

「おぉ~…」

 

“マイラーブランケットとも言われている。”

その後もヒフミの質問は続いていき、とある共通点が分かった。それはどうすればバックパックに沢山の荷物を無駄なく詰め込めるかということだ。

 


 

「今日は色々とありましたが…」とヒフミは対策委員会に振り向く。「とても楽しかったです!」そして笑顔を浮かべる。

 

「私もです。」どこか照れくさそうに微笑むノノミ。「でも巻き込んでしまってごめんなさい。」

 

「いえ、大丈夫です…あはは…」

 

「また遊びにきてね~」とホシノが言えば、ヒフミは微笑む。

 

「はい!それに、まだ全て分かりきってはいませんが、それでもカイザーコーポレーションと暴力団のような組織が繋がっているのは間違いありません。なので今日のことはティーパーティーに報告しておきます!アビドス高校についても伝えますね。」

 

“報告はやめておけ。”

いつもの装備に戻って、割り込む。マスクの下はつい微笑んでしまった。

“アビドスのことはとっくに知られている。”

そう言って眉を掻く。

“カイザーも同じだ。つまり問題としてはカイザーが大企業で、あらゆる分野に影響力を持っていることだ。例え潰したとしても長期的な視点からすれば悪化するだけで、それに時間もかかる。まあ、シャーレが関わっていない場合の話だが。”

 

「そうだね。」とホシノは悲しそうに微笑む。「全部が全部綺麗ごとではいかないけど、そんなに杞憂するほどでもないよ。先生が言ってた計画がこれまで通りのものならなんとかなっちゃうよ。」

 

“そう頼られるとなると励みになる。”

ホシノの顔にだらけた笑顔が浮かぶ・

 

「考えなしで言ってないしね。」

 

「はい~」と同意を示すノノミ。顔を赤くしてそっぽを向くセリカ。うなずくシロコ。そして微笑むアヤネ。

 

「あの…」と言葉を濁すヒフミについつい鼻で笑って背中を軽く叩けば、ヒフミはよろめく。

 

“そんなにかしこまってどうした?”

そしてヒフミの顔は赤くなり、他は面白がる。

 

「どう言えばいいんでしょうか…たった一日なのに本当に色んなことを一緒にしてきて…」とどこか恥ずかしげに説明する。

 

「そうだね。」と満足げに目を輝かせてうなずくシロコ。「とても楽しかった。」

 

「そりゃあ当然よ。」と目を細めて小さく微笑むセリカ。

 

「よく分かりませんが…まあ楽しかったです。」ヒフミが言えば、ホシノが微笑む。

 

「なら良かった。ありがとね~、ファウスト。」いたずらっぽく言うホシノ。恥じらうヒフミ。

 

「もうファウストって呼ばなくてもいいんですよ!」

 

「では"恐れ知らずの我ら覆面水着団のリーダー"はどうでしょう?」とノノミも加わる。

 

“それだけは無理だな。”

 

「皆さん!いい加減にしてください!」アヤネが止めさせる。

 

「まあ、とにかく。」と素早く仕切り直すヒフミ。「色々と大変だとは思いますが、これからも頑張ってください!ファイトです!」そう言うと、対策委員会に礼をする。「それでは、さようなら!」

 

“だな。”

立ち上がる

“皆疲れただろうから、家に帰って休むとしよう。次の集合は…明日の午後か?その時までには計画を立てれるはずだ。”

 

「はい!では、ありがとうございました。」アヤネに続いて、皆もそれぞれ別れの挨拶をしていく。俺とヒフミは他愛もない会話をしながら駅を向かっていった。

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