「ふざけるな!」
オートマタが両手で机を叩きつける。
「どうして五分足らずでたった六人に七億を取られる!しかも一人は顔すらも割れていない!それにどうすれば一部が子供なんかに奪われるんだ!こっちはまだ被害額の計算すら終わっていないんだぞ!」
恰幅な体型の彼は豪華な服装を纏い、地位の高さを示していた。自身の権威の誇示に大いに楽しんでいるオートマタだが、今は違う。
銀行が襲われるようなことはブラックマーケットでも異例の事態。そして唯一の証拠が奪われた多額の現金と噂──"覆面水着団"、極悪非道の悪逆無道のファウスト、神出鬼没のオートマタであるサンドマン、そして全員が薄汚れた包帯が巻かれた武器を使用していた──それだけだ。
便利屋もそうだ。偽札もろともばら撒いて混乱を引き起こしたせいで、マーケットガードは事態の収拾に手間取ってしまった。
現金の回収は可能だが、そう簡単にはいかない。
「クソ…」
「難題にお困りのようですね。」男が喋る。オートマタの背筋に悪寒が走れば、黒と完璧に融和した男に目を向ける。虚無の中にある顔には亀裂が入っており、漏れ出た白色の光は微笑む男の顔を模っていた。
その外見でぞっとするオートマタ。彼の声はまるで他人事かのように、興味深く語っているようだった。
「いや。」息を取り乱すオートマタ。「ちょっとした問題だ。」
「ほう、どうやら思い違いをしていたようですね──シャーレの件かと。」
連邦捜査部の名に、オートマタは嘲笑う。「奴に何が出来る?我々には十二分に迎撃できるだけの武器がある。武力から逃げられはせんぞ。たとえ逃げたとしても、その時はそれをアビドスに投下してやるだけだ。」
黒服は何も言わなかった、カイザーPMC理事は仕事に戻る中、彼は様々な要素を熟考する──現金、先生、暁のホルス…答えが見つからなかったのは久方ぶりだった。
全てが不定かつ不詳。だからこそ黒服は心から楽しんでいる。アビドスに先生がいない今、風紀委員は標的を見失い、仮に行動を起こすとなるとかえって不利になる。だが状況が変化する可能性は否めない。とはいえ、自分が狙われる可能性は低いと黒服は考えている。
だが…ふむ…
「少し他の方と意見を交わした方が良いかもしれません。」黒服は言う。シャーレにはこの出来事に関心を持ちかねない──ゲヘナ生がいる。ただし事態が悪化するとなれば…彼女にはどうしようもできない。
彼の興味は今、そそられている。
勝つのは──先生か、それとも風紀委員か。
おっと、これは冗談だ。
頂点に立つのは──いつも大人だ。
「あの、もう一度お願いします。」眼鏡をかけ直し、視線を俺に向けているリンは尋ねる。側にはアユム──最近知り合ったブロンドヘアの強き秘書がいる。ヒフミを寮まで送った後、いくつか聞きたいことがあるからサンクトゥムタワーに立ち寄ることにして、現在はその中のオフィスで手を貸している。
“物権法だ。”
そう言いながら、書類にまた一枚署名する。アユムは感心した様子で、次の書類を手渡す。
“部が財産を所有する場合の判例について知りたい。”
アビドスの土地の大部分をカイザーが所有している──そのことをISACから知った。それに怒りすぎて今は疲れ果てている。だから今はこうして事態の収束に向けて集中している。
「…何故このことを私に?」信じられないといった様子で仕事の手を止めるリン。「私よりも詳しい方に尋ねるべきだと思いますが…」
“俺が間違っている可能性を証明してくれる機会を逃がすと?”
あえて驚いたようなふりをする。
“それはさせんぞ。”
「あの…」と顎を手に当てながらアユムが割り込む。「それについては特におかしくないです。ですがシャーレの場合だと…」言葉を濁して、顔をしかめて"まあまあ"といった感じで身体を動かす。
「法的な立場においては──」リンが切り出す。「──連邦生徒会はシャーレに対しての決定権がありません。ただ私個人の意見としては、権力の掌握及び権限の濫用だと周囲からそう捉えられるでしょう。」
“分かった。”
そう言ってうなずく。
“私有財産の没収の方はどうだ?連邦生徒会ならどうする?”
変な視線を送るリン。「そうですね…収集した証拠に対しての署名、そして所有者へ補填を提示、その後交渉を経て、取引の成否が決まります。」
唸った後、再び書類を書き続ける。血が耳の中を駆け巡る中、俺は興奮しながら話し続けていくとリンとアユムがショックを受けていたようだった。
そしてゆっくりとリンはうなずく。「はい。それで問題ありません。ですが先生、カイザーと敵対するのはあまり得策ではないかと。」
ハッ、何回も言ってるセリフの出番か。
“大丈夫だ、リン。”
柔らかく、優しい声色で伝える。
“俺は敵を作るような人間じゃない。”
犠牲者を作るような人間だ。