陽は傾き始め、スマホを見下ろしながら、ミレニアムのエンジニア部の方向を辿ると部屋の前で唸る。
“ここのようだが、妙に静かだな。”
独り言を呟いてドアを開ける。
研究開発部門には慣れている。かつて爆発事故を寸前で食い止めたせいで追い出された。その後は支援部門に配属されて現場で活動することになったが、こういう場所は見たことがなかった。
部屋…というよりかは倉庫に入ると、どう読むのかもどんな役割なのかも分からないロボットが大量に動いていた。幸いスキャンテックのおかげで輪郭が表示された。
そして二台の台座にはそれぞれ違う見た目の俺用の連邦生徒会制服が飾られていた──黒のパンツに、ダークグレーのボタンダウンシャツ、白いベストに白いジャケット、そして内側はブルーのデザイン。
近づいてみると、喋り声が聞こえたが誰もいなかった。
おかしい、絶対誰かいるはずなんだが…
再び台座に近づき、目の前で見てみる。
どちらもスタイリッシュで、手を伸ばして生地を優しく触れてみると顔をしかめる。
“ケブラー?いや…”
ケブラーとの混合繊維に近いが…なら何だ?ISACでさえも分からない。もう一つの方も触ってみると同じ繊維だと分かった。
左の方はスタイリッシュで、前側には合金が使用されていて、防弾性能があると思うが、プレートキャリアがなかった。右の方はプレートキャリアがあり、ベストと一体化しているが、デザインは防弾ベストのものだ。だが遠くからだとそう見えない。
左の方は安全性を強く強調していて、ボタンアップシャツも防弾繊維でできているが、その分重くて着心地も良くはない。右はというと安全性と快適性とのバランスがうまく取れていて、更なる違いを探っていく。
見れば見るほど、右の方が良い。ニーパッドとエルボーパッドは内蔵されていて、マスクも良いが、バックパックやそれに相当する部分はなかった。
“どこにいったんだ?”
「ほら言ったでしょう!」という叫び声が聞こえ、アダムの鍵を抜いてそこを狙おうとしたが、落胆したヒビキと興奮したトリニティ生の姿を見て動きを止める。「プレートキャリアの方が良かったでしょうに!」
「確かに…」低めの声が聞こえ、三人目が現れる。「その通りだったね。」
“ん?何があった?”
見れない人物を観察していたら、トリニティ生は服の方にスキップで駆け寄り、ヒビキは赤くなった顔を急いで隠して、俺は困惑する。
「もしかして先生かい?」紫髪とそれと似た色の目をした少女が口を開く。白石ウタハ──そして俺をざっと見る。白衣にグレーの制服とタイツに白のスカート。ヘイローはピンクのダイヤモンドで真ん中には六角形、両側には角のようなものがあった。「ようこそ、ミレニアムのエンジニア部に。」
“本当にアーマーを頼んだら強化外骨格を出したのと同じ部なのか?”
そう尋ねると困惑していた。
「そっちの方がいいんじゃないかな?」俺は指を立てる。いややめよう。代わり俺の口元に置く。反論は無理だ。何一つ間違ってはいないが同時に大きな間違いを犯している。
「ちなみに
どうなってるんだ…?
豊見コトリ、三角形のヘイローが動きに追従すれば、衣服の歴史から語り始めた。
“あー…”
話が脱線してしまう前に戻す。
“すまない。ちょっと戸惑っていた。どういうことだったんだ?”
「それは…うちのヒビキが先生の服をデザインしていたけど途中で助けがいるとなって、連邦生徒会に頼んだらシャーレの制服を担当するテイラーを送ってくれたんだ。」
「トリニティから来ました、裁縫部の者です。」テイラーが笑顔を向ける。「一度我が部にお越しください。先生にお似合いになる服をお見せできるのを楽しみにしております。」
“成程、そういうことか。それでこれは?”
「それは…」とウタハの言葉は濁る。
「説明しましょう!」
コトリが答えた。
「初めはお二人とも協力し合って順調に進んでいました。ですがテイラーさんがヒビキが練っているデザインは先生には合わないと伝え、口論へと発展しました。ヒビキは先生の"権威"を引き立てたいのと──」コトリが説明している間、ヒビキの顔は赤かった。「──"実戦的"なものを先生は好むと聞いたので、それなら目の前で説明して先生に勝敗を決めてもらえばいいかと私がそう思い付きました。」
ヒビキはデザインが描かれたタープを握りしめると、顔が赤くなっていた。「これで終わり。終わった。」
「まあまあ、落ち着いてくださいまし。」とテイラーがヒビキの背中をさする。「デザイン単体で見れば素晴らしいものでした。ただ先生に必要な…いえ、先生が求めているようなものではなかっただけです。同じ──ンン゛―ッ゛!?」
最後まで言い切れなかったテイラーに困惑する俺。ヒビキは顔を真っ赤にしながら、必死に彼女の口元を覆って、普段垂れている耳が立っている。一方ウタハは首を振る。「このことは二人に任せるとして…先生、何か服装関係での要望はあるかい?」
“ウタハも参加しているのか?”
そう聞くとウタハは興奮した様子でうなずく。
「もちろん。何でも出来るよ。例えば背中に腕を取り付けてマガジンやソーダを手渡したり、さらには戦闘中にコース料理を作ることだって出来るよ。」興奮するウタハ。困惑する俺。
“それは…”
言葉が濁る。どう言うべきか分からない。カッコよさそうだが、俺が求めているものではない。視線をヒビキがタープで覆った服に移すと、あることを思い出す。
“そうだ、一つあるぞ。”
「それって?」と興奮しながらウタハは前のめりになって、俺はのけぞってしまう。「もしかしてパワーフィストかい?それとも速く動けるようになるもの?」
“ちょっと、説明させてくれ。”
ひと息つけば、コトリ、ヒビキ、テイラーでさえもこれから俺の言う事に興味を持っていた。少し間を置いて、アーマーの胸部を叩く。
“これだ。これを服装に組み込んでほしい。”
「ふーむ…」とウタハは唸り、アブラティブナノプレートを軽く叩いて、顎に手を当てる。「これって何だろう?スチールの手触りじゃない。ならプレートはいらないはず…」
“俺がいた所では…”
肩をすくめて、ファイルを探す。
“「ターディクレイド」アーマーシステムと呼ばれていた。技術者曰く…”
つまりファイルにアクセスできる人だ。
“これはアブラティブナノプレートというもので…”
その言葉で三人全員が俺に振り向き、目には奇妙なほどに大きな光が輝いていた。テイラーも一歩後ずさり、俺も後ずさりしたような気がした。
“ファイルによると、自動回復ヒートシールド用のプロトタイプデザインだったそうだ。”
「先生。」と静かに言えば、ウタハは俺の肩を掴む。目は真剣そのもので、顔を極限まで、思わず俺が身構えてしまうほどに近づけて、そして小声で続ける。「これが…プロトタイプ…」ゆっくりと口を開き、まるで言葉を探しているかのように、俺をずっと見つめながら強引に話を続ける。「本来の用途は?」
“アーマーではないな?”
そう答えると、ウタハはうなずく。
「そうだねそうだねそうだねアーマーじゃないなら"何"に使われていたのかな?」俺の視線は三人に向くと、全員真剣だった。
“えっと…元々は繰り返し大気の内外へ出入りする航空機だそう…だ?”
明らかに見て取れた興奮とは裏腹に、全員静かになる。
「それって──」初めにウタハ。
「──もしかして──」次にヒビキ。
「──"宇宙船"!?」最後にコトリ。そして視界は三人に覆われて俺はゆっくりとうなずく。
“まあ…そうだ。それが俺が見れた情報だ。”
政府が資金を持て余し、やるべきことが少なすぎる現状を考えると、宇宙船の開発方法を検討して、それをボディアーマーに転用するのも無理はない。
一方、俺の言葉が少女たちを目覚めさせたのか、俺を獲物かのように見据える。「せぇんせぇ~」とヒビキが甘い声で言いながら、俺に歩み寄る。「そうなるとぉ…設計図が必要になるからぁ…ちょうだい?」
“あー…いいぞ?”
ISACのホログラム姿に向いてうなずき、ファイルがキヴォトスのシステムと互換性があるかをISACとアロナが確認する。そしてエンジニア部のコンピューターに効果音が鳴り、ウタハが確認するとその表情が一気に明るくなった。
「よし!」と歓声を上げるウタハに、他のエンジニア部も続いて歓声を上げた。
「これで宇宙戦艦の建造に一歩近づきましたね!」が嬉しそうに叫び、ヒビキは二人に駆け寄ってきて一緒に喜ぶ。俺はとういうとひどく困惑していた。
「先生。」と声を掛けられ、振り返ると苛立っていたテイラーが──手にはスケッチブックを持っていた。「ボタンアップシャツかそれとも──」
“ボタンアップで。”
そう答えると、テイラーはうなずいてデザインをいくつか見せてくれた。
「では、エンジニア部の方たちと共に製作方法と相談させていただきますね。ベストで問題ありませんか?」そう尋ねられて顎に手を当てる。
“スリーピーススーツか…”
そう呟き、うなずく。
“いいぞ。”
「最高です。」とサムズアップをして俺たち二人はエンジニアトリオに視線を向ける。「しばらくはあの様子のままですね、あれ。」
“確かに。”
そう答えてマップを見る。
“食べ物を買ってくる。”
エンジニア部に食べ物を奢った後、シャーレに戻った。スキャンテックとイヤーピースを外してひと息ついて、目を閉じる。抑えきれない高揚感が胸いっぱいに広がるのを感じずにはいられなかった。
カイザーは何も知らないはずだ。
悪夢かカイザーのオートマタと戦う素晴らしい夢に完全に落ちてしまう前に、そんな状態になる前に、床に置いていたスマホが鳴る。ベッド代わりにしているソファから身を乗り出し、手を伸ばして画面を確認する。
ハルナからだ。どうやらゲヘナで外食をしようと誘っているようだ。大まかなスケジュールを思い出せば肩をすくめる。時間はある。
返信して反応を受け取ると、スマホを置いて目を閉じる。
Orange Archive:
“それで…”
マテオの口が開く。彼は片眉をぴくつかせて不機嫌な表情で黒服とは対面の席に座っており、手には茶を持っていた。
“今度はなんだ?”
「飲み交わし、語らう──それが友というものではありませんか?」楽しげな声で黒服は尋ねる。マテオが茶を飲む様子を熱心に見つめており、マテオは諦めたようだった。
“友という関係とは言えないな。”
そう呟き、ため息をつく。そうして飲み干せば、カップを置く。
“そろそろ行かなければ。時間がない──”
「逆です、先生。」口を挟んだ黒服は立ち上がり、作り笑いを浮かべる。「時間は豊富にあります。」
マテオからは煙が巻き起こり、仕掛けた張本人である黒服が微笑む。「これが山海経が生み出した霊薬…たいへん便利なものですね。これで…お話も通しやすくなります。」
とはいえ、たとえ若くなろうとも彼は"先生"──彼女たちよりも上の存在であることには変わりはない。
煙は晴れていき、黒服が期待していたのは15から17歳程度の若きマテオだった。
しかし代わりに現れたのは、グローブがはめられた拳だった。それは黒服の頭を叩き付け、彼は悲鳴を上げて後ろに倒れ込む。黒服の顔が上がるとその目は大きく見開かれた。
結果から言えば、マテオは若返った。ただしその顔つきは普段の親切で経験豊富なものとは打って変わって、怒りに満ちた獣だった。集中しながらも周囲の状況に気を配り、靴裏で黒服の顔面を踏みつけて気絶させた。
20歳のマテオならこんなことは起きなかった。15歳なら装備の重量と訓練不足で床に倒れ伏せていた。16歳か17歳ならエージェントとして、銃を突きつけて話し合いを持ち掛けていた。
黒服が会話を望むとすれば、18歳のマテオはまさに最悪そのものだった。
必死に周りを見渡して、マスク姿のティーンエイジャーは影に張り付き、消えていった。
[作者あとがき]
お待たせしました。執筆に時間がかかってしまって少々恥ずかしいのですが、ようやく完成しました。フォールアウトニューベガスと崩壊スターレイルの両方と現在進行中のプロジェクトが大きな原因でした。(なんで崩スタの会話量は多いんだ?理由は分かるけどでもなんで?)更にはウォーロードを終わらせていたり次のDLCに来るまでの追い込みもしていました。それに崩壊3rdとトランスフォーマーの映画も…でも投稿はするべきだけど。
それはさておき、最後に追加した部分についての意見を聞きたいです。あの短編は全盛期である18歳のマテオが様々な生徒や部と戦うDeath Battle*1のような内容です。これで現在のマテオの実力を把握したいと考えています。不自然な点があればコメントで指摘してください。クオリティは最高のものにはならないかもしれませんが、それでも読み応えがあるものになるように努めます。
[訳者あとがき]
18歳のマテオ先生は本編とは違うパラレルワールドだと思われます。ちなみに崩スタとフォールアウトニューベガスというのはそのクロス作品のLone Star Rangerのことを指しています。
次回は26日から投稿します。
Nanako系+ブルアカMOD+αマシマシのフォールアウト4は最高です。手癖でちっちゃくさせたミレモブ(しろいの)を動かして着せ替えて色んな銃触って色々と捗ってます。ちなみにニューベガスは謎のCTDで途中で進めなくなったのでそれっきり積んでます。いつか一からやってみるか…