The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.14-03 ゲヘナ学園 風紀委員会本部

一方、カメラを通じて全体を監視していたアコ──イオリがすぐに捕まって連れ去られたことを残念に思っていた。

地の利も人数差、当然使用できる武器も風紀委員会が上だった。砲撃を行いたいところだが、先生の命を危険に晒し、かつ自身の自治区内で砲撃したせいで万魔殿に気付かれるリスクの前にはどうしようもできなかった。

 

『先生たちが動きません。』任務の本当の目的を知らされていなかったせいか、不満をあらわにしていたチナツの声が無線に入る。残念だが、当たり前のことだ。『どうしますか?』

 

アコは数秒間考え込み、指示を出す。「待機してください。完全に包囲していますので先生たちの一挙一動はすぐに分かります。」

 

『…何もしなかった場合は?』チナツが問いかけ、アコは嘲笑う。

 

「チナツ、これは不本意なことだとは分かっています。ですが──」

 

大きな爆発音が響き渡る。「何ですか!?」

 

『建物の壁が爆破されました。先生たちは現在中を通って移動しています。』

 

「追跡してください!」アコは指示を出し、チナツや他の委員が路地に入る姿を視認する。

 

だがしかしヘルメット団によるショットガンとサブマシンガンの集中砲火で押し戻されてしまう。爆発音で気を逸らされた瞬間──

 

『後ろから撃たれてます!』一人が叫ぶ。無線からはアサルトライフルの銃声が聞こえ、すぐに路地の反対側にいるはずの分隊がいる場所を映し出すが、今や瓦礫の山と化していた。

 

そこに先生の姿が現れる。先生に向けて放たれた銃弾は彼の目の前で弾かれ、先生が放った銃弾は一人、また一人と命中する。この状況に把握しようとするアコ──先生の前にドローンが飛行していることに気付く。

 

『動けないです!』屋上に陣取っていたスナイパーの一人が叫ぶ。『ハルナに位置バレしたせいでヘルメット団共々に狙撃し返されてます!』

 

『ヘルメット団が前進しています!路地の裏側が瓦礫で塞がれてしまい全域が制圧されました!』そのチナツの報告にアコは状況の整理を行う。

 

爆発は仕掛けられたもので、瓦礫が片側を塞ぐようにできたものだ。これによって反対側に待機していた分隊の視界を遮断すると同時にハルナの脱出経路を作り出し、再配置したのちに少人数の団員らと共にスナイパーとして活躍できた。

一方で先生は瓦礫で孤立した部隊の制圧及び無力化に動いた。結果としてその部隊はチナツの部隊に合流しなければならず、サブマシンガンとショットガンで武装した集団と罠が待ち構える路地を強行突破するか、それともチナツの部隊が外に出てハルナとヘルメット団に狙撃されるかの二択になってしまった。それに後者の場合、先生のアンチマテリアルライフルで遮蔽物は紙切れ同然だ。

 

唯一残された選択は、増援を送って援護することだった。幸いこの任務においての予備戦力の余裕はあった。

 

『サプライズ!』スナイパーの無線からその声がすれば、ショットガンとサブマシンガンの銃声が続き、アコはたじろぐ。

 

さあ送れ!アコ!

 


 

M4からクエレブレに持ち替えて、一番近い風紀委員を狙い、散弾が胴体を吹き飛ばす。続いて二人目も吹き飛ばして

 

スナイパー全員やったよボス!

 

うふふふ!本当に楽しいですわ!

 

“よし。”

ドローンを手に置かせて停止すれば、パーツを変えてタクティシャンドローンに替えてゴーバッグに戻す。そして気絶した風紀委員たちの身体を漁る。

“敵はもっと来る。だから一回集合して退くぞ。ハルナ、ラブと一緒にチナツの部隊の足を止めさせて他が合流出来るようにしてくれ。”

 

かしこまりました。

ハルナが答えると、俺は路地から飛び出す。ラブ、ハルナ両方の部隊が合流して路地に向かえば、数秒後には多種多様な銃声が鳴り響く。他の団員も俺の部隊に合流した。

 

“状況はどうだ?”

そう尋ねると全員うなずく。

 

「必要とならばいくらでも続けられます。」ハルナが言えばラブがうなずく。

 

「うん、いつもよりも楽勝だね!」ラブも続けば俺はうなずく。

 

“よし、それじゃあ──”

言い切る前に、突然ハルナの頭が後ろに反り返る。驚愕した表情で目は見開かれ、反射光の輝きから察した俺はすぐに振り返り押し寄せてくる敵に銃弾を浴びせ続けて、追い返しながら叫ぶ。

“下がれ!”

 

後退しながら、追ってくる小隊規模の敵を撃ち返す。アサルトライフルが一番得意とする距離だったせいか、ヘルメット団よりも俺の方が命中していた。だが風紀委員会の増援は止まらない。このままでは弾が尽きるか撤退するかの二択になってしまう。

 

それでも行動を起こさないといけない。考えろ。お前はこういう状況を経験してきた。考えるだけでいい。

 

“後退!”

指示を出して追手から逃げる。

 

「どこに向かいますの?」とハルナに尋ねられて、周囲を見渡すと大きなビルを見つける。恐らくホテルだ。

 

“あっちだ!”

指示を出してそこに駆け込む。ISACがスキャンすれば俺は微笑む。

“あそこにある車に乗れる。だがまずは…”

 

顔を上げてうなずき、部屋の窓を破る。その中にあるテーブルから一個運び出す。これで隣の背が低いビルの屋根に行ける。

 

“よし、これでいける。”

そう言ってISACが表示した手持ちの爆発物を確認する。フロントドアにアサルトタレットを設置する。そして入って遮蔽物を探す。

“それじゃあ、これからの計画を説明するぞ!”

 


 

「ありえない」とアコはその言葉を口にしたかった。口にした。自分は最善を尽くした。だがそれでも先生は立っている。こんなことはとっくに慣れきっているかのようだった。それに加えて"本来ならば"取るに足らない存在であるヘルメット団が、先生の指揮下では多大な脅威になっている。

 

ハルナも多大な脅威だ。だが銃撃戦の腕はもとより、指揮能力も兼ね備えているとなればまさに反則。そもそも、どうすれば射手(シャープシューター)が爆破技術を会得できる?あの建物は爆発の衝撃で倒壊したわけではない。支柱が半壊して倒壊したのだ。

 

そしてこの作戦で発生した損害の大きさについても、アコは悔やんでいた。

 

『先生たちは現在ホテルに立て籠もっています。』そのチナツの報告にアコの苛立ちが募る。このような場所だと…部屋を全て隅々まで確認しなければならず、出口も全て塞ぐ必要もあり、罠にも細心の注意を払わなければならない。廊下は接近戦や十字砲火を仕掛けるにはうってつけの場所だ。部屋を通り抜けるとなると爆破以外にないが、今のところ起爆する気配はない。

 

不良集団や美食研究会がホテルに立て籠もる場合、通常は人質を取って威嚇する。このような行為は居場所を特定する手掛かりとなり、風紀委員が突入しやすくなる。しかし今回は人質がなく、あるのはただ静寂のみ──まるでこの地区が破棄されたようだ。

 

『一つ私から提案をさせていただくとすれば…』チナツが初めて意見を述べる。『ここで撤退して、これ以上の損害を出さないようにするのが一番かと。』

 

当然。「何故ですか?」

 

『市街戦は先生の独壇場です。』チナツはあの時、彼が指揮した日を思い出しながら理由を説明する。『それに目的のためなら型破りな戦術を用いてきます。』

 

「型を破った結果、法も破ったということですか?」アコは尋ねるが、チナツは何も答えなかった。「まあいいです。スナイパーは既に全員配置に着かせていて窓から監視──」

 

彼女が言い終わる前に、部屋のブラインドが全て閉まりアコは瞬きをした。

 

『アコ先輩、作戦内容は本当に良く練られてはいますが、作戦自体が間違いそのものでした。』きっぱりと断言すれば、チナツはため息をつく。『それでも、待機はしておきますね。』

 

チナツの声にあったそれが諦観ではないことを、アコは理解していた。今はただ、各部隊が配置につくのを待つだけだ。

 

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