こんにちは。このチャプターを書くのにはかなり時間がかかりました。特に最後のおまけには苦労しました。全盛期のマテオのような人物が生徒たちとどう向き合うかを描写するのは、なかなか難しかったです。ぜひ読んで感想をお願いします。できれば、全盛期のマテオと対決させたいキャラクターについても意見を聞かせていただけると助かります(これはかなり重要な部分ですので、ぜひコメントをお願いします。)。実は、今までここで紹介し忘れていた追加のものがあるので、ぜひ楽しんでください。実際に掲載できればの話ですが。まあ、できればの話ですが。残念ながら掲載できなかったので、マテオ、アロナ、ISACの画像へのリンクを貼れるかどうか、試してみます。
https://www.reddit.com/r/BlueArchive/comments/1f18ylu/a_new_sensei_finding_his_way_around_artist_iamzio/
全く別の話題になりますが、なんでだよディビジョン2。何かあったら必ず戻って修正して追加しないといけなくて腹が立ちます!ANNA?どうして!?これが私への仕打ちですか!?まだそこまで到達していないのに!
…まあいいや。
[訳者まえがき]
今年のドルインフルには気をつけよう!(1敗)(現在完治)
Chap.15-01 カジノ
カジノにて、思考を全てポーカー用語で表現するほど、黒服はこの罪深き娯楽に対する渇望を隠しきれずに待ち尽くしていた。企業の性質上、カイザーは違法もしくは非認可の賭博場の運営が制限なく可能で、合法となる。もちろん、明確な不正行為や法外な賭け金を除けば、という話ではあるが。
現時点での"ゲーム"における自身の立場を黒服は理解していた。今の手札では分が悪い。それは相手が強かったからではない。予想がつかない存在────特に先生が現れたからだ。
現れた瞬間から、彼は生徒とは一線を画していた。戦闘能力では指折りの生徒たちをも上回り、戦術・戦略における洞察力により戦場内外で唯一無二の存在を放っていた。だがそれ以上に…どこか掴みどころがなかった。
黒服は先生の中にある兵士の姿を見出していたが、兵士は命令に従う。結局のところ、先生も連邦生徒会長の命令に従っている。だが指示がなくとも彼は決して行動を止めなかった。困惑、恐怖、幸福、歓喜──それら感情を見せることはあったが、如何なる状況下でも取るべき行動を見失わなかった。
生徒たちとの交流を深める姿にも、黒服の困惑は深まっていた。生徒たちに見せる優しさ、忍耐強さ、激励──兵士であるのにも関わらずその全てが
そして戦術、戦略、戦闘以外の深い知識も有していた。
だから黒服は苦境に立たされていた。負債の増額を脅しの材料として使うことが可能だが、その場合だと彼は黒服を撃ってからカイザーに攻撃を仕掛ける。もしくはホシノと話を進めて契約を結ばせることも可能だが、それでも事を知った彼に撃たれる。だが…
決断、決断が…
黒服は足音を聞きつけてから、彼の姿を見た。悪態をつきながら歩けば、テーブルへ向かう。ブラウンの瞳には不信感が募り、バックパックは背負ってはないがボディアーマーを着用しており、足を踏み鳴らしながら近づいていく。そして立ち止まり、マスクの下では困惑を浮かべながら、黒服を見やる。
分かった。分かった。大人の世界は人間の理解を越えていると。それでいい。何であれどうにかできる。
だがあの価格設定は本当に何だ?一体何様のつもりだ?
おまけに持ち物も没収されたせいでそれはもう言葉にできない程に腹立ってる!俺の話には一切耳を傾けずに没収しやがって。殴ったがそれでも──!
どういうわけか…何故か…"物"が話しかけた。幻想的で霧のような声で、身体からは霧が溢れて、目に見えないほどの勢いで流れ落ちているようだった。「初めまして、シャーレの先生。もしくはヴェルネスさんとお呼びするべきでしょうか?」
“マテオ。”
そう答える。手はパーカーの袖に隠したピストルに伸ばしている。
“俺の出身だと名前の順が逆でな。そっちはどうだ?何か名前か呼び名があるのか?とっとと撃ちたいが内心で物呼ばわりするのはしっくりこないんでな。”
「そうですか。」黒服を着用した物は声に面白味を滲ませてそう答える。「では黒服が一番でしょう。暁のホルスからそのように呼ばれていましたが、いつしかその名前に愛着を持つようになりました。」
ホルス…エジプト──アビドス!
待て。
待て待て待て待て待て!
それだ!ヘイロー──!
…
カイザー…
カエサル…
あのピザ──何考えてんだこのアホ──
“なら黒服で。”
動揺は顔にも態度にも出さず、状況の点と点を結びつけ始める。
“よろしく頼むと言いたいところだが、それだと噓になってしまう。”
そう言ってテーブルに向かう。
“まあでも、よろしく頼む。”
「私と違う心持ちですね。」これは驚いた。「お会いできて光栄です、連邦捜査部『シャーレ』の先生。こちらへ、一つゲームをしましょう。」
“ポーカーか。”
そう呟き、目を狭めると黒服はうなずく。
「はい。私としては少々柄にもないことですが。」と黒服は肩をすくめる。「現在の計画はポーカー用語を用いて練っておりまして、気付けばそのゲームの仕組みに惹かれていたのです。ですので先生、ご教授を願えませんか?」声にはかすかな愉快さが滲んでいた。俺はため息をつく。
“分かった。”
そう言って隣の席に座る。
“あのロボットたちの説明は当てにならない。どんなゲームでもそうだが、手札は常に隠す。できるだけ位の高いカードを集めるのが目的で、位の高さ自体はすぐに分かると思うがジャック、クイーン、キングで、エースは──”
そうして賭け金じゃないチップを使いながらテキサスホールデムの遊び方を黒服に教える。ディーラーには目に見えて苛立っていて面白かった。
準備が出来たら、早速ラウンドを始める。「キヴォトスはどうお過ごしですか?」
“知らないはずがないだろ。”
そう指摘して手札を見つめて伏せて置けば黒服に視線を向ける。
“お前も借金の片棒を担いでいるのなら、あそこで俺がやったことは知っているだろ。だから俺を止めるか、手を引かせたいからここに招いたんだろ。”
「ご安心ください。」そう言って黒服はベットする。「キヴォトスに暮らす方たちのように暴力で訴えるつもりはありません。大人として、私は理性的に解決をする所存です。」
思わず鼻で笑う。
“話し合いが良いと思う前にお前諸共ここを爆破するような大人の顔が数人浮かんだ。”
面白おかしく呟き、ゲームに戻る。
“で、俺を始末しないのなら、何のために俺を呼んだ?”
「私たちは、連邦生徒会長に選ばれ、シッテムの箱と呼ばれる遺物の所有者であり、神秘を持つ生徒たちを導き、神に打ち勝った謎深い人物にお会いしたかったのです。」
なんで──どこでアロナのことを知った?そして"私たち"?フランス語で話してるのか?*1それとも俺に興味を持っている人が他にいるのか?
表情を引き締めたまま俺はレイズする。
“ビナーのことか?蛇みたいな奴だな、ああ。追い払うのに苦労したぞ。それで俺に会いたい奴は?”
「キヴォトスの外部の者として、
“外部の者に…目的。”
そう呟くと黒服は何かに気が付く。
「もちろん。」そう言ってチェックする。「同じ外部の者とは言いましたが、同じ領域の者ということではありません。」
“目的は作戦拠点の設立だと踏んでいる。ホシノが卒業か何かすればカイザーは高校を入手する。どうして俺に関心を持つ?”
そう言ってレイズする。
“"障壁"という点はまあいい。”
個人的にはそこが気になっている。
「シャーレとの紛争は望んでいないからです。」黒服はそう答えてチェックすれば、ベットを同額にしてマッチさせた後、両方の手札が公開されて黒服が勝った。「奇遇ですね。」
“イカサマと言いたいところだが恐らくロボットのミスだろう。”
手札を渡す。
“もしお前が俺みたいな奴だとすれば、"戦えない"から怖がるだろうな。”
そう答えると黒服は頭を振って、俺たち二人はカードをもらう。
「私たちは謎多き存在ではありますが、生徒のような頑丈さは…持ち合わせておりません。」俺はしばらく鼻で笑い続け、机の角に手を置くと黒服はしばらく待った。
やっと落ち着いた俺は重い息を吐き出す。
“す、すまない。ただお前をどう受け止めればいいか分からないが、9mm弾一発で片付けられると考えればおかしくなってしまった。むしろそうした方がいいかもしれないが。”
そう認めてゲームに戻る。
“それで、アビドスが落ちたら研究開発部門はお前のものか?それとも詳しく知るために俺が加わらなければならないのか?”
「この件に関して随分と詳しいようですね。ゲマトリアでの活動に興味はありませんか?」
“ここと同じようなものだったら、喜んで聞き入れて俺ごと全員爆破するだけだ。”
ロボットの動きが一瞬止まり、再びカードを渡した。
“それで皆のトラブルは解決する。”
そう、SHDの理念自体は良かったがカルヴィンとかいうクソ野郎のせいで『政府の再建に逆らう者は殺せ』という理由だけでしか活動できなくなりかけた。
「つまりキヴォトスの謎には関心がないのですか?」黒服は一瞬だけ動きを止めてカードを貰う。「そこに潜むあらゆる謎、奇妙な出来事を──私たちの提案を受け入れてくだされば、それら全てを解明出来ます。」
“ある。謎というのは昔から好きだった。探すのも、謎解きも好きだった。好奇心が強かった。”
最後に手札を確認する。
“その代償は?”
真実──ゲマトリアは知識を持ち、真実を探し求める集団のようだ。大人が"やるべき"ことのように。
黒服は何も答えずフォールドして、手札を公開する。位は俺の方が低く、黒服は驚いて降参した。
“ゲマトリア、そしてお前はアビドスに興味を持っていない。そうだろ?そして欲しいのはアビドスではなくホシノだ。ホシノは最古参で
手札をゆっくりと置き、黒服を見る。
“ここまでで違うところは?”
作り笑い以外の表情は一つも見せなかったが、声には後悔が滲んでいた。「どうやら先生を見誤っていましたようですね。まったくもってその通りです。」
一瞬だけ沈黙が流れ、耳に血が巡る音が聞こえる。
“崩れゆく自治区で優位に立とうと決めた結果そこは荒らされて、皆に涙と血が流れたと。何のためにした?”
ほとんど唸るように言う。
“お前の好奇心か?”
「もちろんです。悪魔のような所業と揶揄されても否定はしません。」黒服はそう答え、動きを止める。俺は怒りをこらえていた。
俺もかつて似たようなことをしたが、"好奇心"からやったものではなかった。
“分からん。ただお前のような奴にピッタリな地獄の円があるのは確かだ。”
「ですが、これは私たちが持つ権利内でのことです。」黒服が答え、俺は衝撃を受けるが見続ける。口を挟もうとした矢先に黒服は続ける。「そこだけは誤解しないようにお願いします、先生。それにお気付きだと思いますが、あの災害は私たちが起こしたものではありません。」
“人は人。自然災害は自然だけが創り出す。”
睨み付けながらそう答える。
「その通りです。私はそれを利用しただけにすぎないのです。喉が渇き果て、今にも砂漠で果てようとする人に水を差し出すようなものです。当然、その人は命を賭けてまで恩を返します。今回もそれと同じことです。このような物語はありふれたものです。私たちの行動は前例がないのではなく、責任が問われるものでもない。自然災害に対しての責任は負っておらず、たとえ私たちが去ったとしても消えるわけではありません。」
黒服は身体を前に出して、テーブルの上で指を絡める。「力ある者は力なき者を搾取する。知識ある者は知識なき者を搾取する。大人であれば分かる事実です。そうでしょう?」
…何を言っている?"子供たち"を搾取するだと?ただ学校に行って生活を送ろうとしているだけなのに?子供たちを…
「だから立ち去ってください。」その言葉に俺は微笑む。
“そして子供たちを苦しめたままにしろと?俺の身体はまだ動けるのに?俺はまだ話せるのに?俺はまだ何かしてあげられるのに?”
「はい。自分の人生を送る──結局のところ、他人よりも自分がよっぽど大事なものなのです。」奴に色んなことをしてやりたい。刺したい。撃ちたい。頭をテーブルに叩きつけたい。血を流す姿を見たい。
だが…
手札を見る──ハートの2にクラブの7、非常に分が悪い。
これは兆候かそれとも偶然か、だが…
“ノーだ。”
黒服は動きを止めて、俺が言ったことを理解しようとしているようだった。「
「何故、マテオさん、何のために?」そう問われると、俺は黒服に向き、怒りを僅かに募らせながらこう答える。
“あの子たちのために。あの子たちは苦しみ、懇願し、泣いてまで助けを求めたが俺がやるまで誰一人として聞き入れなかった。だから最後までやり遂げる。大人としてだ。”
「ですがあなたは保護者ではありません。あなたは仕事で訪れた外部の者で、偶然出会った関係です。何故ここまで面倒を見るのでしょう?何故自ら負担を背負い込むのでしょう?」
“出来るから。苦しみがわかるから。一生懸命働き、わずかな希望のためにどれだけの犠牲を払っているかわかるから。それに俺も出来るから。”
目を閉じれば、記憶が流れる──過ち、成功、エージェントとして過ごした時間、その前の時間。そしてあることに気付く。
“それが俺の責任だから。”
それは新天地に足を踏み入れた時にやってきたこと。エージェントとして、俺の責務と責任は政府を出来るだけ安定したものに再建することだったが、その一部になるとは決してなかった。
「ほう。」黒服は理解したのか、顔を上げる。「理解しました。つまり大人とは責任を持つ者であると。違います先生。間違えています。大人とは社会を変革する者──規則と法律を制定し、普通を決め、平凡と非凡の境界を引く者。大人は権威を以て目的なき者を、知識を以て無知なる者を、力を以て弱き者を支配する。それが大人であるということです。」そして俺を指差す。「あなたのような人が、です。」
「キヴォトス全土の支配ができました。あの時、一瞬だけ全てを手にしていました。都市全域に行き届く計り知れない力と権威、神秘…なのにあなたは何の躊躇いもなく全てを放り捨てた。」信じられないという口ぶりだった。「自分自身で決断すら下せないほど、訓練は厳しいものでしたか、兵隊さん?」
呆然と見つめた後、首を振らずにはいられなかった。
“俺でラッキーだったな。俺の仲間のエージェントだったら直ぐに撃ってたぞ。”
「エージェント…」黒服は言葉を濁し、俺は奴を見る。
“理解はしないな。ここで座って、何をしたか何故をしたかをパワーポイントでプレゼンテーションもできるが時間の無駄になるだろう。でもやってみよう。先生だからな。”
そう言って黒服を見れば、興味深そうに身を前にしていた。
“なりたくなかったからだ。”
その答えに黒服は完全に困惑していた。「…今何と?」
“富も答えも力も全部俺にとっては持ち腐れるからいらなかった。俺たちは余所者だ。お前と俺に──”
俺は黒服と自分を指差す。
“何の権利があって俺たちが正しいと言える?俺たちは知識が通用しない世界を覗く余所者だ。むしろ俺たちの方が不思議だ。だが俺の存在は変わらない。あの子たちは助けを必要としている。俺は助けられる。俺は助けたい。俺は助ける。”
カジノが一瞬だけ静まり返れば黒服は失望していたようだった。「交渉決裂といったところですね。」
鼻で笑うしかなかった。
“冷静にいられたのが奇跡だ。では、お前を殺すと決める前に出ていかないとな。”
「最後に一つ。」黒服が口を開けば俺は振り返る。「この先の展開は予測がつきませんが、カイザーを敵に回すのは避けるべきです。」
瞬きして、マスクの下で微笑む。
“回しておけ。敵には優しくしないし、しばらくすれば大半は犠牲者になる。”
これで用は済んだ。テーブルから離れて歩き出し、バッグを取ってカジノから出る。外には俺のバイクがあって、それを見つめる。
明日、カイザーとの会議がある。その時はアビドスの皆に朗報を伝えて計画を練らないといけない。ヒビキはもう服を作り終えているはずだが、残念だがゴーバッグは手放せない。カヨコは噂を広めているはずだ。さて、ヒフミに電話をしないとだ。
あまりにも長くカイザーは好き放題してきた。
『大きな棍棒を携え、穏やかに話す』
そう、穏やかに話すさ。それはもう棍棒を見失うぐらい穏やかに。