一方、便利屋と対策委員会はこの事実に多大な衝撃を受けていた。自分たちが所有している土地は分校のみという事実が発覚したことにより、動きが鈍っていた。アヤネは他の対策委員や便利屋と共に先生を待ちながら、サーバーから入手したファイルを精査していた。
その多くは砂嵐が訪れる前の頃──楽しそうに笑い合って青春を謳歌する生徒たちの姿が映し出されていた。だがその一方で不穏なものもあり、特定の場面ではカイザーが手を進めている兆候があった。
とても心温まるような映像だった。その時にドアが開き、マテオが満足げな様子で入ると共にシロコはその方向を向く。「ん、先生。」
「こんにちは先生~」ノノミが挨拶すれば、彼女の太ももに乗っているホシノ──エジプト神話の戦神かもしれないしそうでもないような眠たげなピンク髪の少女があくびをしながら彼の方に向く。
「やっほ先生~昨日はどうだった?」彼女はそう尋ねると、再びあくびをして起き上がる。「こっちはあんまりだったけど。」
「これでも大分オブラートに包んでいる方…」と苦い顔を浮かべたカヨコが付け加える。
ムツキさえもいつものからかう素振りを見せず、マテオは首を振る。
“ああ、地域のことか。もう解決したぞ。”
対策委員全員、その言葉に反応し、特にホシノが顕著だった。「先生、解決したってどういうこと?」
“これだ。”
マテオは机にファイルを置く。
“全部この中に入っている。君たちが見終わったら計画について伝える。”
「計画?」ノノミが尋ね、緊張したホシノの上から見ようとする。
「先生。」ホシノはその書類に顔を向ける。「これって何?」
“カイザーコーポレーションと合意形成した。”
マテオは腰を下ろして説明を続ける。
“法的には、政府機関は土地の差し押さえが出来るが、それに対する補填を支払わなければならない。つまり土地の価値を客観的かつ明確に決める必要がある。”
説明を続け、彼は机の中央に地図が表示されているシッテムの箱を置く。
“これがカイザーの事業だ。”
地図上にはマーカーが次々と表示されていく。
“石油掘削施設、採掘場、軍事基地等々、多種多様にある。”
「多い…」と覗き込んだカヨコは顔をしかめる。
「不可解ですね…」ファイルを確認したアヤネが言う。ホシノの顔は更に険しくなっていた。「ここまで詳細な記録が残っているはずがありません。」
“確かにそうだ。”
彼はうなずく。
“だからこの土地の価値を書類上に記す時に、これが"法律上"ではアビドスの土地扱いとなる。”
マーカーが非表示になり、ホシノとカヨコは事の真相に気付く。
“言うまでもないが…”
タブレットがタップされ、ビナーの写真が表示される。
“ドカン。”
「要するに──」怪訝そうにカヨコは口を開く。「二日間かけて、先生はビナーを利用して調査という建前で土地を購入して、アビドス内で行われている違法かつ未認可の事業は一切話に出さなかったことで、カイザーが所有する土地の価格を無理矢理大きく引き下げた、ということ?それって合法なの?」
“まあ…早く事を進めるのなら確かに超法規的権限は便利だが、これ自体は…合法だ。”
「シャーレにそんなことができる人手と時間はあるの?」カヨコは目を見開きながら尋ねる。「それとも…」
「
“もちろん、カイザーはまだ事業をやっている…明日までだが。カヨコ、アレはしたか?”
「うん。もう向こうが抑えているはず。」
“よし。”
マテオはうなずき、衝撃を受けている少女たちに振り向く。
“現金は触れたり投げたりしてないな?”
ホシノは首を横に振ってマテオに向く。「してないけど…なんで?」
“作戦で使うからだ。ほら──”
シッテムの箱に三つの建物がズームされる。
“ここで覆面水着団、サンドマン、ファウストはアビドス自治区内でマネーロンダリングをするためにそういう業者と会うことになっている。カヨコが──”
彼はカヨコを指差す。
“ファウストとサンドマンが計画について話している様子を録音していて、さらに予定場所も分かっていることになっている。”
「先生、もしかして私が考えてることをやるつもり?」ムツキの笑顔は狡猾なものに変わり、飛び跳ねる。
“そのつもりだ。本来ならば真っ先にアビドスが動くところだが、それがアビドスの耳に届けばどうなる?それに──”
説明を続けるマテオに誰かに遮られる。
「こんにちは先生。約束通り来ました。」ヒフミが部屋に入れば、皆彼女を一心に見つめる。「皆さん…私をそんなに見つめてどうしましたか?」
「ファウスト。」その言葉と共にシロコは目を輝かせながらマテオを見る。
“その通りだ。これは覆面水着団を壊滅させるためにファウストとサンドマンが仕組んだ罠。だが実際に現れるのは水着団ではなく違う人だ。他二つの場所ではファウストとヘルメット団が攻撃して、そこで金を奪う。攻撃中に俺はカイザーPMC理事と会議していて、便利屋は主要施設に爆発物を仕掛ける。石油掘削施設への大規模な攻撃と、複数の施設の破壊工作が今回の作戦だ。”
「待って、PMC理事と会議するの?」衝撃を受けたホシノは尋ねる。「でも──」
“排除しようとしてくる。”
軽快な声色でマテオは言い、まるでそのことに意に介していないように手を振る。
“そこはいい。あいつがハメようとしたのは初めてじゃないし、まだ俺が五体満足な以上、相手の待ち伏せを逆手に取るのが得意だ。違法事業を理由に追い出させて、それと他のものをひっくるめて連邦生徒会に報告して調査させるようにする。そうすれば借金は残るものの、君たちは土地は取り戻せる。”
マテオは手を叩き、マスクの下で微笑む。
“さて、質問は?”
「あの…」ヒフミが手を挙げる。「そ、その計画って何だったんですか?どうして私が呼ばれたんですか?遅刻したので…」
“ならラーメン食べながら話そうか!”