The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.15-04 アビドス自治区 セーフハウス

セーフハウス内のレストランは物凄く素晴らしかった。柴関と引けを取らない程だった。

 

だが一方で、弾薬や武器が並ぶセーフハウスの中、ホシノは意気消沈した様子でラーメンを食べていて、皆は下へ降りていった。

 

「先生。」俺に振り向きホシノが尋ねるが、今までにないくらいに途方に暮れていた。「おじさん、夢でも見てるのかな。」

 

“分かってる。”

マスクを耳にぶら下げたまま麺をすすり、思わず漏れそうになったうめき声をこらえる。

“厳密に言うと君たちに支払ったものではなかったが。”

 

「違う。」とホシノの目は少し明るくなり、俺に振り向く。「むしろ詐欺だった。」

 

“まあ…”

肩をすくめる。

“ビナーに関する情報収集といった作戦の時にはいつでも俺から買い戻せる。それに、これはシャーレ用のだから俺の責任はそこまで大きくはない。”

 

「そうじゃなくて。」ホシノの目には様々な表情が複雑に絡んでいた「こっちの状況を利用して噓をついたってこと。」

 

しばらくの間、ホシノは何も喋らなかった。誤解を解こうとしたが、ラーメンを食べていた。結局、あの子たちに任せることに何の抵抗もなかったが、心のどこかでは受け入れたくないと感じていた。

 

土地が普通のものだったら、アビドス内でのカイザーの違法行為の調査を続けて、十分な証拠を掴んでいた。だがそこにビナーが横槍を入れてきた。

 

"あれ"には天使の輪(ヘイロー)があった。何故だ?

 

疑問が次々と浮かんでいき、ビナーについて更に考え込んでいたがホシノの声が割り込む。「うそつき。」

 

つい麵を啜るのが止まって、俺はピンク髪のおじさんに振り向く。その目は今にもこぼれそうな涙が光り、弱々しい笑顔とは裏腹に、言葉の端々には鋭い毒が潜んでいた。ゆっくりと静かに、俺は口の中にあった麵を食べて、飲み込む。

“どうした…?気分が良くないのか?”

 

「先生のばか。」とホシノは俺の太ももに蹴りを入れる。「次からは事前に計画を教えて。そうすれば話し合えるから。」

 

“分かった。とはいえこれは一度しかない特別措置だ。”

肩をすくめる。

“法的には君たちが所有することになるが、借金はそのままだ。”

 

ホシノは手のひらにもたれかかり、その目でじっと俺を見つめていた。何かに目覚めたかのようにブルーとオレンジの輝きが増していた。どこか儚い微笑みがゆっくりと落ち着けば、いつもの気怠げな顔に戻り、両手をテーブルに置いて椅子を押し戻す。立ち上がると、俺の背後に回り込み、腕を回してハグしようとする。

 

「ありがとう。」その声は震えていた。「こんな怪しい大人でいてくれて、誰も気にも留めていなかったことをしてくれて、私たちに希望を与えてくれて。」

 

しばらく、その言葉を噛みしめていた。どのみちこういうのは俺の仕事だ。そう、仕事だ。だがこうして感謝されるのは…

 

良かった。

 

そうして、俺は腕を振ればホシノは放して椅子に座って再びラーメンを食べ始める。

“故郷と比べれば、こんなのは大したことじゃない。”

その通りだ。

 

「先生の故郷って大変な所なんだね。初めて出会う前からカイザーのことを憎んでいたし。」ホシノが呟けば俺は軽く笑う。

 

“PMCにはあまりいい経験がなくてな。企業もだ。だからPMCを持つ組織は全て敵扱いにしている。”

 

「うわぁ、ひどーい。」とホシノはため息をつく。「なら理事との会議に誰か連れていくのは無理そうな感じ?」

 

“無理だ。”

首を横に振って答える。

“そうすれば怪しまれてしまう。俺なら大丈夫だ。こいつなら──”

俺は自分の服に指差す。

“多少撃たれても問題ない。”

 

「まっ…」どこか躊躇ったようにホシノは言う。「先生がそういうのなら。」

 

“ああ。それじゃあ麵が伸びきってしまう前に食べるか。”

そうして俺たちは完食する。

 

ベテランもどき二人で、セーフハウスでラーメンを楽しんでいた。

 

S 先生!すごく凄い人が来ますよ!

 

壁は防音仕様だったが、アルの叫び声が聞こえた。「ふ、風紀委員長!?」

 

風紀委──あぁ!つまりチナツの上司か。

 

ホシノと俺は互いに視線を交わしてセーフハウスを出れば、俺は階段を2段ずつ駆け下りていくが──

 

「…ヒナのやり方じゃない。ならアコ?一体ここで何を…?」カヨコが呟き、俺とホシノはそこに来る。

 

“アル、防音仕様の部屋なのに廊下から叫び声が聞こえてきたぞ。一体何があったんだ?”

アダムの鍵に手を乗せたままにして、ISACが視線を向けている生徒二人──天雨アコと空崎ヒナを表示する。

 

その視線は俺たちに向けられていて、アコは俺からそらそうとしていたが、ヒナはホシノへと向いていた。「小鳥遊ホシノ?」

 

「うぇ~?」とホシノは呟き、Eye of Horusを下げる。「どこかで出会ったっけ?風紀委員長ちゃん?」

 

困惑した様子で、ヒナはゆっくりと首を振る。「いえ、ただの…」と言葉を濁して目を狭める。「気にしないで。先生に用があってここに来たの。」

 

“分かった。”

ホシノは俺の方に向く。

“ここかそれとも…”

 

「出来ればプライベートな場所でお願い。」そうヒナが言えば全員その方に向き、数人は武器を構えていたが、ヒナは意に介さなかった。

 

キーナー…奴の素性と所業を知らなければその恐ろしさは分からない。持ち前の圧倒的なカリスマと魅力でどこであっても怪しまれることなくすぐに溶け込めてしまう。ただし唯一の弱みとして、ローグエージェントという立場のせいで、所属や同盟関係は明白だった。だがヒナは?

 

まるで戦車に挑むような──その感覚をヒナから感じた。全盛期の俺なら勝てるかもしれないが、今の俺だとそう簡単には勝てれない。

 

とはいえ、彼女は生徒だ。だから。

“分かった。ついてきてくれ。飲み物はいるか?”

 

「無くてもいいわ。」とヒナが答え、ホシノがついてくるとヒナはどこか気まずい思いになり俺はため息をつく。

 

セーフハウスへのドアを開けてヒナとアコを入らせるが、ホシノは襟首を掴んで止めさせる。「うぁ~」

 

“ホシノは外で待機だ。”

そう言ってホシノを部屋の外に下ろす。

 

「んも~しょうがないなぁ。」とホシノは肩をすくめる。「何かあったらすぐに呼んでねー」

 

“分かった。”

そう言ってすぐに中に入ってホシノの容器を取って渡す。

“はい。”

 

そうしてドアが閉まって俺はため息をつく。

“さて、初対面でいきなり撃ってこなかっただけで今まで出会ってきたリーダーの誰よりも偉かった。よろしく頼む、風紀委員長。”

ヒナにうなずいて座り、アコの方に向く。

“俺を逮捕しようとした人。”

 

アコは一瞬身をすくめ、ヒナはため息を吐く。「そのことについて話に来たの。」そう言ってアコを睨み、すぐにため息をつきながら一歩引いて頭を下げる。

 

「シャーレの先生、あなたのゲヘナ来訪時にて私が行った行為について深く謝罪を申し上げる。この件についてのお詫びになるようなことがあればすぐに実行するわ。」

 

セーフハウス内が静まり返り、俺は肩をすくめる。

“まあ、逮捕されていたら違う話になっていたし、正直に言うとこれで大丈夫だ。本当だぞ。”

二人共、驚いていた。

“過保護になりすぎたと分かったし、そして俺にとっては訓練になった。そう割り切ろう。”

 

アコは衝撃を受けていたが、どこか不満げだった。「…分かりました、先生。」

 

俺は再びラーメンを食べながら振り返れば、ヒナはまだ座ったままでその後ろにはアコが周囲を見回していた。好奇心を隠そうとしながらも、ノートパソコンに惹かれていたようだった。「ここって前からあったのかしら…?」

 

“なかったぞ。俺がオーナーと相談して許可を得たからここができた。だからこういった場所は一部の人しか入ることができない。”

 

「なら私たちを入れて大丈夫かしら?」そう尋ねられて肩をすくめる。

 

“本当は大丈夫じゃないが、俺としては大丈夫だと確信してる。少なくともこれで大事にはならない。すでにNDAを含む申請プロセスのことでシャーレには疑いの目が向けられている。最近の俺の行動にも向けられているが、そこは俺が抱える問題ではない。”

 

「アビドスの土地をカイザーから買ったのも?」そう言ってヒナは身を前に乗り出す。「気が付いていたの?」

 

“企業と特にPMCが死ぬほど大嫌いだからな。”

そう言って、壁にかかった地図を睨む。

 

ヒナはうなずく。「どうやら、利害は一致したようね。」

 

“程度の差はあるが、そうだな。”

そしてソーダを一口飲む。

“謝罪は済んだが、アビドスでやることは全部済ませたか?”

 

「もう一つ残っているわ、便利屋よ。」その言葉で俺は顔をしかめる。「大人しく渡してくれるとは思っていないけど。」

 

“ひとまず、ここはアビドス自治区で、土地は今現在シャーレのものだが、土地はアビドスのものだと改めてカイザーに理解させる時だ。残念ながら、便利屋はそれに事欠かせない。”

背もたれに寄りかかる。

“計画は今俺が考えていて、矛盾は一つ一つ潰していって、徹底的に確実なものにする。聞くか?”

 

ヒナとアコは驚いて瞬きをしていた。「は、話してもよろしいのですか?」

 

“妨害はするつもりなのか?”

そう尋ねるとヒナは首を横に振る。

“なら良かった。カヨコが最近入手した情報によれば、明後日、覆面水着団、サンドマン、ファウストがマネーロンダリングの為にアビドスで取引を行う。そこに集まった大金にカイザーは興味を持っているし、よろしくない勢力も同様に付け狙っている。そこでだ、カイザーがそれを狙っている間に──”

アビドス砂漠の地図をテーブルに広げて、ある地点を指し示す。

“アビドスはここで陽動を行う。”

そして地図に大多数のカイザーの補給拠点と大金がある場所の間の経路を横切るように弧を書き、眉をひそめる。

“俺はここで理事と会って、違法行為に関する退去勧告を通達する。”

 

「どうして出会うのですか?」アコが俺に視線を向けて尋ねる。「それにこの広さの土地だとアビドスだけで対処しきれません。」

 

“そこでヘルメット団の動きが活発になってきているからだ。これはファウストとサンドマンが仕込んだもので、覆面水着団を誘導して金を全て奪おうとしているか、もしくは別の目的のためだと考えている。俺が唯一把握しているのは、ヘルメット団のメンバーの多くがカイザーの部隊が潜伏している地点に移動していることだけだ。”

 

「つまり、混乱に便乗して証拠隠滅を図るということね。」そしてヒナはエリアを指差す。「罠を仕掛けて足を止めさせてちょうだい。でもそれだけでは不十分。それに理事とあなたのことについてもまだ答えてもらってないわ。」

 

“俺の…やり方については知っているか?”

そう尋ねると二人共うなずく。

“そうだな、俺を排除しようとしてくる理事をこっちから誘い出すつもりだ。”

 

二人共それに衝撃を受けていた。「ですが先生、カイザー側としては墓穴を掘るようなことですよ!」

 

ヒナもうなずいて同意を示す。「そうよ。必ず誘いに乗るという確証はあるの?」

 

“ヒナ。”

そう言ってヒナに視線を向ける。

“PMCが嫌いといったが、あれでも結構控えめに言った方だ。PMCにやられたことがあるし逆にやったこともある。”

 

そう、ブラックタスクは奇襲が得意だが、それでもなんとか対処してきた。手柄を何一つ取らせずに、時には手足がもげるような反撃をしてきた。ブラックタスク以外もだ。

 

「でも危険よ。」ヒナが忠告するが、俺はその方に向く。

 

“ヒナ、カイザーが手を引くか、それともカイザーの手でアビドスが今以上の生き地獄になるかだ。”

そう伝えると、表情をさらに険しくすれば、ヒナはぎこちなさそうに身じろぎしていた。

“必要ならば俺は火中に身を投じても構わない。同じ手を使うカイザーPMC理事の末路を見せてやる。”

顔を背け、思わずこう呟く。

“同じ過ちは犯せない。”

 

一瞬、身体に疲労が押し寄せてくるが、首を振って振り払う。どうやらヒナだけが気付いたみたいで、一瞬だけ驚いた様子を見せた後、何事もなかったように戻ったが興味を示していた。「成程、会議と現金の確保へ動く中、便利屋が爆破を行うということね?」

 

“それが今回の計画だ。だが会議はできればカイザーが現金へ向かう前に行いたい。出ていけと直接言えば時間はどのくらいかかる?だからその間に部隊が救援に向かい、便利屋が全部吹き飛ばした後に、俺があの野郎に思い知らせる。痛さを──”

途中で言葉を止めて、本意を隠す。

“どう思う?”

 

「そこが不安よ。」そのエリアを指差すヒナ、顔をしかめる俺。流石にヘルメット団がついているというのは口に出せない。「風紀委員会も加わることもできるけど、どうかしら。」

 

“本当か?”

そう驚くと、ヒナはうなずく。

“本当にいいのか?その、数人は頭から瓦礫をぶつけさせたが…”

 

「それならご心配なく。それ以外は特にありません。」とアコの言葉で一安心した。

 

“それなら…”

微笑む。

“二人と一緒に動くのを楽しみにしているぞ。ひとまず俺は皆の様子を確認して、状況を伝えなければならない。一緒に行くか?”

 

「残念だけど──」とヒナは顔をしかめる。「ゲヘナはもうそろそろ…賑やかになるの。イオリだけじゃ手が回らなくなるから、またいつか会いましょう。」

 

“シャーレにも是非来てくれ。”

ヒナが俺の方に向いたので微笑む。

“くつろぐには丁度いい場所だぞ。”

 

角とヘイローの光がゆっくりと少しだけ消えて、少し慌てた様子になる。「わ、わかったわ先生。」

 

そうして二人は店を出て俺もその後をついていき、空になった自分のカップを置いてソーダを飲み干す。「どんな話をしてたの?」とセリカに聞かれ、俺は軽く笑う。

 

“防音性能が良すぎて何も聞こえなかったのか?”

そう尋ねるとアルは悲鳴を上げ、俺は首を振る。

“まあ、とりあえず欲しかった助っ人が加わったと言っておこう。さて、戻って作戦の確認といこう。”

 

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