The Divide   作:粋刺@翻訳

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[訳者まえがき]
チャプター13の作者のあとがきのように、チャプター13以降、Orange Archiveは本編とは関係のないパラレルワールドとして展開することになります。



Orange Archive: Underground(裏社会)

サオリにとって、これは簡単な仕事だった──ブラックマーケットを賑わせているトラブルメーカーを見つけ出し、戦闘をするだけ。だがスクワッドが駆けつけることになるとは予想にもしなかった。

 

ターゲットを視界に捉えれば、サオリの心は凍り付く。ヘイローがなく、先生よりも若い。目には隈ができ、見覚えのあるマスク…

 

だが…

 

先生を想起させる男を前にして、誰も口を開くことはなかった。

 

とりわけ観察眼に優れたアツコは、その男が自分自身に似ていると気が付いた。

 

マスクをつけた彼女は周囲を見回す。皆、自分の周囲に集まっている様子に気付く。まるで先生との戦闘が始まって数分後の光景だった。

 

スクワッドが動く前に、先生が動く。見たこともない速さでピストルを抜けば、脅威の命中精度でアツコとヒヨリの頭を撃てば、蒼い髪をしたスナイパーは地面に落ち、彼女たちは武器を手に取ろうとする。男はM870ショットガンに持ち替え、狙い、二度撃つ。散弾はミサキとサオリに当たり、前者は後退しながら靴に取り付けたリボルバーに手を伸ばし、後者は男が隠れた遮蔽物に向けて撃ち返していた。

 

「姫、大丈夫か?」サオリは尋ね、射撃を止めて見回せば、ミサキがアツコを助けて遮蔽物に隠れていた。

 

アツコは手話で自身の状態を伝え、安堵の息をついたサオリは遮蔽物から顔を出す。

 

銃弾が頭部に直撃し、帽子が吹き飛ばされると共に後ろへ倒れ、舌打ちをする。「ヒヨリ、早く──!」

 

指示を出し終える前に、見覚えのある姿が表す。ヒヨリの目は大きく見開かれ、ハイヴが投げられる様子を目にする。ポッドが分離すれば、銃弾の嵐が襲い掛かり、後退を余儀なくされる。さらにマイクロドローンが襲い掛かり、爆発音が響き渡り、気絶してしまう。

 

「ヒヨリ!」とサオリは怒りを抑えきれずに叫び、ターゲットへ向けば…

 

動きが凍り付く。心臓が激しく脈打ち、アサルトライフルを握る手にも力が入る。男は彼女をじっと見つめたままだった。

 

それは先生──親切で、寛大で、ちょっと頑固な先生ではない。追跡した時に一瞬だけ見えた、怒りに満ちた目で睨みつける先生の姿だった。

 

ただし今回は、方向も目的もない憤怒に包まれていた。それは自分自身も、周囲のあらゆるものも焼き尽くすものだった。再び火が付けば、また同じことになる。

 

彼女は頭を振り、目を狭めて狙いを定めて撃てば、相手は遮蔽物に隠れるしかなかった。「ミサキ、姫をここから出せ。」

 

「分かった。」暗い顔をした少女は年下の少女を連れ出す。「こっち、姫。」アツコは導かれるまま移動すれば、サオリは射撃に戻る。男の姿を狙い──

 

どうして自分の銃から銃声が聞こえない?

 

その思考で一瞬だけ動きが止まり、ミサキとアツコに振り向けば二人は角に隠れていた。目の前に向けば、わずか数秒後には靴裏が飛び出し、よろめき遮蔽物から出て咄嗟に腕を上げて続くパンチを防ごうとした。

 

だが予想とは違い腕を掴まれ、相手に引っ張られると同時に片方の腕も掴まれてしまい地面に組み伏せられる。サオリの腹部に膝蹴りが入り、彼女は反射的に咳き込みそうになるもすぐに肘打ちがこめかみへ続く。すぐにサオリはホールの壁を掴み、それを押し返した勢いで身体を振りかぶるも、彼はそれを巧みにくぐり抜ける。そして彼はすぐに背後に回り込み、彼の背中が露わになる。後ろに踏み出して回避を試みるサオリ。予想通り、彼は足を滑らせて大きく振りかぶるが、何かが彼女の頭部に当たる──叩き込まれたそれに彼女は目で追う。

 

斧だ──見覚えのある、とある人物が使っていた斧。彼女は腕をゆっくりと上げれば、瞳──輝くオレンジ色、そして首筋から垣間見たタトゥーであることに気付く。

 

「先──!?」口を開くも斧は振り下ろされる。刃で肌を切り裂かれることはなく、その代わりに彼女のヘイローは点滅した後、完全に消えてしまい、気絶。見下ろす彼だが、その中にはただ誰彼構わず狩り尽くすという衝動のみが渦巻いていた。残りの二人が向かった方向へと走り、与えられた任務を遂行する間、気を紛らわせる何かを探していた。

 

「早く。」とミサキが言い、その後をついていくアツコ。二人は銃を構え、ミサキはリボルバーだった。FM-92 スティンガーは閉所での使用を想定していない。

 

「サオリは?」とアツコは手話ではなく、声を発して尋ねる。

 

「リーダーなら大丈夫、早く──!」

 

ガラスが砕け散った音に言葉は遮られ、銃声が鳴り響けば、二人はすぐに遮蔽物に隠れる。銃声が止まった合間にアツコは顔を出し、CZスコーピオンを構えて狙いをつけていた。必死に標的を探す彼女の横で、ミサキはスティンガーに持ち替えていた。

 

「姫、伏せて!」咄嗟にミサキはアツコの背中を引っ張る。違う方向からの制圧射撃で身動きが取れない。速い。いや、男は先生と似た装備を持っている。つまり…

 

ミサキは銃声が鳴った方向に狙いをつけて、発射。ミサイルは空中で分裂し、着弾すれば爆発。マスクの下、彼女は顔をしかめる。「行こう、姫。」

 

アツコの身体はミサキへ向かって宙を舞い、ヘイローが点滅すれば、聞き覚えのあるアンチマテリアルライフル──ヒヨリのそれの銃声が響いていた。視線を向け、心が凍り付けば、アツコは自身の上に倒れ込み、ハンターの姿が視界に入る。

 

彼はゆっくりと武器を放し、背中にあるショットガンを手にする。見覚えのあるそれ──彼の視線は生きている者とは思えない死者のそれだった。動きは洗練され、足音一つ立てず、ほとんど聞こえないがそれでも規則的な呼吸音と共にトリガーをかけたままで、ミサキは狙うものの、ためらった。

 

元々彼女はヘイローを持たない者が撃たれる──それも複数回撃たれた場合、どうなるかを確認するためここに来ていた。

 

彼が近づくにつれて、銃を握る手が震えていた。兵士や戦士ではなく、彼は一人のアリウス生のようだった。機械的に繰り出す一挙手一投足だったが、喉の奥底に押し込められた憎悪で動く生徒とは違い、その目は矛盾に満ちあふれていた。生気に溢れていながらもどこか虚しく、反抗的で諦観していた。

 

彼女には見覚えがあった──人生を辞めようとする時、鏡に映る自分自身だった。

 

冷たい鋼の銃口が額に押し当てられた時、リボルバーのハンマーがチャンバーに当たり、銃弾がアーマーに命中した。そして彼はトリガーを引く。

 

銃声は最後まで聞くことが出来ず、彼女の後頭部は地面に叩きつけられてしまい、ヘイローも消えてしまった。

 

血しぶきが上がると考えていたマテオ。だがショットガンを下げ、これほど若い──自分と数年しか変わらない命を奪う必要がなくなったおかげで全身には安堵が駆け巡った。

 

だがその安堵は、すぐに鋼に変わってしまった。しゃがみ込んで二人の身体を調べ始め、弾薬と手榴弾を回収すると、立ち上がって走り去っていった。

 




[訳者あとがき]
次回は12/5に投稿します。リアルが忙しいのでかなり間が開きます。申し訳ございません。
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