張り詰めた沈黙が毛布のように包まれているオフィス、マテオの言葉を全員が受け止めていた。
一瞬だった。
動作で、マテオはコートの裏に隠していた何かを取り出し、腰だめで撃つ。静かな銃声が響き渡る中、彼は横へ転がり込む。警備員が撃ち返そうとするが当たらず、当たったとしても効いていなかった。弾はコート、ベスト、プレートの三つに防がれ、警備員らは次々と倒れ、盾とピストルを持ったオートマタのみとなった。マテオに残されたものは不可視の銃、アーマープレート、そして己の技量のみ。彼はソファを飛び越え、その後ろに身を隠す。スキャンテックには銃は弾切れと表示されていた。
しばらくして、飛翔音と共に破られた窓からドローンが接近し、それに運ばれたゴーバッグ──特に無くなったものにマテオは思わず口を開くしかなかった。
“全部奪われたか。”
通常のグレネードだけが残り、ケミランチャー、追尾マイン、ミサイルランチャーといったSHDテックはおろかホワイトデスやその他も全て奪われていたが、アーマープレート、予備の弾薬、バックアップブームスティックも残っていたのは不幸中の幸いだった。マテオはカイザーの方を向いて、眉をひそめる。
“クソ野郎共が!”
ゴーバッグを肩に担いで不可視の銃をリロードしたのち、敵の脚を狙って撃つ。何発もの.45 ACP弾が撃ち抜き、その間に彼はグレネードを隙間に投げ込む。理事は叫び声を上げ、撃ち返していく警備員と共に退避する中、その数人が倒される。マテオはソファの陰に隠れ、HUDで残弾数を確認しながら横から顔を出す。敵の動きを見極め、残りの警備員たちに向けて複数回を発砲すれば、Pulse状態の敵が動く。
エントランスへ移動しながらマガジンを入れ替えて投げ捨て、オフィス出口の壁に寄りかかりながらスマートウォッチをタップしてスキャナーPulseを放つ。ドアの外では10体の敵が待ち構えており増援も接近中だった。
ISACブリックのパーツを入れ替え、マテオは一歩下がってウォッチを押す。円錐が表示されて離せば甲高い音と共にシグナルが放たれる。
彼はドアを蹴破り、バンシーPulseで混乱した敵の頭を次々と狙い撃ち、一体一体を確実に倒していく。混乱が間もなく解けるという警告がHUDに表示される。
バックアップブームスティックを持ち、PMC生徒にタックルを仕掛けるとブームスティックを顎の下に突き付けトリガーを引く。スラグ弾の衝撃で身体は後方にのけ反り、彼はそれを押し退けて転がり込む。
そしてオートマタの身体が視界に入ればとそれを掴み、バックアップブームスティックをホルスターにしまって不可視の銃をリロードする。PMC兵の混乱が解き、階段から重い足取りが彼の耳に入る。
残った兵がマテオの位置へ射撃する。銃弾は盾となったオートマタの身体に食い込み、そこから覗き込んだマテオは見えない武器のトリガーを引き、一発一発撃たれるごとにバットストックが肩に当たる。兵士たちは倒れ伏せ、ブルースクリーンになるかヘイローが消えるかの二択であった。
不可視の武器を投げ捨てて、オートマタが使っていた武器を持つ。M16系統のモデルだ。フルオートに切り替えると押し寄せてくる集団に向けて放つ。敵を押し返せば倒れたオートマタの身体を軽く叩いて必要なものを探し出す。それを取り出してグレネードのピンを抜き、投擲すれば壁に跳ね返って他のオートマタがいる位置に転がっていく。弾薬を回収したマテオは窓の外を見やると、すぐ近くでヘリコプターがホバリングしていた。
アパッチだ。
マテオはM16のマガジンリリースボタンを押して床に落ちたマガジンが音を立て、手を背中のゴーバッグの隙間に入れて、マガジンを取り出す。特別なそれを示す白いテープが巻きつけられたそれを装填すれば、発射モードをバーストに切り替えて狙いを定めて息を吐く。
周囲の音がぼやける中、M16のアイアンサイトがコックピットに正確に並び、マテオの視界には"泡"が膨らみ、標的以外の全てが意識から消え去る。トリガーを引けば"泡"が弾け、一発目が窓ガラスを破り、続く二発目がコックピットのガラスを容易く貫く。さらにトリガーを2回引けば、アパッチが回り始める。パイロットが無力化したとISACが知らされた彼は銃を下げる。
マガジンを抜いて、落とした方のマガジンに入れ替えて彼は階段の方を見やる。傍らに散らばったオートマタたちを一瞥しながら、ハンターの斧を手に取って何気なく回す。D.C.は掃き溜めでニューヨークの方がほんの少しだけマシだった。だがD.C.でいくつかコツを学んできた。その中には…現代戦においては許容されないであろう内容もあった。
一方、PMC生徒、オートマタといったPMC兵たちは待機しており、上の階からマテオの叫び声が響く。
“グレネード!”
全員が目を閉じて身構えると、床に何かが落ちる音が聞こえた。目を開けるかもしくはのぞき込んだ兵士たちが見たものは、爆発物ではなくちぎれたオートマタの頭だった。
直後に閃光弾が落下する。数秒後に爆発し、未だに衝撃を受けていた者たちは目を眩まされ、他は爆音に襲われる。手すりからマテオは飛び越えて階段の踊り場に着地すると、PMCに向けて連射を叩き込む。生徒のヘイローは点滅した後に消えてオートマタがブルースクリーンとなる中、混乱状態の表示が消える前にマテオはすぐさま遮蔽物に飛び込む。
その遮蔽物に銃撃が降り注ぐが、誰もマテオの位置を把握しておらず、階段に向かって慎重に前進しながらおおまかに掃射する。その位置に踏み入れた一人が叫び声を上げれば、彼はその者の脚を掴んで引っ張り、背中の斧を喉元に向けて振り下ろす。ヘイローが浮かんだそのPMC兵はまるで棒で喉を引っ叩かれたのようにえずく。マテオが習熟している手法だった。
それはさておき、マテオは彼女を掴んで後ろへ転がれば、階段を背にして彼女を盾として使って押し寄せる兵士たちを撃ち返す。カチッと弾切れを示す音がM16からすれば、盾にしている状況ではリロードできないため横に投げ捨てて不可視の銃を持つ。SMGの発射速度でアサルトライフルのパワーで弾幕を放つ。その銃声はカイザー側の銃声でかき消されるのには十分で、次々と兵士たちは倒れていき撤退していった。
一通り倒した後、アダムの鍵に持ち替えて盾にしていた少女の頭に突き付けてトリガーを引き、銃声と共に頭がのけぞり、意識が消えた。
立ち上がってM16をリロードして床に転がっていたダブルバレルショットガンを拾う。レバーを引いてチャンバーに弾が装填されていることを確かめればそれを閉じて、バレルセレクターを操作して問題ないと十分に確認した彼は4階に向けてスキャナーPulseを発射しながら、サイドルームから現れる敵を確認しつつ、遮蔽物の陰に身を隠す。
廊下の反対側の階段から増援が数人来るが、所属企業の使用武器からの銃撃を食らった三人が倒れ、マテオはM16をリロードする。
部屋の扉が突然勢いよく開かれオートマタ一体が距離を大きく詰めるが、ダブルバレルショットガンの餌食になってしまう。一発目で気絶、二発目で背後の仲間が遮蔽物に追いやられる。別の扉が開き、1体のオートマタが慎重に顔を覗かせるが、マテオが弾切れになった銃を投げ捨て、遮蔽物からよろめきながら出てアダムの鍵で撃ちこめば、オートマタの顔にはブルースクリーンが表示される。
ヘイローが浮かんだ兵士が真っ先に突入する。元よりあったその頑丈さのおかげで盾としては完璧だった。当然、マテオはスキャナーPulseのパーツをバンシーに変えて、ウォッチを押し続けて円錐状況の表示を最適な位置に移動するとウォッチから指を離す。Pulseが放たれ、敵が混乱すれば同時に前進し、M16が弾切れになるまで次々と倒していく。しかしヘイローが浮かんだ兵士はまだ倒れていなかった。
彼は彼女の頭にアサルトライフルのバットストックで叩き付け、バックアップブームスティックで撃つ。階段の反対側の廊下の端にある物陰に再び身を隠したが、まだドアの陰に兵士たちが潜んでいたため、彼女の身体を探ってグレネードを見つけ出し、ピンを抜いて階段の方へ投げ込んだ。
階段にいた兵士たちは慌てふためき、爆発。二つのドアが開かれる瞬間を彼は見て、何かが音を立てて転がる。マテオは目を閉じ、イヤーピースが何とかしてくれると祈れば、閃光弾が爆発。兵士たちは退き、不可視の銃を手に持ったマテオは顔を出してなぎ倒していく。
近づきすぎたオートマタを掴みながら、マテオは角を曲がって階段の上まで引きずり込む。斧で首と音声ボックスを切り、放そうとした時、オートマタの脇に爆発物が入ったバッグが結びつけられていることに気付く。手を伸ばしてグレネードのピンを抜き、オートマタを手すりから下の階の踊り場目がけて放り投げる。同時に身をかがめて壁に寄りかかり、近づく敵を次々と撃ち倒し、敵の猛攻をなんとか凌く。
まるでハイエナのグレネーダーのバッグやスーサイドベストを着たアウトキャストを撃った時の連鎖爆発が発生した後、マテオは別のM16を拾い上げて敵の身体から弾薬を回収する。
バンシーからスキャナーに変えて、うなずきながらウォッチをタップしてスキャナーPulseを放ち、盾を持って押し寄せる敵の姿とその後ろには一列に並ぶスナイパーの姿が表示される。
“よし、この程度なら楽勝だ。”
ここはCDCやコニーアイランドではないが、それでも弾薬を補給できる場所があるはずだ。右側のドアの向こうには武器庫のようなものがある。
そして一つ、とあることを忘れてはいないだろうか?
窓を見つけ、アダムの鍵で窓を破った後、フレアを手に取って窓から投げ出す。
そう、援軍の要請だ。
スキャナーからバンシーに変えて、彼は一歩踏み出す。