森の肉の怪物   作:ななば

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二ヶ月ほど更新しなくて本当すいませんでした。
展開に迷ったりカクヨムでオリジナルの方を書いてたりしてました


死闘を終えて

 

 

 

「はっ、はっ、はっ………!!」

 

走った。

ゴライアスを倒した十七階層から、十六、十五と階層を駆け上がって、地上に出た。一心不乱に向かうのは自らの拠点(ホーム)。寂れているが安心できる、女神と自分の帰るべき家。

 

逃げ出した。

走るシアの頭に浮かぶのはさっきの戦いと、ロキ・ファミリアの面々。そうだ、自分は彼らから逃げ出した。

混乱の目、疑惑の目、何かに縋るような少女の目から逃げ出したのだ。

 

────怖かった。

彼らの目が、その表情がなによりも苦しかった。

一部のロキ・ファミリアの団員の表情には、見覚えがあった。異端の力を見た時の()()()()()

それは幾度となく味わってきた、視線だった。

 

 

 

『ああああああああああァァ!?』

 

 

殴られ蹴られ斬られ焼かれ潰され食いちぎられ抉られた。苦痛に塗れた過去の記憶が甦る。

 

 

 

「…………っ…」

 

分かってる。

彼らはあいつらとは違う。あの時だってゴライアスと戦っていた僕を、助けようとしていただけだ。

何も危害を加えようなんてしていなかった。

分かってる。はずなのに。

()()()()()()()()()()()()()()

 

「……逃げなきゃ…」

 

思わず呟いたその考えに従って、ゴライアスとの戦闘でとっくに疲弊しきっていた身体を無理にでも動かして街中を駆け回る。

そんなものだから、必然的に多くの注目を集める。

道行く市民。これからダンジョンに行くと思われる同業者(冒険者)。露店の店員。そして、街を歩く神様。

 

 

「…うぅ…」

 

その全てが、自分を見ている。そのようにシアは感じた。

シアを見て驚いているのか、それとも汚れたみずぼらしい姿を見て笑っているのか、それさえも今のシアには分からない。

それらが目に入る余地も無いほど、必死であった。

だから、普段ならしないミスをしてしまった。

 

 

 

 

 

「───あっ…!?」

 

「───ッ!?痛あっ……」

 

 

ぶつかってしまった。

丁度曲がり角の、こちらからでは向かってくる人が見えない場所で。

ぶつかってしまった相手は、赤髪の男神。頭には月桂樹の冠を付けている。

 

「す、すいません!!」

 

「いたた…どうしたんだ………っ──!!」

 

赤髪の男神が立ち上がり、シアの顔を見た途端にその目を見開いた。ふるふると身体を震わせて、美男子といえる顔をどこか紅潮させている。

 

「あっあっあ!あの、本当にすいません!!僕…急いでて、だから、その……も、もう行きます!!本当、すいませんでしたあああぁぁ!!」

 

「────────っは!!待って!待ってくれ!!君の名前は!?教えてくれ!!名前をぉぉ!!」

 

そんな男神の様子を見て、ひどく怒らせてしまったとシアは思い。もの凄い勢いで頭を下げて謝罪し、その場から走り去る。

対照的に、男神は逃げていくシアの姿に手を伸ばして、まるで劇に出てくるヒロインのように叫んだ。

 

 

 

 

 

 

「……名前は分からなかったが、()()()()。君の美しく、可愛らしい顔も、いじらしくて守ってあげたくなるような声も、白魚のような手の感触も……」

 

人の居なくなった場所で、男神はでゅふでゅふと不気味に笑う。整った顔を目一杯歪ませて。ただそこで、笑い続けた。

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

「うふ……うふふふふふ……あはははは!」

 

同じように、顔を紅潮させて笑う神がもう一柱。

バベルの最上階に住まう美神、フレイヤだ。

現オラリオの頂点に立ち。常に優雅に、美神らしく振る舞う。

 

それでいて気に入らない物があれば蹂躙し、気にいった物なら自身の手中に収めようとする。

 

穏やかであって、苛烈。

 

自由奔放であって、傲慢。

 

ある意味では最も神らしい神である。

そんな女神であるフレイヤが、笑っている。決して優雅に笑っているのでは無い。妖艶に艶麗に笑っている。

その姿はまさに、男の情欲を掻き立てる美の女神そのものであった。

 

「ああ……なんて素晴らしい、なんて愛らしいの……」

 

艶かしく、フレイヤはそう口にする。

自分があの時見た魂の輝きは、見間違いではなかった。ゴライアスとの戦いをその目に焼き付けとき、そう確信した。

本来戦争遊戯(ウォーゲーム)でしか使用を許可されていない『鏡』を持ち出して見た甲斐があったというものだ。

 

傷付いて、抉られて……それでもなお立ち上がり、試練を成した。その姿の、なんと美しいことか。

シアがゴライアスの首を斬り飛ばし、勝利した瞬間。フレイヤは()()()さえいた。

 

………もう良いんじゃないだろうか。

あの輝きを手に納めても良いんじゃないか。

 

 

「……いえ、まだダメよ……」

 

そこまで考えて、フレイヤは自らの考えを破棄する。

そうだ、まだだ。まだダメだ。あの子には『ハルティア・ファミリア』が必要だ。

あの子はまだ幼い子供だ。魂の状態を見るからに他者からの愛や居場所に飢えている。

そんな状況であの子を連れ去ってしまえば、それはあの子から全てを奪ってしまうことに他ならない。

 

そうしてしまえば、あの子の魂が壊れてしまうかもしれない。美しい花を自らの手で折ってしまうなど、最もあってはならないことだ。

 

「頂くなら…あの子が英雄として育ち切った時ね…」

 

フレイヤはどこか名残惜しそうに、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 

 

 

 

「只今……帰りました……神様」

 

「あ…!シア君…おかえりなさい──!!」

 

 

街の隅にあるボロ屋敷の扉を開け、聞き馴染みのある声を聞く。

シアは部屋内に響く主神の声を聞き、自分が帰ってきたのだと改めて安堵した。

逆に女神であるハルティアはシアの様子に気付き、不安を感じた。生まれたばかりではあるものの、主神である彼女はシアの微細な感情の機微を捉えていた。

 

「シア君…なにかあったのかい…?それとも、どこか痛かったり?」

 

「あ…いや、全然!なんてことないですよ!どこも痛くないですし、今日は良いこともありましたし!」

 

「そ…そうかい?…」

 

なんでもないようにシアはそう言った。本当は『異端の力』がロキ・ファミリアにバレたり、急いでいて男神とぶつかったりとあったが。以前からハルティアを心配させているため、これ以上心配させられないという思いから、問いを誤魔化した。

 

「…まぁ、なんでもなくて良かったよ、最近じゃエルフを狙った通り魔なんて起こってるみたいだからね…気を付けてくれ…」

 

「分かってます。それと神様、ステイタスの更新をお願いしたいんですが……」

 

「ん、ああ、分かったよ、やろう♪」

 

シアは服を脱ぎ、いつものベッドにうつ伏せになって、ハルティアはシアの白い背中に神血(イコル)を垂らす。

レベル2になった近頃のシアにとって、それは変わり映えのしない行為になっていた。成長したからか、レベル2から3に上がるのはそれほど難しいということなのか、ステイタスはあまり上がらないことが多かった。

 

 

 

 

「────さーて今日はどれほどぉ!?あ、ぇ…?」

 

だが、今日は()()をしてきたのだ。

 

「嘘……うそうそぉ!?だって最近伸びてなかったとはいえ、早すぎというか、伸びすぎというか!」

 

魔法に、培ってきた駆け引きに、全てを総動員させて勝ってきたのだ。

だから、今日この日は。

 

ランクアップ……できるようになってる…!?」

 

 

 

報われるはずだと、胸に期待を込めたのだ。

 

 

 

シア     ランクアップ可能

Lv.2

 

力:E421→B721

耐久:E400→S943

器用:H198→F308

敏捷:D551→C684

魔力:l80→H103

狩人 : l

【魔法】

 【リーヴァディナーヴァ】

二重魔法(デュアルスペル)

・詠唱追加により効果変動

第一魔法(ファースト・スペル) 魔法生物召喚

対象のステイタスはレベルに依存

第二魔法(セカンド・スペル) 広範囲回復 使用する精神力(マインド)の丈により効果上昇

 

 

 

【スキル】

肉生骨蝕(メーサ・カルヴィル)

・対象負傷後、苦痛と引き換えに再生

・対象の負の感情の丈により効果向上

 

肉食複製(メーサ・ルヴァ)

任意発動(アクティブトリガー)

・対象の身体器官の複製。

・力、耐久のアビリティ中補正

・対象のレベルの丈により効果向上






◼︎耐久がめっちゃ上がったシア君
理由はゴライアス戦で致命傷を受けまくったが再生したため、ちなみにシア君の再生は何十回と連続して使うと治りが遅くなっていく(インターバル置けば元通り)ので、余りにも力に差がある相手には対抗できない

◼︎ヒント:シア君は美少女と見間違うほどの美少年

今回で邂逅、迷宮、討伐編は終わりです。次回からは間話を挟みます。

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