ごんぎつね、可愛いですよね
悪戯っ子で、ケモノで、子狐で…
かつて私の癖を歪めた、そんな子への想いを出力しました
既出だったらすみません
「ざぁ〜こざぁ〜こ、髪だけじゃなくて記憶力スカスカ
昔の栄光を語る事もできない♡」
「こっ、このガキっ!」
これは、僕が小さいときに
村のスカスカなお爺さんから聞いた話だよ。
むかしはこの村の近くの『禿山』というところに
ちっさぁ〜なお城があって"禿山"と呼ばれる
落武者みたいなオジさんがいました。
そんな所から、少し離れたところに
『ごんぎつね』というキツネがいました。
ごんはひとりぼっちだけど
毛並みが美しいメスのガキギツネで
おじさん達とは違ってフサフサな森の中に
でっか…なアナを掘ってくらしていました。
そしてどんな時でも悪戯をたっくさ〜んしたのです。
東にゼンマイに憧れるネズミあれば
『隣の芝生は青い♡
なーんにも知らないのに幸せと思い込む愚劣♡』
と煽り
西に毛を抜く老婆あれば
『シワシワのオバさんが抜いていいなら
ワタシも抜いていいよね♡』
とただでさえ少ない髪を毟り
北に標本を壊した少年あれば
『ちっぽけなプライドのせいで納得できない♡
オトナの対応に逆恨みしかできない、こ ど も ♡』
と純粋な心をつつき回し
南に葬式の列あれば
『昔の罪を隠してシャアシャアと…
おじさん、性根が死体みたい。くっさぁ♡』
と過去の傷を抉り
アメにもワカラセにもマケズ
いろんなことをしていました。
ある秋の日、雨が二、三日降り注ぎ
更にぴっかぴっかなおじさん達のツルツルで
昼と夜が消えてしまい
ごんは悪戯をできませんでした。
暫くするとお日様が
守るものがいない頭皮を突き刺しているのを見て
ごんはほっとして アナ からズルっと出て来ました。
空はテカテカ晴れていて
おじさん達の汚い声が響いています。
ごんは村の小川のちっっっさぁ〜い本堤まで来ました。
あたりのススキの穂には、
加齢臭たっぷりのこびりついた脂汗みたいに
水滴がテラテラと煌めいています。
雨のせいで、夏の中年の服みたいに
びっちゃびちゃな泥んこを歩きながら
ごんは川下へと向かって進みました。
『あっアレは…♡』
次はどんな悪戯をしようかと周りを見渡すと
『雑魚雑魚乃兵十だな♡』
大好きな兵十がボロ臭い服を着て
川の中でナニかゴソゴソしていました。
いつもならすぐに煽りに行くところですが
何か様子がおかしいです。
ごんは草に隠れながらじっと見つめていました。
しばらくすると兵十は筒の様なものを手に持って
川から上がってきました。
ごんが隠れている草と草の隙間からは
白いきらきらしたものが見えました
それは、うなぎのお腹でした。
兵十はその筒をビクッの上で逆さまにすると
フクロの口を縛り、土手の上に置いてから
どこかに行ってしまいました。
兵十がいなくなると
ごんは草の中からヒョイっと飛び出し
兵十のビクの中を覗きました。
イタズラがしたくなったのです
『兵十…どんなことをしてやろう♡』
ごんは兵十に恋をしていました
好きな子にこそ悪戯をしたいタイプですが
種族差すら厭わない純情ギツネだったのです。
ビクの中を覗きながらしばらく考えてると
『お"っ…しまるっ…』
突然、ぶっといウナギが首に巻きつきました。
その瞬間、遠くから
『このナマイキな悪戯女狐め!ナニをしている!!』
と兵十の大声が聞こえてきました
『う"っう……どう、しよう』
このままでは分からされてしまいます
普段ならそれも受け入れていましたが。
このときのごんは冷静ではありませんでした
振り落とせないうなぎをそのままに
がむしゃらに走って逃げてしまったのです。
さんざん走って、だれの声も聞こえなくなり
ようやく落ち着いたところで
ごんはうなぎの頭を噛み
やっとの思いでひきはがしました
一九日ほどたって
いつも通りごんが煽る相手を探していたところ
いろんな家で、
少ない髪の毛をとかしているおじさんや
くっさぁ…な歯におはぐろをぬっているおばさんがいました
『今日はお祭りかな、でも尺八とかの音が聞こえないな』
こんなことを考えながら歩いていると
いつのまにか、兵十の荒屋の前に来てました
なんでかたくさんの人が集まっています
みんなしてよそ行きの着物をきて
何かをぐつぐつと煮ていました
『葬式…?』
ごんはそう思いました
『兵十じゃないといいけど…』
想い人に何かあったのではないか
そんな考えがとまらず、小さな心臓をドキドキさせて
ごんは、進んでいく葬列をじいっと見てました
やがて墓地の近くまできたころ
やっと兵十が見え、ごんはほっとしましたが
いつもは大好きな兵十の元気な、赤い顔が
今はあまり見たくない
血が引いたようなしおれた顔になっています
『…死んだのは、兵十のお母さんなんだ…』
ごんはそう思い小さいのに重くなった頭をそっと下げ
自分の穴に帰りました
『きっと、兵十のお母さんはうなぎが最期に食べたかったんだ』
『兵十が、わざわざうなぎをとっていたのはお母さんのためだったんだ…』『わしは兵十の、最後の親孝行を台無しにしちゃったんだ』
『どうしよう、どうしよう…』『わしは、親と満足に別れられない苦しさを知っていたのに…』『兵十にも、同じ苦しみを与えちゃったんだ…』
『あんなこと、しなければよかった…』
『兵十…』
つぎのひ、イタズラする気にも煽る気にもなれず
何をしたいわけでもないのに
ごんは再び兵十の家まで来ました
さびれていながらも親子の微笑ましい会話で
悲壮感は無く、羨ましいとまで思った家には
今はただ、兵十が麦を研ぐ音だけが響いています
『わしと同じ…同じにしちゃった、ひとりぼっちの兵十……』
そんな時に
『オジサンの安売りだあい、イキの良いオジサンだよ!』
ごんはそんな声のする所へと向かいました
見れば、知らないおばさんが魚を買っています
ごんはその隙をついて魚を3匹盗み
兵十のもとへ戻って家に投げ込みました
独りよがりな償いではありましたが
ごんは、何処か頭が軽くなったような気がしました
次の日
汗水垂らしながら働くおじさん達を横目に
ごんは山でたっくさんのクリを拾いました
そのまま兵十の家に行くと
兵十は前よりも更に元気がなく
箸を動かすのも億劫な様子で昼餉を食べてました。
『なんで、なんでだよぅ…
…だれがおれの家に魚を投げたんだ…
なんで、こんな目にあわなきゃいけないんだよう…』
よく見れば、頬のあたりに青いあざがあります
『ち、ちがっ…わし、そんな、つもりじゃ』
ごんは己の愚かな行為を恥じることもできず
誰かが聞いているわけでもないのに
弁明をしようとしましたが
一刻も早く重くなった頭を軽くしようと
逃げるように物置の入口にクリをおいて穴にかえりました。
ごんは次の日も、その次の日も、それまた次の日も
ただひたすらに山を駆け巡り
おっきいクリだけでなく、ぶっといマツタケも加えて
兵十の家に置いてきました。
それでも、頭の重さは変わりません。
月がザラザラな肌を見せられず
隠れている真っ暗な晩のことでした
ごんはあいも変わらず頭の重さに悩まされています。
自慢のキレイな毛並みもひどい有様で
寝ることもできずに外をフラフラと歩いてました。
『どうしよう…どうしよう…』
そんな時、この夜に相応しくないぼんやりとした
灯が見えました
ごんは、思わず草むらに隠れました
虫の鳴く音があたりに響く中
誰かの話し声も大きくなってきます
『なぁ、最近妙なことがあるんだ』
『どうしたんだ?兵十』
兵十でした、ごんの小さな心臓が
音を増していきます
『いやな、おれの家に何でかな
クリとかマツタケとか…誰かが置いていくんだ』
『ウソじゃあないんだ、何でだと思う?』
自分がやっていることだ
ごんはそう思い、話に更に集中します
『オラに聞かれてもな…誰なんだ?』
『それが、分からないんだ
姿も形も見えなくて、気づけば山のものだけがあるんだよ』
『それなら、神さまのおかげに違いない』
『神さま…?』
『お前は…その、今苦労しているだろう?
きっと哀れんだ神さまが恵んでくれてるんだよ』
『そう、そうかな…』
ごんの頭が更に重くなりました
元を辿れば自分が原因なのです
それなのに
兵十の話を聞けば
自分の償いが神さまに取られたようで
つぐないすら出来ないと言われているようで
光一つない夜の中
何も反射しない水の粒を残し
ごんは静かに巣穴へと戻りました
『…でもな、狐の毛がいっつも残ってるんだ』
『ここの神さまは、お狐さまじゃないのに…』
つぎのひ
もはや何のためにしているかわからないまま
ごんはまた
集めた山の幸を兵十の家に持ってきました
いつもは分からせに敏感なごんですが
この日は、頭の中の泥が思考を曇らせてました
そのとき、兵十は物置で縄をなっていたのです
『……あの女狐……』
ごんは兵十に気づかないまま物置に入ってしまい
『…えっ!?』
そのまま兵十に縄で捕えられてしまいました
そして……
ここまでだよ
お爺さんのスカスカな頭じゃ全部覚えてなかったんだ
え?ごんがどうなったかって?
えっと…その後兵十を怒らせちゃって
兵十の鉄砲で何回も何回も
分からせられたんだって
お爺さん、最後だけは覚えていたんだ
じゃあね!!
そう言って友達の元へ走る少女の頭には
綺麗な狐色の耳が揺れていました
ここまで読んで頂きありがとうございます
思ったよりもごんぎつねってシリアスで
書いてて筆が折れかけました
メスガキで中和し切れた気がしないです
でも私の癖を共有したい一心で書き切りました