「リヴェル様はアタイが看病するから! 放しなさいよ!」
「私が看病するって言ってるでしょ! そもそも貴方は誰なの!」
「く、首が……締まってる」
気が付いた俺はティアの腕をタップする。
慌ててティアは首から腕を外して、申し訳なさそうに謝った。
「ごめん、リヴェル様。この子が急に邪魔してきてさ」
「何が邪魔よ! 私がベットに運ぼうとしたらそっちが邪魔してきたんでしょ!」
「二人ともありがとうな、少し働きすぎたみたいだ」
ハヤテにティアを紹介すると頬を抓られ怒られた。
「何処から連れてきたんだよ! 女の子ばっかり拾ってきてこのスケベ!」
「リヴェル様、この子は使用人なのかい? ピリノちゃんとは違うみたいだけど」
ハヤテは「私はピリノの親友なんだから!」と謎のマウントをティアにしている。
「ティアはカザリームの居城で拾った仮面の中にいたんだ。そういやハヤテに言ってなかったな……なんかあの時はシズさんを生き返らすことで頭がいっぱいだったから……すまんな」
「むぅ~カザリームの配下の人? 危険じゃないの? リヴェル」
「カザリームじゃなくてセシリア様だよ! なにさ、悪人みたいに言わないでほしいわね」
「あーハヤテを重症にさせた可能性がティアにはあるんだよね~記憶は完全にないだろうけどさ」
俺の言葉に二人はピタリと停止し、お互いの顔を見合わせる。
「確かに身長はこのぐらいだったような? 記憶がないってことはティアは操られていたの?」
「それは本当にごめんなさいハヤテ! アタイは死んでたときの記憶はないみたいなんだよ……ごめん」
「妖死族からエルフに戻すと記憶が統合されずに、生前の記憶しか持たないみたいなんだよ。記憶は脳に宿るのか魂に宿るのかって話なら、脳が消えたら記憶も消えたって事の証明なんだけど」
「難しい話はしないでいいよリヴェル……うん、ティアを許します。これで怒ってたらピリノに呆れられちゃうよ」
俺はついでにセシリアの事も話して、レオンとの争いの原因もハヤテに教えた。
「リアは肉体が戻れば国に帰るだろうし、ティアも一緒にジスターブに帰国する。なのでティアはうちで暫くは居候をすることになったんだよ」
「わかったよ、よろしくティア」
「うん、よろしくねハヤテ」
俺は廊下から起き上がり、フラフラとする体を壁を支えに起き上がる。
「人間形態だと疲労が溜まりやすいのかな? 頭が重いわ」
「スラぼうとサスケも何か色々作業してるんだから、リヴェルは休んだら?」
「そんなに色々していたのかい……そりゃぶっ倒れるにきまってるじゃん」
並列存在の事をハヤテがティアに教えた所為で呆れた顔で俺を見ている。
「美味しい料理を作って、旨いコーヒーを飲む。そんな当たり前の日常に戻りたいだけなんだよ俺は……うん、そうだな。スラぼう達に任せて少し休むとするよ」
「そうしなさい、心配かけると冒険者ギルドにいる茜姉が飛んでくるわよ?」
「あーあの強そうな鬼人だね」
俺はティアにオベーラの事を尋ねると俺に回復法術を使ったあとは、介護を任せてコルヌに色々常識を教え込むみたいで地下室に移動してるらしい。
自室に帰ると作りかけのトリケラトプスの人形が目に入った。
「こいつもベルのために早く仕上げないとな……いやいや、休息するんだって」
ベットにごろんと横になると、窓の外からヒマワリ達が心配そうに覗き込んでいる。
「大丈夫だよ、少し疲れてるだけだから」
欠伸をして目を閉じると、リムルが部屋に置いてある次元門から現れた。
「ごめん、リヴェル寝てた? ちょっとランガ置いていくな、じゃ!」
「ううぅ~~あんまりです主~!」
「えっ!? あ、うん。気を付けてな」
泣いてるランガから色々事情を聞くと、リムル達をずっと背に乗せたまま移動や戦闘を全部ランガがこなしていたようで……。
リムルが「冒険してないじゃん!」とランガを影に戻したが、結局シオンと張り合うせいで影から出てしまい、勇者パーティーを追放されたようだ。
「仕方ない、お前の好きなコカトリスの照り焼き作ってやるから泣くのはやめろ」
流石にそのサイズでワンワン泣かれると煩いぞランガ。
「ううぅ~ワオォーーーン! シュナもシオンも我を邪魔者扱いしてひどいのですリヴェルさまあああぁ~!」
俺はランガの顎下をわしゃわしゃと撫でてやり、キッチンで照り焼きを5枚焼いてあげる。
シュナの計画通りの悪い顔を思い浮かべながら、食べ終わったランガの口周りを綺麗に拭いてやると、へにょった尻尾が元気よくピンと立つ。
地図で確認するとリムル達はすでにドワルゴンから西へ移動を開始していた。
進化したランガの速度だと二日もあれば森を抜けてドワルゴンに到着するから、そりゃ冒険にはならないだろうな。
「廃坑の場所は北西だから……この辺りだな。徒歩だと五日くらいか? でもなにか乗り物を手に入れたようでリムル達の移動速度が速くなってる」
「我の方が速いのに……ガジガジ」
骨を齧って不満を零すランガに俺は苦笑いを浮かべる。
「あー兄さんだけ美味しいもの食べてる!!」
「なんだ風音か……お前はいつもリヴェル様から色々貰って食べてるだろ」
綺麗に舐めとられた皿を羨ましそうに見つめる風音。
「兄さんが罰としてりんごを禁止にすればいいとか、リヴェル様に余計なこと言うから何も作ってもらえないのよ!」
「リヴェル様がお優しいのをいいことに護衛をさぼるお前が悪い……ガジガジ」
何も? りんごを作らないだけでナシのタルトを昨日食ってたよな?
「りんごは暫く禁止だ! 反省しなさい」
「わおぉ~~ん! なんで兄さんはリムル様と冒険に行ったくせに帰ってきてるのよ」
骨を齧ってたランガが不貞腐れて横に倒れてしまった。
「それはランガには禁句だぞ風音……暫くそっとしてやれ」
「もう! めんどくさいわね」
尻尾を地面にビタン、ビタンと叩きつけるランガの顔を前足でグリグリする風音。
数日はランガと散歩したり、風音と様々なドライフルーツを作って楽しんだ。
「リヴェル様~ただいまー! 冒険者ギルドの偉い人連れてきたよ」
「ゴブテ、フューズさんだよ。ただいま戻りましたリヴェル様」
「リヴェル様ただいまっす! もうお腹ペコペコっすよ~皆早くゴブイチのところにご飯食べに行くっすよ!」
「帰っただよ、リヴェル様。庭にお土産のでっけー蜘蛛を置いてるから皆さんで食べてな」
「うん、皆お疲れ様。フューズさんは議事堂? 冒険者ギルド?」
「いえ、閣下すみません。こいつらが家に直接いけば旨いものが食えると煩くて」
ゴブタ達の後ろから、フューズさんが頭を下げながら現れた。
その後ろから順番にカバル、ギド、エレンが元気よく前に出てくる。
「おう、久しぶりだなリヴェル。スライム姿も久々見たわ」
「リヴェルの旦那もお変わりなく、元気そうでなによりでやす。暫く世話になりやすよ」
「リヴェル! エルちゃんとどういう関係! 最近リヴェルの話ばっかりするの! 親友が悪い男に引っかかった感じがするわよぅ」
「久しぶりカバル。おう旨い酒もあるからゆっくりしていけギド。エレンはお菓子抜きな」
なんでぇ~! と煩いエレンを無視していると呆れたフューズさんが言う。
「お前達……話したよな? リヴェル様はグランドマスターで一番上のボスになったって」
「そりゃ聞いたけどよ、リヴェルはリヴェルだぜ? この程度で怒らないってギルマス」
「そうでやすよ、堅苦しい方が嫌がるでやすよ旦那は」
「エルちゃんはリヴェルは優しい人って言ってたわよぅ! だから私のお菓子抜きとか悪逆非道はやらないよねぇ!?」
あっ! そういや試したいことがあったんだ。
俺はエレンにモシャスするとハイエルフになる。
最近ガゼル兄貴やシルっちにモシャスしてたら、エルフやドワーフにモシャスしてもハイが付くようになってしまったんだよね。
急にカバルやギドは跪き頭を下げる、エレンも姿勢を正して綺麗な礼をとってしまう。
「ど、どうしたんだ!? お前達、急にかしこまりやがって」
「やっぱこうなっちゃうのか……高位存在はこういうところが不便なのよとエルさんが言ってたもんな」
三人がジトッとした視線で俺を見つめてくる。
「体が自然と動くんだからやめろよなリヴェル。あともう少し力を抑えろ」
「あっしも自然と力が漲るでやすよ。でもリヴェルの旦那の風は心地いいでやすねぇ~」
「なんでリヴェルなんかに頭をさげないといけないのよぅ! もぅ~その可愛い姿やめなさい」
「悪かったって……うちにいる子には効果がないみたいでカバル達で試したかったんだよ、ごめん。あ~フューズさん気にしないでくれ、カバルとギドとエレンとお遊びで演技してたら皆癖でやっちゃったんだ」
精霊力って抑え方がわからん……。
フューズさんや人間には心地よい精霊の暖かさしか感じないようだが、ティアが言うにはずっと風が渦巻いてる感じらしい。
ゴブテ達はじゃーねと手を振り去っていく。
残った連中には旅先の疲れもあるだろうから温泉へ案内した。
俺はすでに解体された蜘蛛足を道具に仕舞っていく。
「私一人じゃ寂しいからリヴェルも入りなさいよ」
「俺は夜に入るからいいよ、髪長いから洗うのめんどくさいし」
問答無用でエレンに連行されると脱衣所で裸に剥かれる。
裸のエレンに湯浴み着を渡そうとしたら「いらないわよぅ」と言ってタオルで自分の髪をパッと巻くと素早く抱きかかえられて湯船に沈められる。
「リヴェル、アイスだして。温泉に浸かりながら食べたいの!」
「はいはい」
「いや~極楽ですな閣下、酒も旨い!」
男湯の方からフューズさんが楽しそうに話しかけてきた。
男三人で冷の日本酒を飲んで温泉を満喫しているようだ。
「話もあるんだからほどほどにね? まー明日でもいいけど」
「はっはっは! 面倒な案件は一つありますが、差し迫った問題ではないですよ閣下」
「リヴェル! なにこれ飲み物の上にアイスなんて溶けるじゃない!」
「フロートなんだからそういうものなんだよ。炭酸のオレンジジュースを飲みながらアイスも食べるんだよ」
美味しい! でもとけちゃう~! とせわしないエレンを放置して湯船からなんとか上がり、桶に座る。
「この年になってシャンプーハットが欲しくなるとはな……」
オベーラにいつも洗ってもらってるから自分ですると大変だ。
エレンに湯船に放り込まれたせいでタオルで髪を縛る暇もなかった……濡れてしまったのでついでに洗おう。
「ほら、私が洗ってあげるわよぅ」
「いや、いいよ恥ずかしい」
「女同士で何を恥ずかしがってるのよぅ……何! このモチモチ肌……クッ」
家族は見慣れてるけどエレンの裸を見るのは恥ずかしいんだって!
おっふ、エレンは人の髪を洗うのが上手いな。
手つきが優しくて凄く心地よい。
気持ちがええわよぅ~ふぁ~~。
「あっ起きたリヴェル? 気持ちよさそうに寝てたわねぇ」
エレンに膝枕されていたようで、全員が浴衣に着替えて離れの客間で寛いでいた。
「閣下もお疲れだったみたいですね。私も少し仮眠させてもらいましたよ」
カバルやギドも客間で布団も引かずに縁側に足を出して寝ていた。
「ごめん、ごめん。夕飯まで少しあるし、話をすませようかフューズさん」
俺はテーブルに冷たい麦茶を三人分用意して座る。
「では報告から始めます」
フューズさんが軽く咳ばらいをすると話し始めた。
冒険者ギルドから直接ポーションを買い取りたいと国側から交渉を持ちかけられた事。
ブルムンドにあと二つある小さい冒険者を支援しても構わないかの確認。
そして最後は……。
「サリオンにつてがある閣下にお願いなんですが……。ベルヤードの奴が困っていましてな。重罪人のカザック子爵を引き渡せと十三王家、サントハイム家から要求がありまして」
事情を知ってるエレンの眉間に皺が寄る。
実際にエルフを奴隷にしたりとやりたい放題だからな。
ブルムンドは事情を把握していないのか?
はいそうですかと自国の子爵を差し出せる訳もなく困ってるってところか。
「ベルヤード大臣はカザック子爵の身辺を調査したりは?」
「大臣職とはいえ男爵の権限では子爵に調査は厳しいかと……王が早馬を出して子爵の使者から聞いたそうですが、カザック子爵は身に覚えがなく無実を訴えているそうで」
イリーナの性格ならネヴァンさんのためにも、そのままにはしないだろうなぁとは思ってたけど。
俺はエレンの顔を見るとこくりと頷いたのでフューズさんに話す。
悪魔の事は話を端折ってカザック子爵が発端で始まり、国同士が争わないように俺達が頑張った事をフューズさんに教えた。
「実はなフューズさん……って事があってエルフの奴隷は違法だし、民の扱いも滅茶苦茶だぞ? 重税で払えなくなった親は見せしめに殺したあと、奴隷にできる年齢は奴隷にして小さい子は森に捨てている。子供はうちで保護しているから安心してくれ」
森で衰弱した子供達を見つけて保護したゲルドの怒りも買ってるから、ろくな死に方をしないぞあいつ。
「待ってリヴェル! 東の犯罪組織の関与はきいてないわ!」
西側でエルフが違法に売られてることは知ってるけど、帝国の
「国同士の争いにしないために穏便にすると思ってたけど、しないってことはサリオン側もこの情報は掴んでるはずだぞ?」
「閣下、これ国が亡ぶ案件じゃないですか……。なんとか我が国を助けてくれませんか?」
フューズさんは小国の我が国に内政干渉をかけてくるのは、何か罪をでっちあげて譲歩させたい要求があるのだと軽く思ってたらしい。
「いや、サントハイム側も子爵を寄越せば不問とするって意味だと思うから、国は滅びないでしょ? もっとも、ブルムンド王がカザック子爵を庇わないことが前提にはなるけども。うちもジュラの森に住むエルフが被害にあってると思うから他人事じゃないんだよ。こっちも動いてはいるけど警察機構も整ってないし、他国までは中々手が回らないんだ」
勇者マサユキがいたらなぁ~簡単に見つけて解決してくれるんだが……イングラシア中をしらみつぶしに探すのは厳しいぞ。
「恐らくイリーナはカザック子爵の身柄を餌に、取引先のエルフを密輸してる組織を炙り出したいんじゃないか? ブルムンド王に貸しを作った上でお前んところで自由に行動させろって意味合いもあるだろうし」
「でもそんな事を国に要求したらカザック子爵に証拠をもみ消されちゃうわよ?」
「すでに証拠は押さえてるからイリーナが動いてるんだってエレン。身柄を移送中に襲い掛かる奴を捉えるもよし、暗示や洗脳魔法で洗いざらい情報を吐かせるもよしって思惑なんだよサントハイム側は」
途中から起きてたカバルやギドも知っていたようで、知らなかったのはエリューンお嬢様だけだった事実に口をとがらせ拗ねている。
「ベルヤードにすぐに伝えなくては!」
「大丈夫だってフューズさん、証拠はすでにブルムンド側にも流してるはずだよ。賠償金や脅しもなく身柄だけを要求してるんだ協力体制をとってるはずだよ」
ギドの方をチラリとみると苦笑いを浮かべて小さく頷いている。
ガバッと立ち上がったフューズさんが再び腰を下ろしてため息を吐く。
「閣下がこの件にすでに手を打っていたので?」
「いや、俺は別件で探ってただけだよ。サントハイム家が事故に見せかけて子爵を暗殺して終わると思ってたんだが……サリオンが帝国の影に気づいちゃったのかもね」
「我が国に責を問うより、帝国への協力体制を取ってくれたのは助かった……心臓に悪いぜ」
俺の眷属のスライム達が盗み聞きしてる情報も、ブルムンド王が兵を向かわせたと報告が冥ちゃんから届いた。
「ブルムンド王が子爵を捕まえるのが先か、他国へ亡命する所をあのマッチョ婆さんが捕まえるのか楽しみだな」
「リヴェル……お前どこまで読んでたんだよ?」
「別に読む必要なんてあるのか? 小物過ぎて犯罪組織の痕跡なんて絶対でてこないよ、イリーナには悪いけど」
イリーナが子爵をぶん殴ってネロさんやネヴァンさんの仇を討てたら終幕でいいと思う。
あの純粋で真っすぐな娘に裏社会の汚い部分は見せないでほしい。
まあ、ブティさんやパトがいるから大丈夫だろうと思うけど。
エキドナが三人を吸収してケロベロスを作っていようが関係ない、ザラキーマを覚えたら組織ごと全滅させてやる……クックック。
「エルちゃんにそっくり……悪い顔ね」
「絶対にろくでもないこと企んでる顔でやすね……」
「ご主人様~お手紙きてましたよ~! あっ……お客様。申し訳ございません」
ペコペコと周りに頭を下げるピリノから手紙を受け取る。
【お母様がそっちに行ってない? すぐに帰るように伝えてほしいの。聞いてくれたら、お礼に良い情報をあげるわよ? 追伸、シーフードカレーが食べたいわ。エレちゃんが食べてるアイスもお願いね】
俺はスライム通信の口に情報ってエキドナの事? オルトロスの事? と書いた手紙を入れる。
結界に引っかからない小さい次元門に、作り置きしてあるシーフードカレーとデザートは皿を回収後にとメモを入れた。
「あっ! そうやってエルちゃんを餌付けしてるのね! 私も餌付けされたいわよぅ!」
「馬鹿な事をいってるんじゃないよエレン。夕飯はカニ……じゃなくて蜘蛛鍋にするぞ」
「「「「く、蜘蛛~~!!?」」」」
「いや、気持ちはわかるけどすげーうまいぞ? ナイトスパイダー」
「「「「な、ナイトスパイダー!!?」」」」
煩いな……あ~そういやA-級だったなコイツ。
ゴブエモンもゴブタも普通に狩ってくるから忘れてたわ。
庭先に巨大な鍋をだして、蜘蛛を放り込んでいく。
ダシは蜘蛛の甲殻だけでいい、こいつは昆布も入れると味がくどくなるからな。
「シメの雑炊も食べたいし、ご飯も炊いとくか」
「見た目は最悪だが、匂いはいいな」
「リヴェルの旦那が旨いっていうなら間違いないでやすよカバル」
「ホブゴブリンが簡単に狩ってる違和感になぜ気が付かなかった……俺は!?」
まあ、うん。ゴブリン四天王はのほほんと狩りをするから緊張感の欠片もないしね。
エレンは鍋の中の蜘蛛と目を合わせないように両手で顔を塞いでる。
すまんなエレン。頭は良いダシがでるんだよ。
「よし、できたぞ! 熱いから気を付けて食べろよ」
はーい! といつの間にかうちの家族が並んでおり、甲殻から外して切り分けた身を次々に皿にのせていく。
「ハンゾウが皆を呼んでくれたのか?」
「違いますよ? 盗賊の鼻も茜姉様の鼻には敵いませんからね、あはは。もうすぐご飯よと教えてくれたんです」
茜……冒険者ギルドからうちまで何キロあると思ってるんだい?
「ふっふっふ! あのときみたいに果物だけのご飯は嫌ですからね! 頑張って健啖者を鍛えましたわ!」
「食い物の恨みは恐ろしいんだからねリヴェル様! はふぅ~幸せの味だよぉ~」
茜と葵が文句を言いながらも、美味そうに身を食べている。
フューズさん、カバル、ギド、エレンは無言モードに突入して、皿に盛った蜘蛛カニを無我夢中で貪っている。
ミラノとティアも仲良くなったのか楽しそうに話をしながら食事を楽しんでいた。
茹でた身を氷水に入れて引き締めたあと、ゆず醤油で食べようとしている俺に三人娘が突撃してくる。
「自分だけ美味しい食べ方をしてずるいんだよ!」
「父上、ベルもそれ食べてみたい」
「私も味が気になります、ご主人様」
「ん? いや、こういう食べ方は大人にしかわからん味になるからな……ほれ」
ベルの口の中に箸で運んでやるとむむむぅと良くわからない顔をする。
「だから言ったろ? 普通に湯がいたクモカニ食べとけって、雑炊もあとでするから」
「わ、私は大人だからこういう味はわかるわよ! うん、美味しいと思うわ」
「う~ん。普通に湯がいた方が美味しいかな?」
興味を無くした二人がテーブルに戻ろうとするが、ハヤテが意地を張るので醤油にワサビを入れると撤退した。
「お、おぼえてなさいよリヴェル! 私は大人なんだから~!」
涙目で去っていくハヤテに愉悦していると、手紙の返事が届いていた。
【もう! すでに闇の母の事は知っていたのね? オルトロスって何よ? 教えなさい。タコもいいけどそっちにイカはないの? 美味しかったわ、デザートを貰えるかしら?】
直接念話を繋げればいいのに手紙のやり取りが好きなんだよな……エルさん。
オルトロスの詳細を書いて、アイスを送ろうとすると門から氷の入れ物に大量のイカが入っていた。
金貨はいらないので珍しい食材を頂戴というと、エルさんからお礼の品が届くようになったんだ。
『おい……リヴェル。お前がなんとかしろよ?』
リムルから念話が届くと、家の方から呪いのうめき声が木霊した。
「リ~~ヴェ~~ル~~さ~ま~~!!! この恨みはらさでおくべきか!」
「げぇ関羽! 悪かったよ、ほらクモカニ食べろソーニャ。グラタンも何でも好きなもの作ってやるから」
髪もボロボロ、服もズタズタのソーニャが部屋の次元門からお化けのように這って出てきたようだ。
ティアが椀を置いて、慌ててソーニャを介抱すると理由を聞いて、俺が元凶とわかり睨みつける。
「いや悪かったよ、森から抜け出してドワルゴン方面まで逃げるとは思わなかったんだ」
「ふえーん怖かったですぅ 森全体が襲ってくるんですよぉ~あむあむ、おいひぃ」
「よしよし、怖かったねぇ~あとでアタイがお仕置きしとくからねぇ~」
俺が痛いお仕置きはやめてティアおねーちゃん……とウルウルすると簡単に許された。
後日ソーニャはクローバー家の血縁と分かるのだが、それはまた別のお話。