僕のヒーローアカデミア 僕の師匠は異世界最強の魔導士!? 作:ポップ推しの視聴者
だが、彼のセリフには緑谷自身に突き刺さる言葉がいくつも感じ取ってしまった。
それ故に、緑谷は彼に何もしないという選択肢をとることはできなかった。
そんな彼は、わざと個性を使わずに心操を攻略する手段をとったのだった。
会場はすさまじい歓声に包まれていた。
だが、解説席はそれとは対照的にさえ思える静けさを持っていた。
「緑谷出久が勝利を収めたが…。普通科相手に挑発はもはやアンチヒーローじゃ…」
そう言いかけたプレゼント・マイクのすねを相澤先生が蹴り上げる。
「お前何見てたんだ。緑谷がどんな手段で戦ってたかもう一度思い出せ。」
プレゼント・マイクは相澤先生に言われ、先ほどの戦闘の様子を思い出す。
緑谷はまず相手を挑発するかのような態度を取り、その後心操が攻撃を仕掛けた。
そしてその後の緑谷は全ての攻撃を捌きながら…
「あれ?」
「そういや緑谷…"個性"全く使ってねえ?」
(そうだ、緑谷は個性を使わずに心操に勝ちにいった。あいつなりに何か意味がある…心操に伝える何かがあったんだろう。)
「くっそ…!!」
心操は地面を殴りつける。
あまりにも悔しい敗北だった。
個性は見切られ、煽られ、何もできずに敗北した。
「心操くん。君は、ヒーローになりたいんだよね。」
緑谷の言葉に、心操は吐き捨てるように「そうだよ」と答える。
言葉をかけようとした緑谷に次の言葉が刺さる。
「憧れちまったもんは…仕方ねぇだろ。」
その言葉に彼は懐かしさを感じる。
(その気持ちは、あのときと…師匠と出会う前の僕と同じ…。)
緑谷は心操に向き直ると、蔑むわけでもなく哀れむわけでもなく、本心から言葉を紡ぐ。
「本気でヒーローになりたいならさ…今まで心操くんは何をしてきたの?」
「は?」
心操は緑谷の言葉に怪訝な表情を見せる。
だがそんな心操を正面から見つめて言葉を続ける。
「今の試合、僕は無個性だったよ。」
心操は苦い顔をする。
予選で見た緑谷の個性は炎や氷や風など、多種多様な属性を扱うような目を奪われる個性だった。
そんな派手な属性などこの試合ではかけらも見せることすらなかった。
その事実に拳を握る。
「さすがヒーロー科の生徒様だぜ。個性使わなくても余裕ですってか?」
「……違うよ、心操くん」
緑谷は静かに言った。
「今の試合、僕は"個性"を使ってない。だから君が負けたのは、"洗脳"だからじゃない」
心操の目がわずかに揺れる。
「僕も、何も持ってなかった。だから分かるんだ。
本気でヒーローになりたいなら……個性のせいにしてる時間なんて、もう残ってないんだよ」
その言葉に、心操は視線を逸らす。
それでも緑谷は止まらない。
「本気でヒーローになりたいならさ、死ぬ気で努力してきなよ。」
「僕は無個性でも君に負けないよ。」
そう言いながら地面を殴りつける。
コンクリートでできているはずの地面が拳によって陥没する。
心操は目を丸くする。
「体は鍛えまくった。いや、正確には鍛えまくらされたと言うんだけど…」
緑谷は思い出したくないのか、少し絶望を抱く表情を見せながら目をそらす。
だがすぐに心操へ向き直る。
「個性が洗脳だからヒーローできないなんていいわけだよ。」
かつて自分が師匠から受けた、特訓。
魔法を習得する前は、基礎訓練にすべてを費やしていた。
それだけで自分がいかに非力で、何もしていなかったのかを痛感した。
その時の自分と目の前の
「狙うなら本気でやれることやってきなよ。スタート遅れてるんだよ!心操くん!」
「
真っ直ぐに、軽蔑も侮辱も一切込めずに、どこまでも正面から心操の目を見てそう投げかけた。
そこから緑谷は心操の瞳の奥に灯る炎を見透かすと、振り返りゲートへと向かって歩いていく。
心操はそんな背中を悔しくも、不思議な気持ちで眺める。
少ししてから、心操もゲートに向かって歩き始める。
そんな心操に普通科の生徒たちから喝采が注がれる。
普通科の星、かっこよかった、など揺るぎない言葉が投げかけられる。
それだけではない、普通科の生徒たちは心操の話をしているプロヒーローたちに指をさす。
プロヒーローたちは心操の今の戦いを見て、明らかな興味関心を向けていた。
心操はその光景に、自分の可能性を再認識する。
そして、もうゲートをくぐろうとする彼に声を張り上げて宣言する。
「必ず行ってやる!!だから、それまで待ってろ!!必ずそこを【越えてやるぞ】!!」
緑谷はその言葉に笑みをこぼす。
小さく返答を返すと次の瞬間彼の体は固まる。
(せ、洗脳!?)
「そんなんじゃ、すぐにその席奪ってやるぜ?」
緑谷にそう告げると、洗脳を解いてゲートをくぐっていく。
緑谷は振り返り、心操の後ろ姿に悔しそうな笑みを向けるも彼と同じようにゲートをくぐっていった。
「緑谷の"個性"は魔法。初戦から積極的に使うことはなく、必要最低限の魔法だけで済ませようとするあたり、エネルギーを消耗する類の"個性"なんだろう。」
相澤先生は自分の推察を語る。
「そうか…だから心操相手にも消耗をさせないために近接戦で"個性"を使わなかったってことかYO!?」
(まぁ、心操になにか話してた様子を見るとそれだけじゃなさそうではあるがな…。)
轟は、控え室からフィールドに向かうための通路を歩いていた。
初戦は予想通り緑谷が、勝利し早くも2回戦目で彼と戦えることにほんの少しの期待外れと、高揚感を感じる。
そんな気持ちを抱きながら角を曲がると、世界のなかで最も醜いモノと遭遇してしまう。
「…醜態ばかりだな。」
そのモノは、轟に向かって話しかける。
焦凍は先ほどまでの緑谷との対戦のことなど頭から抜け、無視をする、構うなという思考が占拠する。
「
あんなモノの言葉などどうでもよかった。
いや、むしろ聞くことすらも煩わしかった。
「いつまでも子供じみた反抗はやめろ。お前には
世界で最も嫌悪するモノが自分を物のように扱ってくる。
奥歯を噛み締め、苛立ちを何とかこらえる。
「わかっているのか?兄さんらとは違う。お前は【最高傑作】なんだぞ。」
焦凍は拳が赤くなるほど強く握りしめて、歯ぎしりの音が聞こえてきそうなほど強く口を噛みしめる。
通路を踏みしめる足にも力がこもり、荒々しい音を鳴らす。
「
そういい切ると、憎悪に満ちた表情でフィールドに向かって歩いていく。
エンデヴァーはそんな焦凍に呆れたような目線で見た上でため息をつく。
地獄のような雰囲気のまま、2人は別々の方向へと向かって歩いていった。
試合を終えた緑谷がベンチに戻ると、麗日と飯田が自分たちの隣の席を確保していたらしく、緑谷をその席に誘導する。
尾白は緑谷の勝利に、ガッツポーズで勝利を祝い緑谷も同じようにガッツポーズで応えて感謝を伝える。
「まずは1勝だな。」
飯田の言葉に緑谷が簡単に感謝を伝えると、フィールドに目を向ける。
次の試合は【轟VS瀬呂】だった。
順当にいけば轟の圧倒的攻撃範囲に攻撃速度、そして瀬呂の個性との相性の良さで、轟が勝つ可能性が非常に高い。
緑谷は次の轟との戦いを見据える。
「HEY!!続いて第2回戦の対戦カードは…こいつらだ!!」
「優秀!!優秀なのにその地味さは何だ!?ヒーロー科!瀬呂範太!!」
瀬呂はプレゼント・マイク先生のあんまりな解説に、少し悪態をつく。
「VS!予選を2位1位と強すぎるよ君!推薦入学者は伊達じゃないってか!同じくヒーロー科!轟焦凍!!」
同じく1-Aの生徒だと言うのに露骨な解説の差を感じる。
2人は、同じフィールドで正面から対峙する。
「勝てるとは思わねえけど…」
「Ready…Fight!!!」
プレゼント・マイクの開戦の合図と同時に瀬呂は両肘からテープを伸ばして、轟を拘束する。
「負けるつもりもねぇ!!」
総掛け声を上げながら、両手足を拘束した轟を場外に向けて投げ飛ばそうとする。
開戦と同時に最速の不意打ち。
完全に拘束された優勝候補の姿に会場は予想外の雰囲気に包まれる。
プレゼント・マイクも瀬呂の最適解に見える行動を見て瀬呂の応援を行う。
が…
そんな会場の盛り上がりは一瞬にしてひっくり返る。
轟の右足から氷結が放たれ、一瞬のうちに瀬呂の身体を氷漬けにする。
いや、そんな表現は生ぬるい。
「「……っ。」」
実況席も、観客たちも、生徒たちも突然目の前に生成された、この会場よりも高くそびえ立つ氷塊の出現に誰しも言葉を失うことしかできなかった。
轟は凍りついたテープを簡単に砕き、自由の身になる。
「せ、瀬呂くん…動ける?」
氷結は審判台まで及んでいたらしく、半分凍りついたミッドナイトが瀬呂に問いかける。
「う、動けるわけないでしょ!?い…いてぇ。」
顔以外のほぼ全身を凍結させた瀬呂は身体を動かすことなど不可能だった。
そんな瀬呂の様子を確認したミッドナイトは、轟の勝利宣言を行う。
轟は瀬呂のもとに歩いていくと左手を瀬呂の胸に添える。
「悪い…苛ついてた。」
そう呟くように告げると、左手から熱を発生させて氷を溶かしていく。
そんな氷を溶かしていく姿を見た緑谷はその後ろ姿になぜか寂しさのような感情を感じ取っていた。
「…な、なんだこの氷?」
会場の屋根の上で警備をしていた魔歩は、突如生成された巨大な氷を目の前に息を呑む。
「こんなの
とても15歳の少年が作り出した氷塊だとは思えないと、目を丸消して会場を見つめる。
(出久の次の対戦相手が轟か。あんな氷結を出久が突破できるだけの火力はない。果たしてどうやって攻略するつもりかな?)
次の試合をひそかに楽しみながら、自身の仕事である警備に戻る。
「…マジか?」
緑谷は目の前で溶けていく氷塊を眺めながらポツリとつぶやく。
こんな怪物と2回戦目で戦わなければない。
そんな現実に思わず尻込みしてしまうほかなかった。
「み、緑谷くん。あ、あの氷結にどう挑むつもりなんだい?」
飯田が緑谷に問いかける。
緑谷は顔を引きつらせながらも答える。
「対策は…大会前から考えてた。でも…想像以上だ。」
「一つだけ…策を考えていた。それが通じなきゃ…」
そこで言葉は止まる。
それ以上は聞かなくてもわかる。
一つだけしか策がない。
だが、逆に言えばあの氷結にも対応できうる可能性が一つはあるということだった。
それを確認した飯田は自身の試合の準備のために控室に移動した。
次の試合は、上鳴VS塩崎だった。
「B組からの刺客!塩崎茨!!」
プレゼント・マイクの紹介文に、塩崎が手を挙げて異議を申し立てる。
「刺客というのは…まるでヴィランのようです。私はヒーローを志しているものですので、訂正をお願いします。」
その真っ直ぐな申し出に、プレゼント・マイクも困惑しながらその紹介を訂正する。
そしていたたまれなくなったのかすぐさまスタートの掛け声が響き渡る。
「
上鳴の言葉に首を傾げる塩崎。
そして次の瞬間、上鳴は自身の個性をフルパワーで発動して一気に勝負を仕掛けた。
だが、それとほぼ同時に塩崎は自身の髪であるツルを地面に突き刺して盾のように切り離す。
上鳴の放電は全てそのツルによって阻まれ、塩崎に届くことはない。
「ウェ?」
そして放電により、頭に負荷がかかった上鳴はあっという間に塩崎のツルによってぐるぐる巻きに拘束された。
「瞬殺!あえてもう一度言おう!瞬・殺!!」
秒で決着はついた。
上鳴の個性を塩崎が完封した。
そんな様子を見て緑谷は、自身の個性ノートに塩崎とその個性のことを記していく。
「ぶつぶつぶつぶつ…。」
独り言をつぶやき情報を自身の頭のなかで整理しながらメモをとっていくが傍から見ればヤバいやつだ。
「試合終わったばかりなのに…もう次の対策練ってるの?」
麗日がそんな緑谷の顔を覗き込んで問いかける。
緑谷は慌てながらもその問いに答える。
これはほぼ趣味の領域だと。
「せっかくクラス外のすごい"個性"が見れるわけだし…。」
そして、カバンをいじり始めると一冊のノートを取り出す。
「A組のみんなのも少しずつまとめてるんだよ!麗日さんの"
「…デクくん、初めて会ったときからすごいけど…体育祭でやっぱり…やるなぁって感じだ。」
麗日は笑顔でそうつぶやいた。
だが、その笑顔は普段見る麗日の明るく元気な笑顔ではなく、どこか淋しげな雰囲気を感じる笑顔だった。
緑谷はその顔に違和感を感じるも、それを口にする勇気も聞くための口実も見つけることができなかった。
次の番の飯田VS発目だったが、彼女が飯田に渡したサポートグッズと、自身が開発して身につけた開発グッズの紹介プレゼンと化した。
10分の発明品紹介を終えて、彼女は満足げに場外敗北をしたのであった。
なお、その一件で飯田くんは発目に苦手意識を持ったとか。
麗日はそれを見届けると、選手控室へと向かってその場を去る。
緑谷はそれを見送ってから会場に視線を戻そうとするも、椅子に何か置かれていることに気がつく。
「…あれ、カップ?」
麗日の隣の席にカップが置いてあった。
まだ半分も減っていない飲み物のカップ。
それを拾い上げた緑谷は、不安が高まる。
フィールドでは、青山VS芦戸が繰り広げられている。
芦戸は持ち前の運動神経を生かして、青山の"
だが、それを見ることもなく緑谷は控室へと向かっていった。
飯田が控室に戻るとそこには麗日が待機していた。
そしてその顔を見て驚く。
「うららか…じゃないな!シワシワだぞ眉間!!」
その言葉に麗日は「眉間?」と問い返す。
そして自身の眉間を指で引き伸ばしながら話を返す。
「ちょっとね、緊張がね。眉間にきてたね。」
その言葉を聞いた飯田は麗日の対戦相手を思い出す。
「爆豪くんか…。」
「うん、超怖い…。」
思わずうつむいてしまう。
相手があの戦闘狂の爆豪だ。
何が起こるか分からない。
そんな中、控室に緑谷も入ってくる。
「あれ?みんなの試合見ないの?」
「これ、忘れ物があったから。」
緑谷は麗日にカップを手渡す。
麗日はお礼をひとこと言うと、それを一気に飲み干して落ち着こうとする。
そんなことをしていると、館内放送で切島VS鉄哲の開戦を告げる声が響く。
「つぎ…。」
その言葉に、場の空気が引き締まる。
「いや、しかしさすがの爆豪くんも、女性相手に全力で爆発は…」
「するよ。」
緑谷はキッパリと言い放つ。
「みんな夢のためにここで1番を目指してる。」
緑谷は自身の手のひらを見つめる。
そして、1番を目指していなかった体育祭前の自身を握り潰すかのように拳を握る。
「かっちゃんでなくても、手加減なんて考えないよ。」
そう告げる。
そして、持ってきたノートを取り出して麗日に付け焼き刃かもしれないが、作戦を考えてきたことを伝える。
爆豪に勝つための可能性。
「僕は、麗日さんにたくさん助けてもらったから。」
そう言って真っ直ぐに麗日を見つめる。
その目に麗日の視線は吸い込まれるかのようだった。
その真剣な眼差しに、彼女の心で何かが決まった。
「ありがとう、デクくん。」
「でも、いい。」
その言葉に二人は目を丸くする。
麗日は話す、緑谷が今までずっと凄かったと。
騎馬戦で緑谷を頼ってしまったかもしれないこと。
そして飯田の緑谷に挑戦するといった言葉に自分に恥ずかしさを感じたこと。
「みんな将来に向けて頑張ってる!」
椅子から立ち上がる。
「そんならみんなライバルなんだよね…だから!」
扉の前に歩いていき、2人に振り返る。
そして、2人に拳を向けて親指を立てる。
「決勝で…会おうぜ!」
「緑谷くん。さっき麗日くんに伝えようとしていた作戦というのは?」
観客席に戻った飯田と緑谷は、麗日と爆豪の試合について話し合う。
「作戦っていうほどのものでもないよ。」
そういいながら、緑谷は爆豪と麗日が入場するフィールドを眺める。
「麗日の勝機はただ一つ。かっちゃんに触れて"
「そのために…遠距離戦をする。」
飯田は緑谷の予想外の言葉に目を丸くする。
麗日の"個性"は触れて発動するタイプ。
遠距離手段など持ち合わせてなどいないからだ。
だが緑谷がそれを理解していないはずはなかった。
「かっちゃんの"
飯田がハッとしてその続きを紡ぐ。
「その破片を麗日くんの"
緑谷はそれに対して頷いて答える。
「そう。そして遠・中距離攻撃をしつつ、隙を伺って身体に触れる。」
それが緑谷の考えた麗日が爆豪に勝つための方程式だった。
いくら爆豪が空中での移動手段を持っていたとしても、それは万全ではない。
浮かせることさえできれば、麗日にも十分勝機はある。
そう考えていた。
「浮かせるやつだな?退くなら今退けよ。痛てえじゃすまねえぞ。」
そしてついに
「Ready…Fight!!!」
麗日VS爆豪の試合が開始される。
プレゼント・マイクの開戦の掛け声と同時に、麗日は爆豪に向かって前傾姿勢で突撃していく。
「そうだ。かっちゃん視点なら事故でも何でも触れられることを一番警戒する。ということ回避じゃなくて…迎撃!」
爆豪が右手を構えると、麗日は緑谷の過去のセリフを思い出す。
(大抵最初は右の大振り。)
(ここを回避して…!)
回避行動を取ろうとする麗日に容赦のない爆発が襲いかかる。
その爆発で麗日の身体は吹き飛ばされる。
「じゃあ死ね。」
容赦ない言葉を投げつける爆豪。
そんな爆豪に麗日は全く怯まない。
だが…
(分かってても反応できない!)
巻き上げられた粉じんのなかで、思考を巡らせる。
粉じんのなかから爆豪に向かって飛び出す。
爆豪はそれを上から掌を爆発させながら地面に叩きつける。
がしかし手応えがなかった。
爆豪の手の下には麗日の上着のみが残されていた。
「上着を浮かせて這わせたのかぁ。よー咄嗟に出来たな!」
プレゼント・マイクが咄嗟に出た作戦を評価する。
爆豪の背後に回り込んで、両手を爆豪に伸ばす。
爆豪は不意を突かれたうえに背後も取られた。
だがそれでも、凄まじい反応速度で背後の麗日に向けて右手を振り払い、爆発を叩き込む。
爆豪は見てから反応した上で、背後からの麗日の奇襲さえも対応してみせた。
爆豪の反射神経相手に、触れなければならない麗日の個性と彼女の身体能力では困難であった。
麗日は何度も諦めずに突撃していくが、爆豪はそんな麗日に対して無慈悲にも爆撃を繰り返して迎撃していく。
「休むことなく突撃を続けるが…これは…。」
プレゼント・マイクも、この試合の状況を見て言葉を濁す。
一方的な蹂躙。
爆豪は防戦でありながらも的確に迎撃を繰り返して追い込んでいる。
そんな様子に観客の様子も少しずつ変化していく。
「おい!それでもヒーロー志望かよ!!」
「それだけ実力差あるなら場外にでも放り出せよ!!」
「女の子いたぶって遊んでんじゃねーよ!!」
会場の一部からブーイングが出てき始める。
実力差があるのに
プレゼント・マイクも正直な感想を述べようとした瞬間に、相澤先生から肘を顔面に受ける。
「今遊んでるっつたのプロか?何年目だ?」
「シラフで言ってんならもう見る意味ねえから帰れ。帰って転職サイトでも見てろ。」
会場の雰囲気が一気に変わる。
音が消え、麗日の掛け声と爆発音、そして相澤先生の放送のみが会場に響く。
「ここまで上がってきた相手の力を、認めてるから警戒してるんだろ。」
「本気で勝とうとしてるからこそ、手加減も油断もできねえんだろうが。」
爆豪は正面から麗日を見据える。
どれだけ爆破して迎撃しようが、遠ざけようが
(まだだ…まだこいつ死んでねえ)
鋭く爆豪を睨みつける麗日の姿に警戒を緩めない。
「ありがとう爆豪くん…。」
麗日は両手を構える。
「油断してくれなくて。」
爆豪はその言葉に何かの意図を感じ取る。
何かを仕掛けられる。
さらに警戒を高める。
「爆豪の距離ならともかく…客席にいながら気づかずにブーイングしたプロは恥ずかしいね。」
B組物間がフィールドの上を見上げながら話始めた。
「低姿勢での突進で爆豪の打点を下に集中させ続け、【武器を蓄えていた】」
そう。
麗日は爆破によって削られたフィールドの破片を"個性"を使って、上空に浮遊させ続け、大量のツブテを武器として蓄えていたのだ。
そして、低姿勢の突撃で爆豪の視線を下に向けさせ、爆煙によって視野を狭めてその武器を隠し通した。
麗日が両手の指を合わせると同時に、空から雨あられのようにつぶてが降り注いでくる。
これだけの量のツブテが振ってくれば、回避にせよ迎撃にしろ必ず隙ができるはずだと確信する。
両手の指を合わせて、麗日は爆豪に向かって駆け出す。
勝つことを、勝って憧れたデクのようにとその一心で!
だが現実は非情だった。
爆豪が左手を空へと掲げると、そこから巨大な光と粉塵、そして嵐がまき起こりその場にいる全員の表情を書き換えた。
空に伸びる巨大は爆発は、空から強襲した麗日の武器のすべてを正面からへし折った。
その爆風によって吹き飛ばされた麗日は自身の渾身の一撃の無残な結果に絶望を隠しきれない。
「会心の爆撃!!麗日の秘策を堂々、正面突破!!!」
痛む左腕に少し悪態をつきながらも、爆豪の顔は決して不服のある顔ではなかった。
いや、むしろ
「いいぜ。こっから本番だ、麗日!」
彼の中の闘争心を滾らせていた。
麗日も、渾身の一撃を砕かれてもなお、まだそれでもと駆け出そうとする。
だが、彼女の身体はそうもいかなかった。
走り出そうとした彼女の身体は動き出そうとした瞬間に膝から崩れ落ちる。
そしてうつ伏せに倒れてしまう。
誰が見ても限界だった。
いや、限界を超えていたのだ。
倒れた麗日にミッドナイトが駆け寄る。
「…とう…ちゃん…」
そんなギリギリで意識を繋ぎ止める麗日に、ミッドナイトは無情にも戦闘不能の宣言を行い、麗日の敗北と爆豪の2回戦進出を決定したのだった。
お久しぶりです。
更新速度が遅いながらもなんとか作成を頑張っております。
構造自体はあるのですが、いかんせん文字に起こすのが…。
さぁ、1回戦も残るところ鉄哲と切島だけとなりついに2回戦。
轟VS緑谷が開幕します。
原作とはかなり変わった展開になると思いますので、頑張って少しでも楽しんでいただけるように私自身気をつけて描いていこうと思っています!
今回の話も原作とは少し違うカタチになっていましたが、いかがでしたでしょうか?
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
感想等いただけると、モチベーションになります。
一言だけでも残していただけるとすごく嬉しいです。
それでは、次回もよろしくお願いします。