2025年5月13日――viviONのあおぎり高校スタジオは、いつものように明るい笑い声と活気に満ちていた。
配信準備の台本を広げ、メンバーたちが互いに意見をぶつけ合いながらも、どこか家族のような温かさが漂う空間。
音霊魂子が元気いっぱいに動き回り、石狩あかりが冷静にスケジュールをまとめ、山黒音玄が毒舌を飛ばしつつも楽しげに、栗駒こまるが皆を明るくまとめ、萌実は優しい笑顔でみんなを和ませている。
そんな穏やかな午後に、突如としてエトラが目をキラキラと輝かせて立ち上がった。
「ねえ、みんな!東ドイツをテーマにしたドラマ、作ってみない?めっちゃ面白いと思うんだけど!」
一瞬、スタジオ全体が静まり返った。
栗駒こまるが目を丸くして叫ぶ。
「え? 海外で撮影するの!?」
興奮と驚愕が入り混じった声に、隣に立つ月赴ゐぶきが、クールなハスキーボイスで冷たく切り返した。
「海外? 別にええけど、制作費はどないするんや?」
黒髪をベースにしたクールな外見に、舌ピアスのような鋭いアクセントが光る彼女は、2025年3月に大学院を修了したばかりのリアル元学生。
元運動部出身の脳筋気質を隠しきれず、サイクリングの実写動画を精力的に投稿し、将来的にはキャンプやバイクにも挑戦すると公言している。
同期のうる虎がーるや八十科むじなとは異なり、純粋な人間の姿でデビューした彼女だが、初期設定の狼(犬)ベースの名残が、細かな仕草や鋭い視線に今も残っていた。
公式から「クール」と称される落ち着いた喋り方と、的確なツッコミスキルで視聴者から「ゐぶきママ」と慕われながらも、関西人らしいユーモアと時折見せる脳筋エピソードで、徐々に「ツッコミどころ満載のママ」として愛される存在となっていた。
イメージカラーはマルーン――阪急や近鉄を思わせる深い赤みが、彼女の熱い関西魂を象徴している。メンバーたちの反応はまちまちだった。
ぷわぷわぽぷらが首をかしげて無邪気に言う。
「ぽぷら、ドラマとかよくわかんな~い」
音霊魂子は興味津々で目を輝かせる。
「テーマが東ドイツって、なんか重そうだけど……エトラらしいね!」
石狩あかりは少し眉をひそめ、現実的な疑問を投げかけた。
「でも、予算とか場所とか、現実的にどうするの?」
エトラが少し肩を落としたその瞬間――意外な人物が、静かに会話へ割り込んだ。
ハインツ・アクスマンだった。
彼は不気味な笑みを浮かべ、自信たっぷりに口を開く。
「Studio Berlin GmbHというテレビ制作会社なら、引き受け交渉してくれるかもしれないぞ? あそこはドイツテレビ放送協会(DFF)の放送センターの旧施設と建物の一部を使用しているからな。」
その言葉には、かつてのシュタージ将校としての凄みと、冷徹なコネクションの深さがにじみ出ていた。
スタジオに緊張の空気が走る。
魂子が警戒を隠さず呟いた。
「……急に何? いきなり出てきて、怪しいんだけど。」
こまるも頷き、声を低くする。
「なんか企んでるんじゃないの? この人、信用できないよ。」
しかし春雨麗女がニヤリと笑みを浮かべ、試すような口調で言った。
「とりあえず彼の提案、聞く価値あるんじゃね?元シュタージの将校なら、ドイツに知り合いくらいいるでしょ。」
あかりも考え込むように続ける。
「確かに……アクスマンの過去は最低だけど、こういうコネクションは本物かもしれない。失敗したらどうなるか、分かってるよね?」
彼女の視線は鋭くアクスマンを捉えた。
萌実だけが、少し不安げに、しかしエトラのアイデアを思うように口を開いた。
「失敗したらアンタの責任だからね。……でも、エトラのアイデア、面白そうだから、やってみる価値はあるかも。」
メンバーたちは互いに視線を交わし、しばしの沈黙の後、魂子が決断を下した。
「よし、アクスマンの提案、乗ってみよう! でも、目ぇ離さないからな!」
アクスマンは薄く笑い、側近のミヒャエル・ゾーネがその横で静かに頷いた。
「賢明な判断だ。Studio Berlin GmbHは信頼できる。準備は私に任せておけ。」
声には自信と、どこか挑発的な響きが混じっていた。
エトラが再び目を輝かせる。
「やった! じゃあ、東ドイツの雰囲気バッチリなドラマ、作っちゃおう!魂子ちゃん、リーダーシップよろしくね!」
魂子は苦笑しながらも、拳を握りしめて答えた。
「うわ、責任重大じゃん! でも、みんなでなら絶対イケるよ! あおぎり高校の絆、なめんなよ!」
スタジオに、再び明るい笑い声が響き渡った。
メンバーたちの士気が一気に高まる中、アクスマンはその様子を複雑な表情で見つめていた。
かつて冷酷なシュタージの将校として君臨し、無垢な命を踏みにじってきた男が、今、あおぎり高校の熱気と絆に直面し、自身の過去と向き合う一歩を――否応なく踏み出そうとしていた。
だが、その道のりはまだ険しく、メンバーたちの警戒の目は、決して緩まない。東ドイツを舞台にしたドラマ制作は、アクスマンの提案をきっかけに動き始めた。
しかし、この新たな挑戦が、どのような波乱を巻き起こすのか――アオギリエースの未来は、さらなる試練と希望に、深く満ちていた。
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