『薬理学理論』学期末試験
【問1】アデノシンは洞房結節細胞表面や心筋細胞表面に存在するGi共役型GPCRに結合する。ここから考えられるアデノシンの心臓への作用は何か。結果のみ解答せよ。(配点:7点)
【問2】ワルファリンとアミオダロンを併用すると、止血までに要する時間が延長された。何故だと考えられるか。簡潔に答えよ。(配点:7点)
【問3】インバースアゴニストと呼ばれるものがある。これは、受容体に何も結合していない状態でも活性化している受容体を阻害し、不活性化させる効果がある。これはどのような時に投与されると考えられるか。簡潔に解答せよ。(配点:8点)
【問4】油に溶ける(親油性)の薬剤は、肝臓のCYPによって分解を受け、無効化されることが多い。では、水に溶ける(親水性)を可能な限り高めれば薬剤が分解されることはないと考えられるが、実際にそのような薬剤が少ない理由は何故だと考えられるか。簡潔に答えよ。(配点:8点)
【問5】心室で発生したリエントリー由来の不整脈時、投与される薬物の選択肢として挙げられるものは何か。作用機序が異なるものを二つ挙げよ。(配点:5点×2個)
【問6】骨格筋(腕の筋肉など)と平滑筋(腸管の筋肉)の収縮機序を比較し、どちらの方が迅速な収縮が可能かを考えよ。(配点:10点)
【問7】バルデナフィルは、NTGと併用されない。これは何故か。(配点:10点)
【問8】局所麻酔としてのリドカインを投与する際、少量のアドレナリンが同時に投与されることがある。これは何故か。(配点:15点)
【問9】第五級治癒魔法『抗菌区域』の開発者ともされるマリア・リジームは細菌感染症治療の分野でも名を馳せた。彼女が使用していた第五級虚空魔法『陽球浄化』(没後、王国による認定)は数々の細菌感染症に対して効果を上げたが、治療前の相手に必ず第三級治癒魔法『出血抑制』や第二級治癒魔法『止血促進』の使用をしていないかの確認をしていた。(他にも複数の確認をしていたが、ここでは省略する)
その確認に対し、教会は「与えられた権能である特異魔法を万人に生かさず、選別することは傲慢である」という声明を出し、これによってマリア・リジームの迫害が始まり、最終的にマリア・リジームは自害した。
彼女の治療前の確認が合理的なものだったとすれば、どのような理由で確認していたと考えられるか考察せよ。
ただし、第三級治癒魔法『出血抑制』や第二級治癒魔法『止血促進』はワルファリンと同様の作用機序であることは既知の事実として用いても構わない。(配点:15点)
【問10】
この講義の出席回数を解答せよ。(配点:10点)
提出者:ユラリア・ウィンターフィア
【問1】心収縮力の低下、心拍数の低下
【問2】ワルファリンはCYP2C9で代謝されるが、アミオダロンはCYP2C9の阻害剤であるため、ワルファリンの血中濃度が上昇し、抗凝固作用が増強される。
【問3】受容体が何とも結合していない状況でも活性を持ち、結果的に過剰な活性化をしている疾患において、それらの活性を抑制する目的で投与される。
【問4】親水性が高すぎると消化管からの吸収率が低下し、生体膜の透過性も低下するため、標的組織・細胞への到達が困難になるため。
【問5】リドカイン、ソタロール
【問6】骨格筋は横紋筋であり、神経支配による直接的なカルシウムイオン流入と筋小胞体からのカルシウムイオン放出により速やかに収縮する。一方、平滑筋はカルシウムイオン依存性のミオシン軽鎖キナーゼによるリン酸化を介した収縮機構を持ち、カルモジュリンを介した間接的なシグナル伝達が必要となる。このため骨格筋の方が迅速な収縮が可能である。
【問7】バルデナフィルはcGMPホスホジエステラーゼ阻害薬であり、NTG(ニトログリセリン)はNO供与体である。NOはグアニル酸シクラーゼを活性化してcGMPを増加させ、cGMPホスホジエステラーゼ阻害薬はcGMPの分解を抑制する。両者の併用により過剰なcGMP濃度となり、ミオシン軽鎖ホスファターゼが強く活性化されることで過度の血管拡張が生じ、致命的な血圧低下を引き起こす危険性があるため併用禁忌である。
【問8】リドカインは局所麻酔薬としてNaチャネルを遮断し神経伝導を抑制するが、血管拡張作用も有するため単独使用では出血や全身循環への移行が増加する。アドレナリンはα1受容体を介して血管収縮作用を示すため、局所の血流を減少させることで出血を抑制し、リドカインの全身循環への移行を遅延させて局所滞留時間を延長し、血中濃度上昇による全身毒性を軽減する効果がある。
【問9】第五級虚空魔法『陽球浄化』は、強力な抗菌作用を持つ魔法であり、一方で『出血抑制』『止血促進』はワルファリンと同様の作用、つまりビタミンK活性化による血液凝固因子の活性化を阻害する効果があると考えられる。
マリア・リジームが確認していたのは、以下の理由からであると考えられる。
1.『陽球浄化』が肝臓のCYP酵素を阻害する効果を持つ場合、凝固阻害魔法の効果が増強され、重篤な出血傾向が生じる危険性がある
2. また、『陽球浄化』自体が血小板機能や血管内皮に影響を与え、止血機構を障害する可能性も考えられる
【問10】12回 (この試験を含む)
提出者:リーシャ
【問1】心拍数の低下と心筋収縮力低下
【問2】アミオダロンがワルファリンの代謝酵素を阻害して、ワルファリンの血中濃度が上がるから。この結果、ワルファリンの効果が上昇して『血液をさらさら』にあんまり出来なくなり、止血時間がのびる。
【問3】常に活性化している受容体が原因で症状が出ている病気の時に使うと思います。例えば、常に活性化して胃酸分泌が多い場合は、インバースアゴニストを使えば胃酸分泌が抑えられて良さけだと思います!
【問4】あまりに親水性が高いと細胞の壁を通過できなくて、薬が効く場所に届かないからだと思います! 細胞膜は脂質で出来ているので、薬が細胞内に入るには、ある程度の親油性が必要です。
【問5】リドカイン、アミオダロン
【問6】骨格筋は横紋筋で、アクチンとミオシンの直接的な相互作用によって収縮します。カルシウムイオンが筋小胞体から放出されると、トロポニンCに結合してトロポミオシンが移動し、アクチンとミオシンの結合部位が露出して、すぐに収縮が始まります。
平滑筋では、カルシウムイオンがカルモジュリンと結合して、ミオシン軽鎖キナーゼを活性化し、ミオシン軽鎖をリン酸化する必要があります。このリン酸化されたミオシンがアクチンと相互作用して収縮します。
平滑筋は間接的な経路を通しているので、骨格筋の方が収縮が速いです!
【問7】バルデナフィルはcGMPホスホジエステラーゼ阻害薬で、cGMPの分解を抑制します! NTGはNOを体内で作って、NOがグアニル酸シクラーゼを活性化してcGMPを増やします。両方使うと、cGMPが過剰に増えてしまいます! これで、ミオシン軽鎖ホスファターゼが活性化されて、アクチンとミオシンがあんまりくっつけなくなって、血管平滑筋がとても弛緩してしまいます!
つまり、血管が拡張しすぎるので、血圧が危険なほど下がってしまうからです。
【問8】アドレナリンには血管収縮作用があるので、
1.リドカインが広がる範囲を限定して、効果を局所に集中させる
2.リドカインの血中への吸収を遅くして、効果時間を延長する
3.出血を減らして手術中に、手術しているところをよく見えるようにする
4.リドカインの全身への移行を減らして、副作用のリスクを下げる
【問9】『陽球浄化』は強力な抗菌効果を持つ魔法だと思います。『出血抑制』と『止血促進』はワルファリンと同じくビタミンKを活性化させないことで、血液凝固を阻害します。
一つの案としては、私の推測では、『陽球浄化』は肝臓の代謝酵素(CYP)を阻害する効果もあったと考えられます。もし患者が血液凝固を抑制する魔法を使用していた場合、『陽球浄化』によってその効果が増強され、止血ができなくなる危険があったのかもしれません。
で、もう一つは『陽球浄化』によって腸内にいる細菌達が沢山死んでしまって、それによって普段は『腸にいた細菌達が作っていたビタミンK』が生まれなくなってしまう、という可能性です。
前、腸内の細菌を魔法で一掃したら健康になるかもと思ってやろうとして、自分でやる前にネズミにやったらすごく体調を悪くしていて、その上で血が沢山出ていたので、こっちの可能性もあるとおもいます!
【問10】11回 講義は11回なので!
この先もこの世界は続きますが、ここで一区切りとさせてもらいます。
ただ内容としては循環器の一部と神経の極一部しか触れられていないので、数年後とかに『薬理学理論B』編がひっそりと始まる可能性があるかもしれません。
その時は、またよろしくお願いします。