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「……巫山戯るな」
巫女が、眼前の不条理に怒りを溢す。
無理もない。当然の事だろう。
己が数千年の旅路を嘲笑うかの様に
「そんな
昂る心に、黄金の波紋も呼応する。
脳神経が焼き切れ、
文字通りの限界突破。
膨大な演算式により溶け出して行く頭蓋の内部を
百を超え、三百を超え、五百にのぼるまで開錠された宝物庫の門から姿を見せる聖遺物の嵐は、まさしく神話の
それら全てがほぼ同時に眼前の覚醒者へと放たれた。
「吹き飛べ、アーマーパージだ」
「なっ──!」
その全てを、アイリスは弾き返す。
炎に包まれた幼き肢体。その姿が陽炎の如く一瞬ブレたと思えば次瞬、それらがぱちりと弾け神威を纏った火の粉を撒き散らし財宝の群れを容易く叩き落とした。
舞い上がる砂塵が、少女の裸体を覆い隠す。
攻撃、防御? 否、そんなものでは断じてない。
今のはただの
未だこの
「くはっ。角に翼か……あまり趣味が良いとは言えないな。
『
現れたのは、文字通り人を超克した化け物だった。
相も変わらず漆黒に彩られた鎧姿。そして──神々しい白翼。
相貌を覆い隠す有角の
頭部両側面より屹立する赫赫しい二本の装飾はまるで悪魔の如し、されどその背から広がる
漆黒と白銀を身に纏い、鮮血が如き赫のラインを走らせるその姿は神への
「巫山戯ろ漆黒、その余裕を心の臓腑ごと砕いてやる!」
されど関係あるものか。悪魔だろうが天使であろうが変わらず討ち倒すと言わんばかりに、フィーネは宝物庫より必殺の魔槍を手繰り寄せる。
「刺し穿ち、突き穿つ──」
「因果逆転の魔槍。先と同じくこの心臓を必中の理で穿つか──ならば」
その手より放たれるのは必中必殺。
因果律を逆転させ、運命に干渉し絶死の結果を置き示す色濃い呪詛。その死棘が奇々怪々な軌道を描きアイリスの心臓へとその穂先を向け──。
「
世界が、悲鳴を上げた。
砕ける空間。裁断される世界線。絡みつき焼却される時間軸。
並行世界論の証明と共に、特殊相対性理論は敗北し神を基点として物理法則が一新される。
「なん、だと……!?」
かたりと、魔槍は行き先を失い無力に堕ちる。
既に確定したはずの運命。必中必殺の理がそれ以上の神秘を孕んだ防壁に防がれるわけでも、並々ならぬ幸運により死を免れるわけでもなく──
並行同位体に損傷を転写するまでに至った、世界すら跨ぐ埒外の干渉性。その応用はまさしく無法の絡繰。
時間も、空間も、世界も──概念すらも
「
「お前は……お前は一体誰なのだ!?
「知ってどうする終焉の巫女。
無意味。無価値。お前の問いは
攻勢は終いか? ならば次は此方の番だとでも言わんばかりにアイリスは籠手に包まれた華奢な右腕を天に掲げる。
集う銀の粒子こそ、まさしく神巫を想いし神の寵愛。
「
地水火風陰陽氷雷。銀の粒子から放たれるあらゆる属性が一切の矛盾を孕まず一つに纏められ、美しい共存を魅せていた。
物理法則を嘲笑うかの如き全知全能。
埒外の法則にて機能する極光は、己が敵を殲滅すべしと言う意思の下に純粋無垢な結果だけを引き起こす。
最果ての極光が、終焉を穿つ。
「ぐっ、うぅ゛あ゛──まだだァ゛!」
それでもフィーネは、諦観を拭い去り思考を巡る惑星が如く回転させる。
幾百の黄金を起動し、絶対防御の理を刻んだ盾の聖遺物にて無敵の城砦を築くが、それも束の間の時間稼ぎ。
概念すらも焼き尽くす極光はもの皆尽くを消滅させながら飛来した。
まるで天へと逆行する
故にそれは、もはや奇跡だった。
「──見事だ終焉。戯れの一撃とは言え右腕一本で済むとは思わなんだ」
「あ……ぐっ……うぅ゛」
激痛に喘ぐ黄金に一握の賛美を唱え、神は俯瞰する。
まさに息絶え絶え。生き残れたのは奇跡に近い。
世界に孔を穿つ一撃を前に正々堂々の防衛を以てして犠牲は右腕一本。
欠けた肉体を再生させながらフィーネは、そんな奇跡に喜ぶ暇もなく眼前の化け物に睨みを寄越す。
「それで? まだ足掻くか?」
「──愚問ッ!」
フィーネは、再び無限の財を以て神の囀る“足掻き”を続ける。
魔剣の呪詛が根源ごと浄化される。滅びの概念を纏った妖刀が宿業ごとへし折られた。聖剣の極光が蝿を叩き落とすかのように叩かれる。魔槍の因果律はまたしても無に帰した。叡智の魔杖はそれを更に上回る異界法則の深淵により闇へと葬送された。
もはや蟻と象の枠組みを超え、羽虫と隕石が如き力の絶対差。
かの黄金の王の様に宝物庫の本領を発揮しきれていない事も後塵を拝する要因の一つではあるが、問題はもっと単純なこと。
生物としての、格が違う。
彼女が相手にするのは星の代行にして神の使徒。
もはや
「まだだッ!」
それでも、フィーネは諦めない。
凶剣との因縁を経て宿痾を覚醒させた彼女に、停滞の
あるはずなのだ、逆転の一手が。
開闢を寿ぐ創世の一振りが。
神をも縛り止める停滞の楔が。
あの日仕えた黄金の真価を形にすべく、叡智を振り絞り手を伸ばすが──
黄金の宝物庫は最後の
「まだ、まだまだまだ──ァッ! ……あ?」
尚も不撓を口にするフィーネ──しかし、あっさりと終末は訪れた。
宝物庫が、機能を停止する。
揺らめき閉じてゆく黄金の波紋。
圧倒的な数の利を武器としていた聖遺物の大軍はその全てがバビロニアの宝物庫に還元され、フィーネの最強にして最大の手札がその効力を失った。
「ふざけるな……こんな、こんな所で……巫山戯るなよソロモンの杖!」
フィーネとバビロニアの宝物庫を繋ぐ唯一無二の縁。ソロモンの杖。
本来想定されていた使用方法の規格を超えた解釈と過大干渉により拡張されたソロモンの杖は、遂に無限の叡智を謳う主人の本気について行けず
ノイズを召喚し使役する権能はそのまま行使可能ではあるが、今更そんなもの塵芥程の役にも立たない。
「アイリス・フェイルノートォ゛!」
「あはっ。良い
激怒を吼える
█
やっば。思わずテンションあがっちゃった。
いやぁ、それにしてもこれで私も追加のラスボス枠ほぼ確定だねー神様。
『然りである。賽は投げられた──英雄譚にて華々しく散れよ我が代行』
是非もなし。
その運命を受諾しよう、我が半身。
全ては煌めく
『
……は? 何言ってるのネフちゃん?
装者たちが私の様な塵屑に斃れるわけないでしょ?
確かに苦戦するかもしれないけど、最後には全身全霊の私たちを更なる奇跡で捻じ伏せてくれるはずだよ?
『
奇跡──そう、奇跡だ。
狂乱の巫女に心を折られようとも覚醒を果たし、
響き合うみんなの歌声。始まりの歌を奏で、暴食の巨人を撃ち倒し人類の心を一つに束ねた70億の絶唱。
繋ぐその手を己のアームドギアと謳いし立花響の決意と、装者たちの想いが殺戮者へと伸ばされた『Glorious Break』の一撃。
これまでの軌跡を以って奇跡を踏破せし奇想天外の一手、即ち錬金術との調和を意味する
流れ星──堕ちて燃えて尽きて、そして彼女たちはバラルの呪詛を超克した
まさしく至上至大の覚醒劇。英雄譚にて迎えた
容易ならざる困難という起爆剤を糧に、彼女たちは常に限界を超えるんだよ!
故に彼女たちは吼えるのだ──
『同意である。間の抜けた事をほざくなよ“蛇”め。かの戦姫たちは月への放逐から舞い戻り、更なる進化を遂げ
『
だからこそ、今はこの状況がどうしても度し難い。
此処でフィーネを抹殺するのは容易だが、それでは真の解決にはならない。
永劫の刹那を生きる輪廻転生──リィンカーネーションの理。
遺伝子に刻まれた
とにかく装者たちが真の意味でこの数千年も恋心を拗らせた終焉の巫女を打倒する方法はそれこそ、魂を裁断する
前者はこの時点でフィーネの手元。ならば打倒の方法は後者しかない。
数千年以上も恋心一つで歩み続けた妄執の巫女の説得。うん、普通に無理ゲーだこれ。
そう考えれば原作で立花響の成した偉業が尚の事凄まじいと感じる。
初見でこの妄執に満ちた巫女を言葉と歌で輪廻の軛から解放し依代の内での永眠を選択させるなど、まさしく
──話が逸れた。
詰まるところ、今私が考えるべきは──
この物語の主人公は装者たちで、私は彼女たちの絶望と希望をより色濃く刻む為の
ぶっちゃけ旅路の途中で死ぬのは御免だから不死性を極めるのは良いんだけど、あまりにもその他の
それにどうやらフィーネの行使する謎の黄金ももう使えないみたいだし、誰も見てない今なら多少不自然でも押し切れそうだからこの辺りで区切って痛々しくぶっ斃れたいなぁとも思ってる。
ねえねえ神様。このチート女神変生なんだけど何かドン引きする様なエグいフィードバックとかないの?
『ふむ、確かに変生の代償は甚大である。陽だまりとは違い“巫女”の人格で世界の根源へと接続し叡智を貪るなど、まさしく瞳を捧げし
おお! そう言うのそう言うの! 最高だよ神様!
『まあ我と蛇の権能を併用し代償を踏み倒している故、問題は全くないのだがな』
『
はぁ〜無能すぎる。なんでそんなに全能なの? 私恥ずかしいよ。
『秒で矛盾を吐くな我が代行』
『
うん、そっか。ならさ──その反動を全部私に押し付けちゃおうか。
『──ほう。良いのか?』
それこそ愚問だよ神様。
私にとって全知全能なんて、この世界を都合よく回すための手札でしかないんだ。
この身体が最後の最後に滅びの運命を迎える事にも頓着はないとも。
それで戦姫たちが絶望して、その先に笑顔の花を咲かせてくれるのなら──嗚呼、
『くはっ。良い、良いぞ我が代行。狂い哭け、お前の末路は“終焉”だ』
内に巣食う半身の一声、その後に──私は、地獄を見た。
█
「──あれ?」
「……!」
漆黒の
四肢は喪失に震え、瞳は智慧に富んだ光を失せ揺れ動き、神から人へと転墜した少女が地に臥せる。
「──っ、────!!」
叫び声すら、もはや上げられない。
深淵の叡智に触れた傲慢の代償。肉体は炭化と再生を繰り返しながら緩やかな崩落を地獄の連鎖として味わい、内臓は幾つもがその負荷に耐えきれず破裂し、血液の逆流によりその組織を崩しかけている。
『
『
『
「そう、これが……代償……なのね」
少女が、血を吐きながら全てを察する。
これぞ最奥に近づいた傲慢なる蛇への代価。
甘んじて受け入れろと惑星概念の記憶が罰を下す。
「ふふっ、希望を見せて……取り上げるなんて……“カミサマ”は意地悪だ……」
「──っ。待て! 私を見ろフェイルノート! お前は……お前は一体何と“接続”した!?」
倒れ臥す少女の名を、フィーネは叫ぶ。
もはやカ・ディンギルの起動すら慮外のこと。
先ほどまで世界を焼き付くさんばかりに燃え盛っていた嫉妬の炎が瞳より失せ、深淵を追い求める探求者としての光が煌めいていた。
知りたい。知らねばならない。
あれは己が数千年も待ち望んだもの──月を穿つ巨砲と既存文明の破壊。彼女の描いた青写真が、
「私は、お前を──!」
手を伸ばす。無力に斃れた巫女へと。
神への祝詞を捧げ寵愛を賜った神巫。
嫉妬もしよう、憎悪もしよう。されど、それはそれだ。
頭蓋を砕き脳を観察しよう。
胸を開き心の臓腑を薬液に漬けよう。
瞳をくり抜き目を合わせ、お前の見た深淵を己にも見せろ。
狂気に塗れた思考がフィーネを支配する。
それも当然のことだろう。
激闘で痺れた感覚が収まり、宿痾に苛まれた覚醒者から恋するただの乙女に戻るには十分な衝撃であった。
BILLION MAIDEN
「イリスに──触れるなぁぁぁっ!」
「っ!」
そんな巫女の不埒を許さぬ鉛玉が、怒りと共に放たれた。
東京スカイタワーへの陽動として放たれたノイズを殲滅した戦姫達が、残骸と化したリディアンへ帰還した。
「待て、先走るな雪音!」
「てめえだけは……てめえだけはああああぁ゛!」
「──っ。立花、アイリスを頼む!」
「はいっ!」
地に伏せた大切な友の姿。
それを見た瞬間。クリスは激情に駆られ銃爪に指を掛け、翼の制止すら無視して突貫する。
「アイリスちゃんっ! しっかりしてアイリスちゃん!」
「ひびき、さん……」
小さな身体を、日輪が抱き寄せる。
蓄積された神殺しの呪詛により触れられるだけで肌を刺す様な痛みを感じながら、アイリスは響の名を呼ぶ。
「ごめんなさい……私、響さん達の帰る場所……守れなかった」
「──っ! 大丈夫、大丈夫だよアイリスちゃん……!」
それはその腕に抱く少女にかけた言葉か、それとも自分に言い聞かせるために放ったものなのか。
安否も不明な愛しい陽だまりと大切な学友。そして二課の人々。
壊された大切な刹那にてあったはずの笑顔を思い返しながら、荒墟と化したリディアンの跡地に視線を向ける。
⚫︎アイリス・フェイルノート
面の皮が厚すぎるカス。
全知全能を得て調子に乗ってる。
⚫︎シェム・ハ
最高だぞ我が代行♡ そのまま苦しみ抜いて英雄譚の礎となれ♡ とのこと。
⚫︎ネフシュタンの鎧
トンチキどもの中での唯一の常識人枠。
他鎧デザインの最終候補は月天女服と殺人姫の青ドレスだったらしい。なお同居人の神に却下された模様。
⚫︎フィーネ
幼女に心をぐちゃぐちゃにされた隠れ被害者。
もし捕まえたら生きたまま解体してその原理を暴くとのこと。
⚫︎現在の二課
弦十郎さんは騙し討ちされて重症。原作通りフィーネが本部のシステムを全て掌握してる為、どこぞの秘密結社や奇跡ぶっ殺錬金術師や護国の外道が密偵使って隠し見でもしない限り幼女の覚醒を知るのはフィーネのみ。
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