僕と私のあるてぃめっと   作:三奈木イヴ

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あるてぃめっと第9話
生活も落ち着き筆が進んで楽しいです。


花火を相手のゴールにシュート!!

「〜♪」

 

お風呂場にシャワーの音と僕の鼻唄だけが響いている…。

 

「ふふふん……今年の春は……」

 

何度歌っても良い曲だな〜僕もいつか楽郎と…………なんて。

 

……やっぱり()は──彼のことが好きだ。

 

そんな事は何度も考えたけど……楽郎は気づいてくれない。

何度かそういう雰囲気に持っていこうとしたけど、邪魔が入ったり、楽郎の朴念仁っぷりが発揮されただけだった。

 

「やっぱり…僕に魅力が無いからなのかな…?」

 

そんな事を呟きながら、僕は自らの胸に手を当ててみた。

男の人は大きい方が好きって聞いた事あるけど……楽郎もそうなのかな。

 

なんとなく揉んでみたけれど、効果なんてあるのかな……?

 

「……何やってんだろう、僕……」

 

変なことしてないで、さっさとシャワー済ませちゃおう。

 

◆◇

 

「さてと。……この辺かな?オラァ!!」

 

「のわっ⁉︎」

 

「おっ、当たりだ」

 

襖の向こうで待ち伏せているバカどもなんざ、俺にかかれば大体の位置は予想できるんだよ!無縁仏に沈みやがれ!!

 

「ゲェ!?祭囃子!?」

 

「おい!人数集めろ!もしくはランカーを…!」

 

「ふざけんな!ここで全員切り捨ててやるよ!!」

 

ランカートレインなんてされちゃたまったもんじゃねえよ。さっさとこいつら始末するぞ!

 

「天誅‼︎」

 

天誅──それは人斬りの業を天に擦り付ける魔法の言葉。

だって天がやれって言ったんだからね、俺は悪くないもんな!

 

「おや、最近よく見る人がいるじゃないの」

 

背後に気配を感じ、戦闘の最中に拾った刀を気配の方へ投擲した。

ここが普通のゲームなら食らってそのままお終いなんだろうが、生憎ここは幕末だ。そんなもの避けて当たり前の修羅共がウヨウヨしてやがるぜ!

 

「ん?誰だ……って、銭鳴氏か…!また面倒なのが……」

 

結構面倒なのが来やがったな!クソっ!

 

「はいはい、そこの人たち、君達は一回無縁仏に帰りなさい!天誅!!」

 

「なんだ…?何が目的だよ⁉︎」

 

普段のコイツとの関係は殺し殺されだったが、今回もそうなのか?いやでも、辺りにランカーは居ないようだが……特に吹雪狩とレイドボスさんな……。

ランカーなんて誰が来ても厄介だが、特にあの二人はマズイ。

 

「京極ちゃんの事でちょっとね」

 

「京極?なんでまた?」

 

最近よく京極の話題が出て来るけど、一体なんなんだよ。

危なっ!

 

「まあまあ、とりあえず」

 

「「天誅!!」」

 

話すのはコイツらを退けてからってな!!!

 

◆◇

 

「……いや〜危なかったね」

 

「最後はお前だけだな……と言いたいとこだが、なんなんだよ」

 

この人、京極とたまに話すとは聞いてたけど、今日は一緒じゃないみたいだ。

まあ、京極には俺も用があったからちょうど良かったが……話をしようにもここは幕末だ。立ち止まればどんどん(プレイヤー)が湧いてくる。

 

「天誅!!」

 

「で、なんだよ、話ってのは!?」

 

「祭囃子!銭鳴!大人しく天誅されろ!!」

 

「チッ…とりあえず、逃げるぞ!」

 

「了解!」

 

戦いながらなんとか話をしようと試みるも、数が多い。

銭鳴氏と談合して逃げることにした。

 

「ねえ!祭囃子!?」

 

「なんだよ!?」

 

迫り来るプレイヤー達を天誅しつつ逃走し、時々会話を繋げる。

だけど、避けながら会話に集中するのは大変だ。数が多すぎる!

 

だが、難しいほどテンションが上がる!でも今は話を聞かねえとな!

 

「京極ちゃんの事、どう思ってるの!?」

 

「なんでみんなそんな事聞くんだよ!?」

 

「……なんでわからないのよ?京極ちゃんの気持ちを……っ!?」

 

俺は、その言葉を最後まで聞き取る事ができなかった。

 

「…………」

 

「京極」

 

どこからともなく京極が現れ、その手に持つ刀で銭鳴の胴を突き刺したからだ……。

 

「ありがとう、銭鳴さん……。天誅。」

 

言葉も無く、銭鳴氏は死んだ。

 

「き、京極……」

 

京極の視線がいつもよりも強く感じた。

…そういえば、銭鳴氏は最期に何を言おうとしたんだろうか?

 

「……楽郎!」

 

「っ……!」

 

京極の力の籠った声に、思わず気圧された。

それと同時、俺を背後から斬ろうとしたバカタレを天誅だ。

 

「楽郎、僕は……ううん。()は……!」

 

京極が刀を納め、何か言い淀んでいた。

切った張ったが当たり前のこの修羅の世界だったけど、今この瞬間だけは全く違う雰囲気が肌に刺さった。

 

「私は……楽郎の事が──」

 

先の言葉は────1()()()()()によって阻まれた。

 

「っ!!」

 

「京極ーー!!」

 

京極は、あいつ(くいっ)に頭を撃ち抜かれて死んだ。

さてどうしたものかと考えるまでもなく、俺は前に出た。奴(くいっ)の後手での対処といえば鍋の蓋や花火だ。だが今は花火が無い。とりあえず、逃げよう。

 

「──うわ、あぶねえ!」

 

咄嗟に地面を転がり、矢によるダメージは回避した。

だが足元には矢が刺さっている。火薬庫!火薬庫行くぞ!

 

「くっそぉ、こんな時に花火持ってないとはなぁ……」

 

「祭囃子!ここであったが100年目!」

 

「すまないが後は頼んだ!」

 

「はっ……?ぎゃあ!」

 

偶然出会った名もなきプレイヤー。今は逃走中。

やるべき事は一つ。

 

「成仏しろよ……」

 

心の中で手を合わせた。まあ実際に死ぬわけじゃないしすぐリスポーンするけど。

 

「京極も早く戻ってこないかなぁ!?」

 

さっき何か言おうとして死んだから聞こえなかったんだよな!?

 

「あっ」

 

なんて走りながら考えていると、道端の石に躓き、そのまま矢で頭を撃ち抜かれて死んだ。

 

◆◇

 

「……もう、また伝えられなかった……」

 

銭鳴さんも話題を振ってくれたけど……楽郎も楽郎でなんで気づいてくれないの……。そして頭を撃ち抜かれたのは……隙を見せた僕が悪いな、うん。

 

「……そういえば、お母様が言ってたっけ。恋の秘訣は『まずは外堀を埋めろ』って」

 

楽郎の家族の人と仲良くなったりって事だよね? 確か楽郎の家族って…………そうだ、妹が居るって聞いたことがあるな。

 

……もしも知り合えたら、とても心強い味方になりそうだね。

 

「でも……國綱兄様との試合もあるから、うかうかしていられない」

 

僕はペンを取り、試合当日の所に印を付けた。

 

……もし本当に動くのならば、猶予はあまり残されていない。

龍宮院家次期当主に勝つという事は、生半可な努力じゃなし得ないことだ。私が直接教えるだけじゃなく、実践の経験も必要だ。幸いなことに実践相手は湧いて出てくるけど、あわよくば私が相手したいなぁ。

 

「……ハッ⁉︎ もしあの時、想いを伝えてたら楽郎にとってノイズになったんじゃ……⁉︎」

 

私は自分の過ちに気づいてしまった。

大事な試合を前にして感情が大きく揺さぶられるような事があると集中出来なかったりする人がいるのは知ってるはずだった。なのに私は……そんなことも忘れていた。

 

「……でも國綱兄様に勝てば、ちゃんと言えるんだ。それなら尚更……私も頑張らないとな」

 

私は床に正座し、そのまま瞳を閉じた。

昂る感情を鎮め、次を考えるために。

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