リクエストが多かっ二人の飲み合いがどうなるのか…そんな1200字の短編です。お納めください。
カランカランカラン
店先のベルが鳴り、人が入店したことを示す。
特徴的な緑髪、口髭を蓄えた彼は徐ろにカウンターの席へと進むと、一人の男の横に座った。
知り合いなのだろうか?普通であれば席を一つ開けたりもするはずなのだが、その男が座った席の隣にいるパーマ頭の男性は気にするような事もなく、手に持ったグラス、その中身をチビリと口へと運んだ。
「マスター、こちらの人にマッカランをロックで頼む。」
「よろしいので?」
パーマ頭の男はこの店の店主にそう言うと、その言葉に半ば強引に勧められたそれに少しの躊躇を見せながらも、緑の叔父さんはその言葉であからさまに聞き返す。
「ワインを嗜むのでしょう?なら、フルーティな味わいを楽しめる、これのほうが良いだろう?それに、ここでワインでは雰囲気的にどうかと思ってね?」
「……そうですか、ではありがたくいただきますよ。」
マスターが用意するそれを手に取り、緑の叔父さんは僅かに口に触れると……、その香りと口当たりを楽しんだ後にその物に驚きを示した。
「まさか…ある所には有る……ということですか。西暦のそれですね?」
「どうだろうな?俺は酒にはあまり詳しくないんだが…、ここの店主の趣味でね?とっておきをくれただけさ。」
恐らくは安くても車を買えるであろう、そんな高級なスコッチであるが、それを飾るものではないとするのが、ここの店主の方針らしい。
よくよく見れば、ズラリと並べられたそれらは名のしれた物である。
思わず息を呑む彼だが、そんな事気にもせず呑みに来ているこの男が、随分と図太く思えていたが、そんな行動とは裏腹に気楽にしているのだから本物だと思った。
暫く2人で寂しくチビリチビリとしている。
弾むような話もなく、黙々としているものの互いに互いが何を考えているのか、何となく分かっている事だろう。
「……、そう言えばこんなところで油を売っていても良いのか?」
何かを思い出したのか、天パのオッサンは緑の叔父さんにそう声をかけるも、それに対して首を横に振り手を少し拡げておどけて魅せる。
少し酔っているのか、はたまた何も考えていないのか。
「そちらこそ、こんなところで飲んでいてもよろしいので?」
「楽しそうにしているからな、無闇に藪を突かなくてもいいのさ。だから、気楽に生きたいんだよ。」
そう口にすると、一気にグラスの中身を飲み干す。
そして、横を振り向くようにすると徐ろに右手を差し出した。
それに対して叔父さんもまた、グラスの中身を飲み干すと向き直り、互いの手と手を取り合い互いの肩を叩く。
まるで親友のようにする二人であったが、互いに会うのは初めである。
と言うことは、知らない相手にこの様な事をしているわけで…ニュータイプとは、かくも素晴らしい物であり隠し事も出来ない。
ただ、誤解なく分かり合うというのはこれ程の物であるようだった。
「取り敢えず、今日は飲み明かすかい?」
「ええ……、たまには良いものです!新しき友人に…」
再びカウンターに向き合うと、二人はまた酒を煽り始める。
飲まれることもなく、ただゆっくりとその時は流れていった…。