前回、ハウラ達はお疲れ様会を開催。
今回、ハウラと藍染にトンズラされた黒崎と死神達のその後。
「…う…うん…ここは…俺の…部屋?」
「「「黒崎(君)!」」」
「目が覚めたか一護」
「…みんな…俺は…」
「貴様はひと月程眠っていたのだ」
「そんなに…?」
「あぁ」
「…って、俺の力は!?」
魄睡辺りに片手を当てながら飛び起きた。
そんな彼を気遣うような表情でルキアは話を続けた。
「…その、浦原から聞いたのだが…貴様は…死神の力を失ったそうだな」
「…そうか、聞いたのか…どうもそうらしいぜ。死神代行も返上しねえとな」
「…彼奴曰く、消失の第一段階では激痛を伴いながら意識を失い、断界の中で起きた時間経過が逆流する…髪が短くなっておるだろう?それは我々が切った訳ではないぞ」
「…そうなのか?」
前髪をそっと触りながら聞き返した。
「あぁ…元の長さに戻ったその時点で死神の力を失い、第二段階で残った霊圧が安定して目を覚まし…数日の時間をかけて残る全ての霊力も消えてゆく…と」
「…そうか」
「…驚かぬのだな」
「…まぁ…な」
「…そうか…ならば、意識を失う前のコトだが…何処まで覚えておる?」
「え?えっと…」
ハウラ達が虚圏へと帰って行き、浦原さんと合流、通信機越しにハウラ達と話をした。
その後は、ハウラ達が置いて行った段ボール箱の中身を浦原さんと共に確認し始めて少し経った頃に、ハウラ達が使った黒腔から井上達が戻って来て、漸く情報を共有出来た。
その結果、ハウラのイタズラ(嫌がらせ)と情報操作にそれぞれがしてやられた事をお互いに知ったところで全身に激痛が走り意識を失った。
「…まぁ、ハウラは虚夜宮の空を飛ぶのが好きらしいからな。どうしても虚夜宮を壊されたくなかったから、藍染の事を敢えて言わなかったんだろうな」
「…其処までは覚えておるのだな…ならば、その後に何があったのかを伝えておこう」
「…あぁ、頼む」
倒れた黒崎だけでなく、連れ去られた井上は勿論、救助に向かった者達は4番隊と12番隊で精密検査を受けた。
結果、涅マユリ以外異常無し。
寧ろ、あの立体迷路で能力や霊圧を底上げしただけでなく、剣八に至っては十刃達との戦闘で、始解を会得する事に成功した事。
涅マユリは技術開発局の誰も知らない未知の麻痺毒を全て解毒するのに時間がかかり、数日前に漸く復帰した事。
「そうか…剣八が始解を…まぁ、涅マユリはあれだけど、みんな無事で良かったぜ」
「…良くないのは此処からだ」
「…え?」
藍染の置き土産を精査するべく、全て12番隊に運び込まれた。
既に幾つかの箱は浦原が調べていたものの、それらは既に彼も研究していた内容(虚化等)とほぼ同じ結論に至ったものばかり。
他には、瀞霊廷で起きた過去の事件についての考察、或いはその計画の走り書き。
大半は偶発的に起きたものだが、一部は藍染達が仕組んだものであった事。
「…マジか」
「未調査だった余罪の自白に等しい証拠提出に面食らった者もいたらしい…」
そして、本当の問題は此処からだった。
置き土産の段ボール箱はかなりの量があった。
それらを調べ始めて半日が経った頃(ハウラ達とスタークが尸魂界に運び込んで22時間が経つ頃)、誰も想像していなかった異変が起きた。
開けた箱から突然隼と黒猫の群れが飛び出し、隼は部屋中を飛び回り、黒猫はまだ開けていない箱を爪で引っ掻いたり、精密機器の上に上ったり、縦横無尽に駆け回った。
皆が面食らっている間に隼の数体が同時に虚閃をぶっ放し、壁に大穴を開けて消えた。
「なっ…」
「隼と黒猫の群れはその穴から逃亡、あっという間に外へと飛び出して、瀞霊廷内だけでなく尸魂界の至る所にこのようなビラを散蒔いたのだ」
ビラには腐敗仕切った貴族達(全て名指し)の醜聞に四十六室の汚職に揉み消し、箝口令を敷いたり表沙汰にならぬように細工した、過去に死神が起こした事件の詳細…だけでなく、瀞霊廷に住む者達が流魂街に住む者達を下等生物として見下している等とかなり誇張された文面までもが表と裏両面に書かれていた。
「こ、これは…」
「これを目にした流魂街の住民達が、連日瀞霊廷に詰め掛けてな…その火消しに奔走中故に、選び直す事になった四十六室は後継が中々決まらず、市丸ギンの裁判もまだ始まってすらおらぬ」
「お、おぉ…」
隼と黒猫を捕らえるよう命令が出たが、如何せん素早いだけでなく「誰かが操っているのでは?」と疑いたくなる程の高い回避能力に皆舌を巻き、何とか捕らえたと思いきや、目の前で大量のビラを散蒔きながらアッサリと消滅した。
因みに、残りの隼と黒猫は三日三晩、より過激な文面が書かれたビラを散蒔きながら飛び回り、逃げ回った末に姿を消した。
「…な、なぁ…それって…」
「ハウラの羽根に違いないだろうな。井上と浦原喜助だけでなく、此方に引き揚げて来た隊長方からも既に証言を得ている。条件を満たすのはあの者の羽根以外に考えられん…と」
「…だよな」
ハウラの羽根には1枚につき最大で3つの能力付与が可能な上に羽根同士のカバーも可能。
故に組み合わせ次第でどうとでも出来る。
しかも羽根は抜いてから丸1日は存在するとか。
仮の話だが、発動させる時間を指定する事も可能だとしたら、この状況の説明も出来る。
完コピの総数は不明だが、彼女達に遭遇した者達の証言から推測して最低でも8体は居た筈である。
それだけ居れば、大量の隼と黒猫を仕込む事も可能だろう。
しかも、彼方には藍染が居るのだ。
各隊の施設や隊舎内部、その構造の詳細を幾らでも知る事が出来るだろう。
そして、瀞霊廷に段ボール箱が持ち込まれれば、もう此方のもの…と言ったところだろうか。
藍染の「直に、それどころでは無くなるだろう」とは、この事を言っていたのだろう。
ハウラは虚夜宮に帰って尚、更なる混乱と時間稼ぎを成功させたと言える。
「あ、あのね黒崎君」
この1ヶ月の間に尸魂界で起きた事をひと通り教えて貰ったところで織姫が話しかけた。
「どうした?井上」
「これ、黒崎君が眠っている間にみんなで取ったノートなんだけど…」
「お、おぉ…サンキュー。助かる」
「うん、それとね、えっと…」
「…どうしたんだ?随分、歯切れが悪いけど…」
少し困ったような顔の織姫は複雑な表情のチャド、石田と顔を見合わせ、意を決した表情になって特大級の爆弾を投下した。
「ハウラちゃんとメノリちゃんがね、妹のラウラちゃんとローラちゃんを連れて、私のバイト先のパン屋さんでスタッフとして働いてて、その近所に住んでるの」
暫
し
の
沈
黙
そして、
「っはああぁぁぁああ!!??」
黒崎の大絶叫が響いた。
「何でアイツが!?ってかアイツに妹ぉ!?ラウラとローラって誰だ!?」
ごもっともな疑問で、混乱するのも無理は無い。
上手く説明出来そうに無い織姫の代わりに、石田が経緯を説明した。
「…井上さんの話を纏めると…どうやらハウラとメノリの2人は以前、井上さんのバイト先のパン屋の商品を食べた事があったらしい。そして、その味を気に入ったハウラは自身のコピー達をパン屋に行かせて、雇って貰えないか交渉したらしいんだ。ご丁寧に偽造した運転免許証とパスポートで身分証明もしてね」
「…それって、いつの話だよ」
「多分、井上さんが特訓の為に尸魂界に行っている間…だよね?井上さん」
「うん…凄くビックリしちゃった」
「そりゃ、そうだろうな…」
藍染の野望を止められるか否かの戦いの裏で、自分の欲望を叶える為にコピー達を動かしていたなんて、誰も想像すらしないだろう。
頭を抱える黒崎にルキアは痛ましい表情を浮かべつつ、懐から見覚えのあるラミネート加工された紙を取り出した。
「…それって…」
「井上からの連絡を受けて、急遽私と浮竹隊長、そして京楽隊長が現場に急行してな…その時に交わした彼奴との契約書が此処にある。読むか?」
「…あぁ」
書いてあるのは至極真っ当なモノで、冒頭に
〈ハウラ達の現世への滞在目的である『雇用先の商品の作り方を全て修得する』が終了する迄の期間、双方共に以下の事を厳守する事〉
とあった。
・ハウラ達は人間として生活する事。
・人間に害を与えない事。
・死神達の業務への妨害行為全般を禁じる。
・揉め事を起こした場合、全ての責任はハウラ本体が負う事。
・メノリ=マリアを心身共に害さない事。
・メノリ=マリアを害した場合、害した者はハウラ達からの如何なる報復も全て受ける事。
・死神はハウラ達を監視するのは良いが、行動の制限、干渉を禁ずる事。
ひと通り読んだ黒崎は何とも言えない表情でルキアに問うた。
「…相変わらずメノリが大事なんだなアイツ…てか、このハウラ達の行動制限と干渉の禁止って大丈夫なのか?」
「…それなのだが…私達なりに調査をした結果、「彼奴は本当に虚なのか?」と改めて問いたくなるくらい、人間社会に溶け込んでおるのだ」
「え…?」
「問題ひとつ起こさぬどころか、寧ろ人間同士の争いの仲裁役を買って出たりしておる」
「なっ…マジかよ!?」
「うん。先週の事なんだけど…私のバイトの時間とハウラちゃん達の勤務時間が被った時にね、クレーマー対応をラウラちゃんがしてくれたの。凄く毅然としてて、格好良かったよ!」
「…そう言えば…そのラウラちゃんとローラちゃんてのは誰の事だ?」
「ハウラちゃんのコピー達の名前だって」
「…まぁ、全員ハウラと名乗る訳にはいかないから、似たような語感の名前を名乗る事にしたのだろうな」
「…俺も様子を見に行ったが…彼女達は三つ子として普通に働いていたぞ」
「…ウソだろ…」
唖然とした黒崎を、論より証拠だとみんなでパン屋に連れて行った。
そして…
「…マジで働いてる…!?」
店の中で、接客スタッフとして営業スマイル全開で会計をしているハウラと、同じく笑顔で外国人相手に商品説明をしているらしいハウラ、そして調理場から焼き立てのパンを手に、やはり笑顔でお客様の間を器用にすり抜けて商品を陳列するハウラとそれに付いて行くメノリがいた。
「…信じられねぇ…」
目の前のハウラ達の様子を見ても、目を疑わざるを得ない黒崎の肩を石田と茶渡それぞれが軽く叩いた。
ーその気持ち、良く解る(よ/ぞ)ー
そんな思いが伝わって来たような気がした。
ふとハウラと目が合った。
織姫以外の面子に黒崎一護も加わっているのを見たハウラは、何となく彼等の目的を察したらしく、笑顔で手招きして来た。
ガチャッ…チリンチリン…
「いらっしゃいませ~!今日のオススメはブリオッシュですよ~!ちょうど今焼き立てが並んだところですよ~!オヤツに如何ですか~?」
ハウラの言葉だけでなく、織姫からも太鼓判を押されてブリオッシュを人数分+ハウラ達4人分を購入。
会計の時にレシートと共に渡された紙の指示に従って近くの公園で4人を待った。
「「「やっほ~!黒崎は1ヶ月振りかなぁ?」」」
「…あぁ」
ハウラ達の口から、何故あの店で働いているのかを聞かせて貰ったが、ルキア達が言っていた通りだった。
「…マジか…」
「ん~…確かに私は基本的に面倒くさがりだけど…けどさ、目的が出来ればどんな事だってするよ。それこそ人間社会のルールだって守るし、信頼される為の努力だってするよ。目的達成の為の労力は幾らだって割いて見せるよ。それが私だからね」
ハウラは目を逸らす事無く胸を張って言い切った。
後ろのコピー2体もしっかり頷き、メノリは苦笑している。
「…そう…か」
ハウラは約束(契約)を破る事は絶対に無い。
それだけは確かだ。
目的達成まではどんな事もやり遂げるだろう。
だったら、
「…頑張れよ」
「うん!」
彼女達を疑い続けるよりも、応援してやるべきだろう。
そう思った。
ほぼ原作の通り、一護とルキアの遣り取りを書いて終わりにしようと思っていたのですが…。
ふと気付いてしまいました。
「もし藍染の王鍵創生が叶っていたら、あのパン屋も無くなるよね?」
そして、
「気に入ったモノへの執着も相当なハウラが何もしないとかありえなくない?」
…その結果、本文の通りになりました。
何処までもマイペースで己の欲望に忠実なハウラ。
勿論、藍染の許可はしっかり取っています。
これで終了にするか否か考え中です…。
〈頭の整理の為の時系列表(今回の戦争の裏側)〉
ウルキオラに付いてって冷蔵庫を購入。
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グリムジョー達を連れて冷蔵庫の受け取りに。
※この時行ったパン屋が織姫のバイト先。
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とても美味しいパン屋なのに、藍染の王鍵創生で消滅の危機。
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急遽、ザエルアポロにコピーを追加依頼。
↓
藍染を交えてコピー達に事情を説明。
藍染の許可を貰ってパン屋へ向かわせた。
ハウラ本体は罰である食事係の真っ最中。
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無事、採用。
コピー達勤務開始。
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転界結柱が設置され始める。
↓
織姫、虚夜宮へ。
コピー達、「身内に不幸があったから」とそれらしい理由を付けて数日間の休暇を要請。
許可を貰って避難。
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死神達との戦争。
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戦争終了。
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本物の空座町が元の位置に戻る。
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空座町の日常再開。
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隣町から空座町入り。
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勤務に復帰。
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メノリ、コピーと入れ替わったハウラ本体の紹介で採用された。
↓
今に至る。