もちろんクロスオーバー先は、
電撃文庫出身で、イラストレーターがしずまよしのりな小説「魔王学院の不適合者」です!
核心に迫るネタバレは両作品ともないと思いますが、魔王学院の不適合者は4章(アニメ2期)まで読んでいたほうがいいと思います。
もちろんクロスオーバー先は、
電撃文庫出身で、イラストレーターがしずまよしのりな小説「魔王学院の不適合者」です!
核心に迫るネタバレは両作品ともないと思いますが、魔王学院の不適合者は4章(アニメ2期)まで読んでいたほうがいいと思います。
赤、青、黄、緑と、彩度がやたらと高い森に、深緑色のシボレー・シェベルSS396が停車している。この森の彩度が高いのは、花や葉のせいではない。
キノコのせいであった。
「ネモくんネモくんっ。このキノコ……。なんだかえっちじゃないですか?」
笠が赤くて広い、高さ20cmほどのキノコを指さして、シスター服に身を包んだ金髪の美女がそう言った。
彼女の名はイグニス・ファルフレーン。彼女が話しかけた相手は、ネモという青年だ。彼が着ている開襟シャツには、可愛くデフォルメされたサメのキャラクターが描かれている。
「ん? いやぁイグニス。俺はこのキノコのどの辺りがえっちかよく分からん」
「赤いキノコの下で、黄色いキノコが2人、肩を寄り添っています! これって相合い傘じゃないですか!」
「相合い傘ぐらいでえっちとか言うな! 中学生以下じゃねぇか!」
そんな漫才に興じる二人の後ろから、パンツスーツを着た獣人が歩いてくる。獣人といっても全身が灰色のもふもふに覆われ、スラリと伸びたマズルが特徴の「ガチ」な獣人である。ちなみに特筆すべきデカケツがコンプレックスな24歳の女性である。名をヴァーテウス・ガガカという。
ガガカが訊ねた。
「で、そのキノコは食えるのか?」
「ガガカの嗅覚で分からねぇの? それか、特定奇跡災害対策機構の特別捜査官としての知識でよぉ」
「あいにくウチの機構でもこんな森やキノコの存在は確認してねぇな。これが奇跡災害だったら、第一発見者であるアタシが何とかしなきゃならないが」
ネモとガガカがそんな応酬をしていると、笠が赤くて広いキノコをもいで、聖女イグニスが言った。
「まぁ、とりあえず食べてみましょう」
ネモとガガカが止めるより早く、イグニスはキノコの赤い傘にかぶりついてしまった。
味の感想を言うより早く──。
イグニスの端正で美しい顔が、パァッと華やいだ。
「おっ……!おいしい! 美味しいです! 例えるならば、そう……! 死ぬほ……ドォ……!?」
嗚呼なんと儚いことか。赤黒い血を吐いて、聖女イグニスは死んでしまった。
しかし、3秒後にはムクリと起き上がった。
「おはようございます。ネモさん、ガガカさん。前世ぶりですね」
にっこり笑って、イグニスは挨拶する。しかしネモとガガカは「はぁ……」とため息をついた。
「毒キノコかよ。俺、腹減ったわ……」
「アタシもだ」
「イグニスはいいよな。その毒キノコ食えば腹膨れるだろ?」
ネモにそう言われ、イグニスは頬を膨らませた。
「ひどいですネモくん! 毒キノコじゃお腹は膨れませんよ! 舌は満足しても胃が満足しないというものです!」
イグニスは四千年前、強大な力と足りてない知性で一方的に『正義』や『秩序』を世界に押し付けた聖女だった。
今はその力を九十九分割した上で奪われてしまっており、その代わりに不老不死を手に入れた。
今はその九十九分割された力を取り戻して不老不死を終わらせ、老衰で穏やかに死ぬことを目的に旅をしている。
『秩序』を押し付けることがなくなった代わりに、今のイグニスは三大欲求に忠実であった。
ネモはイグニスに言う。
「わかったわかった。毒キノコで満腹なんてしなくていいから。せめてその調子で、食えるキノコを探してくれよ。俺もガガカも、空腹で死にそうなんだ」
「食えるキノコを教えてやろうか?」
そう声を掛けたのは、三人のいずれでもなかった。
ガガカの1メートルほど後ろに、身長180cmほどの細身の男が立っている。黒い髪と黒い瞳。白い制服のようなものをラフに着崩し、口角は彼の余裕と力量を表すように少し上がっている。左腕にはキノコが入ったバケットを持っていた。
ガガカの毛が逆立った。これほど接近されるまで、特別捜査官である彼女が全く気配を感じなかったのは異常なことであった。毛を逆立たたせたまま、彼女は男に問う。
「どうも。アタシは特定奇跡災害対策機構の特別捜査官、ヴァーテウス・ガガカだ。お前さんは?」
「ふむ。そのような組織の名は聞いたことがないが……。そう警戒するな。俺は暴虐の魔王アノス・ヴォルディゴードという者だ。そちらの二人は?」
アノスに眼を向けられた二人が答えた。
「私はイグニス・ファルフレーン。幾千年を生き、かつて世界を治めていた聖女です。しかし、アノスさんの名前は聞いたことがないですねぇ」
「俺はネモっていうんだ。アナタやガガカやイグニスみてぇな肩書きは背負ってねぇよ」
アノスは顎に手を当てて考えた。
「ふむ。俺も聖女イグニスというのは聞いたことが無いな。異なる世界からの迷い人か……? ここが大精霊の森アハルトヘルンの一角にあるキノコの森だということは、理解っているか?」
三人は首を横に振った。
「まぁ何はともあれ、三人とも腹が減っているのだろう? 焼きキノコでも振る舞ってやろうではないか。ついてくるといい」
アノスは三人に背を向けた。ネモはガガカに顔を寄せる。
「なぁガガカ……。あのアノスって男は信用できるのか?」
「奇跡なんて得体のしれないもんを相手にするなら、基本原則は為すがまま──って、前にも言ったろ? あと、あのアノスって男は相当の手練れだよ。下手に抵抗しても無駄だと思うぞ」
するとそこへイグニスも割って入る。
「大丈夫ですよネモくん。キノコを食べに誘われているだけです。最悪の場合でも、私がキノコの毒でぶっ倒れるだけですから」
話し合った結果、三人はアノスについていくことにした。
先に歩いていたアノスは、森の一角に「ふっ」と息を吹きかける。魔王の吐息によって、焚き火が出来そうな砂地が出来上がった。
「火炎(グレカ)。さらに創造建築(アイリス)」
アノスは砂地の中心に、炎属性最弱の魔法で火を灯す。ついでに創造魔法で人が背を預けて座れそうな窪みがある岩を4つ創った。
そして手際よく、キノコに木の枝を刺して、焚き火の周りに並べていく。
ネモ達三人が追いついたときには、あっという間にキノコバーベキューの準備が出来上がっていた。
「座るといい」
「ちょっと待ってくれ」
アノスの勧めに対し、ガガカはストップをかけて言った。
「ひとつだけ、やたら窪みがデカい岩があるな。偶然か?」
「いま創った。各々が最も快適に座れる窪みの形の深淵を覗いたのだが、不服か?」
「不服だよ! とんだセクハラだ!」
「俺なりの気遣いだったのだがなぁ……。座ってから文句を言い直してくれるか?」
ネモとイグニスが「とりあえず座ろうぜ!」「私も早くキノコが食べたいです!」と言うので、ガガカも黙って岩に座った。
座った結果は──。
「どうだ? 俺の魔眼に狂いはなかっただろう?」
アノスの問いに、三人はうっとりしながら答えた。
「はぁ〜。落ち着きますねぇ」
「身体にぴったりフィットする感じ! 職人さんがいい仕事してんなぁ!」
「映画館とか飲食店の椅子は窮屈だと思ってたが……。アタシにはこれぐらいの大きさが必要だったのか……」
そんな三人の前に、串に刺さりながらぷかぷかと浮くキノコがやってくる。
焼き上がったキノコをアノスが魔力で浮かせているのであった。
「食うといい。絶品だぞ」
三人はそのキノコの串を手に取る。そしてネモとガガカは怪訝な顔をし、イグニスは目を輝かせた。
茶色で、長さは15cmほど。笠はキノコにしては小さめだが、何故か大きく感じる。極めつけに、茎の根元に丸い球が2つ付いている。
「えっちな形のキノコですね!」
「言うなよ! 気にしないでおこうと思ったのに!」
イグニスの感想に、ネモのツッコミが飛んだ。
アノスが言う。
「さっき聖女イグニスが食べて死んでいたのは、『食うと死んでしまうが死ぬほど美味い』という噂と伝承から生まれたキノコの精霊、ベニアイアイダケだ。お前達の手元にあるのは、『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロングダケ』というモノだ」
「いまアームストロングって2回言っただろ」
「対になる雪像の精霊がいてな。その雪像の数に比例して新しく生えてくる。熱い内に食うのがオススメだ」
毒がないことを証明するかのように、アノスが先んじてエッチな形のキノコを頬張った。そして「やはり美味い」と味を褒める。
「じゃあ私も、いただいちゃいまーす」
イグニスも後に続いてそれを食べた。さてお味は──?
「おっ! おいしいです!! 濃厚なキノコ汁がブワッと口に広がって! んぐんぐ……。プチプチ繊維が切れる食感も病みつきになります!」
イグニスの感想を聞いたネモとガガカは、顔を見合わせた。そしてエッチな形のキノコにかぶりつく。
二人は目を見開いて言った。
「うっめぇぇええええ!! 噛めば噛むほど、旨味とキノコ汁が出てくるぜ!」
「うまい!うまい! 噛まずに舐めたりしゃぶったりしてるだけでも、また違った旨味が出てくる!」
その後もアノスは、新しいキノコを焼いたり、収納魔法陣から『マシュマロ』『魔物の霜降り肉』などを出して焼いたりして、三人と共に食事を愉しんだのだった。
『ごちそうさまーーっ!』
食べ終わったところで、イグニスがアノスに話を切り出した。
「アノスさんは、とても優しい人なのですね」
「よせよせ。空腹に喘ぐ旅人を助けた程度で『優しい』と言われるのは、むず痒いものがある」
するとネモが言う。
「アノスさんよ、諦めてくれ。俺の相棒はそういうヤツなのさ。治安がクソ悪い街でリンチされてぶっ倒れてた俺を『優しい人』認定してくるぐらいなんだから」
「ほう。だがネモ。もしそれでお前が本当に『優しい人』だったなら、イグニスは大した魔眼の持ち主だと言えるな」
「そりゃどうも。で、アノスさんはこんな優しい人なのに、なんで『暴虐の魔王』なんて物騒な二つ名を背負ってんだ? 厨二病じゃないだろうな?」
「くはは。そう呼ばれても仕方ないことはしているぞ」
「厨二病ってコトか……」
「違うが?? 厨二病は俺の父さんだ。元、だがな」
アノスは大雑把に自らの覇道を話した。
人の国を滅亡させ、精霊の森を焼き払い、神々すら殺して、暴虐の魔王と恐れられた男の話である。
「鬼だの悪魔だの外道だの。お前が生きてるとこの世の為にならないだの、世界のために死ねだの、と言われてきたものだ」
心痛な面持ちで、イグニスは訊ねた。
「今は……どうなんですか?」
「今か? 母さんやミーシャが作ったキノコグラタンを食べ、サーシャにツッコミを入れられ、父さんの厨二病ごっこに付き合い、レイやミサやエレオノールと仲良く語らいながら、平和に過ごしている。たまに分からず屋や愚か者が湧いてくることもあるが、まぁ殺すほどの者はあまりおらぬな。軽く撫でて躾けてやれば、どうということはない」
「私と違って、アノスさんは、力に溺れなかったんですね」
「ふむ。イグニス。お前はかつて、世界を治めていた聖女だったのだろう? どんな治世だった?」
「……アノスさんのように、うまくやれませんでした」
イグニスは大雑把に自らの過去を話した。
傲慢で暴力的に秩序を押し売りする。説教は丸暗記したビジネス新書のようなものからの受け売り。最後には、最も信頼していた者たちに裏切られ、能力を九十九枚の契約書に分割した上で奪われた。代わりに不老不死を手に入れて生き残ったが、自らの過ちに気づくには数千年を要したと──。
そしてイグニスは、旅の目的も話した。
「私の目的は、全ての力を取り戻して不老不死を終わらせた後、老衰で死ぬことです。それ以外の死因はまっぴらごめんです」
「ふむ。しかし、力を取り戻せば取り戻すほど、お前は……」
「傲慢で暴力的に秩序を押し売りする……。愚かな聖女に、孤独な化け物に、近づいて、戻っていくのでしょうね……」
すると、ネモとガガカが口を挟んだ。
「そんな結末には絶対させねぇよ。俺の人生を賭けてな」
「アタシもさ。ネモの覚悟が本物だと信じたから、上からの指令に逆らってでも、二人に同行してる」
二人の決意を秘めた目を見て、アノスは穏やかな笑みを浮かべた。
「お前たち三人は固い絆で結ばれているようだ。お前達の旅路に、俺がキノコバーベキュー以上の余計な施しをする必要は無いらしい」
「そいつはどーも」
ネモがそう言った後、アノスは人差し指を立てて言った。
「その面白おかしい旅が、終わった後のことを考える気はないか?」
「どういうことですか?」
イグニスの疑問に、アノスが答えた。
「イグニスよ。お前が全ての力を取り戻せば、今の数十倍の力を得るのだろう? 今ですら本気を出せば、中々強そうだが……。そんな強大な力を、世界が見過ごすと思うか? 認めると思うか?」
「……難しいでしょうね……」
「力を隠して細々と暮らしたり、不老不死もろとも力を捨てたりするのも手だろう。そして……俺の世界で余生を過ごすという道もある」
ハッとした三人の目線が、アノスに向けられる。
「幾千年を生き、傲慢かつ暴力的に世界を治めていた聖女の力……だったか? そんなくだらぬ力に冷たい目を向けるほど、俺の世界は弱くない。お前が力に酔ったら、俺が、レイが、シンが、ミサが、エレオノールが、そしてネモとガガカが止めよう。壊れたものはミーシャが創り直してくれよう。お前達の涙や悲劇は、サーシャが滅ぼすだろう」
一息ついて、アノスは断言した。
「力に酔ったぐらいのことが、悲劇の引き金になるとでも思ったか」
三人は「ふふふふっ」と軽く笑った。
「それは、ありがたい申し出ですね」
イグニスはそう言うと、続いてネモが言った。
「あぁ。大変魅力的な提案だぜ、魔王様よ。しかしそのステキな未来と、このキノコバーベキューの代金は、どう払えばいいんだ? 魔王のアノスさんは何が欲しいんだ? 全力のイグニス以上の力を持ってるなら、何でも手に入りそうなもんだが」
「ふむ。そうだな……」
アノスは顎に手を当ててから言った。
「まず、もふもふの獣人と……」
「はぁ!? アタシも巻き添えかよ!?」
「面白おかしい冒険譚を、聞かせてもらうとしよう。俺の世界に本気で住むことがないにしても、旅が終わったら顔ぐらい見せることだ」
ネモは「ククッ」と笑って、拳を前に出した。アノスも意を汲んで、拳を握る。
「分かった、魔王アノスさんよ。約束する。俺の面白おかしい旅が終わったら、また会おう」
「あぁ、約束だ。出世払いのキノコバーベキュー代、踏み倒すでないぞ」
ネモとアノスは「コツン」と拳をぶつけ合った。
アノスがイグニスに拳を向けると、彼女も拳を既に握っていた。
「約束ですよ、アノスさん。私が力に酔っても、喜劇で終わらせてくれる世界。楽しみにしてます」
「俺のサーシャ以上の酔っ払いなど、そうそういるものではない。任せておけ」
イグニスとアノスは「コツン」と拳をぶつけ合った。
最後にアノスは、ガガカに拳を向けた。彼女はまだ拳を握っていない。
「アタシのもふもふが……何だって?」
「もふもふと笑顔はいくら在っても良いものだと思うぞ」
「モフられる側の気持ちになりやがれ!」
「困ったな。仕事熱心なお前に魅力的な提案が足りていなかった」
アノスが考え始めると、ネモとイグニスが口を出してきた。
「仕事熱心が欲しいのは、とびきり羽を伸ばせる休暇じゃねぇか?」
「きっとそうですよネモくん! 常夏のビーチに白い砂浜! 雪景色を見ながら温泉とか、こたつに入ってみかんとか!」
それらを聞いたガガカの表情が緩んだのを、アノスは見逃さなかった。そしてアノスが言う。
「その程度であれば簡単に用意できる」
「ぐぅぅ……。約束だぞ、魔王アノス!」
「あぁ」
ガガカとアノスは「コツン」と拳をぶつけ合った。
するとそれが合図だったかのように、森の景色とアノスが、段々と透け始めた。
ネモが叫んだ。
「あれぇ!? おいアノスさんよ! あんた透けてきてるぞ!?」
「俺から見ると、お前達が透け始めたように見えるがな」
イグニスが乗り物──シボレー・シェベルSS396を指さして言った。
「ネモくんネモくんっ! 車は無事です! スケスケになってないです!」
「いちいち若干エロい言い回しすんなぁ!」
アノスは三人に対し、最後に言った。
「また会おう。ネモ、イグニス、ガガカ」
三者三様に返事をする。
「おう、アノスさんよ! 面白おかしい俺の旅路、語って聞かせてやるぜ!」
「アノスさん。ありがとうございました。アノスさんとその配下の皆様に、幸あらんことを」
「またな魔王アノス! バカンスとこたつ、忘れるなよ!」
透明度が高まっていき、やがて──。
魔王アノスの視界から、愉快な三人と車が消えた。
ネモ達三人は、森もキノコも魔王アノスもいない荒野に、車と共に立っていた。
「さーて。腹も膨れたし、先を急ぎますか」
「ですですっ!」
運転席にネモが、助手席にイグニスが乗り込む。後部座席に座ったガガカが訊ねた。
「さっきのは夢か? それとも奇跡か?」
ネモが答えた。
「さぁ? そんなことは、この旅が終わった頃には、分かるんじゃねぇか?」
深緑色のシボレー・シェベルSS396が、荒野に向けて、砂煙を上げて走り出した──。
──※──
魔王城デルゾゲード、王命の間。
その玉座に魔王アノスは腰掛け、眼下の配下二人と話していた。
破滅の魔女サーシャ・ネクロンと、その妹ミーシャである。
姉妹の手には1冊ずつ本がある。
「という訳で、アハルトヘルンで出会った愉快な三人組を元ネタに、『面白ければなんでもあり』『退屈な日常をぶち破る、訳わかんなくて面白い話』を、魔王聖歌隊に書かせてみたのだが、どうだ?」
ミーシャは本を閉じて言った。
「面白かった」
「そうか」
「この三人には、また愉快な旅をして欲しいし、平和なハッピーエンドを迎えて欲しいと思う」
「そうだな」
続いて、アノスはサーシャに目を向けた。
「サーシャはどう思う?」
「凄く……面白かったわ……。都合のいい奇跡で済ませないような、伏線回収もしっかりしてるし……。ただね……」
「ただ?」
「このタイトルは……。どうにかならないのかしら……?」
アノスは首を傾げた。
「不服か? 『怪奇!巨大な亀に街を見た!聖女とチンピラとデカケツ獣人VS黒ギャル軍団』というタイトルでは……」
「ただでさえカオスな内容なのに、こんなカオスなタイトル付いてたら、誰が読むのよ! あとタイトルにデカケツとか入れるんじゃないわよ! バカなのっ!?」
サーシャのツッコミが飛ぶと、ミーシャもコクコクと頷いた。
「ならどんなタイトルが良いのだ?」
アノスの問いに、ミーシャが答えた。
「4文字ぐらいだと、話題に出しやすい」
「ほう」
「この話に足りないものがあるとすれば、サーシャのような、楽しくて鋭いツッコミ。ネモとガガカでは、ツッコミが追いついてない」
「ネモやガガカも、普通にボケに回ることもあるしな」
サーシャは何か気づいたように「あぁ〜!」と声を出した。そしてサーシャは言う。
「ミーシャが考えてること、分かったわ。4文字でしょ? タイトルとそれを口にする人ぐらいは、ツッコミに回らないとバランスが取れないってっことでしょ?」
「ん。私はあなた」
「あなたは私ね。一緒に言いましょ」
アノスは二人に訊ねた。
「なら、この物語のタイトルは、何が良いのだ?」
二人が声を揃えて言った。
『サンバカ!!!』