ヒーローのカタチ   作:サモア リナン

1 / 42
妄想。思い立つ


第1話「たった1人の2年生」

 

ヒーローは、空想ではない。

 

個性の出現により、世界は大きく変わった。

人々は力を手にし、混乱と秩序の間を彷徨い――そして、英雄(ヒーロー)が現れた。

“力を持つこと”が当たり前となったこの世界で、

“その力をどう使うか”が、問われ続けている。

 

雄英高校ヒーロー科。

英雄を育てる、日本最高峰の学び舎。

 

そして、そこに入学した僕たち1年A組は――

 

「……え? 2年生? 1人だけ?」

 

ホームルームの冒頭。眠そうに寝袋から這い出た相澤先生の一言で、教室はざわついた。

 

「紹介しておく。ヒーロー科2年A組──型形 作身(かたがた つくみ)」

 

ガラリ、と教室の扉が開く。

入ってきたのは、明るい笑顔を浮かべた女の子。制服の袖を軽くまくり、元気よく手を振った。

 

「はじめましてっ! 型形 作身、ヒーロー科2年です!よろしくお願いします!」

 

その足元には、ふわふわ浮かぶ謎の存在。

 

「こんにちは!カタチです!」

 

小さなぬいぐるみのような見た目。サイズは膝下程度、動く、喋る、自己紹介もできる。

教室内に一瞬、「かわいい……」という空気が流れる。

 

が、それも一瞬だった。

 

「ちょ、待って……あれって“例の”人じゃない?」耳郎が声を潜める。

 

「都市伝説だと思ってたわよ。2年生全滅って……マジだったんだ……」芦戸が目を丸くする。

 

「相澤先生が“合理的じゃない奴は落とす”っつって全員消し飛ばしたって話……」上鳴がぼそっと。

 

「ヒーロー科……1人だけ残ったってことか……?」爆豪の眉がピクリと動いた。

 

ノートを取り出した僕は、早速記録を始める。

 

型形 作身(かたがた つくみ)/個性:マスコット

ヒーロー科2年A組 唯一の生存者

 

「緊張してますけど、1年生の皆さんと仲良くできたらうれしいです!」

 

とびきり明るく、無邪気な笑顔。

だが、その後ろに浮かぶマスコット“カタチ”は……教室を一周するように視線を動かしていた。

 

まるで、脅威のスキャンでもしているかのように。

 

僕は気づかない。

誰も、まだ知らない。

 

この“可愛いマスコット”が――

裏では、月面に兵器工場を持っていることなど。

 

「えっと、じゃあ質問してもいいですか?」

 

お茶子が手を挙げる。

 

「その、カタチくん? それってサポートアイテムじゃないんですか?」

 

「違いまーす!」作身が元気に即答。

 

「カタチは私の個性で生まれた存在なんです。個性名はそのまま、“マスコット”!」

 

「はいっ!ボクは作身の味方で、相棒で、サポーターで、アドバイザーで、将来的には兵器開発と戦術指揮も担当して──」

 

「お、おーいカタチ!その辺はまだ秘密!」

 

「あ、そっか!」

 

教室に笑いが起きた。

でも僕は、そのやり取りに妙な引っかかりを覚えていた。

 

あの“カタチ”という存在。

ただのマスコットにしては……目が、妙に澄んでいた。

 

言葉の裏に、何か“本質”を隠しているような――

 

「……さて。型形、次のインターンまでの準備はもう終わっているんだろ?必要なカリキュラムは終わってるし、今は1年A組の補助に回れ」

 

「はいっ!任せてください!」

 

相澤先生の投げやりな言葉に、元気よく頷く作身。

 

こうして、僕たちのクラスに時々“もうひとり”の仲間が加わることになる。

 

彼女は明るくて、人懐っこくて、ちょっと不思議で――

でも、どこか“何か”が違っていた。

 

それはきっと、時間が経てばわかるだろう。

 

ヒーローとは何か?

 

“力”を持つ者が、それをどう使うか――

 

それが、この物語のはじまりだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。