ヒーローのカタチ   作:サモア リナン

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勝手にキャラが動くとはこの事か!


第13話「さらに向こうへ」

 

飛行機が滑走路に着陸してから、まだ数時間も経っていない。

──それでも、型形作身たちは急ぎ、雄英高校へと戻ってきた。

 

迎えてくれたのは、かつての賑やかさとはまるで異なる喧騒。明らかに日常とかけ離れた緊張感。張り詰めた空気が校舎を包んでいた。

 

正門は報道陣に囲まれ、まるで要塞のように封鎖されている。

仕方なく裏口からそっと入り、案内されたのは──見慣れた1年A組の教室だった。

 

扉を開けた瞬間、胸がぎゅっと締め付けられる。

そこにいたのは、傷つき、沈痛な面持ちを浮かべたクラスメイトたち。

 

「──皆……!」

 

「作身先輩!」「おかえりなさいです!」

懐かしい声が飛び交う。けれど、それも束の間だった。

すぐに皆の顔は、また重たく沈んでいく。

 

芦戸ちゃん、常闇くん、耳郎ちゃん、佐藤くん、上鳴くん──

どの顔にも、疲労と苦悩の色が滲んでいる。

麗ちゃんは黙って目を伏せていた。

 

「ごめんね、型形先輩……爆豪くん、連れてかれちゃったの」

口を開いたのは、芦戸ちゃんだった。

 

「緑谷、飯田、八百万、それに轟、切島も……皆、戦場へ赴いた。我々が気付かぬ内に、同胞(はらから)として、俺は…」

常闇くんが拳を強く握る

 

「……」

 

蛙吹ちゃんが、ぽつりと声を震わせる。

 

「ケロッ……さっき皆とちゃんと話して。思ったこと、ちゃんと伝えたつもりだったの。ルールを破っちゃ、ヴィランと同じだって……なのに行っちゃうなんて。……私、何か間違ってたの? ケロッ……」

 

葉隠さんの透明な肩が、かすかに震えていた。

 

「皆……助けたいって気持ちだけで動いてるんだと思う」

 

「ヴィランと戦おうなんて考えてない……でも、危険なことに変わりはない……」

耳郎ちゃんの声も低く、どこか悔しげだった。

 

「…教えてくれて、ありがとう」

 

──違和感を、確かに感じた。

 

ここに残った彼らと、私が思っていることは──きっと違う。

でも、今はそれに触れるべきじゃない。

 

──彼らは、彼らなりの“覚悟”を決めたのだ。

 

無力感、後悔、そして「何かせずにはいられない」気持ち。

きっと緑谷くんたちの想いは、私に近い。

 

──緑谷出久くんは、私の印象では……

ビクビクしていて、覚悟を決めるのにも時間がかかって、正直ちょっと頼りない後輩だった。

 

だけど今、彼は自分の足で“戦場”を選んだ。

 

私は、1年の頃に同じことができただろうか?

いや、今でも……プロヒーローたちが動いている中で、法律違反の可能性を承知で友人を救いに行けるだろうか?

 

……すごいと思う。

悔しいくらいに。

 

「カタチ」

 

「分かってる。ステルスドローンはすでに現地周辺に展開中。AIによる戦闘予測も稼働してる。SNS経由もしてる。視覚的情報と含めてリアルタイムに情報収集してる。プロヒーローと警察の動きもトレース済み。目星はついた──いつでも行ける」

 

「うん、ありがとう」

 

彼らが残ったことを、間違いだとは思わない。

 

だから──私は、私の“正しさ”で動く。

 

「私が持ってる仮免は、これからのヒーロー活動の“正当性”を保証してくれる」

 

「……っ、そうだけど!!危険っすよ!」

上鳴くんが声を張る。

 

「そうだね。でも、ここで行くのが──“マスコーダー”なんだよ」

 

ここでヒーローなんだよ。と言うのはは違うよね…ここに残った皆を否定する事になってしまう……

 

「「「「「っ……」」」」」

 

皆、どうか……顔を上げて。

 

「待ってて──爆豪くんも、緑谷くんたちも。皆、まとめて連れてくるから!」

 

私は、どちらの想いも──無駄にしたくない。

 

正しいことをしたい。ワガママに助けたい。

出来ることが限られてるなんて、最初から分かってる。

──だから頑張るんだ。そうじゃなきゃ、ヒーローなんて名乗れない。

 

私は、そんなヒーロー達の背中を見てきたはずだ。

 

「カタチ、行こう。……私は、ううん──私たちは“2人でマスコーダー”なんだ、待ってる人がいる。助けを求める人がいる。今、この瞬間にも…だから、行かなきゃ」

 

そして

 

「コードカウント:ギア・EX(イクス)」

 

私は最新のアップデートを果たした兵装を展開する。

 

これは自分に言い聞かせる言葉。

理想に、少しでも近づくための誓い。

 

 

「──皆、心配しないで、大丈夫だよ……なんでかって?」

 

…それはもちろん

 

「私が行くからだよ!!」

 

笑顔でサムズアップした。

 

 

-------------

 

 

 

夜の街並みを高速で駆け抜けながら、作身は口を結んでいた。

 

カタチの解析が示したヴィランの拠点─それは同じ様な形で、いくつも並んでいる…前時代的な廃ビル、その一つだった。

 

だが──。

 

「生体反応が……!」

 

「消えた。しかも複数名が完全に座標から消失してる。理由は2つしか考えられない─ワープか即死か。」

 

「完全に同時消失だから複数名の同時死亡は考えにくい。つまりワープの個性だ」

 

「うん、新たな生体反応を確認したよ。ワープ先だね、と言うか、今ので確定した。こんなことできるのは奴らしかいない。ある意味助かったよ」

 

「よし!ルート変更、旋回後、直線的最高速度へ切り替える!」

 

カタチの指示に従い、作身は脚部スラスターの向きを変える。

住宅地を抜けた先、開けた市街地に急降下する。

 

そこには──

 

既に戦闘の爪痕が生々しく残された、市街地の中庭。

その中心で─爆豪勝己は、自分で出来ることをしながらもオールマイトに守られながら戦っていた。

 

その周囲を囲むのは、ヴィラン連盟

 

死柄木葬華、荼毘、トガヒミコ、トゥワイス、Mrコンプレス、スピナー、マグネ──

そして、…─黒霧。

 

「っ……間に合った、けど……!」

 

建物の影から飛び出そうとしたその瞬間。

先に動いたのは、緑谷出久たちだった。

 

「かっちゃんを……返せよッ!!」

 

緑谷の叫びが夜に響く。

それと同時に、飯田、八百万、轟、切島が駆ける。

 

「全員で、勝つぞ……!」

 

作身は息を飲む。

彼らは、恐れながらも、真正面からヴィラン連盟に挑んでいた。

 

(行け……!)

 

内心で叫ぶ。

その行動は愚かかもしれない。それでも──正面から向き合い、爆豪を助けようとする仲間の背中は、確かに“ヒーロー”だった。

 

「カタチ、作戦変更!爆豪くんの救出を最優先に。支援武装、ステルスドローン展開!」

 

「了解ッ。バリア展開、スタンフラッシュ、煙幕──ヒーローの邪魔にならないように調整中!」

 

一斉に飛び出す無人支援ユニット。

その中で、作身は隠密行動に徹する。

 

(いまは──手を出すべきじゃない。これは彼らの戦い……私は、“背中”を守る)

 

空中に浮かんだまま、索敵と監視を続ける。

 

──そして。

 

「はッ!てめぇかよ、切島ッ…!」

 

爆豪くんの上空に切島くんが氷の滑走路から飛び出した。

そしてお互いニヤリと笑い手を取り救出完了。

 

「今です…!」

 

八百万が即席の閃光弾を投げ、轟が氷の壁を作り出す。

その瞬間──

 

「皆、いくぞ!」

 

飯田くんが爆豪くんと切島くんの身体を支え、全速力で退避。

他の皆も散り散りになり逃走

 

成功──彼らは確かに戦闘行為を行わずに奪還に成功した。

 

(やった……!)

 

作身の胸が熱くなる。

 

次はオールマイトの援護をしてヴィラン連盟を捕縛する!

 

目を向けると、不穏な殺気が、作身の背中を走る。

 

「うっ!?」

 

空間が歪む。

黒く濁った煙のような“泥”が、ヴィラン達の口から溢れる様に湧き出ている。次々と吸い込まれるように消えていく。

 

「葬華、仲間と一緒に逃げなさい。ここは僕の出番だ」

 

唯一残っていた死柄木は私を睨みながら言う。

 

「…マスコーダーは私が崩す…お願い。あいつだけは生かしておいて」

「あぁ、もちろんだとも」

 

「…今日会ったら崩すって決めてたんだけどなぁ、大人の事情に振り回させるのは、これで最後にしてほしいものね。……まぁ仲間のお披露目がメインだったと思えばいっか。…バイバイ、マスコーダー。巻き込まれないように社会に尻尾振って早く帰れ」

 

そう言ったかと思えば死柄木の口から泥が出てきてワープした。

 

「む、ムカつくーー、何あいつ!!」

前回は去り際に中指立ててくるし、私ああいう人と仲良くなれない!!

 

「落ち着いて作身、残ったあのヴィランがやば過ぎる」

そう言って顔を仮面で隠し、全身を黒い装甲に包んだその姿を見ると鳥肌が立ち、息苦しくなって、寒気がした。一秒だってここにいたくない、逃げたい気分になる。

 

いつの間にか震えていた身体を両腕で包む。

無意識な自己防衛反応。

 

「な、何アレ」

震えながら聞く

カタチは

「ありえない……」

 

と呟く

「生きている筈ない、でも確かな情報だ……だとしたら人間の寿命を遥かに超えている……確定だ。そんなバカな……アイツは…──」

 

「……!」

 

あまりの存在感に、息を呑む。

カタチのAIが緊急アラートを鳴らす。

 

《危険レベルS+。最高値以上のため測定不能。即時撤退を推奨。対象:個性複数所持型“魔王”》

 

名称

 

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── ── ── ──

 

 

街を包む夜の風が、変わった。

 

空気が重たい。張り詰めていて、鉄の匂いがする。

肌にまとわりつくような悪意が、風に乗って漂っていた。

 

オールマイトも口角を上げて笑顔であろうとするが目の前の相手に上手に笑えていない。

 

「来たな……!」

 

オール・フォー・ワン。

 

顔を仮面で隠し、全身を黒い装甲に包んだその姿は、もはや人というより“災厄”だった。

 

「やぁ…“象徴”、今日は君を壊すよ」

 

声が響く。

低く、抑揚のないそれが、空間ごと震わせた。

 

「カタチ、AIの緊急アラート消して、オールマイトの生命値とエネルギーレベルをリアルタイムで監視。援護と二人の戦闘による被害抑制が私達の戦いだ」

 

「了解!リアルタイムモニタリング開始、通信リンク確立──“戦闘補助モード”及び“被害抑制モード”起動」

 

オールマイトは、ゆっくりとオール・フォー・ワンの前に立ちふさがった。

その背中は、やはり巨大だった。

 

「オールマイト……。ここで全てが終わる」

 

「終わらせないさ。俺は……“象徴”でいる限り、この国を!希望を!市民の皆様を、守る!」

 

ドンッ!!

 

拳が衝突する。

音が、爆音が空を裂く。

 

瞬間、ビルが一棟、風圧で崩れた。

 

《衝撃規模、都市災害レベル。》

 

「くっ……!カタチ、ビルの崩壊予測範囲に救助ドローン展開!避難アナウンス開始!」

 

「展開済み!道路封鎖と避難経路誘導もAIが実行中!」

 

作身は空中で拳銃型のデバイスを取り出す。これは射撃ではなく、バリア支援用の“シールドインパクト”発生装置だ。

 

(守る。……オールマイトの背中を、私が守る!)

 

──しかし。

 

「無駄だよ、ちっぽけな模倣者。君のような小娘が、英雄を支えられると思っているのかい?」

 

オール・フォー・ワンの右腕が膨張した。

筋肉ではない、複数の“個性”が重なり合った、悪意の塊。

 

「っ──!」

 

ドガァ!!

 

地面が割れた。それだけで、視界が歪む。

時間がスローモーションのように感じられた。

 

「──シールド!!」

 

「間に合ってっ……!」

 

シュオォン!!

 

マスコーダーの全周囲展開型バリアが、オールマイトの背中に走った攻撃を遮断する。

だが──

 

ゴガァァン!!

 

「ッッッッッ!!」

 

衝撃で、バリアごと吹き飛ばされ、空中で何回転もしながら地面へと叩きつけられた。

 

「が……っ、は……」

 

肺の空気が一気に抜ける。

 

《警告:全兵装の破損確認、修復モードへ移行します》

身体中がとっても痛い、でもそれだけだ。骨や筋肉に問題はない。

 

(I・islandでアップデートしてなかったらコレで終わってたかも…)

 

「動ける……問題ない!」

 

装甲がバチバチと電流を放つがナノマシンの集合体である流動性補修機が液体の様に破損箇所を覆い自動補正を始める。

 

 

 

その間にも、オールマイトはまた拳を交えていた。

だが、動きが鈍くなっている。呼吸も荒い。限界が近いのが分かる。

 

(駄目だ、あのままじゃ……!)

 

「カタチ!援護射撃、連携攻撃モード!」

 

「了解!反応速度合わせるよ!」

 

作身の右腕が変形し、肩の装甲と連結される。

砲身展開──狙うは、オール・フォー・ワン……の近くだ。

 

速すぎる2人の動き、今はタイミングを待つのがベストだ。

 

 

(落ち着け、落ち着いて!お願い私、この1発で確実に隙が出来るんだ、外すわけにはいかない)

 

この時、マスコーダーは今までにない集中力を発揮する。

 

鳴り止まない轟音は耳に入らず、カタチの声もAIのアラートも聞こえない。

 

たった一人、望んで静寂の中へ

 

深く…深く…沈む…息することすら忘れるほどに…

 

 

 

 

 

そして

 

 

「今!」

 

パシュ……

 

 

AFOからオールマイトが離れる。かつ自分への意識が薄れ、更に僅かな隙、それでも本人を狙えば、その瞬間気付かれる。だから、その横…“何もない空間”を狙った。

 

発砲音もサイレンサーを付けていたので最小限。

 

結果

 

ギュオオオオォォン!!!

 

「これは!?ぐぅ……しかしこの程度じゃあねぇ」

 

高出力の重力収束砲がAFOの真横で発動する。

 

オール・フォー・ワンは態勢を崩しただけだ。

 

しかし

 

「今ですッ!!オールマイト!!」

 

「よくやった、マスコーダー!!」

 

全身の筋肉を一瞬で膨張させ、オールマイトが動いた。

 

「──ユナイテッド・ステイツ・オブ・スマアアアッシュ!!」

 

AFOからすれば難しくない対処可能な数秒の拘束。たかだか真横からの引力…しかしオールマイトからすれば全力を出すに足る時間、更には引力に従えば威力の底上げが出来る数秒、その数秒がAFOの命取り。

 

超大規模な衝撃が世界を塗り替えた。

 

 

 

ズガアアアァァァン

 

……

 

 

地鳴り、轟音、そして嵐のような風。

その一撃は確かに、オール・フォー・ワンを吹き飛ばした。

 

だが──

 

《個性・衝撃吸収》

《個性・再生》

《個性・強化筋力》

《個性・空気圧逆転》

《能無し装備効果:衝撃半減・創傷継続回復・威力分散・筋繊維柔軟性強化》

 

「やはり素晴らしいな能無し装備は、身体に負担なく使える。いやはや、危なかった。しかし効かないさ……この程度ではね。さて、君の時間は確実に、終わりに近づいているよ」

 

そして──

 

「さぁ、象徴よ。次の時代を託す前に、崩れてくれ」

 

オール・フォー・ワンの本気が、ここから始まる。

 

「何よ、それ!!」

あまりにも…あまりにも酷い結果

 

こんなのどうやったら捕縛できるのか。

勝ち筋が見えない

 

しかも、対処するべきはそれだけじゃなかった

 

 

聞こえた。

 

聞こえてしまった。

 

「うわあぁぁん、痛いよー、おかあさーん、おとうさーん!」

 

「誰か!誰か助けて、夫が瓦礫の下にいるんです」

 

「うわ、ビルが倒れる!こっちに来る!うわあぁ」

 

「ああぁぁ、血が止まらない……お願いだ助けてくれ」

 

「誰かー、お願いだ!妻を助けて!あぁ…意識が無い」

 

「目を開けてよ、ねぇ、◯◯(人の名前)、なんで息してないの?…」

 

「助けてヒーロー頼むよなぁ、なんで、うわああぁ!」

 

 

……

 

 

「手が足りなさすぎるもっと、もっとヒーローを呼んでくれ!俺たちだけじゃ手が足りない、無理だぁ!」

「くそ!なんで、こんな!」

「俺は、ヒーローだ…でも…これはあまりにも…」

「あぁ、終わった」

「もう、ダメだ」

 

 

…………

 

 

 

「オラオラオラー!雑魚ヒーロー共め、どうした!罪のない市民を助けてみろギャハハははは!」

 

「……歯、歯歯!っーー歯歯歯歯歯歯!!!肉がいっぱいだぁーー」

 

「あーぁ、かわいそうに、起きてるから怖いんだ。もう眠ったら良いよ。永遠に………ネンネン殺り…なんてね、くくっ」

 

 

 

市民の助けを求める声、大きすぎる被害、ヒーローの負担、届かない手、新たに出現するヴィラン。

 

状況は悪くなる一方。

 

「うぅ!うああ…これは…」

 

更には

 

ドガァッ!!

 

空気が砕ける音が聞こえた。

 

地鳴りのような衝撃が、街全体を揺るがした。

 

「……ッ!」

 

オールマイトの身体が、宙を舞う。

黒い巨腕が繰り出す一撃を、ギリギリで受け止めた──だが、耐えきれない。

 

膝が、わずかに落ちる。

 

「ふ……ぐぅ……っ……!」

 

血が口端からにじむ。

限界は、とっくに超えていた。

 

オール・フォー・ワンは歩く。悠然と、余裕すら漂わせて。

 

「弱ったとはいえ、流石だったよ。能無し装備を使ってなかったらもっと苦戦し、ともすれば負けていたかもね。ふーむ、問題はネーミングセンスだな。さて、と…おつかれ“象徴”。君の時代は、もう……終わった」

 

それを聞いた作身の手が、震えた。

 

「やめて……やめてよ……!」

 

刻一刻と状況が悪くなる。何をしても、何をしなくても……

 

(どうすれば良い?)

 

頭が真っ白だ

震える指

溢れそうになる涙

荒い呼吸

乾く口内

うるさい心臓

鳴り止まない耳鳴り

目の前がチカチカする

 

 

気絶出来たら、どんなに楽か

 

 

そんな逡巡をしているとオールマイトがオールフォーワンの無数の黒い爪に貫かれ大量出血しながら空中に縫い付けられる。

 

 

「そん…なぁ…」

 

 

フッと─

 

 

意識が遠のく

 

 

…昔見たテレビの中の光景が、脳裏に浮かんだ。

 

 

 

燃えるビルの前で市民を守る、オールマイト。

 

爆発から子供たちを庇う、エンデヴァー。

 

トラックを停止させ、笑顔で対応するベストジーニスト。

 

山で遭難した親子を励ましながら運ぶ、プッシーキャッツ。

 

汚水の中から人を救出し、泡で包みこむウォッシュ。

 

崩れたビルから負傷者を背負って飛ぶリューキュウ。

 

汗を拭いながら救命処置をする、リカバリーガール。

 

追いつめられた強盗から子供を救う、インゲニウム。

 

 

“ヒーローたち”が、次々と思い浮かぶ。

 

ただの映像だった。画面越しの姿だった。

でも──心の中にずっとあった。

 

(私のオリジン……全部に憧れた)

 

あんなふうになりたい。

全部すごくて、全部真似したくて、全部やりたくて。

 

でも、それを言ったら必ず言われるんだ

 

「全てではなく、絞れ」

 

「君が潰れるぞ、ジェネラリストよりスペシャリストを目指しなさい」

 

「誰かに任せる事も覚えなさい」

 

納得できなかった。誰が聞いてやるもんかって

 

そして

 

こうも言われた

 

「カタチに頼りすぎだ」

 

「もっと自分を高めなさい」

 

「あなたが成長しなさい」

 

「カタチがいなくなったらどうするんだ」

 

何度も言われた。

癪な気持ちはあった。

 

でも

 

これには納得できた。

 

なるほど、確かに頼りすぎてる

 

自分ができることが増えればもっといい。そりゃそうだ。

 

反抗心と素直に受けとめれる指導。駆け足で前に進むにはちょうど良い加減だった気がする。

 

 

絶対に私は恵まれている。

 

根津校長や相澤先生は期待してくれているんだと思う。だからI・islandに推薦してくれた。メリッサは友達になってくれた、デヴィッド博士は全力で協力して認めてくれた。パワーローダー先生は理解してくれた。発目ちゃんは応援してくれた。

 

すっごく嬉しかった。

全力を尽くす事がこんなに楽しいなんて思わなかった。

 

 

 

期待に応えたい

 

 

皆に返したい…この感謝の気持ちを

 

行動で示したい!

 

「作身なら出来るよ。僕がいるんだから」

 

カタチは、いつも隣にいてくれる。味方でいてくれる

できないことを、できるようにしてくれる。

 

私の“ワガママ”を、出来ないとか、無理って言わなかった

 

だから──

 

「やりたいこと、やらなきゃ嘘だって思うんだ」

 

戦う。救う。見つける。治す。助ける。

一人じゃ無理でも、二人なら。

 

テレビで見たヒーロー達の背中に、近づきたい。

 

──全部。全部やりたい。

 

「今のままじゃだめなんだ!全部、全部、全部、ゼンブ…ゼンブ…」

 

「……」

 

 

 

バチン!

 

 

 

頭の中で音がした

 

 

《個性起動確認:新規アクセスルート検出》

《複合制御プロトコル『M.CDR.EX』起動──》

《レギオンのメインコアとの連結、完了》

 

月が…輝く

 

 

 

……ギシィ……

 

作身の頭に痛みが走る。

 

鼻血が出るけど気にならない

 

装着されていた装甲と武器全てが再構築される。兵装はI・islandで作成した最高傑作。

 

私が展開するのは量も質も追求した『軍』

 

 

その背に、無数のシールドと砲身と銃身と刀身が浮かぶ。

空には雲と見間違えるほど密集した救護ドローンが展開しカタチ搭乗型の戦闘機が飛び交う。

地上にはカタチ搭乗型の救助車・装甲戦車・消火用ポンプ車等がひしめき合う。かと思えば即時、救援に向かう。

 

背後から追従するのは分析支援型AIと、環境安定化装置。

 

──それは、戦闘・救助・治療・制圧・通信・防衛。

全てを詰め込んだ、たった一人の“ヒーロー”の姿。

 

 

「なんだい…それは…教えて欲しいな。マスコーダー……!」

 

 

空に浮かぶ1隻の巨大戦艦は空母と言うに相応しい。

 

 

“できない”と言われた全てを、今、力に変えた。

 

 

《全域展開型システム、起動完了──構成:戦闘支援、バリア展開、回復プロトコル、誘導回収、熱拡散、情報接続──》

《マスコーダー・フルアクセスモード、起動》

 

 

聞こえていた悲しい声は助かった事への安堵と安心と感謝に

 

崩れそうになった建物は一時的な補修で安定し

 

暴れていたヴィラン達の鎮圧・不殺捕縛に成功。

 

マスキュラーとムーンフィッシュと睡魔は能無し装備を持っていた。

一線を画す相手だ。逃走したため深入りはしない、今は救助、救命が最優先。

 

戦況を変えろ。

 

──戦うために。

──救うために。

──憧れを、現実にするために。

 

オールマイトを助けて応急処置をする。

 

「行くよ、カタチ。ここからは私がメインだ。ギア・EX・リミットブレイク」

 

 

限界を…超えろ!!

 

 

「Plus Ultra!!!」




あれれ?この展開もっと後のはずなのに……

待て俺、この後どうすんじゃい!
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