ヒーローのカタチ   作:サモア リナン

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今回は説明回みたいなものです

戦闘はありません。すいません…


第19話「Side by Side」

HNN(ヒーローニュースネットワーク)

 

臨時特番:阿賀月剥貸(通称VET)逮捕速報

 

「こちらはHNNです。昨日未明、都内で決行されたヴィラン“阿賀月剥貸”、通称VETの制圧・逮捕作戦について、詳細が明らかになりました。今回の作戦には、新たにNo.1ヒーローとなったエンデヴァーを筆頭に、No.2ホークス、No.3ベストジーニスト、No.5ミルコ、No.6クラストといったトップヒーロー陣が出動。極めて異例の大規模作戦となりました。

 

阿賀月は、“ほとんどの動物にも個性がある”という独自の知見を得ながら、それを公表せず、12年にわたって極秘の研究を続けていたとされています。さらに、“セルドライバー”と呼ばれる技術により、動物の身体を個性に適応する形に強制改造するという非人道的な実験を繰り返し、AFOにも技術協力していた事実が、警察の取り調べで明らかになりました。

 

彼女は表向き、“阿賀月動物クリニック”の女性院長であり、動物愛護団体の筆頭理事という顔も持つ人物。なぜ彼女がここまでの行動に至ったのか――その動機や背景については、今後の捜査で解明が進むものと思われます。なお、阿賀月はタルタロスへの収容が決定しています。」

 

(VTRが切り替わり、ノイズ交じりの突入映像が流れる)

 

「次にご覧いただくのは、突入時の記録映像です。

市街地に出現した虫の大群、歩く爆弾“爆裂生体”、さらに地割れ、氾濫、落雷といった大規模な災害――それらの中心にいたのは、雄英高校2年、仮免ヒーロー“マスコーダー”こと型形作身の姿でした。

 

彼女はこれまでにも、保須市、神野区など複数の事件で注目されており、今回も数百機のドローン“フラクタ”を用いて同時制圧。空中からの圧倒的な火力で、容疑者を無力化しました。

 

HNNは、その決定的瞬間を捉えた映像の入手に成功しました。」

 

(ドローンと衛星砲が連携し、一斉攻撃を行うスローモーション映像)

 

「マスコーダーとフラクタの連携による“属性無効化射撃”――コードネーム『オーバーディフェンス』。これが、“災害ごと無力化する”決定打となりました。

12分にわたる激戦の末、阿賀月剥貸は地上で降伏し、その場で拘束されました。」

 

(専門家コメント:ヒーロー安全保障・遺伝子兵器対策の権威が登場)

 

「阿賀月はAFOとは異なるアプローチで、多数の個性を組み合わせ“実質的な無尽蔵性”を確立していたようです。その存在は、通常の制圧手段では太刀打ちできない水準でした。

一方、型形作身が使用した“ディープスペース兵器”のような火力は、明らかに戦略兵器クラスの力です。

プロヒーローですら所持が議論されるレベルであり、仮免ヒーローの学生が用いることの是非は、今後、慎重な検討が必要でしょう。」

 

(テレビ画面はSNSの投稿引用に切り替わる)

 

 

Weets より抜粋投稿:

 

@HeroFan123:

「#マスコーダー 無敵すぎて草。戦略兵器やん…… #VET制圧おめでとう」

 

@CriticSkeptic:

「国家レベルの兵器を高校生が?ヒーローがこれ許されていいの?」

 

@UrbanSurvivor:

「瓦礫の中から救出された人がSNS見て泣いてたって……マスコーダーありがとう #救出劇」

 

@CivilRightsNow:

「民間人巻き込む火力を“正義”と呼んでいいの?無尽蔵個性の個人による“戦争”、始まった感ある」

 

 

(再びスタジオにカメラが戻る)

 

「今回の事件に対して、“ヒーローによる過剰火力では?”との懸念の声もありますが、現時点で市街地における一般市民の死者はゼロ。むしろ、被害を“未然に防いだ”という評価も多く、SNS上では『命が守られた』『これが本当のヒーローだ』といった肯定的な声も目立ちます。」

 

 

HNN特別報道:死穢八斎會本部襲撃──市民を巻き込む大規模ヴィランテロについて

 

(映像:燃え上がるビル群、逃げ惑う市民、遠くで爆発音と銃声)

 

「続いてのニュースです。今朝早く、都内某所にある反社会組織“死穢八斎會”の本部が、ヴィラン連盟によって急襲されました。

中心人物は、“死柄木 葬華”と名乗る女です。実行犯は今筋 強斗(イマスジ キョウト)ヴィラン名“マスキュラー”の凶悪な個性による市街地の破壊行為は、過去に例を見ない規模にまで拡大。市民への被害も甚大で、警察当局はこれを“未曾有のテロ”と位置付け、警戒態勢を強化しています。」

 

(現場取材映像:避難所や怪我人の証言)

 

「前が急に爆発して、煙で何も見えなくなった……生きててよかったです」

「子どもが泣き出したので、とにかく抱きかかえて逃げました……」

 

(ヴィラン側が投稿したとされる動画。黒マントの男が挑発的に語る)

 

ヴィランA(低音の男):

「八斎會など腐った組織にすぎん。市民を巻き込もうが、これが“革命”だ。

俺はヴィラン連盟に就く。これは、この腐った世を変えるための改革だ」

 

(再びSNS投稿に切り替わる)

 

 

@JusticeForAll:

「ヴィラン同盟…止められてない。ヒーローは何してる? #テロ #死穢八斎會」

 

@RevolutionX:

「政府もヒーローも腐ってる。これが市民の“本音”だろ。#ヴィラン礼賛」

 

@MomOfThree:

「子ども3人連れて朝まで避難した。もう限界。ヒーロー、助けて…… #助けて」

 

@HerosWorkHard:

「この事態にヒーローは何してんだ!?行動が遅すぎる!」

 

 

(スタジオのキャスターが再びまとめる)

 

「今回の事件では、仮免ヒーローも現地に緊急投入され、救助・救命活動に従事しています。なお、阿賀月剥貸とこのヴィラン同盟との関係性についても、現在調査が進められており、捜査当局は複数の接点があった可能性を視野に入れているとのことです。

 

都内の治安状況はいまだ緊張が続いており、政府も非常事態宣言の発令を検討しているという情報が入っています。

 

また死穢八斎會に監禁されていた女の子を解放したとの情報もあります。正義も悪意も、目的すらも曖昧な混沌を撒き散らす者たち――ヴィラン連盟の中心メンバーその名は“灰濁(はいだく)”。いまだ正体不明のこの集団が、地下から動き出しているのかもしれません。HNNは、今後も彼らの動向を追っていきます。」

 

「それでは、次のニュースです……」

 

 

 

 

雄英高校本校舎・1年A組の教室

 

朝のHR前、いつもなら賑やかに騒いでいるはずの教室には、どこか張り詰めた空気が漂っていた。

 

「……マジで壊滅したのか、死穢八斎會」

「ヴィラン連合が突っ込んだって……もはや戦争だな」

「壊理ちゃんって子、緑谷が助けたって噂だよな」

 

ざわめく教室。その後方ドアがカララッと開き、数名が入ってくる。

 

緑谷出久、麗日お茶子、切島鋭児郎、蛙吹梅雨。

それを見たクラスメイトたち──上鳴、瀬呂、峰田、八百万、耳郎、葉隠らがすぐさま駆け寄る。

 

「みんな、無事だったんだな!」

「また保須や神野のときみたいな……大丈夫だったのか?」

「ニュースじゃ大事だったって聞いたけど……すぐ学校戻ってきて良かったのか?」

 

口々に心配をぶつけられ、緑谷は少し照れたように頭をかきながら、一歩前に出て言う。

 

「……うん。大丈夫だよ。少しだけ時間をくれるかな。僕たちが経験したこと、それから今、起きていることを──みんなに話しておきたいんだ」

 

緑谷がホワイトボードに簡単な図を描きながら説明を始め、麗日がおだやかに補足していく。

切島は要所要所で言葉を挟み、蛙吹は静かにうなずきながら支えるように背後に立っている。

 

「死穢八斎會は、違法な個性消失弾の材料に壊理ちゃんの力を使ってたんだ。あの子は、ただの“材料”として監禁され、傷つけられていた」

 

「僕はサー・ナイトアイの事務所で通形先輩と一緒にインターンしてて、そのときに偶然、壊理ちゃんと出会った。彼女は全身傷だらけで、怯えていた……あのとき、絶対に助けようって決めたんだ」

 

「その時、壊理ちゃんは逃げようとして、ちょっと年上の女の子に助けられたって話してた。でも途中で迷って、顔の黒い“もやもや”した人に助けられて……気づいたら別の場所にいたって」

 

「その“もやもや”って……黒霧かも」耳郎がぽつりとつぶやく。

 

「……うん。たぶんそうだと思う」

緑谷の声が少し震えた。だが、お茶子がそっと背中を押してくれる。

 

「でも、それで終わりじゃなかったんだ」

今度は麗日が続ける。顔を伏せ、少し悔しそうに。

 

「ヴィラン連合が死穢八斎會の施設を襲撃したことで、現場は完全にパニックだった。ビルは崩れて、火災も広がって、市民の避難が間に合わないほどの混乱だったの。……私の“無重力”もあの状況じゃ、うかつに使えなくて……」

 

「私はリューキュウさんと一緒に、市民の救助や治療、それから行方不明者の捜索をしてたわ」蛙吹が静かに言う。

 

「駅前の混乱もやばかったぞ!他のヴィランまで暴れてたからな。俺はファットガムさんと暴徒化したヴィラングループを食い止めたんだ!」切島が胸を張ると、思わず「おお…!」と感嘆の声が上がる。

 

「……こんな事を許したら、また同じようなことが繰り返されるって思った」

再び、緑谷が声を上げる。

 

「壊理ちゃんのように、何の罪もない子どもが犠牲になるなんて、もう嫌だ。僕たちが止めないといけない」

 

その言葉に、教室が水を打ったように静かになる。

耳郎、峰田、瀬呂……誰もが真剣な目で緑谷を見ていた。

 

「俺もそう思ったぜ。ちょっとは活躍できたって思うけど、まだ全然足りねぇ。もっと強くなんなきゃって……」

 

切島のその言葉に、芦戸がそっとお茶子に問いかける。

 

「お茶子ちゃん……怖くなかった?」

 

麗日は一瞬ためらいながら、そして強くうなずいた。

 

「……怖かった。でも、壊理ちゃんの笑顔を見て、救えてよかったって心から思えたの」

 

──

 

その空気を受けて、飯田が立ち上がり、緑谷の肩に手を置く。

 

「……皆、大変な経験をした。でも僕たちは雄英の生徒だ。未来のヒーローだ!だったら、これからのことも……きっとやっていけるさ!」

 

その言葉に、自然と拍手が起こった。

 

守りたい。強くなりたい。もう誰も泣かせたくない。

 

小さな火種が、静かにクラス全体に広がっていった──

1年A組。未来のヒーローたちに、確かに灯った決意だった。

 

 

そして、もう一つの事件──

阿賀月事件。

 

「いいこと言うじゃねぇか、クソメガネ。……なら、今度は俺らの番だ。まず最初に言っとく。あれは“事件”なんてレベルじゃねぇ。“戦争”だった」

 

「「「ク、クソメガネ……」」」

 

爆豪勝己の一声が教室に響き渡り、騒がしかった1年A組が一気に静まる。

その隣に立つ轟焦凍が、赤と緑のオッドアイで真っすぐにクラスメイトたちを見据える。

 

「俺たちが関わった“阿賀月事件”の全容を、今から話す」

 

始まりは、口田の持ってきた情報だった。

その後、警察とヒーロー公安の調査によって、とある動物病院が“セルドライバー”の研究施設である可能性が浮上した。院長が主犯で、元は動物だった個体に対し、個性や使用者の嗜好に合わせて無理やり姿を変えるという非道な行為が日常的に行われていた。

 

その病院の名は──「阿賀月動物クリニック」。

 

「最初は礼状を持った警察が家宅捜索、その後拒否があればヒーローが突入って流れだった。普通の職員しかいないって聞いてたしな」

 

爆豪が続ける。語気は荒いが、その肩は怒りと悔しさで微かに震えていた。

 

だが、突入の瞬間──病院は異空間のように変貌し、“黒ノ家”と化した。

俺たちは精神攻撃を受け、その隙に身体を拘束され、意識を混濁させられた。

そしてさらに、黒ノ家は地下施設ごと浮上。周辺の住宅を巻き込むという異常事態に発展した。

 

内部から“見せられた”のは、警察・ホークス・常闇・型形が、住民を守りながら吸血虫や落下する爆弾に対処している光景だった。

 

俺たちは黒ノ家を無理やり活動限界まで押さえ込み、郊外の丘陵地に軟着陸して脱出した。だが、それで終わりではなかった。

黒ノ家が動き出し、阿賀月を“喰らい”、さらには自身が変貌を遂げた。

そこからは混乱の極みだった。

 

突如として現れたのは、まるで中国神話の“四獣”を思わせる動物型の脳無が4体。

吸血虫が無数に襲いかかり、歩く爆弾が徘徊。泥状になって物理を無効化する敵や、刃の羽をばら撒く敵、空間を固定する者。火・風・雷・水を自在に操る阿賀月剥貸──

そいつはただの獣医でも戦闘素人でもなかった。怪物だった。

 

「俺たちインターン組とジーニストさんは空中からの爆撃とルート確保で、足止め役を任された。……派手にやったぜ」

 

だが、派手にやった分だけ、敵も桁違いに強かった。

爆豪が殴っても吸血虫は爆風で一旦散っても、すぐに再構成されて再生する。

 

「ヒーローって、地味で真面目なやつの方が向いてんのかもな、って思ったくらいだ」

「俺の火力でも抑えきれなかった。氷で封じても中から爆発して粉々にされた」

 

作戦通りに動けた時間は、数分……いや、もしかすると数秒すらなかったかもしれない。

四獣の相手で精一杯だった。

 

「しかも、あいつらの狙いは俺たちじゃなくて市街地だった。意識が向いてなかったから助かったけど……もし最初から狙われてたら、誰かは死んでた」

 

「吸血虫と歩く爆弾は、どんどん増えてた。正直……市民への被害は防げない、って……“諦め”がよぎった」

 

「……あぁ、自分の無力さが恨めしかった」

「常闇……私も同じ。みんなあんなに頑張ってたのに、私は力になれなかった……」

「そんな……僕だって。ホークスさんがいなかったら、何もできなかった……」

 

常闇、芦戸、口田が、それぞれ胸の内を吐露する。

 

「だけど……型形先輩とカタチ――マスコーダーが助けてくれたんだ」

「あぁ……俺たちがあのくそ強ぇ獣どもを一体ずつ必死で倒してる間に、あいつは……虫も爆弾もVETも、信じられねぇ数のドローンや、戦闘機や小型戦車で全部片付けやがった。

しかも銃――いや、砲撃で一人でな……」

 

「すごい……」

緑谷が、思わず言葉を漏らす。

 

だが、常闇は目を伏せた。

 

「……あぁ、凄かった。助かった。本当に良かったと思ってる。だけど同時に思ってしまったんだ。

黒ノ家が浮いてる間、なぜその力を使わなかったのかって。……こんなこと思うのは筋違いだと分かってる。だけど、思ってしまった。“俺たち”が邪魔だったんじゃないかって。……それが悔しかった。

何もできなかった自分が、こんなにも歯痒くて、情けなくて、苦しいなんて思わなかった……!」

 

常闇にしては珍しく、涙を見せながら吐き出した。

 

「常闇……それは俺たちも同じだ。けど、お前は逃げなかった。目を見開いて、戦ってた。あの戦場で、俺たちと一緒に」

 

轟の言葉に、芦戸もうなずく。

 

「……戦いが終わって、心から思ったよ」

轟が静かに続ける。

 

「これまで、使える力を抑えててもヒーローにはなれるって思ってた。それが親父を超える道だと信じてた。でも違った。そんなことより、全力を出さなきゃ死ぬ。守れない命がある。……そう痛感した」

 

隣で俯いていた爆豪も、口を開く。

 

「……俺も、死戦をくぐって思った。くだらねぇプライドにこだわってたのが馬鹿らしくなった。そんなもんが可能性を狭めて、守れる命を失わせるかもしれねぇって……だから、デク……いや、出久。テメェに言いたいことがある」

 

爆豪が緑谷を一瞬だけ見て、ぼそりと呟く。

 

「……今まで、悪かった。ごめん」

 

彼なりの精一杯の謝罪。小さな声だったが、確かに皆に届いた。

そして、すぐさま照れ隠しのように続ける。

 

「でもまあ、俺は俺だからな!常に1番!そこだけは勘違いすんなよ、デ……出久!」

 

「「「「「えぇぇぇぇーーー!?そこは変わろうよー!?」」」」」

 

「うっせぇーーー!!」

 

教室の空気が、ふっと柔らかくなる。

笑い声が響く。

 

そして──

 

「……で、その“マスコーダー”が、学校にいねぇんだよ」

 

爆豪がぽつりと言う。

 

「礼を言おうと思ってた。助けてくれたから。でも……なんでいねぇんだ?」

 

その言葉に、教室の空気が再び静まった。

 

「今、どこにいるんだ……?」

 

その問いに、八百万が答える。

 

「私も気になって、実家に確認をとりましたの。すると、事件の2日後にヒーロー公安に連れて行かれたという話が……」

 

「公安の情報まで掴めるとか、八百万家やべぇ……」

峰田が小声で震える。

 

すると緑谷が立ち上がる。

 

「先輩のことが心配だ! みんなで職員室に行って、先生たちに話を聞こう!」

 

「「「「「賛成!」」」」」

 

■教員室

 

教員室の空気は張りつめていた。

資料を一瞥した相澤が、重い口を開く。

 

「……何で知ったかはさておき、確かに型形は今、ヒーロー公安委員会に協力して“能力の詳細”に関する調査を受けている。捜査っていうより、安全保障の一環だ。昨日の聴取には、俺と校長も同席した。今日も時間があれば行くつもりだ。安心しろ」

 

だが、爆豪は腕を組んだまま、不満げに言い返す。

 

「捜査っつーより監視だろ、それ……。それより、先輩の“個性”を把握してたなら、なんで隠してたんスか?……いや、戻してくれよ、マジで……礼、言いてぇから……です」

 

その場にいた根津校長が、笑みを浮かべつつ説明を補足する。

 

「ふむ、型形さんの能力について、雄英として“把握済み”だったのは事実だよ。実際、A・B組の“個性強化訓練”に関わっていたこともあるし、見かけた生徒もいるだろう?」

 

轟がゆっくりと頷きながら疑問を口にする。

 

「確かに……じゃあ、なぜそこまで隠してたんです?」

 

根津校長は一呼吸置いてから、静かに続ける。

 

「理由は単純だよ。……君たちも記憶にあるだろう。保須市や神野区で彼女が見せた能力。あれは非常に特異で、広域の探索・救助・医療支援が可能だった。さらには、被害抑制のための装備や支援機材を、彼女の半径1km以内の場所に“転送”することまでできるらしい。

極めつけは――遠隔で衛生からの狙撃支援すら可能だった。

……ネット環境さえ整っていれば、の話だがね」

 

「チッ……そーいうことかよ……」

 

爆豪が舌打ちすると、すぐに緑谷が反応する。

 

「はっ……そうか!ネット環境が整っている……つまり“通信可能な状態”じゃないと転送能力が使えない!オンラインとオフラインの差が極端すぎるんだ……しかも、個性を封じる必要すらない。敵がそこを狙ってくると考えれば、対策は難しくない……!」

 

思考が加速したように、緑谷は一気にまくしたてる。

 

「そういえば、USJでは通信が遮断されていた!その時の先輩の戦い方、今と全然違った!……あ、だからI・アイランドに行ってたのか……戦闘方法を再構築するために……!通信が封じられた状況でも戦えるようにしておかないと、ヴィランの格好の標的になる……!」

 

「うん、緑谷くん、ちょっと落ち着こうか。静かにね」

 

根津校長が軽く手を上げ、緑谷を制しつつ微笑む。

 

「でも、彼の推察はおおむね正しいよ。その懸念もあって、型形さんにはI・アイランドでの技術支援を受けてもらったんだ。現状、一定の問題は解決できているとだけ言っておこう。

……とはいえ、彼女の能力に関する情報は、知っている人間が少ないに越したことはない。だから、これまで伏せていたんだ」

 

校長の言葉に、生徒たちは黙り込む。

やがて、轟が口を開く。

 

「……信頼されてるってことっスね。じゃあ……もう一つの“問題”って?」

 

相澤が重いため息をつきながら、資料を机に置いた。

 

「……ああ。こっちはもっと厄介だ。

――“エネルギー問題”だ」

 

「「「エネルギー……問題?」」」

 

 

■昨日未明・公安本部・会議室

 

型形は雄英高校の制服をきちんと着こなし、公安の幹部たち数名と向き合っていた。テーブルの上には、能力検査の結果、航空写真、支援ドローンとフラクタ本体、それらの設計図が並べられており、公安局員の声が響く。

 

「型形作身君、君の“個性”の完全開示を求めます。これは命令であり、国家の安全保障のために必要な措置です。事前にお伝えしていた資料は持ってきてもらえましたか?」

 

型形はゆっくりと頷いた。

国家の安全を担うヒーロー公安、その中枢に位置する幹部たちを前にしても、彼女の態度には一切の怯えがなかった。

 

その堂々たる立ち姿に、思わず幹部たちの眉がわずかに動く。

 

「……これが、高校生か?」

 

重苦しい空気の会議室に、一筋縄ではいかない予感が漂い始める。

 

──が。

 

「は、は、はいぃぃーっ!えーと、こちらがフラクタと支援ドローンで、これが設計図で、あの、使い分けが必要でして!えっと、月面基地から転送して、図面はデータ化されてて、ほとんど形になってて、私はオフライン状態に弱くて……あわわな感じになっちゃって……でもI・アイランドである程度緩和?できるようにはなってて、ただ回数と時間制限があって──で、その、バレたらマズくて、えっと、狙われるからで……うーんっと、あとは……うわあああん!カタチぃ、助けてぇ〜〜〜!!」

 

話し出すと同時に冷や汗が止まらず、見事に緊張のメッキが剥がれ落ちた。

 

──そう、立派だったのは、態度だけだった!

 

型形作身、ヒーロー名《マスコーダー》。

彼女は凶悪なヴィランと戦う覚悟はできていたが、“偉い大人たちと真面目な会話をする覚悟”は、してこなかった!!

 

横では、天を仰いで目を手で覆う相澤先生。

「アハハ……失礼しました」と型形以上に汗をかいている根津校長。

 

公安職員たちはわざとらしく咳払いしながら資料を読み直し、柔らかく話を続ける。

 

「問題ありません。まだ高校2年生ですし、今までの成果や実績から、我々が勝手に“完璧な存在”をイメージしていただけだったようです。むしろ、今のような反応を見て少し安心しました……さて、とはいえ我々は判断を下さねばなりません。あなたの個性は“戦略兵器”レベルに相当します。これをどう管理し、社会のために活用するか……それは国家判断に関わる、非常に重い問題と捉えています。もちろん、強制的な活動を求めるつもりはありません。あくまでヒーロー活動のために得た力であることは理解しています。その上で、ご協力をお願いしたいのですが……よろしいですか?」

 

現実的な姿勢と誠意を込めた言葉に、型形は少しだけ落ち着いた様子で返した。

 

「はい……あの、すみません。私よりカタチから説明した方が分かりやすいと思うんですが、それでも大丈夫ですか?」

 

教師陣も公安幹部も、無言で頷いた。

 

「はい、もちろん。お願いします」

 

ここで、カタチが初めて口を開く。

 

「僕が型形作身の“個性”、《カタチ》です。よろしくお願いします。……思ったより優しい人たちで良かった。根津校長先生と相澤先生は知ってると思うけど、僕が保有する“戦力”について、今からすべて開示します」

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 …………………

 

型形が学校で語った、月面基地の存在とその規模・弱点。それに加えてI・islandでの成果や、使用エネルギー源や、弱点の緩和手段まで──

内容は非常に濃く、すべてを説明し終えるまでに、2時間ぶっ通しとなった。

 

その間、型形作身は出されたお茶を飲みすぎて、なんと5回もトイレに行ってしまった!!

 

──それはそれとして。

 

公安幹部たちは額に汗を浮かべながら資料を確認し、慎重に言葉を紡ぐ。

 

「……話には聞いていましたが、この内容が事実であれば、戦力としてのみ運用するのはあまりにも惜しい。これは国益に直結し、インフラ整備すら加速させ得る技術だ。既に一部の“個性”は科学的に再現可能になっており、特に新エネルギーの開発が突出している。便宜上、“ニュートリノ”という名称を使用されていますが、これは地上での生成が可能なのですか? また、消費と生産のバランスについても教えていただけますか?」

 

根津校長と相澤先生は最初「相変わらず、ふざけた規模だな」と苦笑していたが──

“個性の科学的再現”の話からこめかみがピクピク動き始め、

“ニュートリノ”“プラズマ”の話に至っては、冷や汗をかいてカタチを睨まむ

 

カタチは一礼して謝罪する。

 

「すみません、以前は話が長くなりすぎると思って、ここまで説明できていませんでした」

 

型形がジト目で指摘する。

 

「ねぇ、それ、先に言っておいた方が良かったんじゃない?……もう遅いけどさ」

 

「うぐっ……」

 

カタチは肩身を狭そうにしながらも、その通りだと認めた。

 

公安幹部の一人が、やや焦った声で尋ねる。

 

「それで──使用しているエネルギーについて、教えてもらえますか?」

 

控えめに腕を組んでいたカタチが、深いため息をつく。

 

「……分かりました。そりゃ、気になりますよね。当然、聞かれるとは思ってたけど、いざとなると…しんどいなぁ……」

 

 

 彼も疲れてきたのかブツブツと文句を言いながら、彼女は卓上のホログラム操作パネルを操作し、淡く光るグラフを表示した。

 

その中には、複雑なエネルギー構成図が映し出されていた。

 

カタチが手短に説明する。

 

「まず、基幹出力の7割は“ニュートリノ物質”で構成されています。地上での合成には、特殊な環境と誘導加速が必要ですけど、月面では自然に生成されやすいんです。それを使って、主に大型構造物の建築や維持、それに艦載武装の運用を行っています」

 

公安幹部の一人が、感心したように呟いた。

 

「つまり、理論上は恒久的な構造維持が可能……か。これは、防衛インフラとして応用できるレベルだな」

 

カタチは頷き、続ける。

 

「次に、基幹出力の2割が“再圧縮型プラズマ”です。これは攻撃用途が中心で、用途によって性質が変わります。具体的には高温衝撃波、レーザーカッター、EM干渉装置なんかですね。持続使用はできませんが、圧倒的な出力で瞬間的な制圧力を発揮します」

 

会議室の空気が一段と緊張を増す。

 

──“プラズマ兵器”という単語が、いかに危険な響きを持つか。それを理解している人間たちの顔だった。

 

「そして、残りの1割は“その他”──バックアップ電源とか、緊急用パーツの維持、通信中継の安定化処理ですね。個性で制御する範囲のうち、いちばん地味なやつです」

 

公安幹部がしばらく沈黙し、ため息をついた。

 

「これは……もはや“個性”の域を超えている」

 

型形作身(ヒーロー名:マスコーダー)は緊張しながら報告を続けていたが、説明が進むにつれて公安幹部たちの顔つきも次第に引き締まり、汗を拭う者すら出てきた。

 

そんなやり取りの最中、公安の幹部がやや焦った口調で尋ねた。

 

「……それで、“今現在”使用しているエネルギーについて、もう少し詳しく教えてもらえますか?」

 

カタチは、少しため息をついて答える。

 

「……分かりました。そりゃ聞かれますよね……」

 

ぼやきながらも、カタチは卓上のホログラムに手を伸ばし、エネルギー消費と稼働率のグラフを表示する。

 

「現在のエネルギー残量は──去年を100%とした場合、73%。

そこから各項目で消費される量を引くと……

・月面基地維持:15%

・武装の再構築:10%

・居住艦《エグゾダス》維持:5%

・ドローン・機材の回収修復:8%

・神野区・保須市での活動:9%」

 

公安職員たちが次々とメモを取り始める。

 

「結果、今年度に使える純粋な活動エネルギーは26%。

この前の《阿賀月動物クリニック襲撃事件》では14%消費。神野区では10%。保須市で6%。……つまり、同規模の戦闘は、あと2回、多くて3回が限界です」

 

静まり返る部屋。

 

「ちなみにエネルギーの年間回復率は約20%。けど、1年かけて徐々に回復するんじゃなくて、“来年の今頃にまとめて回復”する仕様なので、今は補充できないんです」

 

沈黙を破ったのは作身だった。

 

「……え……? それ……そんなにヤバいの? 私、普通に使ってたけど……」

 

それに対し、カタチが冷たい目で睨む。

 

「……だからさ、VETと戦う前に“本当にこのままでいいの?”って言ったよね!? “省エネモードにしておけ!”って、そういう意味だったんだよ!」

 

「えぇぇ!? いや、それ……“他のヒーローがいない方が戦いやすいってハッキリ言わなくて良いの?”って意味だと思ったよ!?」

 

「それは普通に伝えとかんかーい!もうちょっと状況を察して!」

 

カタチが声を荒げ、作身は頭を抱え込んだ。

 

「……私……“自分のしてることはエゴだと自覚してる”って、真面目に考えてたのに……

うわー……超上から目線じゃん……恥ずかしすぎるぅぅ!!」

 

それぞれ別のベクトルで頭を抱える2人。

 

そんな中、カタチは補足説明を続けた。

 

「一応さ、分かりやすいこと言うと新型ヒーロー装備《MAS-XX09》を使って、装備は最小限の2機のフラクタ、武装もロングレンジ・シミターだけ。

これで1時間以内の戦闘ならエネルギー消費は約2%。単純計算で約14.5回出撃可能。

月1時間の出撃に抑えれば、来年の今頃には12時間の出撃で2.5時間余る。回復にギリ間に合うって計算になる。……ただし、それも“順調に回復すれば”の話

ランチャーライフル転送と出力を抑えた『ニュートリノバスターTYPE-L』1発発射で10分は短くなると思って」

 

そしてため息をついて呟く。

 

「本当は高校生のうちに、もっとエネルギーを貯蔵しておく予定だったんだよ……。このままだと、プロになってからもエネルギー不足がずっと付きまとう……作身が兵装の完全展開を処理できるほど成長したのは嬉しいんだけど、そもそも切り札を最初から切っちゃったのが問題…“あれ”を普通だと思わないでほしいんだよねー……」

 

さらには、より深刻な話題が口から出る。

 

「エグゾダスの進化系、要塞戦艦“バスティオン”の建造も、現在70%で完全停止してます。完成すれば転送と運用効率が大幅に改善されるんですけど……エネルギーが足りない。エグゾダスが回収できればエネルギー運用はかなり消費が抑えられて助かるんですが……それ、どう対応してくれます?」

 

公安幹部たちは目を見開き、しばらく言葉を失った。

 

「す、すまない……。正直、そこまで依存している自覚はなかった……。だが、年内の対応は……難しいだろう」

 

「ですよね。ちなみに言っておくと──いくら経費を頂いていても、全然足りてません。

仮にこのエネルギーを電気や石油に換算すると、今年度分だけで何十億円にもなります。

しかも、仮に変換設備を作っても、ニュートリノ変換効率は12%以上、下がります。……現実的じゃないんですよ」

 

──シビアな現実に、公安も顔を引きつらせ、冷や汗を流す。

 

「……まさか、ヒーロー活動に“残機制限”があるとはな……。

それに、“要塞戦艦バスティオン”? それについても詳しく聞かせてもらえるか?」

 

カタチは予定通り、とにっこり笑って答える。

 

「完全開示ですよね。了解です」

 

その横で作身が手を挙げる。

 

「私もそれ、エグゾダスの進化系って聞いてただけなんで……説明お願いします!!」

 

──が、残念ながら、説明された内容は彼女には半分も理解できなかった。

 

……そんなやり取りばかりである!!

 

 

後日、型形作身の個性と“ニュートリノ物質”に関する取り決めが行われた。

今後作成されるニュートリノ物質の10%をヒーロー公安が正式に買い取り、使用方法や応用技術については日本政府と連携して検討を行うことに。

 

使用機器の開発・情報開示のタイミングについても、今後の協議事項として正式に扱われることとなった。

 

■再び、教員室にて

 

根津校長と相澤先生の話がひと段落し、二人は静かに生徒たちへと向き直る。

 

「さて――君たちは、どうして不安を感じたのかな?」

柔らかな笑みをたたえながら、根津校長が問いかける。静まり返る教員室に、その声だけが響いた。

 

最初に声を上げたのは芦戸。そして続くように、轟、爆豪、緑谷たちがそれぞれの思いを吐き出す。

 

「だって……」

芦戸の声がかすかに震えていた。

「型形先輩が……一人だけ、どこか遠くに行っちゃったみたいで……。私たち、何も出来なかったって、思っちゃって……」

 

「そうだ」

緑谷も続けて言う。

「先輩が任務に行った時、自分たちはただ見てることしかできなくて……。何が起きてるのかも分からず、ただ不安で……。ずっと、モヤモヤしてました……」

 

「俺たち、結局……足手まといなんじゃないかって思ったんだ」

轟が静かに言った。

 

その言葉に、校長は小さくうなずく。そして、深く頷いてから、あたたかな眼差しで皆を見渡しながら、こう言った。

 

「――それこそが、君たちが“ヒーロー”である証拠だと、私は思うよ」

その言葉に、生徒たちが顔を上げる。

 

「どんなに恐ろしくても、どれほど困難な状況でも、“仲間と共にありたい”と願う心――それは、ヒーローとして最も尊く、尊敬すべき資質だと私は思っている。自分の無力さに気づくことは辛い。でも、それを認めた上で“それでも一緒に進みたい”と思えるのなら……君たちは、もう立派なヒーローだ」

 

校長の言葉を受けて、相澤先生も口を開く。

 

「そうだな……」

彼は生徒たちを真っ直ぐ見据え、やや低めの声で続ける。

 

「お前たちが感じた“取り残された”って感覚――それは、型形がどこか遠くへ行ってしまったように見えたからだろう。だが、あいつだって同じなんだ。あいつもまた、自分のことでいっぱいいっぱいで、不安を抱えてる。自分一人で全部を背負おうとして、迷って、悩んで……どうすればいいのか分からなくなってたんだ」

 

少し間を置き、相澤は言葉を強めた。

 

「だからこそ、これからはお前たち一人ひとりの力が必要になる。精神論じゃない、実際に戦っていく上で、支え合うために――本当に、必要なんだ。だから、どうか……あいつを支えてやってくれ。頼む」

 

そして最後に、真剣な眼差しでこう告げた。

 

「それと……繰り返しになるが、今回の件で情報を制限していたのは、力の独占のためじゃない。あくまで“型形を守るための措置”だったと、理解してほしい」

 

その言葉を受け、緑谷が深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。少しだけ潤んだ瞳で、しかし力強く言った。

 

「――はい……。僕、勘違いしてました」

「型形先輩が強すぎて……自分たちは必要ないんじゃないか、って。そう思ってしまう自分が怖かった。でも……違った。先輩も悩んでた。迷ってた。なら、僕は……一緒に迷って、一緒に悩んで、それでも共に戦いたいです。強くなりたい。皆と一緒に、先輩と一緒に。……頑張りたい。守りたいです!」

 

その言葉に、爆豪が鼻息荒く反応する。

 

「はっ!なんだそりゃ、クソ真面目すぎんだろ!」

そう悪態をつきながらも、どこか照れ臭そうに、けれど力強く続けた。

 

「才能あるヤツがひとりで調子に乗っちまった……それだけの話だろ?でもまぁ、そいつが自分で気づいて、ちゃんと前を向いたんなら、それでいいじゃねぇか。……後は、横に並んで進むだけだろ、なぁ!? 違うか、ゴラァ!!?」

 

その勢いに、切島が思わず頭をガシガシとかきながら苦笑いする。

 

「言ってることは、すげぇ正論なんだけどよ……お前が言うと、なんかこう、説得力っていうか……妙な感じになるんだよな……くそっ、変な気分だぜぇ!」

 

場が少し和んだ空気に包まれたその時、轟が静かに、しかし柔らかな声で言った。

 

「皆……本当に成長してるな。入学したばかりの頃とは、まるで別人だ。……フッ。俺も、置いていかれないようにしないと」

 

その一言に、思わず峰田が食いついた。

 

「ちょ、待って待って!今の『フッ』って何!? マジでああいう笑い方するやついんの!?なあ、無意識?わざと?気になって気になって寝れねぇよ、マジで教えてくれって!」

 

「ちょっ、峰田!落ち着いて!やめなってば!」

芦戸が慌てて止めに入る。

 

その騒ぎを見ながら、口田が目に涙を浮かべて、ポツリと呟いた。

 

「……良かった。僕、このクラスに……戻って来られて、本当に良かったよ」

 

その言葉に、八百万がそっと口元に手を添え、上品な笑みを浮かべる。

 

「もう……皆さんったら……ふふっ」

 

そして、満面の笑顔で麗日が両手を広げて叫んだ。

 

「めっちゃいいやん!!皆、最高やで!ねぇねぇ、型形先輩が戻ってきたらさ――盛大にお祝いしよ!?喜ばせたろうやん、みんなでさ!!」

 

「うおおぉぉ!!いいねぇぇぇ!!」

クラス中が一気に盛り上がり、笑顔と歓声が教員室に響き渡る。

 

その様子を見守っていた根津校長と相澤先生は、そっと視線を交わし、静かに頷き合う。教員室には、ほんのりと温かい空気が流れ始めていた。

 

そして、二人は確かに、同じ想いを胸に抱いた。

 

――**「この子たちなら、大丈夫だ」**と。

 

…………

 

……ただ、その輪の中に。

 

たった一人――“彼”だけは。

 

どうしても、笑うことができなかった。

 




おろろ?
さっさと書いて次の回に行く予定だったんですが長くなってしまいました

つか、同じことかいてたー!あかん、疲れた時に投稿するものじゃ無いね。
お恥ずかしい…申し訳ありませんでした。
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