ヒーローのカタチ   作:サモア リナン

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第2話:「カタチのひみつ工場」

中学生のころ、私はカタチと並んで座っていた。

 

自室のベッドの上。ポスッと座ったぬいぐるみが、こっちを見上げてくる。

 

「……月面に基地って……どういうこと?」

 

私は恐る恐る聞いた。

 

カタチは、ぬいぐるみのくせに妙に偉そうに咳払いを一つして――

 

「ふむ、よい質問ですね、作身」

 

と、小さな胸を張って言った。

 

「まず第一に。ボクは“君の個性”から生まれた存在ですが、それだけではありません。誕生から24時間後には、世界の全ネットワークにアクセスして、1年以内に戦争史・テクノロジー・兵器の全データを解析しました」

 

「……お、おう?」

 

「そして、“この先、何が起きても君を守れるように”と思い立ち、宇宙開発、資源調達、エネルギー自給、ナノマシンの生成、人工知能の自己最適化まで……全てを、月面に移設・構築しました」

 

「移したって……え、どうやってよ?」

 

「超小型自己複製型探査機を三機、ボクの衛星から軌道投下しました。その後は現地で自己増殖。10年かけて月面都市化に成功、現在は人口ゼロのAI管理体制です」

 

「意味不明だし、てか10年って何!? いつの間にそんなことしてたの!?」

 

「地球じゃこうはいきません。重力が1/6ですから、建設スピードが段違いです」

 

「……え、ちょっと待って。それって……私が知らない間に、世界征服できるレベルのことしてない……?」

 

「いやいや、それは無理です。“個性”というシステムが、あまりにも予測不能なので。未来視、現実改変、概念操作系など、理屈が通じない能力も存在し得ますし」

 

「う、うん……たしかにその辺は、神さまの領域って感じする……。でも、ちなみに、ちなみにだけど? 世界征服しようとしたら、勝率どのくらい?」

 

「3.254割です」

 

「3パーじゃなくて3割!? ヤバいじゃんそれ!!」

 

私は思わず立ち上がって叫びかけたが、カタチはきょとんとした顔で、ただ首を傾げていた。

 

……しばらく考えてみる。けど、あんまり深くは考えない。

 

「うーん……でもさ。困ってる人、助けたいし。戦うときに便利なら……いっか!」

 

「その通りです!」

 

「悪いことするつもりないし、カタチも勝手にしないし……いいよね?」

 

「はい。作身が“正義”を信じる限り、ボクもそれを信じますよ」

 

そう言ってカタチは、にこりと笑った。

 

ほんとにぬいぐるみみたいな、無垢で優しい笑顔だった。

 

――たぶん、普通のヒーロー志望の人なら、ここで背筋が凍るのかもしれない。

 

でも私は、別に怖くなかった。

 

だって、カタチは味方だし。

 

ヒーローになるんだし。

 

「よーし、じゃあ雄英受験に向けてがんばろー!」

 

「承知。ダウンロード開始します!」

 

その声と同時に、空間がキラキラと光り出す。

 

次の瞬間、何もなかったはずの空間から、“兵器”が現れた。

 

「そんなこともできるの!?」

 

驚きと笑顔がまざった声が、部屋に響く。

 

そしてこの時はまだ――

“その強さ”が、どれほどの意味を持つのかなんて。

 

私もカタチも、少しも分かっていなかった

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