ヒーローのカタチ   作:サモア リナン

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主人公をどこに居させたら良いか悩みました。
エンデヴァー達と同席か1年AとB組の対抗戦なら一緒に参加か…

結果今回の話となります。
理由?読みたい!書きたい!って思いが強かった方です(笑


第21話「先立たない不幸」

 

 陽光の下、テレビモニターに映し出されるのは、今や世間の期待と不安を一身に背負う男の姿だった。

 

 —「エンデヴァー。燃え上がる炎の象徴。新たなNo.1ヒーロー」

 

 かつてはオールマイトという絶対的な守護者が存在した。しかし、その象徴が退いた今、人々は次なる“柱”を必要としていた。だが、エンデヴァーという名のヒーローは、果たしてそれにふさわしいのか。

 

 かつては“オールマイトを超える”という執念に突き動かされ、息子・焦凍にすらその重圧を押し付けてきた男。だが、阿賀月事件という死戦を潜り抜け、家で語り合い理解できないと言う多少の相互理解を果たして今、彼の炎は少しずつその意味を変えつつあった。

 

民衆は思う。誰かに頼りたい、導かれたい。

それがどんなに傲慢で、痛々しい願いであっても——“象徴”という言葉が、全てを正当化してしまうのだ。

 

オールマイトがいなくなって、世界は少しずつ“夜”に近づいていた。

ヒーローたちは地に足をつけて、市井の事件に駆けずり回っている。人々もまた、慣れてきた。「もう、あの時代は終わったのだ」と。

 

そんな中で、ある男が、渋々ながらその“象徴”の席に座ることになった。

 

 

 

「……フゥ」

 

轟 炎司ことエンデヴァーは、オフィスの最上階にあるガラス張りの応接室から、ビル群を見下ろしていた。かつてオールマイトが、目を細めて見守っていたこの都市を。

 

“平和の象徴”に代わる存在。それが今、自分に課せられている責務。

 

「正直に言えば……思っていたより似合わんな」

 

無骨な指が、スーツの襟を無意識に正す。目つきは鋭く、炎のように燃えたぎっているが、その内側には、冷たい自省が渦巻いていた。

 

「ただ、やるしかない。やらねばならん」

 

──家族にしてやれなかったこと。

──職業に対する誇りと責任。

──そして、オールマイトという巨人の背中を追い続けてきた、男の執念。

 

そんな想いが、渦を巻く。

 

「それに……見ていろ。焦凍」

 

名前を口にするたび、胸に重くのしかかるものがある。贖罪。後悔。未練。そして、父としての決意。

 

そこへ、扉がノックされる。

 

「エンデヴァーさん、ニュースを見てください!」

 

サイドキックのバーニンが差し出したタブレットに、ざわめく市民の姿が映っていた。街頭インタビュー、テレビ番組、SNSのコメント。

どれも彼に向けられる視線は、一様に疑念と不安を含んでいた。

 

『エンデヴァーって、正直、怖いし……』

『あの人がNo.1って、どうなの?』

『強いけど、安心感はないんだよな』

 

無意識に拳を握るエンデヴァー。だが、それを否定する言葉は、彼の口からは出てこなかった。

 

(……当然だ)

 

過去の自分が、人々の信頼を得るにふさわしい人物だったとは思っていない。

今もその過去に囚われ、悔いている。

 

だが、それでも前に進む。

立ち止まることは、彼には許されていない。

 

「街に出る。パトロールだ。……ニュースにでも映れば、多少は“安心”を与えられるだろう」

 

「分かりました!」

 

炎のようなコートを翻して、男は応接室を後にした。

 

目指すのは、今の自分にしかできないヒーロー像。

オールマイトとは違う、不器用で、不恰好で、それでも人々のために戦う、彼なりのNo.1。

 

歩き出すその背に、もう迷いはなかった。

 

 「……見ていろ。俺が――象徴になってやる」

 

 静かに呟くその背に、かつての剣呑さはない。あるのはただ、責務と覚悟。圧倒的なプレッシャーの中、それでも立ち続けようとする意志だけだった。

 

 ある時、そんな彼のもとに、一人の“風”が現れる。

 

 「エンデヴァーさん、お久しぶりです。阿賀月事件以来ですね、ちょっと一緒に飯でもどうっすか?」

 

 軽やかな声音と飄々とした態度。だが、その双眸の奥には鋭い観察眼と、計り知れない企みが潜んでいた。背に羽根を携えるその男は、ヒーロー・ホークス。

 

「ふん、いつか来るとは思っていたが…今か…一応聞く…何の用だ?」

 

 史上最年少でトップテン入りを果たし、若者からの支持率ナンバーワン。――しかしその本質は、誰にも掴めない。

 

 こうして、最強の“炎”と最速の“翼”が交差する。

 

「まぁまぁ、立ち話も何なんで!まずは飯行きましょー」

 

そして訪れるファミレスの個室ブース。

カジュアルすぎる空間に、あまりにも不釣り合いな2人の男が座っていた。

 

片や、燃えるような威圧感をまとった現No.1ヒーロー・エンデヴァー。

片や、くつろぎすぎなポーズでドリンクバーを飲む、ナンバー2ヒーロー・ホークス。

 

「……どうしてファミレスなんだ」

 

「人目につかないし、ファミレスって落ち着くんだよね〜。なんか庶民派っぽくて。ねえ、ワッフル食べます?」

 

「ハチミツを多めで頼もう」

 

「うわぉ、意外…いいっすねー」

 

鷹のように跳ねた金髪、無精髭、そして何より特徴的な赤い翼。

飄々とした態度に見え隠れする、底知れぬ知性と行動力。

 

ホークスは、その場の空気すら自分のものにしてしまう。

軽薄なようでいて、言葉の端々には、的確な分析と意図が詰まっていた。

 

「さて、本題だけど……協力してほしいんすっよ。エンデヴァーさん。表向きには“平和のアピール”って形で。裏では、ちょっとした“捜査”も兼ねて」

 

「捜査?」

 

「そう。ヴィラン連盟……って言葉、聞いたことあるでしょ?」

 

一瞬だけ、エンデヴァーの炎が揺れる。

そして次の瞬間、鋭い眼光がホークスに突き刺さった。

 

「……貴様、どこまで知っている」

 

「まあまあまあ、落ち着いて。僕もさすがに、全部は知らないよ? でも、上と繋がってるからさ。公安関係。あなたと違って、“内側”の仕事が得意でね」

 

「公安……貴様、スパイか?」

 

「うん、まあ近いよ。公安直属の協力ヒーローってことで。ヴィランの内情を探るために、ちょっと危ない橋を渡ってるんだ」

 

ホークスは、自嘲気味に笑いながらも、視線を逸らさなかった。

 

「……あなたの“強さ”が必要なんだ」

 

「……なるほど。だが、なぜ直接、俺に言う?チームアップ申請すれば良い。知らん仲でもない。お前はファンイベントでも開いていれば、一般人には十分だ」

 

ホークスは、一瞬だけ表情を引き締めた。

 

「……“象徴”ってのは、ただそこにいればいいってもんじゃない。僕は、あなたが本気でNo.1になる気があるか、確かめたいんだ」

 

「……!」

 

エンデヴァーは、ぐっと奥歯を噛み締めた。

その言葉には、誤魔化しようのない真意が含まれていた。軽口の中に、真剣な問い。

 

「僕はあなたが嫌いじゃないよ、エンデヴァーさん。強いし、ブレないし。でも、正直言って……まだ“信じてる”ってところまではいかない」

 

「……それで?」

 

「信じさせてくれよ。No.1として。ヒーローの象徴として。オールマイトが消えた今、僕たちには新しい光が必要なんだ」

 

ホークスの声には、演技ではない確かな熱があった。

 

その瞬間、エンデヴァーの内で何かが動いた。

胸の奥に燻っていた火が、再び赤く燃え上がる。

 

「いいだろう。同行してやる。ただし……本気で来い。これは“任務”じゃない。“覚悟”だ」

 

「やったー! じゃあ早速、飛行機取るね。僕のファンイベントに付き合ってよ、No.1ヒーローさん?」

 

 

「…選択を間違えたか?…はぁ…まぁいい、調子に乗るなよ」

 

 

そして九州福岡へ

 

「わーっ、キャーッ! ホークスさーん! こっち向いてーッ!」

 

「ふふっ、今日も人気だね。ナンバー2ヒーロー様!」

そこには作形作身、ヒーロー名『マスコーダー』も同席していた。

 

「なぜお前がここにいる」

 

「え?いやー、なんでですかね?私もホークスさんに呼ばれて来たんですけど、エンデヴァーさんがおられるなんて知らなかったです」

 

地方都市・常闇市(とこやみし)の屋上広場。

街のランドマークとなるタワーの頂上では、ホークス主催の“ファン交流イベント”が盛大に開催されていた。

 

「あ、誤解しないで下さいね。マスコーダーの同席はちゃんと雄英に正式に申請して許可取ってあるんで!」

 

「そう言う事ではない」

 

「あれ?自分だけが協力するって思ってました?だったら申し訳なかったです。ただ、マスコーダーは学生とは言え、俺たちより優秀な部分があります。それはご存知ですよね」

 

「そんな事は分かっている」

 

「それなら良かった!まぁ、理由ですけど簡単に言えば、いずれこの子は“俺”の後輩になる予定だからですねー」

 

「なに!?」

「え゛!?」

 

ホークスは、ファンサービスに満ちた笑顔で子どもたちとハイタッチを交わし、カメラに向かって手を振る。

 

エンデヴァーはジト目でホークスを睨む

マスコーダーは大きな目を開けてポカーンとしてしまう

カタチは「やられたー」と天を仰いでいる

 

それって、つまり公安の…?

 

そんな2人を尻目に…ホークスの目は、遠く高くを見据えていた。

 

(……来る。間違いない)

 

 まもなく――“それ”は空から降ってくる。

 

カタチも気付き警戒の声を挙げる。

 

「皆!逃げて、何かヤバいのが来るよ!要・臨戦体制!」

「流石カタチさん」

 

すぐに剛翼と『フラクタ』が市民を安全圏まで誘導する。

 

彼の背にある大きな羽根──個性「剛翼(ごうよく)」によるもの──は、空気の震えすら感じ取る繊細な“感覚器”でもあった。

歓声にまぎれて、確かに異常な気流を感じ取っている。

 

(……もう、ここまで来てるのか)

 

彼の胸ポケットに仕込まれた極小無線が、低く震えた。

発信元は公安。

このイベントそのものが“囮”であり、“対脳無戦”の隠れた舞台である。

 

 

 

そして私達の前に大きな翼をはためかせ現れたのは

 

 「……これが脳無だと?……従来のとは比べ物にならん」

 

 突如として現れた新型“脳無”。圧倒的な身体能力と再生能力、そして――人間の言葉を理解し、判断する知能。

 

その見た目は洗練されていた。

 

全身が黒く灰色の足首まである腰巻きが巻かれている。白髪があり逆立っているのが特徴的。顔は普通の人間のようで強面だ。そしてオールマイト並みの身長、しかし一回り小さくみえる。シャープだが、その肉体は引き締まっており、まるで他の筋肉は「無駄」と言わんばかりに魅せつけていた。

 

脳が露出していない…なのに脳無と判断出来たのは最初に自己紹介してきたからだった

 

「貴様らエンデヴァーとホークスか?…ん?まさかマスコーダーもいるのか?まぁ違えば似たやつ探してまた殺す。それだけだ。…あぁ、自己紹介がまだだったな。俺は脳無『セキ』今のところ“ハイエンド”…一応な…全然違うだろ?シン・脳無って事にしといてくれ。まぁ進化し続ける後輩に追い抜かれまいと日々を恐々として過ごしている小心者さ。さて、貴様達が全力を出せる所に行こうか、力を知るのが目的なのだ。だから誘導を求める、さもなくば、ここで市民を巻き込み実力を発揮できんまま死ぬぞ?どうせ死ぬのだから全力を尽くせ」

 

……恐ろしく流暢に話が出来るほど進化を果たした脳無、いや既に従来の脳無とはかけ離れ過ぎている。

両手足にバックルが付いている。おそらくセルドライバー

 

どれだけの実力なのか見当もつかない

 

「了解っす。多少は話が分かるやつで助かりますよ。東区画の廃ビル群へ行きましょう」

(進化しすぎでしょ、話が通じない方が…良かったかもな、“コレ”はヤバい)

 

 

………

 

 

高層ビルの残骸が連なる廃墟地帯。風が吹き抜け、鉄骨の軋む音が不気味に響く。だが、ここは戦うには最適だった。

 

「……派手にやれるな」

 

エンデヴァーとホークス、そしてマスコーダーと脳無「セキ」が揃う

 

「うむ、下手な時間稼ぎもせず、途中攻撃してくるわけでもなく、通信していただけで、本当にただの誘導だったな!潔いくて気持ちが良い。では戦うか」

 

「ふん、来い!焼き尽くしてやる」

「援護しますよエンデヴァーさん、マスコーダーも準備しといてね」

「はい!ここに来る前にマスデバイスの起動は終わっています」

マスコーダーはバトルジャケット・コスチューム《MAS-XX09》と航行戦闘用外装。持ち手が100cm程で、やや湾曲している150cm肌の刀身が淡く光っておりニュートリノが刃を纏っていた。エネルギー循環式の近〜中距離武器ロングレンジ・シミターを両手で持ち『フラクタ』2機を両肩付近に浮遊させ構えた。

 

「3対1……負ける気はしないな、では行くぞ」

 

セキの笑みが消える。

 

エンデヴァーの額から赤い炎が噴き上がる。燃えるような視線が、新型脳無――“セキ”を真っすぐに捉える。

 

その対面、セキは平然と立っていた。口元に浮かべるのは、まるで興味をそそがれた研究者のような微笑み。

 

「その目。殺意に満ちているな」

 

「喋りすぎだ、黙れ」

 

直後、地面を砕いて飛び出すエンデヴァー。全身を業火に包み、一直線にセキへと突っ込む。

 

「――赫灼熱拳《ヘルスパイダー》!」

 

無数の火線が空間を走った。蜘蛛の巣のように絡み合い、逃げ場を塞ぐ殺意の檻。

 

しかし。

 

「おっと」

 

セキの身体が揺らぐ。異常な加速と柔軟性で、火線の網をするりと抜ける。直後、背後からエンデヴァーの拳が迫るも――

 

「遅い!」

 

セキの肘が振り抜かれる。瞬間、金属音のような衝撃波が響き、エンデヴァーが吹き飛ばされた。

 

「……チッ」

 

エンデヴァーは空中で姿勢を立て直す。だが、その間にセキはすでにホークスの頭上へ跳躍していた。

 

「動きは軽いが……羽は重いんだろう?」

 

「そうでもないっすよ」

 

ホークスは余裕の笑みを浮かべ、背中の赤い羽を展開。百枚以上の羽根刃が宙を舞い、嵐のようにセキを襲う。

 

「羽撃《フェザーブレイド・ランス》」

 

羽根が連携する。刃が連なり、巨大な槍と化してセキへと一直線に突進――

 

「お見事」

 

セキの掌が動いた。その瞬間、地面を蹴る音が二重に響く。ブレた影が横に走り、羽根の槍は空を切る。

 

だが、その隙を――

 

「隠れてやり過ごせると思うな!」

 

灼熱の壁が上から降り注いだ。空中でエンデヴァーが両手を広げ、熱量を極限まで集中させていた。

 

「赫灼熱界《プロミネンスバーン》!」

 

灼炎の奔流が廃墟を焼き払う。だが――

 

「燃える。だが、“熱さ”はもう体験したぞ」

 

炎の中から、平然と歩くセキの姿。皮膚すら焦げていない。

 

「再生が……速すぎる!」

 

「だけじゃ無い!熱を“断って”やがる」

 

マスコーダーが小さく声を上げる。ニュートリノ探査により、彼女は気づいていた。セキの身体が炎を通さず、外郭でエネルギーを逸らしていることに。

 

「じゃあ、内側からいくしかない――!」

 

マスコーダーの背から“カタチ”が飛び出す。肩の両側に展開した2機のフラクタが回転を始め、彼女の手に握られたシミターに微細な粒子が収束していく。

 

「マスコード・リンク。コード名――《エレメントブレーカー》!」

 

一気に踏み込み低空で急加速するマスコーダー。その足取りは音もなく、セキの背後に忍び寄る。

 

「気配が……消えた?」

 

「消したんじゃない、“曲げた”のよ」

 

渾身のシミターが、セキの背中を貫かんと放たれる。だが――

 

「見事な奇襲。……だが、俺の目は騙されない」

 

振り向きざまの蹴りが、空気を裂いてマスコーダーを吹き飛ばす。すんでのところで肩の“フラクタ”が身代わりになった。

 

「くっ、情報処理の速度が……異常っ!」

 

「マスコーダー、下がれ!」

 

エンデヴァーとホークスが左右から再び挟み込む。火と羽のクロスアタックがセキを中心に爆発するように炸裂――

 

「はは、いい連携だ! ……だが」

 

爆煙の中から、低く乾いた声。

 

「まだ、本気じゃないだろう? もっと出せよ、死ぬぞ」

 

次の瞬間、セキの両手足のバックルが青白い光に包まれた。

 

「これは……セルドライバーが動いた!? 何をする気――」

 

 

ズン!重力が捩じれ、セキの周囲に異様なエネルギー場が発生する。

 

「ここからが、本当のテストだ。No.1と、羽の速さとお前の可能性――まとめて見せてもらう」

 

戦いは、激しさを増していく――!

 

 

 

「ステージ2──始めるぞ」

 

静かに落とされた声。その直後、セキの掌から何かが膨れ上がるように生成された。

 

バスケットボールほどの、滑らかに磨かれた灰色の石。浮遊するかのように現れたそれは、空気を裂く破裂音と共に——

 

「っ……!」

 

ホークスの視界に迫る、殺意の質量。

 

反射で剛翼を広げる。だが——

 

ズガンッ!!

 

天地を割るような衝撃音とともに、翼の一部が粉砕された。剛性を誇る羽根すら、貫通し破壊する異様な威力。弾丸というには重く、投石というには速すぎる。質量と加速が暴力的に融合した“破壊”がそこにあった。

 

「なっ……!? 一撃で、翼が……!」

 

ホークスが空中で回避軌道を取るが、二発目、三発目がすでに発射されていた。

 

「ホークス、後退しろ! 《赫灼熱拳(プロミネンス・フィスト)》!!」

 

地上からエンデヴァーの咆哮。立ち上る炎柱が空を割き、迫る石を焼くがスピードがやや落ちるのみ

 

「おのれ!」

 

避けた時にはセキは既に高所へ移動していた。

 

悠々と、地を見下ろす位置から。

 

「やはり熱いな……だが、焦げるほどではない」

 

まるで、試すような、値踏みするような視線。敵意ではない。戦意でもない。まるで、自らの力を披露する“舞台”に酔っている芸術家のような佇まい。

 

エンデヴァーの眼光が鋭くなる。

 

「……こいつ、完全に“会話する脳無”じゃない。兵器だ。自我と冷徹さを両立した、“完成品”だ……!」

 

 

「フラクタ、セキの細胞解析。シミターによる採取、完了」

 

マスコーダーの身体が回転する。銀青の軌跡が空を切り、セキの左肩をかすめた。

 

「……ほう、切れるのか。なるほど、普通の刃ではなさそうだ」

 

セキが自身の傷口を見下ろし、興味深げに笑った。肉体は即座に再生を開始する。まるで傷が、“最初から存在しなかったかのように”。

 

「ニュートリノ分解中。内部再生プロセス、尋常ではありません。……通常攻撃では、意味がない」

 

フラクタが冷静に告げる。浮遊するドローン群は既に次の解析に移っていた。

 

「動きが、読まれてる……ッ!」

 

マスコーダーの動線に正確に投石が刺さる。一歩動けば、そこに石が落ちる。二手先を読まれている感覚。セキは空を自在に翔け、尚も石を生成し続けていた。

 

「冗談でしょ……? あの速度、数、精度。話が通じない方が……楽だったかも……!」

 

 

「このままじゃやられる!逃げ場がなくなる……使うしかない!!カタチ、補助お願い。新機能起動いくよ──  《VRED》(ヴレッド)!」

 

言葉と同時に、空気が跳ねた。

 

白と青の雷光が、マスコーダーの身体を包む。髪が白髪になり自然と浮遊する。目光は黄色となり、足元の空間が揺らぎ始める。ニュートリノが爆発的に加速し、身体の全機能が限界を超える。

 

《能力全出力・五倍。起動制限・60秒》

 

焼けているかのように熱くなる体

処理速度も早すぎて意識が遠のきそうになる

 

でも

 

「コレで……隙を…作るッ!」

 

世界がスローモーションに見える中で、マスコーダーが疾走する。ロングレンジ・シミターにはカタチが解析し付属された弱点属性の分解酵素を纏い、斬撃の軌跡が見える。

 

 

一瞬の突進、そして──

 

「──裂けろォッ!!」

 

一閃。

 

シミターがセキの脇腹を斜めに裂く。血飛沫が空中で霧散した。明確なダメージ。骨すら削った感触。

 

「……痛い、な。いや、これは……嬉しいかもな」

 

笑っている。

 

その笑みのまま、投石が再び構えられた。

 

しかし——

 

「させるかよッ!!」

 

ホークスの羽根が十数枚、超高速で飛来。同時に、炎が地上から天へと放たれる。

 

エンデヴァーの怒声が響く。

 

「──燃えろ……俺の全てが、“力”となる!!」

 

「今しかないッ!」

 

マスコーダーの一撃によって、ほんのわずかだがセキの動きに“乱れ”が生まれた。

 

その隙を、エンデヴァーは逃さなかった。

 

「……俺が……俺が、“象徴”になる!!」

 

その身体が、燃えた。

 

火が、纏うのではない。火が、エンデヴァーそのものとなった。装甲もマントも消え去る。“人間”という概念すら燃やし尽くし、彼は一つの“技”と化す。

 

《──炎天化……》

炎そのものになった彼は声すら出ない

 

《ジェットバーン》

 

轟音と共に、灼熱の質量が加速する。

 

まっすぐ、脳無セキへ。

 

「ぐッ──がアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

直撃。

 

信じ難い熱量がセキを焼き、砕き、再生を許さず、“存在そのもの”を溶かす。

 

再び炎が人を形作る

「これが……新しい“象徴”の力だッ!!!」

 

全てが焼き尽くされ、世界が静寂に包まれた。

 

 

廃ビル群で戦っていた筈がいつの間にか市街地付近まできておりゾッとする三人。

 

ホークスは翼を片方のダメージが甚大。マスコーダーは副作用でまともに立つ事すら出来なくなって荒い呼吸を繰り返す。

 

エンデヴァーは立ったまま、燃え尽きた視線で空を仰いでいた。

 

「……勝った……のか……?」

 

「うん。……あなたが勝ったんだよ。象徴として──この国の未来のために」

 

空を見上げたその視線の先に、無数の人々がいた。

 

スマホを掲げ、泣きながら叫ぶ子どもたち。

ニュースがその様子を生中継している。

 

そして、全てのカメラが──燃え尽きかけながら立ち上がる男に注がれていた。

──焦げた空気。割れた舗道。

廃墟と化した街の中心で、ひとりの男が、ふらりと立ち上がる。

 

「……っ、う……おぉ……!」

 

エンデヴァーの全身は火傷と裂傷にまみれていた。

だが、その眼は──今までとは違っていた。

 

炎ではなく、意志の灯り。

背負うものを自覚し、それでも前を向こうとする覚悟。

 

観衆が息を飲んだ。

テレビ越しに、人々の心が揺さぶられる。

 

『──ヒーロー、エンデヴァー、戦闘を終え、立ち上がりました!』

 

『……No.1ヒーローが、民衆の前に立ち上がったぞッ!!』

 

歓声と拍手。

街中のスクリーンに映し出された男の姿は──確かに、“象徴”だった。

ホークスが疲れたように座り込み、つぶやく。

 

「……完璧だよ、エンデヴァーさん……。まさか、あれを押し切るとは」

 

だが彼の顔には笑みがある。

計算どおり、いや──予想を超えた成果。

 

(これが、“No.1”か)

 

彼の心にあった迷いが、すうっと溶けていく。

 

──これなら、任せられる。

 

たとえ自分が、影の裏で動く者になったとしても。

 

(この国に、“新しい象徴”が生まれた)

 

炎の男は、今、確かに立っている。

 

翌日。報道はどのチャンネルも“エンデヴァー”一色だった。

街頭インタビューでは子どもが興奮気味に語り、老婦人は涙ながらに拍手を送る。

 

『……あのとき、確かに思ったんです。あ、この人が……これからの、ナンバーワンなんだって──』

 

その言葉に、テレビの前の焦凍(しょうと)──エンデヴァーの息子──が、目を見開いた。

 

彼はただ、黙ってテレビを見つめ続けていた。

 

(……父さん)

 

今まで、向き合えなかったものが、ほんの少し──動き出した気がした。

 

その夜、ホークスは一人、東京の高層ビルの非常階段に腰を下ろしていた。

 

「──さてと」

 

彼の表情は、あの日の笑顔とは違う。

冷たく、そして鋭い。

 

ポケットの中の通信端末が、ノイズ混じりに作動する。

 

『……ああ、聞こえる。予定通り、“エンデヴァー”は釣れたな』

 

『次は……“ヴィラン連盟”との接触だ』

 

ホークスの目が細くなる。

 

「準備は、できてますよ」

 

「僕は“速い”から。任せてください──“潜入”は、得意なんで」

 

──それは、“英雄”と“諜報員(エージェント)”という、二つの顔を持つ男の──静かな宣言だった。

 

そして、新たな火種が、世界に静かに芽吹いていく。

 

荼毘(だび)、トガヒミコ、トゥワイス、スピナー、睡魔、ムーンフィッシュ、マスキュラー……そして死柄木葬華

ヴィラン連合は着実に力を増し、再び牙を剥こうとしている。

 

だがそれに立ち向かうための力も──すでに動き始めていた。

 

 

 

その夜………

 

 

 

バキバキバキバキバキ…と廃ビルの一室の一点を中心にビルが圧縮されていく。10分ほど経過し、音が鳴り止んだ頃には圧縮していた中心にシン・脳無『セキ』が立っていた。

 

「実力を知るための戦いだと言ったはずなんだがな。ふむ、何を勘違いしたのか…さて報告に行くか。む?残機が無くなった。まさか……4回分の死ぬダメージを重ねて受けたと言う事か……恐ろしいなN o1。もう死ねん…か」

 

バサァ!!

 

「くくく、良いじゃないか。“生きてる”感覚がする。エンデヴァーに感謝だな。――次に会ったら殺そう。“先立たなかった不幸を、許すな”。貴様は俺が殺すぞ……ハーハッハッハ!!」

 

彼が広げた大翼は澱んだ不吉を孕んでいた。




いかがだったでしょうか?

絶望感が伝わったら書いた甲斐があります!
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