ヒーローのカタチ   作:サモア リナン

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第22話「Sustainable Violence & Plunder」略してSVP(持続可能な暴力と略奪)

福岡・常闇市でのエンデヴァーたちの壮絶な戦闘から、わずか数日後

 

雄英高校では、エンデヴァーらの激戦の余韻も冷めやらぬ中、1年生たちの実践訓練が始まっていた。A組・B組の混成チームによる「合同演習」そこには、ただの連携訓練では終わらない、成長と衝突、そして新たな力の胎動があった――

 

 

 

訓練場所:仮想市街地ステージ

 

崩れた瓦礫、無数のビル模型が立ち並ぶ都市型フィールド。プロの現場を再現するかのような緊張感に包まれた空間。

 

司会進行は、A組担任・相澤消太と、B組担任・ブラドキング。

 

校庭に設置された訓練用マイク前に、A組・B組の1年生全員が整列。表情は硬く、どこか張り詰めている。

 

その中心で、相澤先生が静かに、だが確かな声で口を開いた。

 

「今回の訓練は“対抗戦”じゃない。A組とB組の混成チームを組み、戦術と連携力を高めるのが目的だ」

 

淡々とした声だが、その意図は誰にでも伝わった。プロを目指すなら、異なる個性と呼吸を合わせることも必要不可欠なのだ。

 

すぐに、ブラドキングがマイクを引き取る。

 

「つまり!敵は君たち同士ではない。戦う相手はこの都市型フィールドに潜む“状況”そのものだ!見せてくれ、百点満点の連携プレーを!」

 

 

隊列の中では、鷺坂、尾白、谷垣、轟、爆豪、八百万らが互いに視線を交わし合う。

 

「なんだか…いつもと違うチーム編成、ちょっと面白いじゃんか」

「いずれプロになったら、いろんなヒーローと組むことになる。今のうちから慣れておくのは理にかなってる」

「……面白がってられないよ。また“最下位は除籍”とか言い出すかも……2年で残ってんの、型形先輩くらいでしょ」

「全然…合理的虚偽じゃないんだよな、それが……」

 

だがその不安を打ち消すように、爆豪の怒鳴り声が響く。

 

「オイ!聞いとけテメェら!一人で突っ走るのはルール違反だ!チームってのは役割を全うしてこそ機能すんだよ!手ェ抜いたヤツはブッ飛ばすぞ!!」

 

彼の拳には力が込められていた。そこに宿っているのは、ただの怒りではない。仲間を信じ、信頼される者としての責任だ。

 

続いて、轟が静かに口を開く。

 

「……ビビることないだろ。俺たちは怠けずに鍛えてきた。経験値だってもうプロ並みだ。実力、見せようぜ。俺たちは強い」

 

2人の変化は目を見張るほどに大きく、それを見つめる相澤先生は、わずかに笑みを浮かべる。

 

そこに割り込んだのは、やはりこの男――物間寧人。

 

「エンダァァァーー!A組だけが優秀で、成長してるなんて思ってないよね?僕たちB組だって、それなりに強くなったんだ。証明してあげるよ。……吠え面かかないようにね?」

 

相変わらず挑発的な物言い。だが、その瞳は確かな自信で輝いていた。

 

「まったく!そういう言い方はやめなさいっての!……でもまぁ、負ける気がないのはこっちも同じだけどさっ」

 

拳藤は言葉遣いに眉をひそめつつも、気迫では物間にも引けを取らなかった。

 

「心操くん、デクくんと別チームか~。どうなるかなぁ、楽しみだね!」

麗日は少し弾んだ声で、わくわくを隠しきれない様子だった。

 

 

整列完了と同時に、チームペアリングが発表される。

 

A組・B組からそれぞれ4人ずつの混成。1チーム8人での試合形式。

 

「爆豪 vs 柳」「緑谷 vs 心操」など、意味深な組み合わせに、観覧席の空気が一瞬、凍る。

 

「制限時間は8分。リタイアは即敗北扱いだ。全滅勝利、狙ってみろ」

再びマイクを握った相澤の言葉が、戦場に火を点ける。

 

 

爆豪チーム vs 柳チーム

 

爆豪・芦戸・吹出 vs 柳・切島・上鳴

 

号砲代わりに響いたのは、爆豪の爆音と雄叫び。

 

「いっくぜぇええぇ!!!」

一撃目から全開、跳躍と同時に掌と足底から閃光と衝撃を放つ“爆破機動”。火薬の如く空気が震え、爆豪は真っ直ぐ柳の位置へ突進。

 

しかし――柳はすかさず身を屈め、冷静に個性“ポルターガイスト”を発動。浮遊する瓦礫の一つを前に押し出し、爆豪の飛行軌道を強引に逸らす。

 

「爆豪…あんた、初手から調子乗りすぎなんじゃないの?舐めないでくれる?」

柳が低く言い放つ。

 

「はああぁ?上等だテメェ……ぶっ飛ばしてやんよ!!」

汗を飛ばしながら再接近する爆豪。だが――次の瞬間。

 

芦戸が俊敏に横から接近し、柳の足元へ低い姿勢でスライディング。足払いでバランスを崩しにかかる。

 

「いっけー、ミナちゃん!」

それに呼応し、吹出が「どかーん」と叫びながら無数の擬音爆弾を空中に発生させる。

 

爆豪の広範囲爆破と、吹出の擬音“炸裂”が、連携として火を噴いた――かに見えた。

 

だが、突如として前に躍り出たのは切島。

 

「任せろ!!」

全身を硬化させ、柳の前に仁王立ち。全ての攻撃をその身で受け止める。

 

その背後から、上鳴が突撃してくる。

 

「触れたら痺れるだけじゃすまないぜ?俺の新技!」

両手に帯電した1.5mの雷の刃、“電刀(でんとう)”を携え、振りかぶる。芦戸と吹出はギリギリで回避。だが連携は乱れ、戦線が崩れかけた。

 

そこを柳が突き、ポルターガイストで爆豪の動きを止める。

 

しかし――その時、周囲に漂う汗に気づく。

 

爆豪の汗は、蒸気のように空気中に舞っていた。

 

「……あっ……」柳が声を漏らす。

 

ドン!!!

 

全方位、無差別爆破。空気が震え、爆豪の怒号が響く。

 

柳と上鳴は爆風に巻かれて吹き飛び、意識を失う。残ったのは切島一人。

 

切島は咄嗟に地面へ腕を突き刺す。

 

「悪ぃけど、巻き込むぜ!」

 

自身の個性で、半径30mの地面を硬質化!芦戸と吹出の足元まで硬質化の檻に変わり、膝まで拘束される。

 

だが、切島の足元――そこに染みていたのは、爆豪の汗。

 

「勝負ありだ……」

 

ゴンッ!!!

 

顔面直撃の爆破。いかに硬化していようと、至近距離の爆撃には耐えきれなかった。

 

地面に崩れる切島。

 

爆豪の勝ち誇った叫びが響く。

 

「なめてんのはそっちだったなァ!!」

 

勝者:爆豪チーム

 

しかし、その身体は上鳴から伸びている蜘蛛の糸状の電気網に絡まっていた

 

 

試合は続き

 

第2試合

緑谷チーム vs 心操チーム

 

緑谷・拳藤・庄田 vs 心操・飯田・物間

 

仮想市街地に風が吹き抜ける中、二つのチームが対峙した。

 

緑谷はチームメイトに、OFAフルカウルを40%まで解放可能になったこと、継承者の個性が使用可能になったこと、現在使えるのは「黒鞭」「浮遊」「煙幕」「危機察知」であることを共有し、作戦を練った。

 

「2人とも、よろしくね」

「「うん、よろしく!」」

 

緑谷出久は深く息を整え、拳藤一佳、庄田二連撃としっかり頷き合う。

 

───

 

「拳藤さんは左側、庄田さんは右!僕は中央から!」

 

緑谷の声を合図に、逆鶴翼の陣形を展開する。緑谷は浮遊を活かして中央上空へ、ゆっくり進みながら俯瞰で状況を探る。拳藤と庄田は地上から先行し、左右に展開。

 

フルカウル40%による高速機動。黒鞭と浮遊の併用による立体移動。加えて、煙幕を展開しながらの高速移動と危機察知での回避性能――

 

緑谷出久の成長ぶりは、目を見張るほどだった。

もはや奇襲も視認も困難で、“チート”という認識は両チームの共通認識となっていた。

 

当然、警戒されるのも最上級。速攻か、様子見か。敵の出方に神経を張り詰めながら、緑谷は心操・飯田・物間の位置を確認しようとする。

 

その瞬間、真下から突進してくる二人の影にギョッとする。

 

「!? もう来たの!? 早すぎる!」

 

飯田はエンジンを最大出力に。物間もコピーしたエンジンで飯田に続く勢いだった。

 

とはいえ、まだ少し距離がある。緑谷は何かの策を警戒しつつ、高度を取って距離を稼ごうとする。

 

「Don’t run、ナゥエエェェェイ!それだけの力がありながら逃げるのかい!?卑怯者だよ、緑谷出久!継承者なんだろう?」

 

物間の叫びに、緑谷が反応する。

 

「……僕だけの戦いじゃ、ないか……らぁ!?!?」

 

次の瞬間、意識が急激に遠のき、身体が動かなくなる。

 

「はぁっははあああっ!かかったな!」

 

物間は、エンジンと共に“洗脳”もコピーしていたのだ。彼はついに、2つの個性を同時にコピー・使用できる域へと進化していた。

 

(まさか…!2つも……!?)

 

個性を封じられ、空中で動けなくなる緑谷。そこに迫る、上下からの双撃。

 

「すまないな、緑谷くん!君は危険だ!速攻で終わらせる!」

 

飯田が上から、物間が下から。

 

「「レシプロ・バースト……クロス!!」」

 

──ドカァッ!!

 

「ぐあっ……」

(そ、そんなぁ……)

 

空中で挟み撃ちを受け、緑谷は意識を失って落下する。

 

「うそ!?」

「うえぇぇっ!?」

 

あまりに早すぎる退場に、拳藤と庄田が焦る。

 

ドルゥン!!

2人のもとへ迫る“エンジン音”。

 

「えっ……!? 上空にはまだ飯田と物間が……」

 

視線を上げるが、ふたりは空中。だが、目の前に確かに迫るエンジン音。視線をずらすと、少し離れた場所に心操がいた。

 

「よ、残念だけど、勝つのはこっちだぜ」

 

「な……!? 物間のヤロー、“コピペ”まで使いやがった!?」

 

物間の進化と深化は余りにも脅威となっていた。

 

彼は2つの個性を同時にコピー可能となり、その持続時間は約10分。加えて、自分のコピー個性を1つ、味方に“ペースト”できるようになっていた。効果時間は約3分。

 

その“3分”が十分すぎた

 

気づいたときには既に遅く、庄田は“洗脳”され、動けない。

 

「次はお前だ、拳藤!」

 

猛スピードで迫る心操。

 

(返事さえしなければ……!)

拳藤は警戒しながら構え、心を集中させる。

 

だが──背後からの一撃に膝が崩れる。

 

ドン!

 

「なっ!? ぐっ……なにが……!?」

 

「残念だったね、拳藤さん。今の僕のエンジンは、空も飛べるんだよ」

 

飯田の脚部には、新たに足裏にも噴出口が設けられていた。コスチュームもまるで戦闘機のように改良され、彼は文字通り空を滑空して背後を取っていたのだ。

 

そして、庄田は未だ洗脳状態で動けない。

 

「ふう……“エンジン”って、難しいな。バランス取るだけで精一杯で、他は何もできやしない……あ、すまんね拳藤。俺の個性、“知ってる”だけで充分脅威だったろ?」

 

ニヤリと笑う心操。

 

勝負が終わってみれば、圧倒的な差を見せつけた心操チームの完勝だった。

 

最終戦

 

轟チーム vs 鱗チーム

轟・蛙吹・角取 vs 鱗・鉄哲・尾白

 

廃墟と化した高層ビル群。その間を吹き抜ける風が、決戦の火蓋を切るホイッスルと共に一層強くなる。両チームは即座に動いた。

 

「鉄哲、正面から突っ込め!尾白は右へ、挟み撃ちにするぞ!」

「了解!」「任せろ!」

 

上空から索敵していた鱗が瞬時に指示を飛ばすと、先陣を切ったのは尾白猿夫。彼の深化した個性「全身尾毛」は、全身に尻尾と同質の毛が生え、身体能力が向上し、さらには帯電体質まで得た。ただし、発電機能はない。彼は壁を跳ねるように駆け、尻尾を巧みに使って瓦礫を跳ね上げ、敵の行動を封じにかかる。

 

「うわっ、あいつ強化系だったっけ!?」

角取が驚きつつ、角をボウガンに装填し射出。狙いは──

 

「痛ってぇ!てめぇ、やりやがったな!」

 

食らったのは鉄哲だった。だが彼は意にも介さず、叫ぶ。

 

「効かねえよ!こっちの番だ!」

 

紅く発光し始める身体。“熱鋼”の応用形態、気合と共に体温を急上昇させ、周囲の湿気すら蒸発させながら猛突進する。

 

「それは悪手だな」

──バギン!!

 

轟が冷静に氷の壁を生成、一瞬で鉄哲を封じる。

 

その間、空を切り裂く咆哮とともに飛翔するのは鱗。翼を広げたその姿は、まるで神話のドラゴン。個性によって体格が変化し、空中では高速の滑空と指向性超音波で氷にヒビを入れる。

 

着地した彼は、今度は筋骨隆々の二足歩行の竜へと形態変化。

「グアアア!!」

強烈な打撃で氷を砕き、鉄哲を解放する。

 

角取の角が飛び交い、敵の注意は轟と蛙吹から逸れていく。

 

──しかし、別の場所では激しい接近戦が繰り広げられていた。尾白による強烈な打撃。尻尾は太く長く、まるでムチのように操られ、氷も炎も、舌による奇襲も初動で読まれる。

 

「ミルコさん直伝だ。もう、昔の俺とは違うんだよ!」

 

「月ニ手ヲ伸ス術──伸槌・ルナ・アーク!尾空旋風・改!!」

 

鋭い連撃に翻弄され、轟も蛙吹も押されていく。

 

「尾白くん……強くなったわね」

「正直、近接戦じゃ全く歯が立たない……」

蛙吹の言葉に、轟は静かに目を閉じ、そして開く。

「だけど──勝つために、手はある」

 

「蛙吹、いくぞ!」

「えぇ!」

 

2人は意を決し、動く。

 

「炎骸・大世海!!」

 

轟の放った新技。炎の“マイナス”をイメージし、氷混じりの水蒸気を爆発的に展開。瞬く間に広がった半円状のエリアは、地面を除いて全方位を濁らせる。

 

角取は事前の打ち合わせ通りに離脱。鱗と鉄哲は巻き込まれた。

 

この中で唯一、強化されたのは蛙吹だった。新たな個性進化──「退華(たいか)」。姿はオタマジャクシ状の尻尾が伸びただけに見えるが、水中戦ではその俊敏性が極まっていた。

 

爆発的なスピードで水中を縦横無尽に舞い、尾白と鉄哲を翻弄。尻尾の一撃で意識を飛ばし、気絶に追い込む。

 

残るは鱗。彼も水龍に変化し互角の応酬を繰り広げるが──

 

「角取!今だ!」

 

「美味しいとこ、もらっちゃうわよ!」

 

角を“乗り物”として両足で踏みつけ、角取が空を舞う。そのまま水龍状態の鱗に向かって突進し、地面に激突。

 

土煙が晴れると、鱗の顔にボウガンを突きつけた角取の姿があった。

 

ホイッスルが響く。

 

勝者:轟チーム

 

──

 

訓練後

 

互いにボロボロとなりながらも、A・B組の生徒たちは最後の戦いに敬意を表する。

 

「……上手にやれたと思う、ケロ」

「うん、完璧な連携だった」

 

照れくさそうに笑う角取に、轟も珍しく微笑む。

 

「……ありがとう、蛙吹、角取。2人がいてこその勝利だった」

 

一方、倒れたB組も誇りを忘れていなかった。

 

「……あいつら、強えな」

「でも、次は絶対勝つぞ」

 

熱い汗とともに、何かが確かに変わっていた。

 

──

 

夕暮れ、仮想市街地に拍手が響く。A組の応用力、B組の地力。両者に賞賛が送られる中、教官たちが生徒に言葉を送る。

 

「最初にも伝えたが今回の訓練で見るべきは勝敗じゃない」

相澤が冷静に言う。「己の課題を見出し、そこに向き合えたかどうかだ」

 

「特に心操──これはA組編入を見据えた試験でもあった。よくやった」

 

静かに頭を下げる心操。

「ありがとうございます」

 

「……緑谷。お前は“力に使われていた”な」

 

落ち込んでいた緑谷は、仲間に支えられ立ち直り、前を向いていた。

 

「はい……今回で分かりました。“僕が強くなった”んじゃない。強くなったのは個性です。それに無意識とは言え、酔っていました」

 

「分かってくれたならそれでいい。お前が負けたのが今日で良かったよ。良き友人たちに、感謝しておけ」

 

「はい!ありがとうございました!!」

 

──

 

その夜、寮に戻った生徒たちは思い思いに語り合う。

 

「B組、予想以上にヤベェな」

「柳、今度一緒に特訓しようぜ!」

「爆豪…なんか優しくね?」

 

互いの力をぶつけ合い、傷つけ合い、それでも。

 

今、A組とB組の間には確かな絆が芽生え始めていた。

 

 

別室にて

 

特別許可のもと外出が認められたオールマイトは、生徒たちには内緒で最終訓練を密かに見守っていた。まだ療養中の身。今後、満足に歩くことすら難しい状態でありながら、その目だけは真剣だった。

 

モニター越しに、決着のホイッスルが鳴る。

 

「……いやぁ、見せてもらったよ。全部……うん、凄い。ちょっと凄すぎるくらいだ。あれだけ戦えるなんて……戦闘面だけならもうプロ並みだし、一定数はプロを超えていると言っても過言じゃないね…ゴホッ……!」

 

背後でモニターを切ったのは相澤とブラドキング。二人は並んでその言葉にうなずく。

 

「えぇ。個々の力量も高いが、総合力、そして平均値……歴代でも最強クラスだと自負しています」

「がっはっはっ!マスコーダーの地獄の特訓のおかげだな!俺も一回り強くなったぜ!」

 

冗談めかしたブラドの言葉に、オールマイトはふっと笑う。

 

「そうか、そうか、正直言って……予想以上だ。いや、不謹慎かもしれないけど……私は今、希望を持ったよ…そうか、コレが助けを待つ者の気持ちなんだね…」

 

その言葉に、相澤は静かに首を振る。

 

「……分かります。私も同じです。けれど、それを口に出すには、まだ……早すぎる。敵は、強い。知略も、執念も……そして、規模も、あまりに巨大です」

 

オールマイトは、しばし黙り込んだあと、うなずいた。

 

「……うん。すまない、軽率だった」

「いえ。ですが……希望が生まれるのは、悪いことじゃない」

 

相澤の言葉には、わずかながらも確信が宿っていた。

 

──現実は厳しい。

 

オールマイトは、もう戦えない。もはや日常生活すら、他者の手を借りなければ成り立たない体となってしまった。そして世の中もまた、暗い報せに覆われている。

 

その暗い報せとは、つい先日の報道だった。

 

「SVP社 設立──」

 

 

 

ニュース番組は、誇らしげにその名前を掲げていた。“Sustainable Violence & Plunder”、直訳すれば「持続可能な暴力と略奪」

ヴィラン連盟が異能解放軍を吸収し、新たな組織として生まれ変わった──と“宣誓”された

 

 

代表者は、死柄木葬華。

 

表情を崩さず堂々と名乗る

 

報道特集『SVP社 設立宣誓式』─

 

─テレビ画面より

 

画面には、薄暗い会場と、中央の壇上に立つ一人の女性

 

顔は大人びて以前よりも落ち着いた表情を見せていたが、目の奥には凍てつくような冷徹さと狂気が宿っていた。

死柄木葬華──「ヴィラン連盟」のリーダー

そして今、再構成された新組織「SVP社」の理事で代表。

 

彼女がマイクに口を寄せると、場が静まり返る。

 

「──この団体は、皆様の“悪意”によって成立します」

 

その一言で、空気が変わる

会場は無言。だが、確かな緊張と、どこか陶酔したような視線が集まっていた

 

葬華は構わず、語り続ける。

 

「一発の大事件で世界を揺るがすなんて、もう古い。私たちは違う。──“継続的な暴力と略奪”を根底に、力あるものが我儘に…好きに生きることが出来る自由を…この社会に“根づかせる”。」

「一度だけの悲鳴に意味はない。何度も、繰り返し、広く、深く──誰かの生活が。価値が。当たり前が、少しずつでも崩れていく……それが、私たちのやり方」

 

壇上のスクリーンには、かつての“泥花市”が異能解放軍とヴィラン連盟ぎ戦い無惨に崩壊していく映像がスローモーションで流れ続ける。

 

葬華はゆっくりと…包帯を巻かれていても分かる、歪で異常な『左手』を掲げる。

 

会場全体を見回しながら言い放つ。

 

「……安心して、世界は殺さない。それは目的じゃない。私たちはただ、過去から培われ、託されてきた“正しさ”や“在り方”を崩すだけ」

 

「何を信じて、何を守って、何を恐れるか──それを、これから…あなたたち自身で選ばせてあげる」

 

そして、静かに笑った。

それは喜びでも怒りでもない、“壊すことそのもの”に価値を見出す者の、純粋な笑みだった。

 

「搾取されるもの、暴力を振るわれるのが嫌な者は…是非、一度我がSVP社の試験を受けに来てね。あなたも奪う側に…なれるかもしれませんよ」

 

それは他を見下し蔑み利己を強要する組織への誘い…『個性』とは無関係な“人間性”へ恐怖を感じるには十分な演説だった

 

その後

 

テレビ画面には「SVP社 設立/死柄木代表、記者会見にて発言」の字幕が表示され、スタジオのアナウンサーが硬い表情で解説に入る──。

 

「……新たな犯罪組織の登場として、公安は最大レベルの警戒を示しています。“持続可能な暴力と略奪”という宣言は、国際社会にも衝撃を与えており……」

 

 

この報道は、恐怖を植えつけるように、無理やり“流された”ものだった。

 

更に世界も…日本も…まだ、彼女達を捕捉できていない。

 

いつか、本当にそんな時代になるのでは?と、誰もが恐れを持ってしまう

 

だが──それでも。

あの報道が植えつけた暗い予感の先に、ほんの微かな希望が灯るのを、誰かが見ていた。

雄英の訓練。その中に、未来を切り拓く“光”が、確かに存在していた。

 

 

SVP社 設立前──某日

 

死柄木葬華が率いるヴィラン連盟は、リ・デストロ率いる異能解放軍の本拠地「泥花市」に招かれていた。

異能解放軍は「個性=自由であるべき」という思想を掲げ、その理念のもと、ヴィラン連盟と“協力”したいと申し出たのだ。

 

この地に足を踏み入れたのは、リーダー・死柄木葬華と“灰濁”メンバー──そして、元死穢八斎會幹部で唯一の生き残り・乱波肩動。異能解放軍からの招待に応じた形だ。

 

だが──

 

「これ……待ち合わせ人数、合ってます?」

 

トガが手持ちの地図をチラリと見ながら眉をひそめる。

 

「怪しいな……多すぎる」

 

スピナーが呟いたとき、遠くのビル屋上に動く影が見えた。

 

「よぉこそ、ヴィラン連合。歓迎するぜ」

 

「ヴィラン連盟よ、間違えないで。次は崩すわよ……それにしても、豪華な歓迎ありがとう。素敵なお出迎えね」

 

現れたのは、異能解放軍のカリスマ的指導者・リ・デストロ。

その背後には、武装した民間人が数千……いや、数えるのが馬鹿らしくなるほど。老若男女、それぞれの“異能”を携えて整列していた。彼らこそが「解放戦士」──抑圧を憎み、異能の“自由”を信じて戦う者たち。その数、事前情報によれば最大11万人。

 

だが、集められた彼らの視線は、協力者に向けるものではなかった。

 

「どういうことだ?」

 

スピナーが首をひねる。街中には完全武装の兵があらゆる路地に配置され、道路、地下鉄、屋上、すべてが監視下にあった。逃げ道はひとつとして存在しない。

 

「この泥花市の人口全員が我々の同志だ。貴様らは今、包囲されている」

 

普通なら焦る場面だが、葬華は本当に“分からない”といった顔で返答する。

 

「だから何?」

 

「分からんか? “異能”は解き放たれてこそ意味がある。君たちを屈服させ、我が軍に従属させる。さもなければ命はない──それが、君たちを呼んだ理由だ」

 

リ・デストロが高台から告げる。

 

泥花市──地図の片隅にある地方都市。かつては工業地帯として発展したが、近年は過疎化が進み、異能解放軍に目をつけられた。今や行政の目も届かぬ“異能自治区”と化していた。

 

「くくく……って事は何だ?呼ばれたのは罠で……お前らは敵。だからぶち殺していいって話だな? この人数、史上最多だぜ。面白れぇ! 最高だ、この組織……マジで飽きねぇなぁ」

 

連盟の特攻隊長となった彼にとって、暴力は生活の一部。きっと最期まで変わらない──ヴィランの鑑のような男。

 

「がははは! 凄いなぁ、連盟入って良かったぞ。視界を埋め尽くす程のサンドバッグが自分から沢山……なかなか経験出来るもんじゃねぇよなぁ。おっと、先輩方を差し置いてちゃいけねぇよなぁ」

 

ガタイの良すぎる新会員・乱波肩動(ケンドー)が拳を鳴らしながら残虐な笑顔で前に出る……が、ハッとなりワタワタと一旦下がる。

 

彼はマスキュラーとの戦闘後、死にかけたが、灰濁メンバーの情けで貴重な消費型回復個性により全快していた。そのため、上下関係に慣れておらず、少しぎこちないのが“可愛い”らしい。

 

「気にするな、好きな時に前に出ろ。……なるほど、烏合の衆もここまで人数差があれば脅威だな。まぁ、一定以上我々に近づけば“死ぬ”と全員に浸透させれば自然と我らの勝利となるだろうが……それまでが面倒だ」

 

スピナーが二刀流を抜き放つ。刀の力だけではない。彼は見合う自分になるために強くなった。その過程で、ステインへの憧憬は“昇華”された。彼を超えることが、自分にできる最大の感謝だと信じている。

 

「うははは、全く負ける気ねぇじゃん! いやいや勝てないって! ……もちろん勝てる!」

 

トゥワイスはビクビクしているかと思えば、急に胸の腕時計付きの腕を掲げ、前を向く。

 

彼は『泥』で自分を作り出す。トラウマからは逃げられていないが、セルドライバーのおかげで、トラウマが“あること”自体が大きな力になった。問題解決が正解とは限らない。

 

「うふふー……かぁいい人はいるかなぁ? “ちぅちぅ”したいなぁ。うーん、ココは赤い“部屋”って言うには大きすぎますね。“赤い街”って感じにしましょうか。ふふふ。ねぇねぇ『あなた“達”は好きですか?』YES…or…NO」

 

トガヒミコは両手を赤く染めた頬に当て、身体をクネクネと揺らす。左手の爪黒手袋は、まるで本物の肌のように癒着していた。彼女の『好き』は、今や『怪異』となった。

 

「あー……お前ら、バカな事してるって自覚あるか? ……ねぇよなぁ。まぁ、しょうがねぇーんだろうけどよ。精々、降伏するタイミングは考えとけよ」

 

荼毘はため息をつき、ダルそうにベルトを締め直す。過去の確執は解消されていないし、させる気もない。ただ……“それ”以上に「燃やしたい」気持ちが強くなっていた。ただ、それだけだった。

 

「面白そうな演目だ! 確か、そちらさんは11万人いるんだったか。良いよなぁ……観客には事欠かない。えっと……皆、無駄とは思うけど、あまり減らさないでくれよ? 俺の舞台観客が減るのは辛い」

 

Mr.コンプレスはシルクハットを団扇のようにパタパタさせる。敵が減りすぎるのを心配していたが、彼の足元にはすでに大量の圧縮された玉が散らばっており、なおも増え続けていた。

彼は愉快犯。無計画に無遠慮に、やりたい事を思うままに──ブレーキなど、無い。

 

「枝ー歯歯歯歯!(しーはははは!)……肉! 肉! 肉! ……にーーく! ……噛みごたえ……噛みごたえーーーーバッツグーーン7! ……さてミスター、無理を言ってはいけないよ。舞台観客はあなたの個性で保護すると良い」

 

狂い方を間違えたムーンフィッシュ。だが、意外と間違ったアドバイスはしない。徐々に“常識人”に近づいているらしい。なぜなら、普通に服を着て街中にいた方が、より多くを噛み・刺し・貫けると学んだからだ。

 

「だーるまさんが……殺(こーろ)んだ。……意味わかる?逃げるなら今だよ? 私に見つかったら、手足無くしてから眠ってもらうからね。……なーんて、ね」

 

睡魔ことスイちゃんはガスマスクに黒いブカブカの服を着て、年齢・性別不明を装う。服の下から常にガスが漏れているのはご愛嬌。空に『座る』彼女は特等席で状況を眺めていた。

最近の趣味はソウカちゃん『への』裁縫と、トガ姉様との怪異ごっこ。そして童謡をもじった挑発。やりたい事はたくさんあるが、どれもまだ中途半端。今は、自分に合った「キャラ付け」に悩むお年頃。

 

「これは……アレだね。勝てると思ってるんだろうね。んー……イマイチ私たちのこと分かってない感じがするなぁ。今までの活動が消極的すぎたのかな? ……どう思う?黒霧」

 

そう語るのは死柄木葬華。

灰白の長い髪、病的な白い肌──だが清潔感があり、不思議と整って見える。髪を縛って……いや、握っているのは子供の両手。

そして何より目を引くのは左前腕。無くなった肘に手首が移植され、その掌にまた手首が──合計30本の指。三人分の両手分の本数が歪に移植されていた。

ちなみにこれは、スイちゃんの“作品”であり、葬華いわく「愛着が湧いた」とのこと。

 

「はい、葬華様。逆かと」

 

「逆?」

 

「はい。活発に活動した結果、ヴィラン連盟の名が有名となり、あちら様の活動障害になりうると判断されたのではないでしょうか。ただ、私共の情報は古く、理解不足な点については同意いたします」

 

「あー……そっちかー」

 

「ふん、ぐだぐだと……時間の無駄だよ。さて、効率的に行こう。開戦だ! さぁ同志諸君、抑圧の象徴どもを潰すのだ!!」

 

リ・デストロの号令と共に、異能解放軍が一斉に行動を開始。

民間人兵士たちが手製のサポートアイテムや自身の能力を使い、ヴィラン連盟へ襲いかかる──!

 

異能解放軍が一斉に構えた、その瞬間──

 

「黒霧」

 

ただ、それだけ。

死柄木葬華が静かに呟いた瞬間――

 

ズオォォォ……ッ!

 

虚空が裂け、煤けた闇が空間を侵食していく。

泥花市の空、壁面、路地裏――至るところに“裂け目”が咲いた。

 

「了解しました、葬華様」

 

低くこだまする黒霧の声とともに、次々と開いたゲートからヴィラン連盟の兵たちが雪崩れ込む。

その数、200を優に超える。皆、崩壊のカリスマに導かれ、血を求めて集った亡者たちだ。

 

死穢八斎會との衝突を経て志願した者も多く、彼らは今――

死柄木を「崩壊と解放の使徒」と称する。

 

「「「葬華様に勝利を!!! うおおおぉぉぉぉッ!!!」」」

 

全員に、旧型セルドライバーが支給されている。盗品とはいえ、火力は充分。

今、泥花市に破壊の波が解き放たれた。

 

 

「さて、お待ちかねの――演目第二幕」

 

Mr.コンプレスがステッキを地面に突き立て、重心を乗せる。

くい、と首を傾げ、仮面の奥で笑った。

 

「開演だ。」

 

パチン。

指を鳴らした瞬間、各地に隠されていたビー玉が一斉に弾ける。

 

中から現れたのは、300名を超える“無関係者”たち。

戸惑い、怒鳴り、罵声を上げる彼らの目は――明らかに偏っていた。

 

「なんだここは!? 異形のクズどもがウロウロしてるじゃねぇか!」

 

「チッ、気色悪ィ… 異形なんざ人間扱いされる価値もねぇだろ!」

 

「個性に格があるのは当然だ! 進化しない遺伝子に未来はねえんだよ!!」

 

「無個性は社会のガンだろ!? 役立たずに人権とか、冗談も大概にしろや!!」

 

その言葉に、周囲の解放軍兵士たちが明確に反応した。

 

「てめぇ……言っていいことと悪ィことがあんだろうが!」

 

「俺たちは“自由”のために立ってんだよ!! 分かってねえのかテメェらァ!!」

 

まさに火に油。思想の真逆に位置する者同士が、目の前で火花を散らす。

 

 

Mr.コンプレスは、帽子のつばを指先で軽く撫で、嗤った。

 

「彼らはね、君たちと真っ向から相容れない思想の住人さ。異形排斥主義、個性階層主義、遺伝選別主義……」

 

「驚いたことに、我々の加入希望者より多かったんだよ。世の中、壊すしかないよねえ……ほんと」

 

解放軍内部に、さらに混乱の種が蒔かれる。

 

 

ズドォォォン!!!!!

 

グシャアッ!!

ドンッ!!!

 

街の一角、旧工場群がごっそりと崩れ落ちた。

マスキュラーと拳藤ケンドーの、問答無用の突撃だった。

 

「ハッハハハハハハ!!! こっちは何人殺っても減らねえぞ!? 最高だなァ!!!」

 

「来るなら来いよ!自殺志願者どもォ!!!殴って殴って殴って……潰すだけだろうがッ!!」

 

獣のように暴れる2人が、“戦線”の概念すら破壊していく。

 

「やる気満々だな……」

 

スピナーが肩越しに呟き、二刀を抜いて交差する。

ギラついた視線を前へ――そして納刀。

 

カチン。

その音の後、敵兵の肉体がずれ落ちるように崩れていく。

 

 

「さてさて……舞台は整った、かな? いや、整ってるのかコレ……まあいいや」

 

Mr.コンプレスが再度、腕を広げ、演者のように叫ぶ。

 

「ショータイム!!」

 

その合図と同時に、圧縮玉が周囲にバラ撒かれる。

瞬時に解放され、狂気のオモチャ箱がぶちまけられた。

 

兵器、瓦礫、鋼鉄獣、トゲの罠、岩石雨――

“混沌の具現”が一斉にこの都市を喰い始めた。

 

「ほらよ。好きに暴れな」

 

 

その直後、声が響いた。

 

「……歯ぁ、ミスター?」

 

場違いにゆるい声音。

ムーンフィッシュが、首をかしげながら舌を這わせる。

 

「“開演”だの“ショータイム”だの……似たような言葉、何回も繰り返して恥ずかしいでしょ? ちゃんと脚本書いてから喋んなきゃ、みっともないよォ」

Mr.コンプレス:「ギャフン……!」

 

わざとらしく返すその背後で、異様な光景が広がっていた。

 

ムーンフィッシュは黒のポロシャツに黒チノパン。無難な格好。

しかし、その手には匕首。そして、通った後には“枝刃”の木が生える。

 

人間の身体が串刺しにされて飾られ、枝に絡め取られ呻いている。

 

「枝ー歯……枝ー歯……噛んで、飾って、歯ぁで終わらせる……この光景が普通になったら、綺麗だろうなァ……」

 

それが、彼の夢だという。

 

 

混沌は完成した。

狂気が舞い、地獄が幕を開ける。

 

「オラオラオラーッ!!そこ退けぇぇッ!!で?どこ行きゃいいんだ!?知らん!知っとけ!知りたくなーい!」

黒い奔流が現れる。泥の奔流。セルドライバーで中途半端に“泥”になったトゥワイスが、自分自身を量産していた。

 

対するは“人形”の個性を持つ異能解放軍幹部・スケプティック。

「セルドライバー…確かに驚異的だ。しかし、それがなければ自我を保てぬ未熟者が!崇高な我々の理念に、泥人形風情が口を挟むな。不快極まる」

 

彼はトゥワイスの泥人形を自傷させ、時に本体へ襲いかからせる。

──本人が生み出した歪な“自分”。

──他人が作り出した精巧な“自分”。

皮肉な対比に、トゥワイスは苛立ちを隠せない。

 

「俺を作るな!!俺が俺に殺されるなんて、もうイヤだ…怖いんだ。安心したいだけなんだ。泥まみれでも、俺が“皆”といられる場所は、ここだけだ…だから、今のままで強くなってやる…邪魔すんなあぁぁ!!」

 

泥人形は思考しない。だが、個性は残る。

単純だが、それがいい。暴徒のように泥の群れが地を這い、無秩序に突撃を開始する。崩れ、溶け、重なり、瓦礫を呑み込むように押し寄せる。

泥の波──似て非なる“人形”を覆い、押し潰す泥の奔流だ。

 

「クソが!!計画性のねえバカの相手なんざ、やってられん!!」

 

スケプティックは舌打ちし、撤退を選ぶ。効果が無い、むしろ逆効果な戦略など早々に中止し、異能解放軍の強みを活かす戦術へと切り替えた。

「第三遊撃中隊、迎撃構えッ!!応戦開始!!!」

 

遠方のビル屋上から指示が飛ぶと、街中の窓、路地、地下通路の影から、次々と異能者たちが姿を現す。

火、氷、鋼、衝撃波、重力、光、毒霧──多彩な異能が一斉に炸裂し、泥の軍勢が次々と粉砕されていく。

 

「まあなぁ、そりゃやられっぱなしってわけにはいかんよなァ。コンプレスの野郎が“あんまり減らすな”とか言ってたし…ちょいと火加減しとくか」

 

荼毘が片手で持ち上げた敵兵の首を、アセチレン配合の蒼炎で焼き染めながら呟く。その炎は青く、蒼く、碧く──静かに、確実に、人の形を変えていく。

 

「焚べて広がれよ…碧灼熱躯(へきしゃくねったい)・薪骸(まきむくろ)」

 

蒼炎に焼かれた骸は“炎操作”によって命令される。“焼け”と。それだけでいい。

肉が焼け落ち、藍に染まった骨が残る。それが“薪”。

彼らは仲間を求めるように笑い、迫ってくる。抱かれた者は、同じ“薪”となる。そうして静かに増えていく──空間が熱気で歪みながら迫ってくる藍色の骨軍が。

 

「ふざけた個性だな!俺の氷で凍りつけ!」

 

敵幹部・外典が叫ぶ。だが現実は非情だ。

仲間が減り、敵の駒が増える。時間が経つほど劣勢に傾く戦況に、外典の表情が苦く歪む。

氷弾を撃ち込むも、届く前に熱気で蒸発する。

 

「おのれぇぇぇ!!!」

 

限界だった。藍色の骸たちが迫る。

背を向ける外典。その背に、恐怖の色が刻まれていた。

 

藍の骨は止まらない。

それは自らを“焚べ”に逝く者たち。

苦しみから逃れるように──骨の髄まで焼き尽くされる、その時まで──。

 

トガヒミコは、幹部キュリオスと向かい合っていた。

 

屋上に並ぶ無数の巨大カメラ、遠隔操作のドローン、集音マイク、録音装置。全てが、たった一人の少女に焦点を合わせている。

 

「さあ、始めましょうか、トガヒミコさん」

 

青白い肌にパッチワークを重ねた衣装。キュリオスはその異様な風貌とは裏腹に、知性を帯びた瞳を光らせていた。だが、その瞳はまるで手術用のメス。冷たく、鋭い。

 

「ねえ、どうして人を刺すの?」

 

その口調は穏やかで、優しげで——それでいて、ぞっとするほど残酷だった。

 

ヒミコは微笑んで、唇の下に人差し指を添える。

 

「好きになっちゃうとね、その人になりたくなっちゃうからなの」

 

その答えに、キュリオスの瞳がキラリと揺れた。猫が獲物に爪を立てる瞬間のような昂ぶりが声に出る。

 

「やっぱり……やっぱりそう!あなたは“歪み”の結晶だわ!」

 

直後、ビルの壁が爆音を上げて破裂する。仕掛けられていた地雷型の個性が作動したのだ。

 

ズドォンッ!!

 

ヒミコの華奢な身体が吹き飛ばされ、壁に激突する。

 

「っぐ……あ、ぅ……!」

 

唇から、血が滴った。

 

「それよ!それこそが真実!“普通”の檻で育った少女が、どうして人を刺すようになったのか——私はそれを暴くの!」

 

キュリオスが指を鳴らすと、マスコミのような服を着た異能解放戦線の兵士たちが一斉に姿を現す。数十人が、ヒミコを取り囲んだ。

 

「いったぁ……何すんのよ……。真実って何よ……意味わかんない。私は好きな人に、好きって言ってるだけ。あなたは……好きな人に『好き』って言わないの?」

 

ヒミコの疑問は、あまりにも純粋だった。

 

「もちろん伝えますとも!私だって、気持ちは言いたいです!でも大事なのは手段なの!私は好きな人を傷つけたりはしない!」

 

次の瞬間、ヒミコの身体が黒くうねりはじめる。

 

「それ、嘘。だって……パパとママも喧嘩してた。私のこと置き去りにして……好き合って結婚したくせに、お互いの悪口ばっかり言ってたじゃん……」

 

左手に着けた黒い爪付き手袋型のセルドライバーが発動し、吸血と飛び爪の複合個性が展開される。

 

「“夫婦喧嘩は犬も食わない”、確かに。そんな事例は世に溢れてます。でもそれは『喧嘩』であって、『殺意』とは別の話です!」

 

老若男女の兵士たちが次々とキュリオスの背後に集い、武器を構える。

 

「わけわかんないッ!」

 

——ギィィィン!!

 

飛爪が空気を裂いた。

 

「押しつけんな!あたしの“好き”を否定するな!やっぱりあんたら、嫌いだ!」

 

キュリオスの顔が、怒りと焦燥に染まる。

 

「違うのよ……あなたに自分の歪みに気づいてほしいだけなの。あなたは被写体、素材、解体対象……」

 

「好きな人の血を吸って、その人になりたい……それって、そんなに変かな?」

 

会話は激しさを増しながら、周囲を巻き込んでいく。

 

「おかしいわ。とても。……ねえ、“いつ”からなの?あなたが人を刺すことを『好き』になったのは?その境界、その始まり、“トガヒミコ”という人間の理由を、私は知りたいのよ!」

 

爪が突き刺さり、糸が走る。戦闘員たちが切り裂かれ、絞め落とされていく。

 

「気づいた時にはもう、好きな人になりたいって思ってた。可愛いって思った人の中に、自分を溶かしたくなった。それって、変なの?」

 

ドガァンッ!! 戦線の味方がまた一人、地雷に巻き込まれる。

 

「そう。変よ。異常で、だからこそ美しい……その“歪み”を、自覚してほしいのよ。怒らないで、私のインタビューはまだ終わってな……」

 

「うっさいな!知らない、知りたくない!私は、ワタシを否定したくないのッ!」

 

ヒュン、ヒュン、と糸が風を切るたびに、一人、また一人と減っていく。

 

「“ヒーロー社会の裏に潜む膿、その擦り傷の奥から湧き出る垢。私たちはどう向き合うべきか”——どう?このタイトル?」

 

「最低……もう死んで」

 

ヒミコが左手を引く動作をした。

シュル……キュンッ

ピン……

『『『バツン』』』

 

異様な音とともに、兵士たちの胴体が次々に真っ二つに割れ落ちた。

 

「いつの間にッ!?」

 

キュリオスが思わずヒミコから目を逸らした、その刹那——

 

「“知りたい”って言ってくれたのは、ちょっとだけ嬉しかったよ……おねぇさん」

 

その一瞬で、ヒミコは“お姉ちゃん”の血を飲み干した。

 

コクリ。

 

「嘘……」

 

その姿は死柄木葬華へと変貌し——

 

ヒュンッ、ヒュンッ!

 

糸が奔り、キュリオスへと迫る。動揺を振り切り、ギリギリでかわすキュリオスの所作はなおも洗練されていた。

 

「厄介ね……でも、近づかなければ“崩壊”は発動できないはず!知ってるのよ……さぁ、死柄木葬華との馴れ初めも……教えてよっ!」

 

それが、最期の言葉となった。

 

キュリオスの身体が、突然、灰のように崩れ落ちる。

 

「変だって言うなら、それでもいい。あたしは、あたしのままで、恋をする……ねぇ?『アナタは、好きですか?』」

 

ヒミコの瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。

 

彼女の爪は、5本すべてが糸を通してキュリオスに触れていた。だから、“崩壊”が発動した。

 

彼女は今や、変身した相手の“個性”すらも使用できる。

 

そして——セルドライバーは、もはや完全に、トガヒミコの一部だった。

 

───カシャン。

 

キュリオスの残したボイスレコーダーが瓦礫に当たり、冷たい音を響かせながら、壊れた。

 

 

睡魔(スイちゃん)vs 異能解放軍突撃隊──

 

「あーめ、あーめ、ふーれふーれ、母ぁさーんがぁ……♪」

 

雨は降っていない。空は晴れている。だが、そこに“雨”の気配があった。

 

ガスマスクを被った小さな影が、宙を歩くようにゆらゆらと揺れていた。

レインコートの袖から、裾から、隙間という隙間から、淡く白いガスが零れ落ちる。

まるで少女の心がそのまま漏れ出しているように。

 

スイちゃんはただ歌っていた。楽しそうに、嬉しそうに。

 

──けれどその軌跡には、無数の兵士たちが倒れていた。

 

個性『ガス』。

睡眠・麻痺・幻覚・窒息・可燃……あらゆる性質のガスを任意に排出し、セルドライバーによって空間の風を“固定”し“操作”する。

風の道は彼女の道。戦場はすべて彼女の遊び場。見つけることすら難しい、まさに霧のようなヴィラン。

 

「……蛇の目でおでかけ……うれしい、なぁ〜……ひっく…♪」

 

楽しげに口ずさみながら、少女はふと立ち止まり、空中に腰を下ろした。

何もないはずの場所で、彼女は膝を抱え、うとうとと舟をこぎ始める。

 

──ドサ……ドサ……ドサ……ドサ……

 

「うっ……? え……? み、みんな……!? なんで……倒れて……」

 

兵士の一人が異常に気づいた時には、すでに手遅れだった。

 

靄が立ち込めている。ただの霧ではない。白く、青く、鼻を突くような……いや、違う、甘い?

足が、重い。声が、出ない。目が、かすむ。

 

「……とおりゃんせ、とおりゃんせぇ〜……通らせなぁ〜……♪」

 

声が聞こえた。子供のような、けれどどこか機械じみた調子。

それが耳に届く頃には、もう立っていられなかった。

 

身体が、縛られるように動かない。視界の隅に、倒れていく味方たち。

一人、また一人と意識を手放していく。

 

「……なんだよ……コレ……」

 

兵士の呻きが漏れる。けれど、その声も──

 

──ドス。

 

「……おやすみなさい」

 

少女が、降りてきた。

 

無言で兵士に近づき、首筋に器具を突き刺す。静かに、まるでそれが“おままごと”であるかのように。

ガスマスクの下で、彼女はうっとりとした吐息を漏らす。

 

「──敵能力者がいるぞ! 距離を取れ! くっそ、広がれ!!」

 

ようやく声を上げた兵士がいた。だが、その声さえも──風に飲まれた。

 

「……しってるしってる〜……だあれがしった〜……ひっく…♪」

 

スイちゃんは指をくるくると回す。風が広がる。ガスが濃くなる。

 

逃げ惑う兵士たちの脚が、もつれる。目が回る。呼吸ができない。

 

「ごふっ……! これ……やばっ……!」

 

「クソッ……なんなんだこのガキは……!」

 

だが、スイちゃんは追わない。追わなくていい。風が、すべてを運ぶから。

 

彼女はただ立ち、唄う。

 

「…ひっく………かーごめ、かごめぇ〜……かごのなぁかの、とりぃは〜……いついつ、でぇやるぅ……♪」

 

兵士たちは、声を上げるが──その声は空間に消えていく。

空間が密閉されている。ガスは逃げない。意識も、逃げられない。

 

「……もう……起きなくてもいいんだよ、ふふふ……」

 

倒れた兵士の顔を覗き込み、彼女はそっと布を口と鼻に詰めた。

バタつく四肢。涙を流し、喘ぐ目元。

その全てが、彼女にとっては“面白い”。

 

「へぇ……泣いてるんだぁ……えへへ……かわいい……」

 

彼女は残虐だ。だが、それは意図ではない。“無意識の幼さ”による暴力だ。

 

この少女は、なぜここまで人の苦しみに無感覚でいられるのか。

何が、彼女の中で「死」と「睡眠」を同義にしてしまったのか。

誰も、それを知らない。彼女自身すらも。

 

「……ひっく……また、眠たくなってきたなぁ……」

 

ぽつりと呟いて、スイちゃんは立ち上がった。

眠るように歩き出す。風と空間が、彼女を導いている。

 

──誰も気づかない。

 

風は毒を運ぶ。空間は逃げ道を奪う。眠気は命を奪い、死さえも優しく連れていく。

 

「……うしろの正面、だ〜ぁれ……♪……ひっく……」

 

少女の唄とともに、突撃隊の部隊は静かに壊滅した。

 

風が止んだ頃には、誰も残っていなかった

 

そしてまた──

“睡魔”は、次の遊び相手を探して、歩き出す。

 

 

後から分かることだが…彼女はお酒を飲んでいた。

 

 

 

死柄木 葬華 vs リ・デストロ

 

――泥花市、壊滅。

 

崩落したビル群の中心。灰と瓦礫の海。

そのただ中に、死柄木葬華はひとり、静かに立っていた。

 

セルドライバーが起動し、身体には崩したスーツ姿。

背中には大小二対の翼。尻尾のように伸びる槍状の装甲。

彼女の周囲には、かつて高層を誇ったビルの残骸が――もはや影も形もない。

 

「ふむ。噂以上だな……」

 

不気味な靴音と共に、重厚な威圧感が近づく。

 

リ・デストロ。

異能解放軍総帥。化け物を統べる“解放”の王。

 

背広姿だったはずの男の肉体は異形へと変貌していた。

膨張した筋肉。黒光りする皮膚。露出した鋭い歯列。

 

「我が“個性”は“ストレス”。溜め込むほど力は増し、限界を超える――!」

 

ギチ……ギギ……!

拳を握るたびに、空気が呻き、重力がねじれる。

 

「お前の存在がッ……最大級のストレスだ、死柄木葬華ァ!!」

 

巨腕が唸りを上げて振り下ろされた。

 

だが――

 

死柄木は動かない。

ただ静かに、虚ろな目でそれを見つめていた。

 

走馬灯のように、記憶が脳裏をよぎる。

 

祖母の笑顔。両親の背中。弟の手。

家、犬、血のにおい。

そして、優しかった“先生の手”。

 

「……うるさいなぁ……」

 

かすかに漏れた呟きと共に、彼女の身体が自然に動く。

 

――回避。

 

滑るように飛び退きつつ、右手が地面に触れる。

 

“バサァッ!”

 

その一帯が、崩れ落ちる。

瓦礫が崩壊し、まるで存在が消えたかのように地面が“削除”された。

 

「チィッ……!」

 

リ・デストロが咄嗟に飛び退く。

 

「つまらないな。高機動にも対応できてないし、うん、ごめんね。私の個性、チートすぎるよね?」

 

ひび割れた声で、死柄木は笑った。

どこか乾いた、壊れかけた少女の笑み。

 

「でも、ここまで耐えたの三人目だよ。ヒーロー学生と、死んだヤクザが一人。……ああ、つまり、実質二人目か」

 

その笑顔は、憐憫か、それとも――哀しみか。

 

「破壊の化身ごときが、“解放”を語るなァァァァァ!!」

 

リ・デストロが雄叫びと共に突進する。

巨体に似合わぬ異常な速度。轟音。振動。暴威。

 

しかし死柄木は止まらない。

壁も、地面も、金属も――すべて、触れた瞬間“灰”へと変わる。

 

「解放なんて言った覚え、ないんだけどなぁ?」

 

翻弄しながら、左手を掲げる。

その歪な掌から伸びるのは、異形の三十本の指――!

 

「気色悪いッ!」

 

リ・デストロが拳を叩きつける。

死柄木が指を伸ばす。

 

――“ガゴォォォォン!!”

 

衝突と共に、周囲の建物が爆散する。

地面が割れ、泥花市の中心に巨大な地割れが走る。

 

「……貴様は、いったい何がしたいのだ!!」

 

ビルを突き抜け、地面に叩き落された死柄木。

その身体が瓦礫に埋もれ――

 

意識は、遠い過去へと沈んでいった。

 

 

――記憶の底、志村華という少女

 

壊れた鼓膜に響くような、“壊音”。

だがこれは音ではない――記憶だ。

 

血まみれの犬。

震える手のひらに残る、肉と毛と骨。

 

「はなちゃん……なにしてるの……」

 

弟の転弧の目。

怒り。失望。嫌悪。

 

どうして?

――私は、ただ“好きなもの”を知っただけなのに。

 

なのに、その目は何?

 

「最低……そんなの、いらない……!」

 

触れた。

母に。父に。弟に。

“あの個性”で。温もりを、命を奪いながら――。

 

最期に見た母の目。

それは“恐怖”そのものだった。

 

――家が崩れたんじゃない。

あの時、崩れたのは“自分自身”だ。

 

全てが灰になった世界に、彼女は現れた。

 

阿賀月剥貸――後のVET、セルドライバーの製作者。

動物の個性に執着する異端の才女。

共に過ごした一年間。異常と日常が混ざり合った時間。

 

そして――“あの男”が現れた。

 

「こんにちは。……迎えに来たよ。さあ、行こう」

 

優しい声。仮面。巨躯。

オール・フォー・ワン。

 

「へぇ……アンタが、私にこの個性を“押し付けた”奴か」

 

「君の中の血。志村菜奈の孫だから選んだのさ。……不服かな?」

 

志村菜奈――優しく抱きしめてくれた人。

だが、何もできなかった。

 

「役立たずのヒーロー気取りか。……ふーん」

 

「あっはっは…君は面白い。弟の方じゃなくて正解だった。与えよう、君の名は――」

 

――死柄木、葬華。

 

“死”と“葬”を冠するその名は、

彼女が自ら選び取った、己そのものを象徴する名前だった。

 

 

再び目覚めた死柄木が、リ・デストロの問いに答える。

 

「何がしたいのか、か……難しいことじゃない」

 

「壊したい。衝動のままに。計画的に。先人たちの正しさを壊し続けたい。

 それに守られてる馬鹿な人たちも、知ってて守ろうとする人たちも。

 一度きりの破壊じゃ意味がない。ずっと、ずーーっと、崩し続ける」

 

「……君のその想い、それは……」

 

地面に触れた五本の指。

その瞬間――

 

泥花市が“沈んだ”。

 

ビル群が、順番に崩壊する。

地面そのものが砕け、すべてが“無”へと堕ちていく。

 

「く……ふふ……ッ!!」

 

リ・デストロが笑う。圧倒され、畏怖に震えながら。

 

「貴方に出会うために、生きてきたのかもしれない……

 貴方こそ、真の“解放者”だ……死柄木葬華……!!」

 

死柄木は何も言わず、風の中に立つ。

崩れゆく都市の頂で――女王のように。

 

 

SVP社、誕生

 

黒霧とリ・デストロが、頭を垂れる。

 

「葬華様」

 

それが、全ての始まりだった。

 

異能解放軍は完全にヴィラン連盟に屈服し、

死柄木葬華を頂点とする新たな集団が誕生する。

 

――「Sustainable Violence & Plunder」

略して、SVP社。

 

全てが終わった後、遅れてやって来たギガントマキア

破壊の象徴として走り回っただけだが脅威は伝わった

 

彼すらも死柄木に膝をつく。

 

彼女前に集まったのは、トガ、トゥワイス、マスキュラー、荼毘、スピナー、睡魔、ケンドー、Mr.コンプレス、ムーンフィッシュ――“灰濁”の精鋭たち。

 

「名前、変えるよ。“ヴィラン連盟”じゃない。“SVP社”だよ」

 

「解放したい奴も、壊したい奴も――ついてきなさい」

 

誰も、逆らわない。

 

葬華が腰を下ろすのは、黒革の椅子。

足を組み、笑みを浮かべる。

 

まるで“破壊の王座”に君臨する女帝のように。

 

「好きにしよう。暴力も略奪も、衝動的に、計画的に、継続的に。

 壊して、直して、また壊す。助けて、殺して、笑って、泣いて。

 我慢なんて、必要ない」

 

誰かが拍手を送る。誰かが拳を突き上げる。

そして全員が、膝をつく。

 

死柄木葬華。

SVP社・理事、兼・総指導者。

 

それは、やがて「最大の脅威」と呼ばれる、最初の一歩だった。

 




作者は結構スイちゃん推し
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