ヒーローのカタチ   作:サモア リナン

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遅くなりました



何とか書けました〜



第24話「群訝山荘跡地の乱」

群訝山荘跡地襲撃戦 ― 本格開戦

 

群訝山荘跡地・上空

 

空が裂ける

 

朱色の閃光が稲妻のように奔り、音を置き去りにして飛翔する。

それは――朱色の大鷹。かつて“ホークス”だった男が、今やその名残すら感じさせない異形の怪鳥へと変貌した姿。

 

その剛翼は風を斬り、振るうたびに空気を裂いて爆風を生み出す。地上のSVP構成員たちが羽ばたき一つで数十人、吹き飛ぶ。

 

「な、なんだあれは……!」

 

「撃て!撃てえええっ!」

 

弾幕が張られるが、大鷹は意にも介さず、翼で全弾を切り払いながら急降下。

空中に散った無数の赤い羽根が、雨のように地上を襲い、装甲ごと構成員たちを貫く。

 

「バケモン……!」

 

蜘蛛の子のように山荘内へ逃げ込もうとする彼らを、朱の羽風がなぎ払う。

それはもはや“ヒーロー”ではない。敵を滅する衝動だけに突き動かされた、紅の捕食者。

 

だが――

その鋭い視線の先には、常にヴィランがいた。かすかに残った「彼の意志」が、敵を選んでいた。

 

 

「……ホークス……なのか、アレ?」

 

「個性の暴走? いや、違う……もう“別物”だ」

 

イレイザーヘッドとエッジショットが空を睨む。彼らも迷っていた。だが今は――

 

「ヴィランを狙ってるなら、チャンスだ。突入班、動け」

 

「了解!」

 

芦戸、口田、蛙吹、常闇らが後衛として内部侵入を開始。

マンダレイもテレパスでの連携のため同行し、プッシーキャッツやリューキュウたちは残りの待機組を指揮する。

 

 

中庭

 

「行け」

死柄木葬華が腕を掲げる。背後には灰濁の幹部たちが並ぶ

 

トガ、トゥワイス、マスキュラー、ムーンフィッシュ、Mr.コンプレス、ケンドー、荼毘、そして睡魔

 

「私パス」

スイちゃんが即座に拒否。

 

「ダメ。あんたのガスと空間、今回の要」

 

「ちぇー……」

 

可愛げのない駄々をこねながらも、彼女は手を動かす。

スイちゃんの“空間固定”が空に浮かぶ透明な足場を生み出し、空中戦の舞台が整う。

 

 

「死ねッ!!」

 

マスキュラーが咆哮と共に跳び、山を駆け上って強化蹴撃を繰り出す。

ムーンフィッシュは歯刃を枝のように伸ばし、大鷹を狙って跳躍。

空からは、トガとトゥワイスが変身で羽ばたき、羽の乱舞で視界を奪いながら切り裂きを狙う。

 

だが――

 

「キィィィイィィィィ!!」

 

朱の大鷹が上空へ急加速。翼一閃、迫る幹部たちを一蹴。

さらに放たれた40cm級の羽根が、雨のように襲いかかる。

 

「チッ、チートが!速すぎんだよ!」

マスキュラーが腕でガードするも、貫通までは紙一重。

 

荼毘が舌打ちしながら叫ぶ。

 

「スイ!ガス撒け!」

 

「……はいはい」

 

スイのガスが周囲を包み、煙幕と刺激臭で撹乱を図る。

だが、大鷹の一振りでそれすら吹き飛び、誘爆も不発。

 

「ちっ、クソが……!」

 

「おっそー…役立たずー!」

 

「ぐっさぁ!!」

 

悪態をつく荼毘と、それに毒舌を返すスイ。だが息は合っている。

 

 

他の幹部たちはというと――

 

「うはは!勝てる気しねぇ~!」

ケンドーは笑って突撃するが空振りばかり

 

「It’s Show Time!!」

ミスター・コンプレスは巨大岩を投下するも、的外れ。

「NOーーー!!」

両手で顔を覆い、恥ずかしがる姿に、敵味方問わず脱力。

 

 

死柄木が低くつぶやく。

 

「ったく…死ぬ前の覚醒とか……あんたは漫画の主人公かっての」

 

左手の指が異様に伸び、右手に崩壊の気配が宿る。

だが、攻撃圏には入れない。大量の羽根が距離を詰めさせないのだ。

 

「ねぇ……動物さんになったらどうなるのかなぁ……まぁ、どうでもいいか…『ワタシ』が『私』でいることが『アタシ』なんだし、ね?」

 

「ヒュー!ミステリアスなトガちゃん!ヤミカワ!」

トガの妄想に、トゥワイスが嬉々として乗っかる。

 

彼らは否定しない。“受容”こそ、灰濁の強さだ。

 

トガは左手が歪でない“ホークスの翼を持つ死柄木”へと変身。トゥワイスも続く。

 

「ちょ、ヒミコ!なにそれ羨ましんだけど!?

そしてジン!なんで私のスリーサイズ知ってんの!?

………いや、マジで何で!?」」

 

「あ!やべ、ば、ばれた……?」

 

トゥワイスが大量の“葬華”を作り出す中で、死柄木本人は本気でキレていた。

 

 

「まぁまぁ」

幹部たちには適当にあしらわれながらも戦線は維持されていた。

 

 

スイの空間固定が広がり、戦場が三次元へと拡張される。

 

上空、足場、遮蔽物……

質と量がそろい、ついに幹部たちが連携して本格攻勢へ。

 

「キィィィィィィ――ッ!!」

 

だが次の瞬間。朱の大鷹が、空中で爆ぜるような咆哮を放った。

 

超高周波の衝撃音――

 

「ぐぅっ!」「耳ぃ!!」「クソが!!」

 

全方位・無差別・攻撃的な咆哮により、幹部たちは空中でバランスを崩し、各方向へ弾き飛ばされていく。

 

 

「……ッぐ……っふ……」

 

木々に叩きつけられ、変身が解けた。

少女の体が赤土に横たわる。意識がまだ朦朧とする中、誰かの足音が近づいてきた。

 

(……だれ……?)

 

 

緑谷&麗日 vs トガヒミコ ――

 

二人は、吹き飛ばされてきたトガヒミコと邂逅する。

 

「あは、緑谷……出久くん、だぁ……」

 

「トガ……ヒミコ……」

 

緑谷は林間合宿と仮免試験の記憶が一気に蘇り、構えを取る。あのときの彼女の姿を胸に留め、強い意志をその目に宿した。

 

「トガヒミコ……」

 

麗日もまた、林間合宿で出会っていた。緊張が走る。だが――

 

(え……? あの子、“恋”してる? 分かる……分かってしまう。だって私も……ううん!今はそんなこと考えてる場合ちゃうやろ! 気張れや、私! でも……)

 

その場で両手をグローブで固めるが、覚悟が揺らぐ。何せ、トガの顔は本当に「好きな人に会えて嬉しい」顔をしていたから――

 

おどおどしながらも笑みを浮かべ、トガは近づいてくる。

 

「あの……緑谷出久くん。会ったの、これで三回目だよね……。次に会ったら言おうと思ってたことがあるの……」

 

彼女は急にモジモジしはじめ、頬を赤らめ、指先はそわそわと落ち着かない。視線は定まらず、ふらふらと宙を彷徨っていた。

 

「え……あ、うん?」

 

緑谷は急に変わった雰囲気に戸惑いながらも、構えたまま返事をしてしまう。

 

(うえぇぇぇ!? え、ちょっ……マジなん? コレ……もしかして、ここで!?)

 

察した麗日は、もはや内心だけではなく、全身で慌てふためいていた。

 

「……アナタのことが好きです。一目惚れでした……」

 

トガヒミコは、まっすぐに緑谷に告白する。

 

「………………え? 好き? 僕を? 誰が? なんで? 今? なんで? ん??? 待って! ええぇぇぇ!? どういうことなんでしょうか!?」

 

あまりにも突飛すぎる出来事に、理解が追いつかずオーバーヒートする緑谷。傍から見れば、まるで学校の体育館裏で交わされている青春の1ページのよう。

 

(ひやあぁぁ! 告白の場面なんて生で初めて見たー!)

 

戦場ということを一瞬忘れ、麗日は両手で顔を隠しながら、その指の隙間から状況を見守っていた。

 

――そして、トガヒミコの“ヴィラン”としての一端が顔を出す。

 

「だから、私と付き合ってください。

……あなたの血を飲ませてください。

……あなたの肉を切らせてください。

……あなたのハラワタを見せてください。

……あなたの苦しむ顔が見たいんです。

……あなたの“死”は、私がもらいたいんです。

どうか、よろしくお願いします」

 

そう言って、頭を深く下げながら、『ナニカ』を語っていた。

 

「お返事を……キカセテ、モラエマセンカ?」

 

顔は見えているはずなのに、“見えなかった”。

黒く、暗く、黝く塗りつぶされたその表情には、三日月のような口だけが、不気味に笑っていた。

 

「「なっ!?」」

 

あまりにも唐突な豹変に、緑谷と麗日は一歩後ずさる。

彼女の“好き”は、与えるモノが違いすぎた――

 

“好意”=“殺意”

 

こんな“恋”には、今までもこれからも、きっと出会うことはない。

 

恋愛に不慣れな緑谷でも、さすがに異常だと気づくレベルの告白。だが彼は、相手の心情が読めないまま、大不正解の言葉を口にする。

 

「アナタは……いったい何を言ってるんだ!? この状況で……そんなことを言って……相手がどう思うのか考えてないの!? 僕を“好き”……だから“殺す”ってこと? どうしてそうなるんだ!? それは違うよ! 相手を想うっていうのは、傷つけないように、大切にしたり、守ったりすることなんじゃないの!?」

 

その言葉に、トガは頭を抱えて後ずさる。

 

「あぁ……イズクくんも、そうなんだ……私を否定するんだ……私が間違ってるって……一方的に責めるんだ……イヤだ……イヤだよぅ、なんで? どうして? 好きだって言ってるだけなのに……あぁあああ!!」

 

ガシガシと頭をかきむしり、大きく振り乱す。

 

再び豹変したトガに、二人はまたもや後ずさる。

だが――麗日は「このままではいけない」と前に出る。

 

彼女が、どこか“遠く”に行ってしまいそうだったから。

 

「待って! ……お願い、待って……教えてほしいことがあるの……。あなたは、好きな相手を傷つけること、血を飲むこと、それが愛情表現なんだってことは、分かった。

それでね、聞いてほしいの! 私は、好きな人とは一緒にご飯を食べて、手を繋いで、デートして、映画を観て笑って……泣いて……また次に会う約束をしたいの。

そういうことがしたいの! ねぇ! アナタが“好きな人にしたいこと”は聞いた!……でも!!

“好きな人と一緒にしたいこと”を、教えてくれないかな?」

 

トガヒミコは、はっとした顔で麗日を見る。

 

「一緒に……したいこと……?」

 

「そうだよ! あなたは、好きな人に自分のことを好きになってほしいって思わない? 私は思う! だから――私は!! 相手のことを知りたいの!!

そして、“一緒”にいるために!! ……絶対に、生きててほしい!!」

 

はぁ、はぁ……と息を切らす麗日お茶子。

 

「それが、私の“好き”だよ。トガヒミコ」

 

言葉は、足りなかったかもしれない。もっと上手な言い方もあったかもしれない。

でも、“今”伝えなければ、間に合わない気がした。

 

トガヒミコの瞳が揺れる。涙が浮かび、唇が震える。

 

「分かんないよ……“一緒にしたいこと”とか……考えたことなかった……言われてみれば、私が“したいこと”ばっかりだった……そう、なのかな……私は、イズクくんに好きになってほしいのかなぁ……チウチウしてもらえたら嬉しい……のかなぁ……でもでも!! されたら、チウチウできなくなる! あれ? そしたら、好きになってもらえない……アレ? あれ……?」

 

思考が絡まり、混乱を極めていくトガヒミコ。

 

「うん、難しいよね。どうしたらいいか分からなくなるよね。でも、だからお話しよ? 一人で悩む必要なんてないんだよ。アナタは――一人じゃないんだよ」

 

優しく手を差し伸べる麗日お茶子。

 

――だが。

 

ここで、彼女もまた“間違えた”

 

「そうだよ……あっ!! ……そっか、そうだよね。葬華お姉ちゃん、スイちゃん、ジンくん、荼毘くん、スピナー、コンプレス……

私、1人じゃない。仲間が……皆がいる。

教えてくれてありがとう、お茶子ちゃん」

 

 

 

 

トガヒミコは、“覚醒する”――してしまう。

 

『ワタシ』と『私』と『アタシ』が、統合する。

 

「うん……そうだよね。私には皆がいる。

まだ自分でも何がしたいか、分かんないけど……考えながら生きてくことが大切なんだ。

一番大事なのは、分からないことを相談できる仲間なんだよ」

 

「ヒミコちゃん……?」

「トガ……ヒミコ?」

 

『病み』と『闇』は、晴れた。

 

清々しい顔をした彼女は、静かに、しかし重い威圧感をまとっていた。

 

ヒュン、ヒュン……

ひゅん、ひゅん……

 

コクン……

 

トガヒミコは、自分の血を飲む。

 

「私は、“私のままで”変身するんだ」

 

「ぐぅっ!?」

「うわっ!!?」

 

次の瞬間、緑谷と麗日の皮膚が、薄く切り裂かれる。

 

コクン。

 

血が、飲まれる。

 

そして、トガヒミコは――麗日お茶子となった。

……左手を除いて。

 

ヒュン、ヒュン……

ひゅん、ひゅん……

 

トガと一体化したセルドライバーだった爪と糸が、空間を自在に這うように伸び――

 

ゴゴゴゴッ……

 

地鳴りが、響く。

 

「な……なんだ、これ……」

「うそ……私……こんなこと、できひんよ……」

 

緑谷と麗日は、戦慄する。

 

「ふふふ、すごいね。お茶子ちゃんの“個性”って」

 

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『大地』が、浮いた。

 

彼女は、変身した相手の“個性”の――さらにその先を使えるようになる。

 

「こんな時、アナタたち、なんて言ってたんだっけ? ……ああ、思い出した。

Plus Ultra……。私も、使わせてもらうね。ふふふ」

 

木々の影に身を隠し、浮かせる範囲を広げながら去っていく――

 

「「待って!!」」

2人の声は届かない

 

迷いを捨て、“何か”に気づいたトガヒミコ。

 

彼女を止められる者は、果たして――

 

 

爆豪・切島・佐藤 vs ケンドー――

 

「うわはははは!!元気の良いガキどもじゃねぇか!!ここで死なせちまうには惜しいがなァ……だが手加減できるほど、俺はお人好しでもねぇ……――ん?」

 

ほとんど遮蔽物の無い広場。そこで繰り広げられる正面からの3対1。にもかかわらず――戦局は、ほぼ互角。

 

爆豪の遠近両用の高火力爆破が周囲を灼き焦がし、地上と空中を縦横無尽に駆け、急停止からの爆発突撃がケンドーを襲う。切島が無警戒に突っ込んできたように見えたが――その硬さは異常。咄嗟に殴った拳に伝わったのは骨が軋むような衝撃。衝撃吸収セルドライバーが無ければ、自身の拳が砕けていたかもしれない。

 

ナックルガード型のセルドライバー『衝撃浸透』を発動させ、貫くように殴り込むが、ダメージは思ったより通っていない。外殻だけでなく、内側までガチガチに固められている。

 

佐藤と真正面から力比べを挑むと、予想外の接戦に驚愕する。

「はあっ!?こいつ……想像以上じゃねぇか……!」

すぐに投げ飛ばすが、空中で華麗に受け身を取られ、立ち上がる。

 

「クソ筋肉のクソヴィランがああああ!!!いい加減倒れやがれぇぇっ!!」

「ぐっ……めっちゃ痛ってぇ……内臓まで衝撃きたぜ……お前ら、あいつの攻撃まともに食らうなよ。多分、一撃で終わる。セルドライバーと個性の併用……冗談じゃねぇ厄介さだ」

「……あぁ、分かった。でも……俺と爆豪がいて決定打が無いなんてな……砂糖の補給、そろそろしないと……」

 

「「「ん?」」」

 

――ゴゴゴゴゴ

 

不穏な地鳴りが、彼らの耳を打った。

 

 

轟・八百万・飯田 vs ムーンフィッシュ――

 

「歯ッ歯ッ歯ーー!!未来ある若者たちよ!お前たちは実に上質な『肉』だぁあッ!!未来ある肉を刺し、噛む背徳感……クゥッ……堪らん!!枝ぁああああー歯ぁあああーー!!」

 

洞窟の曲がり角から突如として飛び出す、無数の回転する枝刃。轟が瞬時に氷壁を展開し防ぎ、八百万が生成した装備で刃を受け止め、飯田が加速を活かして一気に間合いを詰める。

 

三者が三角形に展開し、包囲しながら持続的な圧をかけることで、ムーンフィッシュはじりじりと後退を余儀なくされていく。

 

「焦ったらダメだ……冷静に……」

轟の言葉に、八百万と飯田が頷き合い、息の合った連続攻撃を仕掛ける。

 

飯田は空中で戦闘機型に姿勢変化させ高速で急襲、八百万は進化した創造で高電圧警棒を生み出し、それを右手に構える。さらに、飯田の脚部エンジンを模したパーツを自身の脚に装着し、地上を急速に駆け抜ける。加えて、型形先輩の個性「カタチ」の協力で生み出されたエネルギーシールドを展開し、攻守の両立を果たす。

 

「歯ぁああ!?強い!やるなぁ!」

耐え切れず、ムーンフィッシュが大きく距離を取った。

 

その時――

 

上空に、巨大な影が差す。

 

 

尾白・障子・青山 vs マスキュラー――

 

障子がRPGのラスボスのようになっていた。複製された腕、複製された脚、さらには複製された全身――その全てで多角的な攻撃を繰り出しながら、真っ向から力勝負を仕掛ける。

 

「「「うおぉぉぉぉおおお!!誰一人!!傷付けさせるもんかぁあああああっっ!!!」」」

 

「ちいぃぃぃっ!!ドライバーさえ壊れてなきゃよぉ……こんなガキどもにィィ!!」

 

マスキュラーは、朱色の大鷹に吹き飛ばされた際、セルドライバーを破壊されていた。

だが、それでも彼にとってはさほどの不利ではない。自前の個性で十分強力。持久力でも負ける気はしない。だが……その僅かな数秒、均衡する時間だけでも、信じがたいダメージを叩き込んでくる奴がいた。

 

「全身尾毛・見様見真似ルナ・アーツ――尾々蹴鞠!!」

 

「クソガキィィッ!!」

 

幾重にも重ねられた筋肉でガードし、衝撃を流そうと後退するが――流しきれず、強制的にノックバックさせられる。

 

体勢を立て直そうとした、その時。

 

「怖いねぇ……ふぅ……据え膳だよね……いくよ、『キラメキを止められないよPLUS』!!」

 

――ズギャン!!!

 

ただ派手なだけの技かと思いきや、筋肉を突き破る意外な貫通力。そして、無駄に光るせいで視界すら奪われる。

 

「ふざけた名前しやがって……ッ!!」

 

隙を突かれて、マスキュラーは後退を余儀なくされる。

この3人で組まれた連携は恐ろしくバランスが取れており、マスキュラーでさえ、思わず感心するほどだった。

 

「ちっ……ガキのくせに、やるじゃねぇかよ……」

 

その時、4人の視線が空へと向いた。

 

遠く、まるで雲のように――大地が、浮いていた。

 

 

上鳴・耳郎・瀬呂 vs トゥワイス ――

 

トゥワイスは、死柄木をはじめとする灰濁の仲間たちを次々と分身させていた。だが、彼の“分身”にはトゥワイスも知らない弱点があった――電気系のダメージを受けると泥に戻ってしまうのだ。

 

「泥ってことは水分含んでるってことだろ!? おあつらえ向きだぜー!」

 

「うっそーーん?!?どうして分身ちゃん!頑張ってー!!」

 

上鳴の“電刀”は、触れれば相手を気絶させるほどの電圧を誇る。それでいて刃が伸びるため、近距離から中距離まで対応可能。雑に振り回すだけでも十分に脅威だが、訓練を積んだ今の彼は、それを洗練された武器として使いこなしていた。

 

また、ただただ電気を放つだけで、泥人形たちは次々に崩れていく。

 

耳郎の個性“イヤホンジャック”による高音波と超音波――“エコー”によって、本体を識別できる彼女は、トゥワイスにとって最も警戒すべき存在だった。

 

「上鳴! そいつじゃない! 右奥の5体後ろにいるのが本体……そう! そいつ!」

 

「なんで分かるんだよ!?」

 

泥人形たちは慌てて逃げ回るが、もはや総崩れだった。

 

2人はトゥワイスをあるポイントまで誘導する。

 

「これで……詰みだ!!」

 

そこには瀬呂の罠が仕掛けられていた。テープがトゥワイスをがんじがらめに拘束する。

 

「なんだよ! こんなもん泥状化で効かないぜ……って、あれ? 効きまくってるー!?」

 

トゥワイスの“2倍”も“泥状化”も発動しない。

 

実は――瀬呂の“テープ”は進化していた。ただくっつけるだけでなく、剥がした跡には「個性の効果」がコピーされるのだ。

 

今回、事前にイレイザーヘッドの許可を得て、抹消中のテープを一度貼ってから剥がしていた。

その“抹消の跡”が付いたテープで巻かれたトゥワイスは――個性を一時的に封じられたのだ。

 

ただし効果は一回限り。テープをもう一度外せば、跡は消える。

 

「バカなーー!?!?」

 

さらに何重にもグルグル巻きにされ、トゥワイスは完全拘束。

 

「「「イェーイ!!!」」」

 

強敵との相性抜群だったとはいえ、この圧勝――まさに快挙。

 

3人がハイタッチした、その頭上には、じわりと地上が浮かび上がっていた。

 

 

リューキュウ・ウワバミ・ピクシーボブ・虎 vs 荼毘 ――

 

「嫌だねぇ……プロが寄ってたかって」

 

荼毘が飄々と呟く。

 

「コイツは蒼炎が自前! 炎操作と追加火力がセルドライバー効果って情報だ! まさかこのタイミングで降ってくるなんて……他の学生が心配だわ。距離を取りつつ短期決戦! 行くよ!」

 

「「「「おう!!」」」

 

4人のプロヒーローが連携し、攻撃を仕掛ける。

 

リューキュウは竜化し、空中から尻尾で牽制。ウワバミは長い体を駆使して荼毘を囲み、いつでも襲撃できる態勢を整える。

 

ピクシーボブは土を操って炎を遮断し、虎は土を纏った拳で接近。自身への炎のダメージを軽減しつつ殴りかかる。

 

「痛っつつ……おいおい、俺への対応、強力すぎるだろう?」

 

攻め込まれているにも関わらず、荼毘の表情にはどこか余裕があった。

 

「貴様らは誰だって油断できん!!」

 

虎が吠える。

 

「くくく……分かってんじゃねぇか。ホークスの野郎が流した情報だろ? ふざけた野郎だ。あいつは絶対許さない。だから――手前らも、まともに生きて帰れると思うなよ」

 

そう言うなり、彼はベルトに手をかける。

 

「変身」

 

――ドォン!!

 

高く噴き上がる火柱。瞬間、あたり一帯に蒼炎が広がる。

 

パチパチと、何かが焼け焦げる音。

シューー……と立ちのぼる湯気。

 

ジャリッ……と、焼けた砂利を踏みしめて荼毘が現れる。

 

蒼炎を纏ったその姿は、まさに異形。

 

「碧灼熱躯・髄ノ経脈・“瑞花”(へきしゃくねったい・ずいのけいみゃく・ずいか)」

 

髪は碧く逆立ち、皮膚は薪のように黒くひび割れている。

ロングコートは蒼炎そのもので構成され、ひらめく襟が印象的だった。

 

胸の中心には、五弁の形――まるで雪の結晶。

だが、それを形作るのは蒼い炎。美しさと異常性が同居する、異様な“模様”。

 

足元の地面は熱で溶け、まるで溶岩の海のようだった。

 

彼が“そこにいる”だけで、全身を焼くような熱気が襲う。

 

チリチリと肌が焦げる。

吸い込む空気すら熱い。

汗が、止まらない――。

 

「これは……逃げろ! みんな……!」

 

ウワバミが仲間に向かって叫んだ、その直後――

 

――バッ!!

 

「……!?!?」

 

荼毘の腕が彼女の首を掴んでいた。

 

ボゥッ……!

 

ウワバミは声をあげる暇すらなく、燃え尽きた。

 

「なっ……ウワバミーーー!!」

 

「薪骸」

 

荼毘の呼び声に応じるように、蛇と人が混じった藍色の骨――“ウワバミの骸”が立ち上がり、荼毘の傍らに並び立つ。

 

「よーく覚えとけ。俺は――メンバーの中でも“強い方”だ」

 

「「おのれぇぇぇ!!」」

「荼毘! 貴様ぁっ!!」

 

怒りを爆発させる3人のプロヒーロー。

 

だがその直後――

 

ドドドドド……!!

 

大地がうねり、巨大な土石流が戦場を襲った。

 

その奔流が、両者を隔てるように流れ込んでくる

 

―――

 

 

朱色の大鷹&Mt.レディ vs 死柄木弔&ギガントマキア ――

 

群訝山荘の空を朱に染める巨大な影。

 

全長十数メートルにも達する、異形の“朱色の大鷹”。

かつてのヒーロー・ホークス。その面影は、もはやどこにも残っていない。

 

猛禽そのものの眼光。燃えるような朱色の羽根。

理性は失われ、本能のままに、ただヴィランを狩るために飛ぶ存在。

 

「自己犠牲もここまでくると哀れね。だからヒーローって嫌いなのよ」

死柄木が口角を吊り上げる。

 

「マキア!!」

 

咆哮と共に、地鳴りを鳴らしながらギガントマキアが本部から突進。

 

「主よおおおぉぉぉ!!」

 

Mt.レディが吠える。

 

「ここは……私が止めるッ!行かせるかあぁぁぁああ!!」

 

裂けるような叫びが山を揺らす。

彼女の身体はすでに満身創痍。岩の破片が食い込み、血がにじむ。

 

それでも倒れない。

ヒーローだから。

 

「立てるうちは……ヒーローだっ!!」

 

ギガントマキアが拳を振るう。

風圧だけで森がなぎ倒される。

 

Mt.レディは地を蹴り、ギリギリでその一撃をいなした。

 

「舐めるなぁ!!!」

 

腕を取り、全身の力で――

 

一本背負い。

 

ドッズウゥ……ンッ!!

 

隙を逃すまいと、朱色の大鷹が一気に急降下。

鋭い爪と嘴で、マキアの身体を深々と穿つ。

 

「ぐああああああ!! 痛あああい!!」

 

「まったく、これだから脳筋は!」

死柄木が吐き捨てるように言い、自らの手でマキアの傷口に触れる。

 

“崩壊”の個性で、傷の出血を止める。

 

「ほら、一時的だけど血は止まった。行けるぞ、マキア」

 

「主よおおぉぉおおぉ!!」

 

ドドドドッと地鳴りと共に突進。

肩には死柄木、正面にはMt.レディ。

 

視界に迫る死柄木の右手。

その“意味”に気づいたレディの表情が険しくなる。

 

「うそ……崩壊が“治療”に使える!? そんな情報は……くそっ、これはヤバい……!」

 

必死に動こうとするが――

 

ガシィッ!

 

マキアと組み合った瞬間、力負け。

その隙に死柄木が目の前へ。

 

「取り敢えず、目の前のヒーローは崩しておくよ。バイバイ、Mt.レディ」

 

「くぅッ!!」

 

そのとき――

 

朱色の大鷹が、まるで庇うかのように死柄木とマキアへ突撃。

 

「ああ……やっぱりね。そうくると思った」

 

死柄木は二対の羽で自らも大鷹に攻めに行く。

そして右手をそっと前に出し、躊躇なく接触した

 

「“瞬崩”」

 

バサァ……

 

――触れた瞬間、巨大な朱色の大鷹は音もなく崩れ去った。

 

「ホークスーーーーー!!!」

 

Mt.レディの絶叫が響く。

 

だが、

灰色の崩壊片の中に――

 

羽根。腕。意識を失ったホークス本人の姿が、あった。

 

「……は?」

 

「……え?」

 

一瞬、動きを止める死柄木。

 

その隙を――レディが逃さない。

 

(マキアには力じゃ勝てない。けど……)

 

彼女には、“技”がある。

 

近代武技。“柔道”。

 

ヒーローとして、生きるために血を吐く思いで磨き上げた技。

 

「三段なめんなぁ!!」

 

記憶に残る“投げ”を警戒して、マキアは腕を引く。

その動きに合わせて、レディが突進。

 

背中合わせに密着――

 

「ぬぉ!?」

 

「禁忌。“逆一本背負い”ッ!!」

 

ドズウゥゥゥンッ!!

 

巨体が正面から地面へ叩きつけられ、動きを止める。

その一瞬――

 

レディはすでに別方向へと向かっていた。

 

そして――落ちるホークスを、ぎりぎりでキャッチ。

 

「……良かった、生きてる」

 

ホークスの情報、自らの得た事実。

すべてを守るため、レディは戦線離脱を選ぶ。

 

「ちょっ……逃すかあぁ!!」

 

死柄木が追おうとした瞬間――

 

ゴゴゴゴゴ……ッ

 

大地が“浮いた”。

 

「ええぇぇぇ!? なんじゃこりゃあああ!!」

 

地面が砕け、気絶したマキアが“地面ごと”持ち上がる。

 

そして――落ちる。

 

山肌を削り、木々を押し潰しながら、マキアは谷底へ落下していく。

 

「ヤバい!マキア、起きろ!」

 

パキンッ

 

焦った途端に

マキアが、拳大の“ビー玉”に変わった。

 

「いやはや……これは大きいな。こんな巨大な圧縮玉は初めてだよ」

 

現れたのは――Mr.コンプレス。

 

「やあ、葬華。……すまない、鷹から受けた傷が痛む。レディとマキアが見えたから走ってきたが……間に合わなかったか…

それより、この土砂崩れ……じゃないなぁ、コレもしかして浮いてる?

理由は…後から分かると良いなぁ、さて……疲れただろうし、今から気球で高みの見物しようと思うんだけど…乗ってく?」

 

「乗ってく」

 

ヴィラン連盟の時からの頼れる運び屋。

いつも通りのMr.コンプレス。

 

 

気球の中 ――

 

「あ、そうだ」

 

Mr.コンプレスが、ひとつの圧縮玉を壊す。

 

パキンッ

 

「ありがと、ミスター」

中から出てきたのは――睡魔

 

「え、スイ!? あ、逃げてたな!?」

 

「大怪獣戦なんて、巻き込まれたくないもん」

 

「アンタがいれば、もっとやりようがあったんだから!」

 

「ふーんだ」

 

「ちょっとコンプレス!甘やかしすぎ!」

 

「おやおや、まるで教育方針で喧嘩する夫婦のようだね」

 

「変なこと言うなぁ!」

 

こんなやり取りが続く中――

 

彼らの眼下では、“浮いた大地”で、ヒーローとヴィランたちの阿鼻叫喚が続いていた。

 




どうしよう、ヴィランサイド書いてた方が楽しいぞ?(笑
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