後何話で終わるかな?
青山優雅は震えながらも、まっすぐに前を見据えていた。
その場に集まっていたのは、雄英高校を代表する教師たち――根津校長、イレイザーヘッド(相澤先生)、プレゼント・マイク、ミッドナイト。そして、青山の罪を聞くために呼ばれた警察関係者たち。そして……彼のクラスメイトたちもいた。
教室には、緊張という名の重たい空気が漂っていた。ざわめき、どよめき、息を呑む音が交じり合う中、青山は静かに、しかし確かに、自分の罪を告白し続けていた。
「……USJの時も、林間合宿も……阿賀月事件の情報提供も……全部、“アノヒト”の命令だったんだ……。今回も……緑谷くんを、ある場所に連れていけって……」
その一言一言は震えていて、まるで割れやすい硝子のように脆く、壊れそうだった。
“アノヒト”――それが誰なのか、皆が分かっていた。
オール・フォー・ワン。
すべての元凶。
ヒーロー社会を壊そうとする、真の闇。
「……どうして……」
誰かの小さな声が、教室に漏れた。
疑い。怒り。悲しみ。混乱。信じたくない気持ち。
そのすべてを背負い、青山は続ける。
「……もう、皆が“ヒーロー”になっていく姿を見るのが辛くなったんだ……。でも僕は、“ヴィラン”になっていく……最低で……臆病な悪者さ……」
その言葉に、教室全体が静まりかえった。
そこへ、タイミングを見計らったように警察の一人が入ってきた。
低く、落ち着いた声で口を開く。
「……ご両親も、すべてを認めた。あまりに動揺していて、会いたいと願っているが……今はそれが許されない。……すまないな、青山君。だが、よく告白してくれた。君の罪は重い。償いは避けられない」
それでも、青山は静かにうなずいた。
「……いいえ……遅すぎたんです。パパンとママンは、こんな僕を大切にしてくれた……でも、僕は……たぶん、死ぬと思う。だから、取り乱しても……仕方ないんです……」
クラスメイトたちがざわめく。
「え……!?」
「今、死ぬって言った……?」
「どういうことだよ、青山!!」
その言葉に、怒り混じりで詰め寄ったのは切島だった。
青山は、苦笑しながら答える。
「……フフ……単純な話さ。“アノヒト”に協力した人間で、裏切った者は……誰一人、生きていない。だから、僕も……きっといずれ……」
「……じゃあ、今生きてるのおかしくねぇ?」
空気を読まずに発言したのは上鳴だった。それを聞いた耳郎が、素早くツッコミを入れる。
「ちょ、空気読みなよ!バカ鳴!!」
その中で、誰よりも状況を正確に捉えていたのは、やはり緑谷だった。
彼の目が、光を宿す。
「……そうだ……それってつまり、今の時点でAFOは青山くんの動きを把握できてないってことじゃないか?だったら……青山くん、君はまだ“ヒーロー”になれるよ!!」
「緑谷くん……!?何を言ってるんだい、君は……」
驚く青山の前に、今度は爆豪が一歩踏み出した。
「なるほどな……つまり、あのクソボスが動向を掴むには、何か条件があるってことか。今はその条件が揃ってねぇ……。ちゃんと調べりゃ分かるはずだ。……ってことは、そこにウソの情報流せば、罠が仕掛けられるってことだ……」
爆豪は鋭く青山を見据える。
「……オイ、青山。これは命懸けだ。だが……お前にしかできねぇ、大勝負だ。……どうする?」
青山の足は震えていたが、その目は何かを決意しようとしていた。
「……命を、かける……そうしなきゃ、僕の罪は償えない……。いや、もう何人も死んでる……それでも足りない……。でも、もしこれで終わらせられるなら……!」
ぽろぽろと涙をこぼしながら、覚悟を語る青山に対し、爆豪が叫ぶ。
「ちっ……違ぇ!!俺は無理矢理言ってんじゃねぇ!!……すまねぇ、また俺の悪い癖が出ちまった……。いいか、これは命を懸ける任務だ。だからこそ、テメェ自身で決めろ。これは頼みだ。俺からのお願いだ。……青山、頼む。お前のその命……俺たちにも賭けさせてくれ」
爆豪がプライドを捨て、深く腰を折って頭を下げた瞬間——教室中が凍りついた。
「かっちゃん……」
「爆豪が……頭を下げた……だと……」
そのとき、緑谷もまっすぐに青山を見つめて言った。
「命を懸けるのって、すごく怖いよね……。でも僕はもう、AFOと命懸けで戦うって決めてる。OFAと歴代継承者の名にかけて……必ず倒す!それに……青山くん!僕は、君がヴィランなんて……絶対に認めない!!君、僕を励ましてくれたじゃないか……忘れてないよ!」
その言葉に、クラスメイトたちも次々と声を上げた。
「お前だけに命懸けさせるわけないだろ!」
「俺たちも一緒だ!」
「爆豪さん!分かりづらすぎますわよ!」
「丸くなったかと思ったら、またトゲ生やして!」
「新しい角が生えてるから、丸くなれないんだよなぁ!」
「フッ、俺は最前線に行くつもりだった。最初からな」
「ヒーローってのは命懸けてこそ……今更、怖くねぇよ」
「うおーっし!!死んでも勝つ!!」
「ちょっとぉ!?なんで皆、爆豪君みたいになってんの!?」
「爆豪がうつってるんじゃね!?」
「うつるってなんだコラァ!!」
「「「「「「ははははは!!!」」」」」」
青山は、涙を流しながらも顔を上げた。
「ふ……ふふふ!仕方ないなぁ……皆、そんなに僕の勇姿に並び立ちたいのかい?いいよ、一緒に行かせてあげるよぉ!!」
涙は止まらず、足はまだ震えていた。それでも、彼の瞳はまっすぐ前を見ていた。
それはもう虚勢ではない。確かな――決意だった。
「お前ら……」
誰かが小さく、呟いた。
「おいおい……泣かせるじゃねぇかよ……」
「子どもたちに、ここまでの覚悟をさせるなんて……俺たち大人は、今日という日を絶対に忘れちゃいけないな」
「アオ!ハル!……ああ、こんなキラキラした青春、他に見たことないわ……」
「……俺たちも、命をかける時だな」
「……ああ、間違いない」
そう大人たちが静かに言葉を交わす中、根津校長が前へと進み出て、声を上げる。
「──では、さっそくだが作戦の基盤を固めよう。青山くんの両親から得られる情報も、極めて重要になるはずだ。協力してもらえるかな?」
青山は一度視線を落とし、しかしすぐに顔を上げて答えた。
「ウィ。もちろんさ……パパンとママンも、僕の覚悟を知れば……きっと力になってくれるよ」
「……ありがとう。では、作戦立案班はその方向で動いてくれ」
その時だった。イレイザーヘッドが重たい声で口を開く。
「──それから、一つ。タイミングを見て話すつもりだったが……」
その声に、皆が彼へと注目する。
「“黒霧”と“ギガントマキア”の二名……すでに警察が拘束している」
「ええええええええええ!?」
教室に衝撃が走る。
「マジかよ!?あのワープの奴と、あの巨大ヴィランが!?」
「それは……かなり戦況に影響を与えるはず……」
「ワープが封じられたってことは、向こうの機動力が一気に落ちたってことだよね」
顎に手を添えて思案する緑谷を、爆豪がパンッと手を鳴らし声を飛ばす。
「考え込んでねぇで、前向けデク!!作戦練るぞ!!」
「う、うん!!」
その後、青山の両親への説得は時間はかかったものの、成功した。涙を浮かべながらも、彼らは息子を信じ、情報の提供に同意してくれた。
──そして、ついに「条件の洗い出し」が始まった。
AFOが青山を把握していた時の共通点。何が引き金になり、いつ監視が始まるのか。そして、それを回避する方法はあるのか?
「ねぇ……もしAFOが“サーチ”で僕たちを追ってるなら、隠れても意味ないんじゃない?」
「ああ、それは確かだな」と爆豪。「だからこそ、逆に利用するんだ。指定された場所に青山が緑谷を連れて行く。AFOが現れた瞬間──」
そこからの展開は、まさにヒーローたちの総力戦となった。
「──“物間寧人”の個性《コピー》を使い、拘束中の“黒霧”のワープ個性を再現する。全国に散っているヒーローたちを一気に集結させ、適所に配置。地形に強い者がヴィランを分断・撃破していく」
それは将棋のように緻密な、完全なる布陣。
その中核を担うのは、“心操人使”。
「……洗脳の対象は青山だ。彼を通してAFOに偽の情報を流す。両親の証言によれば、AFOからの連絡は基本一方通行。つまり、こっちの“感情”までは読み取れない。せいぜい、言葉の真偽くらい。だからこそ、洗脳による応答が最適だ。……まあ、AFOが青山を完全に信じているからこそ成立する作戦だけどな。洗脳のタイミングだけは、慎重を要する」
「了解。俺がサポートにつく」と爆豪。「敵を引きずり出すのは、最も過酷な役目だ。だが、それができるのは……」
「青山くんしかいない」
緑谷のその言葉に、青山は小さく頷いた。
──拘束中の敵から得られた情報も確認された。
・“黒霧”は意識混濁。検査で脳無であると判明。
・“ギガントマキア”は大爆発の影響で昏睡中。あの巨体が仇になった。
・“ケンドー(乱波肩動)”は拘束済み。元・死穢八斎會の幹部。
「……ただし、爆発の混乱で逃げた灰濁のメンバーが大半だ。油断はできない」
緑谷の言葉に、爆豪はニヤリと笑った。
「油断?フン……こっちはその油断すら織り込み済みだ。なぁ?」
「うん……僕たちの反撃は、ここから始まるんだ!」
続いて、戦力の現状把握が行われた。
マジシャンズ:マジシャン・ヨロイ武者・クラスト・エクスレス
シャイニングヒーロー:ユウエイジング・デスアームズ・フォーティース──は、死亡が確定。
エンデヴァーは死亡疑いとして動く。
ブラドキングは物間の《コピー》の副作用により前線離脱。回復は見込まれるが、今回はオペレーターとして参加。
さらに10名以上がヒーローを引退している。
決戦に間に合わなければ、戦力には数えられない。
……あまりにも多くのヒーローが命を落とし辞めている。
このままでは、ヒーロー社会そのものが衰退してしまう。
それゆえ、早期決着が何より求められていた。
作戦の枠組みが整い「トロイ作戦」と名付けられたその翌日。
市街地調査に出ていた緑谷たちが、一人の人物を連れて作戦本部に戻ってきた。
マスコーダー。
無茶な救助活動を繰り返していた彼女も、この作戦に共鳴し、力を貸すと申し出た。
「皆、よろしくね!すごい作戦じゃないか〜!私も一枚噛めるなんて光栄だよー!!」
「うーん、あの一年生たちがここまでとは……正直、作身より……あ、いや」
「……え、今なんか言った?」
「なんにも!」
作身とカタチが、お互いにジト目を向け合う。
「また先輩と戦えるなんて、心強いです!よろしくお願いします!」
緑谷たちも元気よく挨拶を返す。
「うん!よろしくね。あ、私、死柄木葬華の相手を希望してるんだけど……意見通る?」
「はい!先輩は、死柄木との交戦経験が最も多いですし、お願いしたいと思っていました」
「つーか、あのチート女郎はアンタしか相手できねぇだろ……ムカつくけどよ!」
と、爆豪が言い放つ。
「ところで……その方は?」
さマスコーダーの後ろに佇む浅黒い肌の男性
…
皆が気になっていたことを、芦戸が代弁し、カタチが答えた。
「ハイエンド……“シン・脳無”のネームド、“クサナギ”だよ」
!
ガタガタ!!!!
A組の面々が一斉に臨戦体勢に入る。
その反応に、クサナギは愉快そうに笑った。
「ハッ!優秀なガキどもだな。正体を聞いた瞬間、全員が周囲の確認と仲間へのアイコンタクトを取った……詳しい内容は分からんが、少なくとも俺を“敵ではないが警戒対象”と見たってことか。20人全員がこの動き……おもしれぇな……」
「あはは……大丈夫だよ。口は悪いけど、ちゃんと味方だから」
「シン・脳無ってシャレにならんぞ?」
「なんて方を連れてきていらっしゃるのですか……!!」
「たしか、エンデヴァーと相打ちしたのも“セキ”っていうシン・脳無だったよな?」
「でもコイツ……あれより上って話じゃなかったか?」
「敵なら恐ろしいけど、味方なら頼もしい。とはいえ油断は禁物。いつ寝返ってもおかしくない、AFOが出てきたら……その瞬間に──いや、ここでは話せない。後で検討・共有しよう」
「ハッハッハッ!
まぁ、頼れる奴らで何よりだ。オールフォーワンだっけか?あんなヤツに興味はねぇ。寝返るとか意味わからん…理由?そんなもん、どうでもいいからだ。安心しろ。……とは言え、まぁ無理だろうな。鬱陶しそうだから、気を利かせて消えてやるよ。感謝しな、ガキども」
そう言うなり——
フッ
と音も気配もなく、その姿を消した。
「「「なっ!?」」」
緑谷、爆豪、轟──トップクラスの3人ですら、その気配をまるで追えなかった。
「それはさておき……青山くん、君の話は聞いてる。でもね、脳無すら仲間になってるんだ。だから…何を思うかは、君の自由だよ」
「あ…え?……あ、はい!!」
急に話を振られた青山
混乱しつつも話を聞いて僅かに肩の力が抜けた様に見える
「さて、と!意見が通って良かったよ!今度こそとっ捕まえてやる!……っと、その前に……ちょっと風呂借りていいかな?ボロボロでさ」
「「「「「「どうぞどうぞ!!」」」」」」
皆が道を空ける。
彼女の姿が見えなくなってから──
「すげぇ人だよな……」
「うん……大爆発の後、ずっと救助活動してたんだって……休みも取らずに」
「今は明るいけど……初めて見た時は、本当に鬼気迫る勢いだったよ」
飯田が、再会時の様子を語る。
「SNSでも批判されてたし……心、大丈夫かな。それに……そろそろ、エネルギー限界なんじゃ?」
「分からない……けど、信じるしかないな」
「わたしならお力になれるかもしれませんわね、後でお話を伺いますわ」
「ありがとう八百万さん、お願いするね」
「そういや、確か、死柄木がダークヒーローしてるって言われてたな」
「あんな、人を弄んで…何がヒーロー…」
「ボロボロになって限界まで救助してた先輩が責められるなんておかしいよ!」
「情報戦ってやつかな…」
「誰か、情報戦に強いやついるか?」
「うーん…」
「それなら、ワタクシにお任せくださいませ!我が八百万家の名に掛けて先輩の汚名を返上致しますわ!!!こんなの許せませんもの!」
「オイラ…八百万家だけは敵に回さないって決めてるんだ」
改めて八百万家の強さに戦慄するクラスメイト
そして…
「作戦開始まで、あと1日……明後日の朝には、決戦が始まる……」
「そんな中で……自分から“死柄木と戦いたい”なんて……本音を言えば、止めたかったよね」
「うんでも……何か策があるのかも」
「せめて、長距離支援のプロヒーローをつけられないかな」
「スナイプ先生とか?」
「他にもいないかな?」
「うーん……むしろ、それを先生に聞いてみよう!」
──着実に、準備は進んでいた。
ヒーローは──味方は──多いに越したことはない。
それでも、不安は消えない。どれだけ考えても、どれだけ準備しても、足りないような気がしてならない。
「……うーん、正直、どれだけ備えても不安は残るよね」
皆が個性を再確認し、眠る時間も惜しんで何度も話し合った。
サポート科も巻き込んだ
発目さんも一緒に考えてくれた
笑いも、涙も、怒号も、絶望も、そして──希望があった。
そこにあったのは、
“未来を変えるために立ち上がったヒーローたちの、決意”。
「──決戦は、すぐそこだ」
誰かがそう言った時、全員が力強くうなずいた。
………-
「その決戦……私も、後方支援として参加できることになったよ」
「「「「オールマイト!!!!」」」」
突如として車椅子姿で現れたオールマイトに、教室の空気が爆発する。クラスメイトたちが一斉に駆け寄り、驚きと歓喜の声を上げた。
「みんなの話は聞いているよ。すごいじゃないか!君たちと過ごせた時間は、決して長くなかったけれど――それでも、君たちの成長は、私の誇りだ!」
車椅子を押しながら、両手を広げて胸を張る姿には、心からの信頼と愛情が溢れていた。言葉だけじゃない。本当に、彼は今の自分たちを誇りに思ってくれているのだと伝わってくる。
「私は情けないけど……オペレーターとして参加させてもらうね!どうやら才能あったみたいでね!エヘン!」
得意げな表情。マスコーダー戦でのオペレーター経験が、彼に新たな自信を与えていたのだろう。
そう――
ヒーローたちは、いま再び集結する。
これから始まる戦いは、誰一人逃れられない。命を懸ける、一世一代の決戦となるだろう。
それでも、誰も逃げない。
なぜなら――彼らはもう、“仮免”なんかじゃない。
紛れもない、本物のヒーローだからだ。
⸻
マスコーダー side
「……ふぅ。エネルギー残量、4.8%。うん、心許ないどころか、絶望的に足りないね」
ディスプレイに浮かぶ数値を見ながら、私はわざと明るく笑った。
「だから――“アレ”を使わせてもらうよ。オールマイトから託された、最後のカード」
「……エルクレス、だったっけ?」
横から声が飛ぶ。私は頷いた。
「うん。I-Islandでデヴィッド博士とメリッサが共同開発した、AI搭載のアップグレードパワードスーツ。それをまるっと譲ってもらったの。私たち用に調整中だけど――ぶっつけ本番、行くよ」
「操作方法は?」
「睡眠学習で叩き込んだ。たぶん大丈夫」
……いや、ほんとは“たぶん”じゃ困るんだけどね。
「エネルギー源は、プラズマとニュートリノだけじゃ足りない。だから今回は――電力、水力、火力、風力、全部合わせたフルハイブリッド稼働。効率は最悪だけど、一戦くらいは保つ……はず」
「過信は禁物だね。……それにしてもさ、非殺傷設定。外しちゃダメなの? それさえなければ、もっと楽に戦えるのに」
「……おバカ」
私は笑いながら、でも、まっすぐに言い返した。
「分かってて言ってるでしょ? 私は絶対に外さない。他のヒーローに押しつけるつもりはないよ。でも――私は、これだけは貫くって決めたんだ」
「……死ぬかもしれないんだよ?」
「それでも、だよ」
沈黙の中で、彼女は小さく息を吐いた。
「……やっぱ、そう言うと思った。ほんと、変わんないね。中学のときから、ずっと頑固」
「当たり前でしょ?」
私は胸を張って笑った。
「私はさ“ヒーロー皆が原点”なんだけど、そんな私だっていつか、誰かの“オリジン”になれるかもしれない。そのとき伝えたい理念が“非殺傷”なんだ」
ふと、懐かしい記憶が蘇る。
「中学の頃、“世界征服の確率は3割”って言ってたの、覚えてる?」
「うわ……あれは本気でヤバいと思った。今でもそう思ってる!」
「それでも、非殺傷を貫いたよね。世界征服の確率0割になるって言ったのに」
「当然じゃん!ヒーロー目指すんだからある程度は人を傷つけるのは……しょうがない。でも、“殺す”のは、絶対にイヤ。信念を捨てたら、それってヴィランと何が違うの?」
彼女はしばらく黙ってから、にやっと笑った。
「……分かった。もう何も言わないよ。さて――一つずつ、やるべきことを片付けてこっか」
「おっけ! えっと、カタチ先生〜! 私は何すればいいですかーっ?」
「うおぉぉい! 一個くらい案出してから聞けやあああ!!」
「ごめんってばー!」
──私は、速くなんてない。
全部が正しいわけでもない。焦って間違えたり、意地になったり。今回の救助活動だってそう。非殺傷設定で戦ったせいで、余計にエネルギーを消費した。無駄も多かった。
でも、それでも貫いた。
私は準備が得意じゃない。けど、誰かが手を貸してくれた。私の意地を、止めてくれる人がいた。
ほんと、私は恵まれてる。
「誰かがやってくれると思うな」
「全部自分でやろうとするな」
先生や親から聞かされた、まるで真逆みたいな言葉。でも本当は、矛盾なんかしてなかった。
大事なのは、自分の力を正しく知ること。自分でやるべきことと、誰かに任せるべきこと。それをちゃんと見極めること。
人によって、そのバランスは違う。
だからこそ、自分を信じる。他人の意見に振り回されてたら、どんな結果も“他人のせい”になってしまう。
だから私は、測る。
人との距離を。心の温度を。どこまで頼れるか、どこまで背負うべきか。
……でも、忘れてしまうこともある。間違えることもある。それでも私は信じたい。
人は、一人じゃ戦えないってことを。
だから、私は――自分のペースで、ゆっくりでも前に進む。
私が思う“ヒーロー”と“ヴィラン”の違い。
それは――距離感だ。想いの在り方だ。
仲間がいて、友達がいて、先生がいて、後輩がいて。
甘えてもいい。迷惑をかけてもいい。
だからこそ、誰かに頼られたとき、私は全力で応えたい。
たとえ失敗しても、それでも――そうありたい。
迷惑かけるかもしれない? いいじゃん。そのぶん私も、迷惑かけられても全然かまわないって思ってるから。
だから私は言うんだ。
「私がいるから、大丈夫」
昔の私を知ってる人が見たら、「何言ってんのコイツ」って笑うかもしれない。
でも、今の私を知らない誰かには、特に後輩には――胸を張って、そう言いたい。
それが、今の私の“原動力”でヴィランと対峙する覚悟。
たぶん、みんなとは違う。でも、それでもいい。
私の“ヒーローとしての価値”は、自分で決める。
さあ――行くよ。
最終決戦、開始だ!!
某所…午前8時30分
まだ太陽が完全に昇りきっていない、薄曇りの空の下。
森の木々の間を縫うように朝日が差し込み、静寂に包まれた人工芝と自然の緑が朝露に濡れている。壊れた駐車場のコンクリートには、ビル群の影が静かに落ちていた。
その静寂を破るように――足音が一つ、響いた。
制服姿の緑谷出久が、駐車場の奥へとゆっくり歩みを進めていた。
「……ここ、で合ってるよな……?」
寝起きの頭を無理やり働かせながら、彼は辺りを見渡す。朝食を済ませた直後、突如届いた青山優雅からの呼び出し。それが冗談や気まぐれでないことは、メッセージの文面と…彼の名前だけで十分だった。
「青山くん……?」
声をかけると、一本の木の下に佇む金髪の少年が、ゆっくりと振り返った。
――青山優雅。
だが、いつもの煌びやかで芝居がかった笑顔ではなかった。
その瞳は、霧に霞んだ空気の中でも分かるほど揺れていた。苦しみを、哀しみを、奥底に滲ませながら。
「来てくれて……ありがとう、緑谷くん」
「えっと、こんな時間に……どうしたの?」
青山はすぐに答えなかった。ただ、伏し目がちに唇を震わせ、そして……絞り出すように呟いた。
「……僕は……もう、君たちと一緒にはいられないよ……」
「……なにを、言ってるんだ……?」
「ボクは……やっぱりパパンとママンを、守りたいんだ!!!」
その叫びと同時に、空気が変わった。
“ゴポォ……”
まるで地の底から何かが湧き出るような、どす黒い音が森の奥から響く。
空が、歪む。
闇が押し寄せるように、空間がぐにゃりとねじれ――
──そこに、“それ”は現れた。
オール・フォー・ワン。
漆黒のスーツに仮面。人の形をしていながら、人ではない。
「オール・フォー・ワン……!?嘘だろ、青山くん……まさか……」
信じていた。だからこそ、出久の声は震える。
パチン……パチン……パチン
それは皮肉な拍手か、それとも哀れみか。冷笑のように“ただ掌を合わせたら出た音”として鳴らすその音が、静寂に溶けていく。
「……ああ、青山優雅。よくやってくれたね。心苦しかったろう…友を裏切るというのは。悲しかっただろう自らの無力さが…だが…よくやった。成果はあった。君は優秀ではないが……生かしてあげよう」
甘く、優しい声。
だが、その内側には氷のような冷酷さが潜んでいた。
緑谷が身構えるより早く、青山が叫ぶ。
「苦しいとか、悲しいとか……そんなレベルじゃない!!Youエビル・Myネビル・ツインmix・キマメキを止めないnow止められないよレィザーーーー!!」
キラァッ…ン!!
放たれた一閃。
黒と白のエネルギーが螺旋を描く、新たなる“レィザー”が空間を薙いだ
AFOが咄嗟にかわすも、その左腕が肩ごと消し飛ぶ
ズ…ズズ………ズォン……!!
背後のビルが斜めに切り裂かれ、ゆっくりと崩れていく。
「ぐっ……まさか君が、裏切るとはね……それに…この威力は、一体……」
青山はその瞳を逸らさなかった。真正面から“支配者”を見据えたまま、口元を引き結ぶ。
「さすがだね、ムッシュ緑谷。見事な演技だったよ!」
「そっちこそ!迫真すぎて本当に裏切ったかと思った!」
「「ふふっ」」
二人は、見事に“第一関門”を突破したのだった。
そして、青山は一歩前へと進み出る。
「教えてあげるよ、この威力の名は“友情と努力”!! それと……僕は、もう知ってるんだ。アナタの、本当の目的を!」
AFOの視線が青山に向けられる。
「くだらない。だが……聞いてやろうか。“僕の目的”とは?」
青山の拳が震え、だがその声は揺るがなかった。
「君の狙いは、緑谷くんを囚え、OFAを支配すること! そして“次の器”として……彼の意志ごと、完全に乗っ取るつもりだ!!!」
「……ふふ、惜しいね。正解じゃないし、他にもあるんだけど…まぁ……よく推理したよ、青山優雅」
「もう……二度と、君の命令なんか聞かない!!」
空気が、一変する。
AFOは言う。
「……だがどうする?他のヒーローたちは、ここには来られない。僕の“サーチ”がそれを証明している。ここにいるのは君たち二人だけ……それに比べて、こちらには――」
ズズッ……!
泥のようなワープの中から、次々と現れるヴィランたち。
元SVP社員、脳無、そして灰濁の精鋭たち。
数でも力でも、圧倒的に不利。絶望的な状況。
しかし、その瞬間。
「……!」
ワープの光が、別方向から、今度は“希望”を連れて現れる。
「これは……黒霧の……!?」
「ふふふ、気づかなかったみたいだね!この……ボクの存在に!!フィクサアアァァァァァ!!!!」
そして――
爆豪、轟、飯田、上鳴、耳郎、芦戸、常闇、切島。
1年A組の仲間たちが次々と姿を現し、
1年B組も、雄英唯一の2年生も、3年のビッグスリーも。
雄英高校と士傑高校の教師陣。
さらに、プロヒーローたちまでもが次々と駆けつける。
──決戦の幕が、ついに開かれた。
青山優雅の、命を懸けた“囮作戦”は、
ここに、完璧な形で成功したのだった。
「あいつは……そうか。コピー能力者、か……。なるほど、なるほど。で――?」
AFOが静かに呟いた瞬間、空気がまたねじれる。
泥のように黒いワープが、彼の背後にぐじゅぐじゅと広がっていく。
そしてその中から、次々に姿を現す異形の影たち。
「主よおおおおお!!」
「がっはっはっは!マジで出れたぁ!?うっそ、これ夢じゃねえよな!!」
「うひょひょ!すまぬな、我が盟友よ!儂はこの老体、早速ながら後方支援に回らせてもらうぞい!」
「ちょっとぉ!?勝手に後方に回らないでよね!でもまぁ、仕方ない!わたしも後方に行くぞい!」
一癖も二癖もある声が、次々と飛び交う。
泥のゲートから吐き出されるのは、AFOの協力者、、忠誠を誓った――あるいは恐怖に支配された――ヴィラン、ダツゴクたち。
その数、膨大。まさに黒い津波。
緑谷たちが、目を見開いた。
「なっ!?ギガントマキアに……ケンドー!?それに柄木球大……ヴェットまで!? 」
「そんな、馬鹿な……!!」
口に出したくない絶望が、脳裏にまで染みこんでくる。
――そう、これはこれまでの全ての戦いの“集大成”。
ヴィラン連合と解放戦線が合併したSVP残党。泥花市民、ダツゴク、あらゆるヴィランが、ここに集結していた。
対するヒーロー側は……多くの仲間を欠いている。
「はっはっはっはっは!さあ……どうするかねぇ?」
AFOは両腕を広げる。まるで、勝利を疑っていないかのように
全てを掌握している、という顔で。
たが、
「ふははははっ!……ならば、こうしようかねぇ!」
不敵に笑いながら、さらなる高笑いを放つのは――
物間寧人
その声が、その空気を真っ二つに切り裂いた。
恐れも怯えもなく、凛と響くその声。
「……こっちは、これだッ!!」
再び空間がゆがむ。
今度は空だ。
上空に、ぐおぉぉんと低く唸る音――
巨大なワープゲートが、雲の合間からぽっかりと開かれた。
そこから姿を現したのは――
戦闘機。
そして、その機体の上に立つ――金髪の、鋼の意志と鍛え抜かれた肉体に健全な魂を宿す女性
「ハンッ!!聞いてるかAFO!!あんたがオールマイトを終わらせた?ふざけるなぁ!!あの人はな……アタシの、心の恩師だったんだ!!」
拳を振り上げ、怒りをそのままに叫ぶ。
「その罪、たっぷり償ってもらうよ!!ここが、アンタの終着点だああぁぁぁッ!!!」
「――おや?……貴様は……スターアンドストライプ」
AFOの声に、わずかに高揚した
それだけでは終わらない。
スターが、にやりと笑う。
「残念だけどさぁ……アタシだけじゃないんだよなぁ!!」
次々と、空に新たなゲートが開かれていく。
そして――現れるのは、各国を代表するトップヒーローたち!
「ブラジルの灼熱、インフェルノ!」
「フランスの雷光、シェルム!」
「中国武術の鬼神、フェイ・ロン!」
「インドの神童、ビッグ・レッド・ドット!」
「そして……英国の幻影、ブリティッシュ・ウォーカー!」
その姿は、まさに“世界”そのものだった。
AFOの表情が、ほんの僅かに崩れる。
「……政府に働きかけ、外国ヒーローの渡航を阻止したはずなのに……おかしい、という顔だねぇ?」
物間が口角を吊り上げる。
「ふふふ!確かに、そうさ!!でもな、情報を渡して、“日本と繋がるゲート”をたった一つ開いただけで、彼らは来てくれたんだよ!」
「……!」
「イチかバチかだったけどなねぇ!――でも、ほとんどのヒーローが迷わず協力してくれた!!」
誇らしげに、愉快そうに、物間は高らかに笑う。
AFOの背後の空間が歪む。怒気にも似た気配が広がっていく。
「……やってくれるじゃないか……」
「だから言ったろ?オレは“フィクサー”だってさ」
その瞬間。
――戦いの号砲が、朝焼けの空の下で、鳴り響いた。
「各員、対応を開始!目標を各個に分断し、順次撃破する!」
オペレーターの一声で、戦場が動く。
現れた各国ヒーローたちに、通信で情報が瞬時に共有されていく。
その連携を加速させたのは、やはりマンダレイの“念話”だった。
「「「「「了解」」」」」
複数のゲートから押し寄せていたヴィランたちを、担当ヒーローたちと連携した巨大ロボット群、移動式の遮蔽物が押し戻していく。
作戦通り――各個撃破のための“分断”は、見事に成功した。
だが……
「上手くいきすぎてる……怖いくらいに、ね」
オールマイトが静かに呟く。
「ええ……ですが、これは根拠のない不安。無視はできませんが、“もしも”の想定は続けましょう」
隣で冷静に応じたのは、ブラドキングだった。
「気になるのは……荼毘がいないことだな。奴が生きているのか、死んでいるのか……。あるいは、どこかで合流を待っているのか」
そう続けたのは、警察の塚内。
不気味な静けさを残す荼毘の不在が、全員の胸をざわつかせていた。
「……一つくらい、失敗してくれても良さそうなもんですけどねぇ~……嫌な予感がします」
ホークスが、モニターに食い入るように目を光らせる。
公安代行として、今や彼は最前線ではなく“指示する側”に立っている。
「ただし……万が一、予想外の事態が起こった場合……優先すべきは、ヒーロー達の命です。特に、学生ヒーローたちは“最優先で撤退を”」
彼の声は静かだが、その裏に強い覚悟が滲んでいた。
「……だが、プロヒーローは……引けない。申し訳ないが、それだけは覚悟してもらう必要がある」
「……ああ……」
オールマイトとブラドキングが、同時に拳を握り締める。
その眼差しは、すでに覚悟を超えていた。
彼らの任務は、すべての最新情報を精査し、前線へと適切な指示を届けること。
その一言が、ヒーローの命を左右する――絶対に、誤魔化しの効かない責任が、そこにはあった。
『運が悪かった』――そんな言葉で、命を失わせるわけにはいかない。
司令部の者たちは、命を背負っている。
ヒーローの命を、市民の命を、未来そのものを。
だからこそ――
今、ここにかつてない緊張が、司令部を包んでいた。
◆ 対AFO(オール・フォー・ワン)
スターアンドストライプ
ベストジーニスト
通形ミリオ
緑谷出久
爆豪勝己
青山優雅
⸻
◆ 対 死柄木葬華
マスコーダー
クサナギ
スナイプ
⸻
◆ 対 トガヒミコ
ミルコ
麗日お茶子
蛙吹梅雨
小森希乃子(B組)
鱗飛龍(B組)
⸻
◆ 対 マスキュラー
シェルム(ブラジルヒーロー)
尾白猿夫
瀬呂範太
峰田実
物間寧人(B組)
⸻
◆ 対 Mr.コンプレス
ビッグ・レッド・ドット(インドヒーロー)
グラントリノ
口田甲司
葉隠透
庄田二連撃(B組)
⸻
◆ 対 睡魔
エッジショット
ミッドナイト
芦戸三奈
八百万百
⸻
◆ 対 トゥワイス
インフェルノ(ブラジルヒーロー)
ウォッシュ
上鳴電気
吹出漫我(B組)
塩崎茨(B組)
⸻
◆ 対 スピナー
シンリンカムイ
天喰環
飯田天哉
轟焦凍
鉄哲徹鐵(B組)
小大唯(B組)
⸻
◆ 対 ケンドー
ブリティッシュ・ウォーカー(イギリスヒーロー)
波動ねじれ
切島鋭児郎
佐藤力道
円場硬成(B組)
⸻
◆ 黒霧の護衛任務(中央病院)
サー・ナイトアイ
マンダレイ(プッシーキャッツ)
ピクシーボブ(プッシーキャッツ)
耳郎響香
拳藤一佳(B組)
⸻
◆ 対 ギガントマキア
Mt.レディ
フェイ・ロン(中国ヒーロー)
虎(プッシーキャッツ)
常闇踏陰
障子目蔵
角取ポニー(B組)
⸻
◆ 対 SVP社員隊
ギャングオルカ
骨抜柔造(B組)
黒色支配(B組)
雄英特製ロボット群
⸻
◆ 対 扇動された一般人 + ダツゴクヴィラン
リューキュウ
鎌切尖(B組)
宍田獣郎太(B組)
柳レイ子(B組)
泡瀬洋雪(B組)
回原旋(B組)
その他の外国ヒーロー5名
⸻
◆ 対 型落ち脳無
バーニン & “炎のサイドキッカーズ”
その他各事務所のサイドキックたち
外国ヒーロー10名
⸻
◆ 市民防衛
根津(校長)
イレイザーヘッド
プレゼントマイク
セメントス
その他日本ヒーロー15名
⸻
この作戦では、AFOや死柄木、そして灰濁の中核メンバーに対して――
必ず“多対一”の布陣が敷かれている。
それは、絶対に勝たなければならない相手だからだ。
勝利の可能性を少しでも引き上げるための、最善の配置。いや、妥協なき決断だった。
――だが当然、その“最善”の代償はある。
リソースを割きすぎた分、他のヴィランたちへの対応は手薄にならざるを得ない。
そして、彼らヴィランは――阿賀月、いやVet(ヴェット)が作り持ってきた“セルドライバー”の力を手にしている。
それが意味するのは、ただひとつ。
この戦いに「絶対の勝利」など、そもそもないということだ。
犠牲のない戦争など存在しない。
そんなの、最初から分かっていた。誰もが、心のどこかで覚悟していたはずだ。
けれども、いざその時が迫れば――思い知らされる。
それは“誰にでも平等に訪れる”もの。
自分にも。
仲間にも。
大切な人にも。
たとえ名も知らぬ誰かでさえも。
――死。
この決戦で、否応なく刻まれることになる。
どれほど自分が“守られて”きたのか。
そして、その守りが、どれほど脆く、儚いものだったのかを――。
さて、そろそろ
次は何の作品の二次小説を書こうか考え始めます!
クロスオーバー物も良いなぁ
完全オリジナルは…もっと上手に書けるようになってからかなぁ(笑