ヒーローのカタチ   作:サモア リナン

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最終戦難しい_:(´ཀ`」 ∠):

終わらせるのも勿体ない…

どうしよう(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)


第32話「それぞれの決戦」

 

ドオォォンッ!!

 

セレネノヴァ第4隔壁──

月面基地の低重力空間に、不釣り合いなまでの爆音が轟く。

 

粉塵と金属片が渦を巻き、その中心からクサナギが現れた。

 

 

「……やるじゃねぇか」

 

切り裂かれた月面仕様の戦闘装甲から、右腕に黒く異質な刃が伸びる。

その存在感は、まるで脳の奥を直接こじ開けられるような圧迫感を放っていた。

──紛れもなく、“敵”だ。

 

 

「やっぱりよ……好きな女は“壊してから”の方がやれること増えるよな? まぁ、それだとつまらねぇ。反応も見たいし……どうすっかな」

 

その歪んだ嗜好と共に放たれる声。

戦闘AI《エルクレス》が即座に危険度A++を表示した。

 

 

「距離を取れ、マスコーダー」

 

通信に割り込む、スナイプの低い声。

 

「事前情報でも、あいつとの接近戦はほぼ自殺行為だ。だが遠距離も安全じゃねぇ……“中距離維持”を優先しろ。俺が隙を狙う」

 

「了解です、スナイプ先生」

 

 

マスコーダーの思考パターンが切り替わる。

戦術ユニットが冷ややかにモード変更を告げた。

 

「フラクタ、逆位相スキャン。行動予測アルゴリズム、強制展開」

 

《ピ、ピ、ピ──戦術補正完了》

 

 

次の瞬間、クサナギが踏み出す。

月面の低重力を嘲笑うような速度で。

 

 

「隙だらけ……だけど、当たらないんだろ? 対応方法、見せてもらう」

 

バァン!

スナイプのライフルが火を吹く──が、弾丸は空を裂くだけだった。

 

「……そこかッ!」

 

虚空から現れたように、クサナギはマスコーダーの背後へ回り込む。

 

ギィィン!!

黒刀が腕装甲に叩きつけられ、火花が散る。

 

 

「間に合った……けど!」

 

フラクタの自動展開したエネルギー障壁が、紙一重で死を弾いた。

 

「回避、軌道跳躍!」

 

脚部スラスターが咆哮し、マスコーダーの身体が斜め上へ弾かれる。

背後ではフラクタが全方位迎撃モードへ移行、ビームの網を張り巡らせた。

 

ババババババッ!!

極小ビームが空間を埋め尽くすが、クサナギは蛇のようにくねり、すべてをかわす。

 

 

 

「……これは読まれる以前に、“見えて”避けてるのか!」

 

スナイプの額に冷汗がにじむ。

 

 

 

「だったら──“捨て札”を切る!」

 

マスコーダーが切り札を起動。

高性能AI《エルクレス》が応える。

 

《S・E・F・S(ステルス・エラー・フォース・スタイル)──全武装ランダムモード起動》

 

装備ユニットが金属悲鳴を上げ、動作パターンが乱数化される。

攻撃出力も反応も読めない、“理解不能な動き”が生まれる。

 

 

「当たらなくてもいい──“理解できない攻撃”を刻むッ!」

 

ズオォン!

ニュートリノ・バスター・ライトが虚空を抉る。

 

そこからエルクレスは戦況に合わせ、次々と模倣個性を展開。

作身は並行思考で、戦闘スケジュールを瞬時に編成した。

 

《瀬呂モジュール》

テープ射出による補足と移動の限定、触れた場合の拘束・牽引を行う、かつ立体起動を補助

 

《葉隠モジュール》

個性再現と技術によるフラクタの最新光学迷彩で視認不可能とし相手の予想と予定の破壊を試みる

 

《上鳴モジュール》

個性としての高電圧放出によるニュートリノエネルギーの節約とスタン効果を期待する

 

《轟モジュール》

クサナギ付近に氷結路生成し足場の不安定さと、炎による攻撃と広範囲に展開する事で視界狭窄を狙う。

更に激しい寒暖差による身体機能への影響を狙う

 

《芦戸モジュール》

強酸による溶解でクサナギのツルギを無効化し、その危険性を認識させて接敵を躊躇わせる

 

《青山モジュール》

ネビルレーザー『トキメキが止まらないよ⭐︎』は刹那の広範囲高威力の極太レーザーのため月面基地が破壊される。ただ撃つ方向によってはセレナノヴァ第4〜6隔壁までに被害を抑えれる計算であり切り札として準備

 

《八木モジュール》

身体機能の向上と五感を研ぎ澄ませる事で擬似的な第六感を発現。

『なんとなく』で動きを予測し避け高確率でクリティカルヒットとなる強撃を打ち込む。その名は“SMASH”

 

I-Islandの技術協力によって、過去最高レベルの個性再現が可能となった。

だが──それでも当たらない。

 

おそらくクサナギは、八木モジュールの“上位版”を持っている。

 

 

 

「いくつかの個性が無くなったって……嘘じゃん!」

 

「あぁ、嘘ついといて正解だったぜ」

 

「こんにゃろー!!」

 

 

 

だが確実に、“情報の乱れ”は敵に刻まれた。

 

「“その次”が見えず読めずじゃ、お前の精度も落ちる!」

 

一瞬、クサナギの動きが遅れた。

 

バァン!!

スナイプが展開していた必殺技九十九弾(つくもだん)の1発が右肩を貫く。

血飛沫──明確な破綻。情報が揺らいだ証だ。

 

 

「へぇ……なるほどなぁ」

 

クサナギは血に濡れた肩も意に介さず、目を細める。

 

「くそ……これだけやって、やっと一発か」

 

スナイプは吐き捨てるように言った。

 

次の瞬間、クサナギの視線は──マスコーダーでも、スナイプでもなかった。

 

狙われていたのは、死柄木葬華。

彼女はすでに新型セルドライバーを起動していた。

 

灰色の三対六翼が広がり、二十メートルもの尻尾が揺れる。

失われていたはずの左腕は再生しており、真っ黒な質感が不気味さを倍増させていた。

 

その姿は、二人の援護を受けながらとはいえ、クサナギとほぼ互角に渡り合っている。

──だからこそ、スナイプの射撃が通ったのだ。

 

クサナギの口元が歪む。

「やっぱり……俺の目に狂いはなかった。テメェは最高だ。“全部”欲しい……心もな」

 

その言葉に、葬華が何か言いかけるよりも早く、マスコーダーが一歩前へ出る。

平然とした声で返す。

 

「女性の扱いが上手いつもり? なら、ずっと死柄木だけ見てなよ。その隙に、私たちがアンタを捕まえてあげる」

 

しかし──死柄木が突然、呆れたように叫んだ。

 

「お前ら……厨二病か!? キライだわぁ……何その“ここが最終決戦です”みたいな空気……いらねーっての!」

 

「アンタが言うな!」

三対六翼、灰の尾、戦闘スーツ──どう見ても最終ボスの最終形態な姿で言う台詞じゃない。

 

 

 

フラクタが再び展開し、周囲の重力場を制御。空間が歪む。

「──じゃあ、そろそろ“本気”出すか」

 

クサナギが息を吐いた瞬間、空気そのものが息を呑むように静まり返る。

 

「来るよ……っ!」

フラクタが赤く点滅、戦術警告を発する。だが──その“数秒”は現実には存在しなかった。

 

 

 

ズギャッ!!

 

唐突に現れたクサナギの黒い残像が、スナイプの懐へ飛び込み、弧を描く。

 

ズバッ──!

 

「……ッ!? がっ……!」

スナイプの右手が宙を舞い、鮮血が噴き出す。

 

即座に残った左手で出血部を押さえ、腰のロープを使って止血する。

「くそっ……!」

 

「スナイプ先生!!」

マスコーダーの叫びと同時に、フラクタの自動照準ビームがクサナギを狙う──が、

 

ヒュッ……シュン!!

 

斬撃の残像が、弾道そのものをずらす。

 

「うそ……!? “フラクタ”でも補足できない……!」

《補足不能区域──黒刃乱流圏内──発動個性:未特定》

警告が視界を埋め尽くす。

 

 

 

「次は……葬華だ」

クサナギの瞳に映るのは、ただ一人、死柄木葬華のみ。

 

「くく……テメェと踊るってだけで、俺の芯まで震えるぜ」

 

「うへー……ないわー」

葬華はげんなりとしつつ、右手で空間を崩す。

その視界にはクサナギの姿が反映されている。

 

「……崩界」

握られた拳が、空間を侵食する。

 

「あん? うぉっ!? やべぇ!!」

服と皮膚が崩れ始めた瞬間、クサナギは視認不能な速さで離脱する。

 

「あと1秒食らってたら死んでたな……」

だが、すでにクサナギは葬華の目前に迫っていた。

 

対応不能の速さ──刃が振り下ろされる、その時。

 

 

 

「ギャッギャッギャッ! 負けそうになるなよ、ヤドぬしさまぁ〜」

聞いたことのない声が響く。

 

マスコーダーが目を見開く。

「……そんなはずない! 僕たち以外、この基地には誰も──」

 

その答えは、葬華の“左腕”だった。

 

黒い腕に口が形成され、目が開く。

長さも太さも倍以上に膨れ上がり、爪は凶悪な鉤爪となって伸び、クサナギの腕をがっちりと掴む。

 

「うげ……出てくんなよ、レフター」

「ギャハ、出なきゃダルマだったろ?」

 

グシャッ──!

刃ごと右腕を握り潰し、さらに千切り取る。

爪先が伸び、クサナギの足と床を縫い付ける。

 

葬華の六翼が大きく広がり、空中へと跳び上がる。

長大な尾がしなり、固定されたクサナギを一閃。

 

「……初見殺しかよ。情けねぇな、俺……でも、まぁ、最期なんざこんなもんだ」

 

ズバン!!

 

落ちる首。崩れ落ちる身体。

葬華の実力が、完全に証明された瞬間だった。

 

「なに……今の……」

「嘘だろ……クサナギを……倒した……?」

マスコーダーとスナイプは言葉を失い、月面基地に再び静寂が訪れた。

 

「解析結果──あの左腕は脳無と同じ構成をしている……だけじゃない。セルドライバーとも酷似している? なんだ、あの“化け物”は……」

 

カタチは予想外すぎる分析結果に言葉を失う。

マスコーダーもスナイプも、同じように理解が追いつかない。

 

葬華は、落ちていたクサナギの首を拾い上げ、そのまま左手で叩き潰す。

さらに胸を抉り、心臓を握り潰す──明らかに過剰。だが彼女にとっては、それが“普通”らしい。表情一つ変えず、さらりと言う。

 

「これ、気になるだろ? 名前は左手についてるから“レフター”。意思を持つ脳無の義手型セルドライバーだ」

 

「……意思を持つ、脳無の…義手型の……セルドライバー?」

マスコーダーの声は、呆れと困惑が混ざっていた。

 

「そんなの想定してない……動物から作られるのがセルドライバーだろ? じゃあ可能……なのか? でも自立して動いてる? 自律して会話まで……高度すぎる……脳無要素があるから、あり得るのか?」

「バカな……そんな研究が進んでいたなんて……脳無とセルドライバーの融合なのか……それともセルドライバー型の脳無が別に存在するのか……」

 

三人の思考は混線し、まとまらない。

 

「そりゃそうよ。初お披露目だって書いてあったし、私だって驚いたわよ」

葬華は肩を竦める。

「レフターは近〜中距離用の個性をいくつも搭載してるし、ライフル形態で遠距離もいける。これがあれば勝てると思ったのに……月に監禁は反則だろ。てか、もうアンタいなくてもよくない?」

 

「……アンタが月面基地を壊す気見せたらどうすんのよ。なるべくなら残したいの」

 

「私はそんな馬鹿じゃない」

 

「知らないわよ」

 

「知られたくないわ」

 

「じゃあ言わないで」

 

「あん?」

 

作身と葬華の視線がぶつかり、火花が散る。

スナイプは面倒そうにため息を吐いた。

 

「はぁ……今は戦う気がないってことでいいな? なら、ここまでだ。マスコーダーは待機、俺は治療と報告に戻る」

左手で血塗れの右腕を抱えながら指示を出す。

 

「はい、先生。お気をつけて」

 

「あぁ、お前もな」

 

カタチの分身がスナイプの肩に乗り、転送で消える。

 

「なるほど……そうやって帰るのか。そりゃ戻ってこれないわけだ」

葬華が興味深そうにカタチを見る。

「なぁ、おチビちゃん、私に鞍替えしない?」

 

「僕は作身の個性だよ。寝返りなんてあり得ないね」

 

「言ってみただけ。……でもさ、ずっと地球での決着を待つのも暇だろ?」

 

「焦らないのね」

 

「アンタの言ってることが本当なら、どうにもできないし無駄になる。……嘘じゃないんでしょ?」

 

「もちろん」

 

「だったら体力温存一択。……あいつら、無事かなぁ」

 

「へぇ……心配なんだ。ヴィランのくせに仲間意識高いね」

 

「アンタはヒーローの割に低そう」

 

「やかましい! ちゃんと高いわ!」

 

「ギャハハ、仲ワルイな」

 

「「当たり前だ!」」

 

「てかさ、全員ここに“転送”できたら、それで勝ちじゃないの?」

 

「条件があるのよ。詳しくは言わないけど……ひとつだけ教える。近い将来、ここはタルタロス以上の収容所になる予定。今建設中。一定以上の凶悪犯は全員ここ行き」

 

「……マジでやめろ」

 

「じゃあヴィランやめろ」

 

「そっちが勝手に呼んでるだけだ」

 

「悪いことやめなさい」

 

「それを“悪”って決めつけんなよ」

 

「……“悪は栄えない”んじゃない。“悪だと栄えない”んだ。営み・平穏や発展を壊す理念を掲げた時点で捕縛対象。それが決めつけでもね」

 

「ふん、偉そうに」

 

「それ、返答になってないわよ」

 

「ちっ……地球での戦闘、ここで見れないの?」

 

「見れるわよ」

 

葬華が空間に手をかざすと、何もない空中に巨大な映像が浮かび上がる。

 

「……オーバーテクノロジーじゃん」

 

「その左手も十分オーバーテクノロジーでしょ」

 

「知らない、それ私の管轄じゃない」

 

「使ってんだから管轄だよ!」

 

「阿賀月が作ってくれたのよ。詳しくは知らない」

 

「阿賀月……ヴェット? どんな関係?」

 

「親友歴十年」

 

「シン…ユウ!?」

 

「あ、さてはアンタ……友達いないな?」

 

「う、うるさい! いるもん!」

 

「カタチは除外ね?」

 

「うぐっ……ちょっと疎遠だけど……いる、はず」

 

「親友は?」

 

「ぐぐぐ……」

 

「ギャハハ、ヤドぬしさまはクチがつよいな」

 

後ずさる作身。

 

──こうして、月面基地での戦闘は終わったが、舌戦はまだまだ続きそうだった。

 

 

 

◆ 対 トガヒミコ

ミルコ

麗日お茶子

蛙吹梅雨

小森希乃子(B組)

鱗飛龍(B組)

 

ワープ場所― 士傑高校に設置してある環境対応戦闘訓練所の砂漠ステージ

その中にある青白く輝くオアシスと上空に見える人工太陽が彼女達を照りつける。

 

「人工的な砂漠と人工的な太陽…贅沢すぎて嫉妬するです。むー?…お金かけるだけで、環境って作れるの?…まるで怪談です」

 

 

冷たい囁き、存在は感じるのにどこにいるのか分からない。

不気味な存在となった“怪異トガヒミコ”

 

本来ならば…だ。

ここは遮蔽物の無い砂漠

 

隠れる場所も薄暗さとも無縁

 

オアシスはあるが蛙吹が…ヤシの木や雑草には小森のキノコが生えて完全に陣取っている。

 

上空には鱗が龍化し逃さないと睨み、お茶子は砂を調整可能となった浮遊伝播にて浮遊させている

 

敵はトガヒミコだけではない。

数十名のヴィランもここにいる。

 

「ふざけた奴らだ!こんな無駄なもんに金かけやがって」

「もっと俺たちに金を配ればヴィランにならなかったのに!」

「俺たちがヴィラン活動することになったのはお前たちのせいだ!」

「そうだ!責任とりやがれ」

「「「そうだそうだーー!」」」

 

などと至極勝手な事をいって神経を逆撫でしてくる

ミルコは複数人を蹴り投げ、殴打し沈めている。そのヴィラン達の影に隠れながらトガヒミコはミスディレクションを仕掛けた。

 

背筋に、冷たいものを感じるミルコは振り返らない。

その瞬間、首が飛ぶ予感があったからだ。

 

だが…

 

「──舐めんなよ、ガキが!」

 

太陽を背に蹴り逆に踏み込み、正面から背面蹴撃を叩き込む。

しなやかな身のこなしでトガは回避するが空気を蹴る音が尋常ではない。

 

影は砂塵とともに飛び去る

 

トガヒミコは環境で圧倒的に不利な立場となっているが、それを感じさせない精神的な異常性を保っていた

 

「ひとーつ、ふたーつ…さーん、しー、ご…ふふふ、そろそろ命が割れる音、聴きたいなぁ」

 

そう言って仲間であるはずの1人のヴィランの首を飛ばす

 

「「「「「な!?」」」」」

 

突然のことに驚くが他のヴィランの動揺は無かった

むしろ

「あぁ、トガ様に撥ねられた…羨ましい…」

「最期はなんて声をかけられたのだろう」

「トガ様…なんて素敵な笑顔」

「我らもいつかヒミコ様の怪異の一部となりたい」

 

恍惚とした表情を見せていた。

 

 

「なんだコイツら…不気味っつーか、いや、マジでなんだ?」

「信者?まるでトガが教祖みたいな扱いじゃない?」

「殺されることに、まるで抵抗がなかったノコ、コレはマインドコントロールのこ?」

「ケロ…私たちへの理不尽な不満とトガヒミコへの狂信…嫌な組み合わせね、ケロロ」

 

わずか数分でこの集団の異常性を認識するヒーロー達

 

仮にトガ教とでも呼べば良いのか

 

「あーぁ、イズクさんと会いたかったなぁ…お茶子ちゃん、梅雨ちゃん…どうして、また邪魔するの?」

 

「言ったわよね?あなたの恋愛観は不幸を呼ぶわ、幸せになるのは貴方だけ」

「ケロケロ…相手を好きな気持ちを持つのは素敵な事よ、私はよくわからないから羨ましい部分もある…けど…苦しめる事は絶対に間違いよ」

 

「うん、分かってくれないのは、もう理解したよ。だからさ…言ったよね?もう邪魔しないでって」

 

3人の会話がヒートアップしそうになるがミルコが横槍を入れる。

「あー…テメェのこと、ある程度は聞いてる。言わせてもらうぜ…イチイチうるせぇ!私らに勝ってから好きにしろや!!今は、そんなこと、どーでもいいんだよ、さっさと全員制圧すんぞ!」

 

「ふぇ!?ミルコさん極論すぎちゃうかな!?」

「のここ!?」「ケロケロ!?」

「あっははは!」

 

学生達は戸惑っていたがミルコは流石のプロ。今すべきことを重点においた簡潔な方向性を示す。

 

勝たなければ意味がない、戦闘行為が始まれば、それ以外は終わった後に考えるべきだ、とはミルコの持論である。

 

「まずは、ぶちのめす!」

ミルコが怒鳴り、正面から数名のヴィランを制圧

上空から鱗が超音波で援護し

蛙吹がオアシスから超圧縮した水鉄砲を打ち込み

キノコがヴィランの身体にキノコを生やし

麗日が浮かせた砂を操り戦況を変化させる

 

トガヒミコを中心に襲いかかってくるヴィラン達を砂嵐で分断させる

 

「お茶子ちゃん、ナイス……けろ!」

 蛙吹梅雨が水棲生物のように身を沈め、目だけをギラリと光らせる。

 

砂を浮かせるお茶子の重力制御が、砂上での戦闘状況を左右している

 

はずだった。

 

「ワタシ…トガヒミコ…今、貴方の後ろにいるの」

 

呟きを聞いたのはミルコのみ

 

「知るかぁ!!」

と肉弾戦を仕掛ける

 

「うあああぁぁぁぁあ!!!」

トガの叫び声が聞こえる

 

 

吹き飛んできたのはミルコ

「ぐ!??」

「ミルコさん!?」

 

突然の出来事に驚きを隠せない

彼女を正面から吹き飛ばすなんて余程の猛者でなければ不可能

と知っているからだ

 

そして砂嵐をモノともせずに現れたのは

 

ギガントマキア

 

「馬鹿な!?」

「うそ!?」

「そんな事って!」

 

トガヒミコはマキアとなった

今この時から彼女の血液ストックが戦況を左右することとなる。

残量を知るものは彼女のみ。

 

更に

 

「イズクさん…殺される前の顔を見たい」

「イズクさん…あなたの死に顔を見たい」

「イズクさん…ワタシを幸せにして」

「イズクさん…貴方にお友達の“死”をプレゼントしたい」

「イズクさん…愛しています」

「イズクさん…大好きです」

「イズクさん…喜んでくれるかな」

「イズクさん…苦しんでくれるかな」

「イズクさん…死にたいって、思ってくれるかな」

「イズクさん…後悔してくれるかな」

「イズクさん…イズクさん…全てはあなたの思いを、心を、ワタシに向けるために…」

 

次々と現れる変身体

 

 

彼女はトゥワイスの個性を使った後に変身していた

そこにいるのは灰濁メンバー

 

トガヒミコ本人を筆頭に

 

死柄木葬華

トゥワイス

荼毘

Mr.コンプレス

睡魔

スピナー

マスキュラー

ムーンフィッシュ

ケンドー

ギガントマキア

 

そして

 

黒霧

 

「……楽しみだなぁ…」

 

皆、違う顔のはずなのに、笑い方がトガヒミコだと分かる不気味さを持っていた

 

「うわぁ!うわぁ!!話には聞いてたけど、こんなにやばい子だなんて」

「恋愛感情ってこじれるとこんなんになるノコ!?」

 

「そこら辺は実力あっても学生だな。似たようなヴィランは結構いるぜ?何人も捕まえたことがある。あとは実力の差だな、いい経験だと思っとけ」

 

 

 

鱗と小森がドン引きしているがミルコの経験談から実はただのマイノリティだと知り麗日と蛙吹も目を見開く。

 

冷静を保つための経験の差がここで出た瞬間だった

 

戦力差は絶望的と思われるがミルコは語る

 

「おい、言っとくけど、そんなにヤバい状況じゃねえからな?所詮トガヒミコは1人だし、あとは有象無象のトガ信者だ。私らで十分対応出来るから耳貸せや」

 

ミルコが切れた口の血を拭いながら説明する。

 

「……を………って、……なりゃ………ってなる……、………か?」

 

「え?そんな事で、ですか?」

「ケロ、ちょっと可哀想かも…」

「人として、それは…」

「ノコ!?そんな簡単な事で良いんですか?」

 

反応は2択、多数決で作戦決行

 

「決まったからには、思いっきりだ。いくぜ」

 

「「はい!」」

「「……はい」」

 

ミルコ主導で作戦開始

 

灰濁メンバーとトガ信者が多対一狙いでそれぞれに攻めてくる

 

そして、一定の距離に近づいた時に彼女達は声を張って、それぞれが言葉を放った。

 

「デクくんはもう、付き合ってる人いるよ」

「緑谷君はあなたのことをなんとも思ってないわ」

「緑谷さんは、あんたの顔も覚えないらしいノコ」

「緑谷にとって、あんたの代わりはいくらでもいるらしいぞ」

 

「嘘つくなぁ!!」

 

「あ、そのガキなら私が喰ったぜ?」

 

「「「「ふぇ!?!?」」」」

 

「……へ…ーー!!?!」

 

麗日・蛙吹・小森・鱗が先ほど心理学的に衝撃を受ける言葉をミルコに教えてもらい、それぞれが放った言葉だった。

 

対してトガは嘘だと言い切りつつも不安が残る心理状態

 

そこにミルコの大型爆弾発言が投下された

 

味方もまさかの台詞に一瞬戸惑う

 

その反応が拍車を掛けて本当かもと思わせた

その隙が決定打だった

 

「馬鹿が!ルナ・アーツ…兎身赫(としんかく)」

ミルコの眼球が赫く染まり瞳すら紅い

対して身体は白い兎毛に覆われる

 

変身した灰濁メンバーは個性を使う暇もなく蹴り倒される

 

ト ト ト ト ト

 

と、音だけ聞けば軽いがその威力とスピードは常識を逸していた

 

ギガントマキアは麗日の“荷重”で拘束、蛙吹が水鉄砲を大量に口に打ちムセされた

「う!?ごほ!ごほ!ごはぁ!!」

 

大量の水が気道に入った時の苦しみたるや、想像を絶するものがあり意識を失い溶ける。

鱗が残りのトガ信者を陸龍に変化しその剛腕で蹴散らし

小森の胞子が伸びてきたトガの爪糸すらもキノコまみれにして、その操作性を失わせた

 

「こんな…馬鹿げた方法で…ふざけないで!私はこんなところで負けていられない!こんな世の中、私の普通を!!」

 

叫ぶトガの頭にはミルコの足底が乗っていた、何とか言葉を繋ぎ、抵抗を試みる彼女に掛ける容赦は無い

 

「うっせ、生きて意識戻ったら聞いてやんよ、じゃあな」

 

ズドン!!

 

…バキ…

 

最後に嫌な音がする

 

沈黙が流れる

 

「私は甘くねぇ、覚えとけ」

 

それはトガヒミコに言ったのか、学生ヒーローに伝えたのか…

 

「………」

 

ただ彼女達のミルコを見る目が変わったのは確かだった

 

そして、ミルコは気にすることなく次の戦場を見据えていた

 

「おい、オペレーター!終わったぞ。次の戦場に送れ!!!」

 

まさに『勝ってから』なら話を聞くと言わんばかりの背中。

思うところはあるが、今はそれを口に出す時じゃない。

 

仲間のために、友達のために、ヒーローのために、市民のために

 

ズズズ…と目の前にワープゲートが開く。

 

今は…まだまだ戦う時だ。

 

 

◆ 対 マスキュラー

シェルム(ブラジルヒーロー)

尾白猿夫

瀬呂範太

峰田実

物間寧人(B組)

 

 

──ここは太平洋のど真ん中に浮かぶ、全長数キロに及ぶ巨大なメガフロート。

 元は海上空港とプラント施設、それにリゾート街区まで併設された多目的拠点だったが、今は戦火の中にある。

艶やかな白い滑走路も、青と銀で彩られたホテル群も、爆風と煙に呑まれて見る影もない。

それでも──この場所は選ばれた。理由は二つ。

 一つ、敵に全力を出させないため。施設を破壊すれば自分も海に沈む、その恐怖を意識させるため。

 二つ、完全隔離。どんな破壊も、どんな怪物も、海の果てならば被害は広がらない。

 

「ガララララァンッ!」

 鉄骨の壁が、金属悲鳴を上げながら弓なりに歪み、ついに破裂するように崩れた。

そこから這い出るのは──筋肉の化け物。

 

「ハァッ……ハァ……待たせたなァ、ヒーローども……!」

全身にびっしりと張り付く膨れ上がった筋肉。血管は怒りの炎のように脈動し、眼光は獣そのもの。

一歩踏み出すたび、浮体構造物であるはずの床が震え、海面まで振動が伝わる。

 

「貴様がマスキュラー……!」

シェルムが低く名を呼んだ。

ブラジル出身の水系ヒーロー。精悍な顔つきに人懐っこい笑みが似合うが、その笑みは今、緊張で引き締まっている。

 

「──おいおい、どれだけぶっ壊しゃ気が済むんだよ」

軽口を叩きながらも、両手はすでに水をまとっていた。シェルムの個性《水化》。

 自らの肉体を水へと変質させ、流動と衝撃吸収を自在に操る力だ。

 

「止めるぞ」

 尾白猿夫が叫び、既に定番となった全身尾毛に変化して前に躍り出る。

 

「今度こそ……勝つ!」

 

「単純なパワー勝負なら分が悪い。だけど……」

 瀬呂範太が腰の鉄球に手をかける。

 ビーーーー

と鉄球を何重にもテープでぐるぐる巻きにする。金属音が唸り、光反射して走る。

ブンブンと重い音をさせながら振り回す

「連携なら、勝ち目はある!」

 

「みんな、連携乱すなよ!」

 峰田実が歯を食いしばり、モギモギを構える。

「筋肉には負けねぇ!」

 

 「……やれやれ、気負いすぎだよ」

 物間寧人は皮肉を封じ、鋭い目でマスキュラーを射抜く。

 「合図は僕が出す。全員、呼吸を合わて」

 

「うおらあああああっ!!!」

マスキュラーが咆哮とともに地面を蹴る。その勢いは、台風の突風のよう。振り下ろされた拳が、滑走路をえぐり、海水が勢いよく吹き上がる。

 

「……来るぞ!」

シェルムは水化し、半身を波のように崩して衝撃を殺す。

だが、その威力にメガフロート全体が軋んだ。

 

「範太! 足止め!」

「了解!」

 瀬呂の鉄球付きの捻れたテープが両足に絡みつく──マスキュラーは筋肉をさらに膨張させ、強引に弾き飛ばそうとするが切れない。

「テープって捩ってコヨリにすると、スッゲー強いんだぜ?知らない?」

 

「そんなヒモ遊びで!!」

 

「じゃあ次はオイラだッ!」

峰田が前に出て粘着玉を投げつける。

しかし筋肉の鎧ではなく鉄板で受けられる

 

「テメー…来ると思ってたぜ。油断はしねぇ!相性が悪いからなぁ…ここで殺す!!」

逆に峰田が殴り飛ばされそうになる。

 

「させるか!」

背後から尾白が尻尾で峰田を引き戻す。

「立て直せ、まだだ!」

 

物間の声が飛ぶ。

「隙は必ずできる。繰り返せ、疲労させろ!」

 

物間はコピーしたワープで仲間を安全地帯に移動させ“滞空”の個性で上空から戦況を眺め指示を出す攻守の要となっている

 

5人は波状攻撃を繰り返すが、マスキュラーの膂力は衰えない。

むしろ、その筋肉はさらに膨張していく。

 

「ハハハハハハ!まだまだだァァ!!」

彼が全力を解放した瞬間、滑走路が亀裂を走り、海水が噴き上がった。

峰田が吹き飛ばされ、尾白の尻尾が半ばまで裂ける。

 

「ッ……!」

 シェルムはすかさず水化し、海水を操って尾白の落下を受け止めた。

「お前ら、もう一度態勢を立て直せ!」

 

尾白の全身尾毛とミルコ直伝の技をもってしてもマスキュラーは止まらず

峰田のモギモギの進化系、強制剥離のグレープジュース・スカッシュは警戒されている。

 

物間が即座に指示を出す。

「Mr.シェルム、環境を使って!足元を奪うんだ!」

 

「任せろ!」

シェルムが両手を海面に向ける。

次の瞬間、メガフロートの裂け目から大量の海水が噴き出し、マスキュラーの足首まで覆った。

 水流は渦を巻き、怪物の動きを鈍らせる。

 

「今だ!」

瀬呂の鉄球付きコヨリテープが再び閃き、今度は水で軟化した筋肉の隙間に食い込む。

「おらぁッ!」

峰田が粘着玉を連続投擲、全身を縛る粘性の網を作る。

 

「……決めるぞ!」

 尾白が渾身の跳躍で背後に回り、2本の尻尾でバランスを崩させる。

 

最後に、シェルムが全身を水化し、巨大な水の腕を形成する。

「沈めッ!!!」

その拳が、波濤とともにマスキュラーを叩きつけた。

 

「がぼ!?」

 

轟音。水しぶき。海に沈む巨体。

静寂が訪れ──ただ、海面に泡が上がる音だけが残った。

 

 「……やった、のか?」

 峰田が息を荒げて呟く。

 

物間は険しい顔で答える。

 「気を抜いてはダメだ。あいつは、簡単には沈まない…あと、済まないが僕はこの隙に一旦黒霧の再コピーに戻るよ」

 

ズズズと物間がワープで撤退する

 

それと同時に、海面の泡が不穏に増え始めた──。




次の更新はいつになるやろー
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