ヒーローのカタチ   作:サモア リナン

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第34話「それぞれの勝利」

◆ 対 トゥワイス

インフェルノ(ブラジルヒーロー)

ウォッシュ

上鳴電気

吹出漫我(B組)

塩崎茨(B組)

 

日本最大の洞窟

岩手県の安家洞(あっかどう)の中が戦闘場所に選ばれていた。

腕時計型セルドライバーは拘束された際に回収されているトゥワイス

その代わり彼が持っているのはヴェットが持ってきたと葬華から受け取った脳無型セルドライバーとは別のシン・セルドライバー[ボウイナイフ型]

付属されている個性は強力である事は明白、だが効果は不明。今までの経過からそれがどれほど恐ろしいものかは想像にできないことがまた恐ろしい…だが、それで攻め手を緩めるヒーロー達ではなかった。

トゥワイスの高笑いが洞窟全体に木霊し分身が次々と湧き出し、暗闇を埋め尽くしている

 

「──想定通り、分身は洞窟の幅までなら我々は対象できる!」」

インフェルノが唸り、口から熱線を放射する。

 

荊の蔦が天井から垂れ下がり、塩崎茨が大声で祈るように唱えた。

「森羅よ、此処を閉じよ!」

洞窟の狭い通路は茨でさらに区切られ、狭まられる。

分身の波が分断される。

 

「……洞窟の閉塞が、分身の“倍化”を縛るんですね!……『大地よ、我が敵を妨げる壁となれ、”ウォール”』!!」吹出漫我が床に右手をつけて左手に漫画を持つ。漫画に書いてある呪文を唱えると、まさに漫画と同じ効果が現れて通路を塞いだ。

 

「流石!吹出君の応用力が半端じゃないね」

ウォッシュが泡を噴き出す。

 

「空間が狭いから泡がすぐに充満する……増殖速度を落とせるぞ!」

そして上鳴電気が壁に放電、導線代わりの鉱石に電流が走り、奥に潜む本体の影が一瞬照らされる。

 

──洞窟を選んだ狙い、それは「トゥワイスの数を物理的に制限する」こと。

分身が拡がれない環境で、ヒーローたちは一斉に本体へと駆けた。

 

「くっそ!かんきょうを選ばれた!嫌な奴らだ……当たり前の事だろバカ、新しいナイフを使おうぜ」焦りながらトゥワイスが右手に持っているボウイナイフをみると……

まるで生き物のように肉へ根を張り、血管を黒く侵食していた

 

「えっ…なんだこれ…離れねぇ……!? 俺の……腕が、勝手に……!」

トゥワイスが叫ぶ。

刃と肉の境目は既に曖昧となり、腕全体が黒鉄の質感を帯びていく、時間が経てば経つほどその範囲は広がっていく

 

「……侵食?……武器と同化してるのか……」インフェルノが唸る。

 

トゥワイスの顔が恐怖に歪む。

「こんなの聞いてねぇ!…書いてなかったな!!

俺と一緒にナイフ増えるって聞いていただけなのに!こうなったら………頼む!お前ら、この腕、切ってくれ……!」

 

彼の周りには変身した灰濁メンバーが存在している。

全員が同じようにナイフを持ち侵食され泥化している。

 

そして1人に戻る…

その声音は本物の懇願にしか聞こえなかった。

 

一瞬、全員が迷う。罠かもしれない。だが、怯えと涙に濡れた表情は──虚構にしてはあまりにも人間的だった。

 

「ちっ──俺がやる」

インフェルノが息を吸い込む。炎が喉奥で絞られ、極細の熱線となって洞窟を貫いた。

 

「う──!!」

トゥワイスの絶叫と同時に、侵食された右腕が焼き切られる。

 

次の瞬間。

切り離されたはずのボウイナイフが翼を生やし、意思を持つかのように宙を翔けた。

それは迷わずトゥワイスの胸へ──心臓へと突き刺さった。

「ぐぁ……ッ!?」

 

 

「なに!」

「なっ!?」

「なんだ、ありゃ?」

「嫌な予感がする」

「ナイフ飛んでくるかも!?『仲間を守る壁“プロテクトフィールド”』」

ヒーロー全員に周囲を囲む透明な壁が展開される

 

ヒーロー達に限らず洞窟全体が震えたように感じた

だが、予想とは違いトゥワイスの肉体がうねり、筋肉と皮膚が破裂する。

 

「……膨らんでる……!?」吹出が後ずさる。

 

トゥワイスの体が二倍に肥大化し──次の瞬間、さらに二倍。

衣服は粉砕され、理性の光は眼から消え失せ、肉塊が通路を塞ぎながら広がっていく。

 

「彼の“2倍”が……変化した…!?」塩崎が絶望に震えた。

 

轟音と肉の圧迫で、安家洞はもはや逃げ場を失った巨大な臓腑のようだった。

 

「潰されるぞ!出口に急ぐぞッ!」インフェルノが怒鳴る。

 

「インターバルのせいで呪文が使えない!?」

吹出が焦り

「ひ!こっちに来る!?」

塩崎が恐怖しすくむ

 

そんな2人の手を取り走り出す上鳴

「来い!全力で逃げるぞ!!」

 

ここで戦闘経験の差が表れる

 

ヒーローと生徒たちが走る。

だが、あまりにも早い増殖、後方でウォッシュが巨大な肉の塊に捕まり、壁際へ押し潰されかけていた。

 

「「「「ウォッシュ(さん)!!!」」」」

 

「──こっちを向くな、行けえぇぇ!!!」

泡が轟音と共に噴き出す。ウォッシュの身体そのものが膨張し、無数の水泡と流水へと変わっていく。

 

「ウォッシュさん!!」上鳴が振り返る。

だがウォッシュは首を横に振り、泡に乗せて仲間たちを一気に出口へ押し流す。

 

「僕のの仕事は……“救う”ことだ……!」

 

泡は肉を圧迫し、洞窟全体に流水の奔流が生まれる。

学生もヒーローも、強制的に出口へと押し出されていく。

 

最後に残ったのは、自分個性で生まれた泡に呑まれていくウォッシュの姿。

洗濯機型のコスチュームがひしゃげ、砕け、

それでも彼は親指を立ててみせ──消失した。

 

「うわあああああああ!!」吹出と塩崎が泣き叫ぶ。

涙を拭う暇もなく、インフェルノは歯を食いしばる。

 

背後では、安家洞を肉が埋め尽くし、ウォッシュの流水によってかろうじて出口手前で停滞している。

だが、それも永遠には保たない。

 

外に出た瞬間、待機していた警察車両が急行してきた。

降り立ったのは、公安の塚内。

 

「ワープ個性をペーストさせてもらった。もう……俺たちができる事はない、本部に行きましょう」

塚内が険しい声を発する。

「ここは封鎖だ。すぐに封印班を送ってもらう!」

 

ヒーローと学生たちは肩を寄せ合い、涙と汗に濡れながらうなずいた。

背後の洞窟からはなおも肉の膨張音が響き続けている──。

 

ヒーローと生徒たちの胸を覆うのは、解放感ではなく圧倒的な喪失感だった。

 

「……だれか…うそだと言ってくれ……」

吹出漫我は膝をつき、ぐしゃぐしゃのスケッチ帳を握りしめる。

持っていた漫画は濡れて使える状態ではない

 

「ウォッシュさん……最後まで……」

塩崎茨は両手を組み、震える声で祈りを捧げる。

「どうか……主の御許で……安らかに……」

 

上鳴は拳を壁に叩きつけた。

「くそッ……! オレ、もっと出力上げれば……! なんで……ッ!」

彼の肩をインフェルノが無言で掴む。炎を纏う掌は震えていた。

 

吹出がかすれた声で言う。

「……親指、立ててましたよね……最後まで。あの人……絶対、僕らを信じて……」

 

誰も返せなかった。

ただ、全員が胸の奥で同じ答えを抱いていた。──彼は本物のヒーローだった。

 

その後、封印班がワープで現れて処置を行う。

「いつまで保つか、分かりません」

 

その言葉が事の大きさを物語っていた

 

◆ 対 スピナー

シンリンカムイ

天喰環

飯田天哉

轟焦凍

鉄哲徹鐵(B組)

小大唯(B組)

 

ワープ場所:富士山 標高3700m

 

烈風が吹き荒ぶ山頂。爬虫類の鱗を持つスピナーの額に、珍しく汗が滲んでいた。

「ゼェ……ハァ……くそ、身体が重い……!」

 

「狙い通り……!」轟焦凍が低く呟き、氷結でさらに温度を落とす。

「高地の薄い酸素……爬虫類の体は冷えに弱い」

 

シンリンカムイの樹が岩場から伸び、動きを止める檻を形成。

その隙に天喰環が翼で急降下し、タコ足と甲殻で拘束を試みる。

 

「逃げ場はないッ!」飯田天哉がエンジンを轟かせて直線突撃、巨刀を弾き飛ばす。

 

鉄哲徹鐵が豪快に笑う。「体力勝負だァ! お前が先にへばるッ!」

正面からぶつかり合い、互いに弾かれるもスピナーは肩で息をしていた。

 

濃霧が立ち込める──小大唯の個性だ。

「休む暇は与えません!」

 

投石し任意のタイミングで巨大化させる。

それだけでスピナーには大きな脅威となり更に体力を奪う。

 

──この場所を選んだ狙い、それは「スピナーの体力を削り切る」こと。

酸素も温度も不利な環境で、スピナーは次第に膝をついていく。

 

烈風が吹き荒ぶ山頂、気温は氷点下。

爬虫類の血を宿すスピナーの呼吸が早くなる。

それでも彼は獣じみた声で吠えた。

 

「……ヒーロー共ッ!簡単に終わると思うなよ!」

 

右手には刀型シン・セルドライバー[トカゲ丸]。

透明な刃は、光の角度でのみ姿を現す。

そして周囲には六つの浮遊刃──半透明の“牙”が旋回し、切先を地へ突き立てるように待機していた。

 

左手にはリボルバー型[スイウチ]。

そのシリンダーには、浮遊刃を弾丸に変換する機構が内蔵されている。

 

「俺の血と、俺の命を削ってもッ! てめえらを八つ裂きにしてやる!」

 

銃口が轟焦凍を捉えた瞬間──。

 

 

轟の氷壁が前に展開された。

だが次の瞬間、乾いた銃声。

透明な“弾”が氷を容易く貫通し、轟の肩口を裂いた。

 

「……ッぐ!」血が雪を染める。

 

「貫通した!?」飯田が声を荒げる。

 

「刃じゃなく、“貫通弾”になってるのか…!」シンリンカムイが分析する間もなく、再び銃声。

大小が持ってきた鉄板いくつも取り出して巨大化、弾道を逸らし防御するが、かすめただけで鋭い裂傷が刻まれた。

 

「……見えない刃が、弾丸として飛んでくる……!」天喰環が歯を食いしばる。

 

 

「隙を作るッ!」鉄哲徹鐵が豪快に踏み込み、鋼鉄化した拳で斬り結ぶ。

透明な刀身が火花を散らし、弾かれた。

「おぉッ! 重ぇなコラァ!」

 

スピナーの腕は震えている。

だが刃は確かに重く、速い。

「はぁ……はぁ……ッ、てめえらの“正義”なんざ、俺の刃で切り裂いてやるッ!」

 

飯田が側面から突撃し、エンジンの蹴りで銃を逸らす。

だがスピナーは浮遊刃を操作し、六つの透明な剣を一斉に射出した。

 

「しまっ──!」轟の氷壁が立ち塞がるが、弾は氷を砕いて雨霰のように降り注ぐ。

天喰環が羽と甲殻で仲間を庇い、血を散らした。

 

「ぐッ……だが、まだ動ける!」

 

 

 

小大唯がスリングで投石して細やかに動いていく

「もう少しで……… この高さなら、爬虫類の体は持たないはず……!」

 

「くそッ……! 息が……吸えねえ……!」

スピナーの動きが僅かに鈍る。

だが、その刃は止まらない。

 

「舐めんなよォッ!!」

トカゲ丸が閃き、透明な刃が樹を切り裂く。

シンリンカムイの拘束樹木が雪崩のように倒れ込む。

 

「力はもう落ちてる……! 今のうちに押し切れッ!」轟が叫び、氷結で地面ごとスピナーを封じようとする。

だがリボルバーが再び火を吹き、氷の檻に穴が穿たれた。

 

「一撃……一撃で充分だ……!」

スピナーは血を吐きながらも、なお笑う。

 

 

 

「……終わらせるッ!」天喰環が翼を広げ急降下する。

タコ足で拘束し、甲殻の鎌で刃を受け止め、最後に鳥の嘴でスピナーの肩に噛みついた。

 

「ぐあッ!」スピナーが呻く。

 

その隙に飯田が正面から疾走、轟が氷で足場を固め、鉄哲が拳を叩き込む。

六つの浮遊刃は弾かれて空へ飛び、雪煙に紛れた。

 

「……もう……動けねえだろ……!」鉄哲が息を切らしながら睨みつける。

 

スピナーは膝をつき、リボルバーを取り落とした。

荒い呼吸。鱗に霜が張り付き、指先が震えている。

 

「クソッ……! こんな場所じゃなけりゃ……俺は……!」

そのまま、雪に崩れ落ちた。

 

氷と樹木に拘束されたスピナーは、かすかに呻き声を上げながらも意識を手放した。

その周囲には──肉眼ではかろうじて見える、薄い光の刃が地に突き立っている。

血の気を失ったスピナーの体から、それ以上は生成されないようだ。

 

「……これが、“トカゲ丸”……」轟焦凍は鋭い視線で残滓を見つめる。

「刀身が無いように見えて……だが確かに斬撃は届いていた」

腕には浅いが鮮やかな切り傷が刻まれている。氷で即座に止血していなければ、もっと深く入っていたはずだ。

 

「しかも……リボルバー型、“スイウチ”。あれで刃を弾にして撃ち出せるなんて……」

天喰環は翼を畳み、肩で荒く息をついた。甲殻の一部が欠け、体から血が滲んでいる。

「正面で受けてたら……確実に死んでた」

 

鉄哲は拳を握ったまま、苦笑に近い吐息を漏らす。

「……正直、オレでも見切れねェとこあった……! 全身鉄にしてなきゃ、バラバラだった……」

 

飯田は崩れ落ちそうな膝を叩きつけて支えながら言った。

「……高速機動で間合いを崩していなければ、仲間を守れなかった。だが……それでも……何度も紙一重だった……!」

額から汗が滴り、目元は強張っていた。

 

小大唯は自分の霧を収めながら、唇を噛んでいた。

「……見えにくい刃って……想像以上に、心を削るんですね、見えないって割り切ることも出来ないから“恐怖”を植え付けられました……」

声が震え、両手も小刻みに揺れていた。

 

 

 

烈風の中で、全員が同じ思いに至る。

 

──ここが高地でなければ。

──酸素が濃く、気温が温暖な地上で戦っていたなら。

 

「……間違いなく、俺たちは……負けていた」轟が低く呟いた。

 

その言葉に誰も反論できない。

全員が身体の傷よりも深く、心の奥に冷たいものを刻まれていた。

 

スピナーはただのヴィランではなかった。

シン・セルドライバーという異質の力を携え、そして本人の戦闘経験も相まって──本来なら、到底敵わない相手。

 

ギリギリで掴んだ勝利の余韻は、達成感ではなく、恐怖と実感を伴って彼らを覆っていた。

 

氷と雪に縛られたスピナーは、荒い息をつきながらも、それ以上抵抗は見せなかった。

落としたトカゲ丸もスイウチも回収され、両腕はシンリンカムイの枝に固く縛られている。

 

「……終わりだ、スピナー」シンリンカムイが告げる。

 

だが彼は目を閉じ、苦笑を浮かべた。

「……あぁ、分かってる。負けは負けだ」

 

予想外の潔さに、一同が疑問に思う。

だがスピナーはすぐに、細めた眼でヒーロー達を見返した。

 

「だがな……仲間の居場所や作戦は売らねえ。俺の口からは出てこない」

 

天喰環が険しい表情で問いかける。

「ならば、なぜ大人しく捕まる……?」

 

「交渉だよ」

スピナーは静かに答える。

「情報が必要になったら……小出しにする。情報料は情報ってだけだ。それから、今の全体戦況がどうなってるか……映像も見せろ。俺は“仲間”を捨てねえ。裏切る気もない。ただ……知りたいんだ。奴らがまだ立ってるかどうか」

 

小大唯がかすれた声で呟いた。

「……仲間想い、なんですね……」

 

「当たり前だろ」スピナーは肩で笑う。

「見た目だけで“怪物”呼ばわりされ……俺を受け入れてくれたのは、あいつらだけだったんだ。だから、どれだけ追い詰められても……仲間を売るような真似はしねえ」

 

その声音に偽りはなかった。

 

 

鉄哲が歯を食いしばり、拳を握る。

「……もしお前が“敵”じゃなけりゃなァ……! 一緒にメシ食えたかもな」

 

轟は黙して目を伏せ、飯田は眉間に皺を寄せる。

シンリンカムイは渋い顔をした。

「……お前みたいな奴が、“反体制”の旗印になっちまうのが……一番厄介なんだ」

 

富士山の烈風の中、彼らは理解した。

スピナーという存在そのものが、“個性主義”という社会の矛盾を突きつけているのだと。

 

仲間を売らず、誇りを失わず、それでも「負け」を受け入れたその姿は──。

もし立場が違えば、と心のどこかで思わされずにはいられなかった。

 

 

◆ 対 ケンドー

ブリティッシュ・ウォーカー(イギリスヒーロー)

波動ねじれ

切島鋭児郎

佐藤力道

円場硬成(B組)

 

戦闘場所:東京都内の某所の巨大地下闘技場跡地

 

 

リングを叩き割るケンドー拳藤の豪腕。

だが、その周囲には深い堀が穿たれていた。

 

「……逃げられないように設計されているな」ブリティッシュ・ウォーカーが小さく頷く。

地形の選定はヒーロー側の策だった。

 

「真正面から制圧あるのみ!」切島鋭児郎が硬化で立ちはだかる。

 

波動ねじれが螺旋のエネルギー波を撃ち、リングの中央へ押し戻す。

「リングから出られないなら、封じ込めるのも容易い!」

 

佐藤力道が全身に力を漲らせ、拳と拳のぶつかり合い。

「力勝負だ、負けねえ!」

 

円場硬成が回転させた瓦礫を盾にして追撃を防ぐ。

「リングの外に行けない……逃げ場はゼロだ!」

 

──この闘技場を選んだ狙い、それは「堀で退路を塞ぎ、逃走を許さない」こと。

豪腕のケンドーでさえ、囲まれたリングの中で徐々に押し込まれていく。

 

リング内の空気が振動する。

豪腕のケンドーが床を叩き割るたび、深い堀の縁にかすめた土砂が崩れ、ヒーローたちは間一髪で踏みとどまる。

 

「まだ力が残ってるぞ!」

ケンドーが吠え、振るう拳は衝撃波となって壁にぶつかる。

ブリティッシュ・ウォーカーが冷静に距離を詰める。

「集中を切らすな……!」

 

「テメーとは縁があるなぁ!キリシマ!!」

「覚えてもらって何よりだぜ!また負かしてやるよ」

 

「一体一でやろう!!」

「テメェが罪を償ったらなぁ!!!!」

 

切島が硬化を高速で連続展開、ケンドーと拳を合わせる。

 

お互い一度戦った者には負けるつもりはない。

 

佐藤力道が全力で突撃し、回転する瓦礫を避けながら拳を叩き込む。

「切島だけにやらせるわけねぇだろッ!」

 

 

波動ねじれがリング中央に渦巻くエネルギー波を発生させ、ケンドーの攻撃を逸らす。

「今だ!」円場が叫ぶ。瓦礫をリング上に広げ、ケンドーの足元をさらに制限。

 

ケンドーは怒りの咆哮とともに連打を放つ。

だがヒーローたちは、互いに間合いを補完し合いながら攻撃を受け流す。

「全員、集中しろ……! 一発でも隙を見せたら……!」ブリティッシュ・ウォーカーが指示を飛ばす。

 

リング中央で押し込まれたケンドーは、巨大な拳で最後の衝撃波を繰り出す。

しかし切島が硬化で受け止め、佐藤と波動ねじれが横から抑え込む。

円場が全身を回転させ、リングの周囲の瓦礫を盾に変えて、動きを完全に封じる。

 

「……これ以上は無理か……!」ケンドーの息が荒くなる。

地面に叩きつける力が弱まり、豪腕の破壊力も鈍る。

ブリティッシュ・ウォーカーが慎重に距離を詰める。

 

──堀で逃げ道を塞ぎ、リング上で連携攻撃を重ねた結果。

ついにケンドーは立ち上がれなくなり、リングの中央で膝をつく。

 

「…………ちっ…負けたか……」

豪腕の力を振り絞るように拳を地面に叩きつけたが、これ以上の反撃は不可能だった。

 

ヒーローたちは互いに息を荒げ、汗と傷を押さえながらも確かに勝利を実感する。

だが、ケンドーの目を見た者は知る。

 

「自分の個性だけ使ってあの強さ…セルドライバーを、使われていたら負けていたかもしれない」

 

 

リングの中央で重く呼吸を整えるケンドー。

ヒーロー側も体力の限界まで追い込まれており、この戦いも「制限された環境による勝利」であることを痛感した。

 

 

ブリティッシュ・ウォーカーが深呼吸して呟く。

「……もし、外に出て逃げ回れる環境だったら、俺たちはどうなっていたか……」

切島も額の汗を拭いながら頷く。

「油断ならねえ……制圧するだけでも命がけだ」

 

佐藤力道が力強く拳を握り直す。

「でも……勝ったんだ。逃げ場を封じたからだ!」

 

地下闘技場の天井から差す光が、リング中央の静寂を照らす。

豪腕ケンドーはまだ悔しげに唇を噛みしめている。

ヒーローたちは互いに目を合わせ、安堵と戦慄が入り混じった表情を浮かべた。

 

──こうして、三つの戦場の一つ、ケンドー戦もまた、ヒーローたちの冷静な戦略と地形利用によって制圧されたのた。

 

そして…

 

………ズズズ

 

「皆、勝ってくれてありがとう…休ませたい所申し訳ないが、すぐに救援に行って欲しい、まずは本部に送るよ」

物間が戦況が良くない事を伝えに来た

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