ヒーローのカタチ   作:サモア リナン

4 / 42
第4話:「わたしとマスコットの現場戦」

 

「バカな……こいつ、なんで死なねぇ!?」

 

「先輩、危ない!」

 

鋭く響いた銃声と罵声。

瓦礫の向こうで、黒フードのヴィランが拳銃を乱射していた。

撃たれていたのは、雄英高校の女子生徒――型形 作身(かたがた つくみ)。

 

 

 

銃弾は確かに命中していた。だが。

 

 

 

「ヒーローコスチューム、なめんなよ……っ!」

 

 

 

作身の肩を撃ち抜いた弾丸は、コスチュームの中で潰れていた。

特殊繊維――銃弾すら貫通しない、高性能素材。

……ただし、衝撃はそれなりにあるし、防御だけで攻撃力も拘束力もない、純粋な防護服だ。

 

 

 

「っ、っく……なんでアイテム、持ってないの……わたし!」

 

 

 

ポーチは空。

“ダウンロードできるから”――それが作身の考えだった。

だが、今はダウンロード封鎖中。支給も一時停止中。素の自分で戦わなければならない。

 

「作身、そろそろ……やる?」

 

 

ぽふ、と浮かぶ。

 

作身の隣にいたのは、ぬいぐるみサイズの存在――カタチ。

ちょこんと座っているだけだが、この子には個性がある。

 

「うん。お願い、カタチ」

 

 

 

「増殖、開始」

 

 

 

瞬間。

 

 

 

「……っ!?」

 

 

 

「なっ、なんだお前らッ!?」

 

 

 

ヴィランの視界が、一気に埋まる。

カタチが――一気に十体に増えていた。

 

 

 

「ぬいぐるみが! なに!? なんでそんなに!?」

 

 

 

「撃て撃て!!」

 

 

 

パニックに陥った銃持ちのヴィランが、手当たり次第に弾をばら撒く。

しかし当たったところで、カタチはただのマスコット。痛くもなければ、戦闘力もない。

 

 

 

「そっち行ったぞ!カッター出せ!」

 

 

 

もう一人のヴィランが前に出る。

両手の指先が、ジャキン、と鋭いカッターの刃へと変化。

そのままカタチを切り裂こうと――

 

「こっちだってば!」

 

作身が横合いから飛び出した。

低く構え、足元へと飛び込む――

 

 

 

「足元が、がら空きだよ!」

 

 

 

カッターの男の膝を両足で蹴り払う。バランスを崩したその顔面に、

 

 

 

「……気合、入れろわたし!」

 

 

 

渾身の肘打ちが叩き込まれた!

 

 

 

「ぐ、あっ……!」

 

 

 

ガラガラッと崩れる瓦礫。そこに巻き込むようにして男を地面に押し倒し――カタチが次々にのしかかる。

 

 

 

「もこもこアタック、効果あり」

 

 

 

「ありがとうカタチ! まだ一人!」

 

 

 

振り返った先。銃のヴィランは明らかに焦っていた。

 

 

 

「この……ガキがぁ…!」

 

 

 

「私、“ガキ”じゃない!」

 

 

 

作身は走る。

間を縫うように、十数体のカタチが次々にヴィランの視界を塞ぐ。

引き金を引くも、当たるのはカタチだけ。

 

 

 

「ふざけんなぁああ!!」

 

 

 

「ふざけてないってばああ!!」

 

 

 

飛び蹴り――ではなく、足場にしてヴィランの胸元を踏みつけ、

そのまま首筋へ手刀を落とす!

 

 

 

「……っが、……!?」

 

 

 

ばたり。銃を手放し、ヴィランは沈んだ。

 

 

 

「……はぁ、はぁ……終わり、だよね?」

 

 

「すごい……」

 

芦戸ちゃんがぼーっとしてる。

 

瓦礫の静寂の中で、作身はようやく肩の力を抜いた。

ゼェゼェと荒い呼吸が止まらない。でも、立っている。自分の足で。

 

 

 

「……装備、ないと、ほんとダメだね……」

 

 

 

思わずつぶやいた言葉は、皮肉でもなんでもない。

 

ただの事実だ。

 

 

 

「今まで、カタチがいればなんとかなるって思ってた。

“ダウンロードで出せばいいや”って思ってた。

……でも、今は――」

 

 

 

「装備も訓練も、もっとちゃんとしないと」

 

 

 

カタチの一体が、作身の足元にぴょこんと乗った。

 

 

 

「そうしよう。作身は、かっこいいけど、ちょっと準備が足りない」

 

 

 

「う……っ。耳が痛い!」

 

 

 

でも――その通りだった。

自分の甘さと、カタチの助け。

そして、ヒーローの“責任”。

 

 

 

「じゃあ、次のダウンロードには……捕縛テープ、閃光弾、スモーク……あと、電撃手袋とかも……!」

 

 

「欲張り」

 

「備えあれば憂いなしって言うでしょ!」

 

 

 

作身は笑う。

 

 

 

その笑顔の横で、マスコットたちがずらりと並び、誇らしげに敬礼していた。

 

 

 

――型形作身、現場戦、無事終了。次回から、少しだけ装備が増える予定。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。