ヒーローのカタチ   作:サモア リナン

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題名からも分かるように決着です。

一応、次回最終回の予定です


第41話「混沌と混濁の中での決着」

vs若AFO

 

“無”の剣。

“無”の盾。

“無”の弾。

 

触れれば消される個性《クリア》は、あらゆる形へと変化する。

環境に応じて自在に武器へ姿を変えるその力は、誰も手を出せない暴威となっていた。陸・海・空――戦場がどこであろうと、4対1の局面は常に若AFOに傾いていた。

 

彼らが今も生き延びているのは、緑谷の危機察知と爆豪の観察眼・予測能力が大きい。青山は緑谷の「やばい」と思った表情を察して動き、轟は爆豪の動きを予測して何とか《クリア》を避け続けていた。

 

それでも、少しずつではあるが確実に押されていく。理由は単純――疲労だ。

身体的にも精神的にも、限界は目前だった。

 

「はぁ…はぁ…ぐッ、守るんだ……託されたモノを!!」

「ふ、ふざけんな……こんな所で……俺はァァ……ナンバーワンに……!」

「ヒィ…ヒィ…げ、限界まで……粘るんだ、僕は……真の、ヒーローに……!」

 

轟だけは途中参加のため若干の余力を残していたが、それも時間の問題。

 

「んぐッ……くそ……皆、こっちに!!!」

 

――ギイイイィイイン!

 

空を覆うほどの巨大な零炎が迸る。

 

温度のない炎――故に零炎。

冷えない氷、燃えぬ炎という矛盾の現象は、本来ならば対処困難な属性。

だがそれすら、《クリア》に触れれば一瞬で消失する。

 

「……時間稼ぎにもなんねぇ……」

 

それでも仲間の足場や視界を遮るぐらいはできた。

だが、それだけだった。

 

「はっはっは、珍しい個性だが……それだけだ。大したことはないな。ほら、俺はここだぞ」

「はやっ……!?」

 

――ドゴォォ!!

 

若AFOは《クリア》を一旦解除し、身体強化系の個性へ移行。

空中を超スピードで翔け、轟の鳩尾へ渾身の一撃を叩き込む。

 

「がはぁ……!」

 

――バリイィィィン……!

 

何かが砕ける音が響いた。

 

「っ……!」

吹き飛ばされる轟。しかし氷と炎の翼をはためかせ、何とか空中で体勢を整える。

 

「クソ……《燐》が一発で……。なのに、すげー痛ぇ……。アイツら、こんなん相手にしてたのかよ……」

 

口から血が滲む。内臓を痛めた証拠だ。轟は改めてAFOの化け物ぶりを思い知らされ、これまで相手をしてきた三人に心から感嘆する。

 

対してAFOは――。

「ん?何か固いモノに当たったな……そんなベタな助かり方があるのかよ」

頭を掻きながらため息をついている。

 

轟が助かったのは、《燐》を展開していたからだった。

あれはただの模様ではない。最硬度で心臓を護る盾。さらに空気中の熱エネルギーを集め続け、凝縮して溢れ出した冷気と炎気を利用して戦う――それが本来の使い方。

 

……その《燐》を砕かれたのだ。

 

「ふむ、次はどう凌ぐ?」

 

AFOは《クリア》を再展開。弓矢状とし、4人を一気に貫かんと放つ。

 

余りにも間が悪かった。

AFOの意識が轟に向いた一瞬、3人とも気を抜いたのだ。

 

「「「あ……」」」

「やばい!」

 

助けようにも距離が開きすぎている。

このままでは3人は死ぬ。

 

轟が動き出す――が、自分にも矢が迫っていることに気付く。

 

「あ……」

(オレも……死ぬ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死なせるもんかあぁぁぁぁ!!!」

 

――ギュアン!!!

 

マスコーダーが青白く光り、3倍以上の能力を引き出す《VRED(ヴレッド)》を起動。全速力で空を駆ける。

右腰には愛砲《ディアッカ》を携え、速度重視のフラクタで4人を救出した。

 

「マジで、危なかったーーー!!」

 

「「「先輩!?」」」

「おせぇ……」

 

「おや?次は君が来るのか……面白い。何を見せてくれるのかな?」

AFOが《クリア》を数百発の銃弾に変え、マスコーダーを狙う。

 

「オペレーターから話は聞いてた!クリアとか何とか、よく分かんないけど――形があるなら、なんとかなるでしょ!ってことで!よろしく、《エルクレス》!カタチ!」

 

愛砲《ディアッカ》を構え、叫ぶ。

 

――ガッシャン!!

 

シリンダーを送り込み、照準を合わせる。周囲には31機のフラクタが集まった。ここまでが一瞬にも満たない出来事。

 

『マスコーダー……“何とかなる”とは?』

「ごめんね、エルクレス。作身って、こういうところあるんだよ」

『……理解しました』

「ま、何とかなりそうなんだけどねぇ!!」

『あなたも大概ですね』

 

救助に使ったフラクタ以外の31機を《ディアッカ》とリンクさせる。

 

『はぁ…では、こちらをどうぞ……1年A組のモジュールです、どなたを参考にするかはお任せします』

「いいねぇ、やっちゃうよぉ!各フラクタに装填!

 

――グラビティロック!

――ヘルスプレッダ!

――スカイシェイカー!

――アンチヴェイパー!

――ドリルクラスト!

――サンダーバランサー!

――グラヴリリース!

――フェザーストームブレイカー!

――ビーストロッカー!

――ディメンションクラッカー!

――スウォームディフューザー!

 

次はA組モジュール!

 

《緑谷モジュール》フルカウル・スマッシュ・バレット!

《爆豪モジュール》ヘルカイザー・カタストロブラスト!

《轟モジュール》大氷紅蓮・獄海豪一!

《麗日モジュール》ゼログラビティトラクター!

《切島モジュール》アンブレイカブルインパクト!

《飯田モジュール》レシプロ・ターボ・バースト!

《芦戸モジュール》アシッドブラックイレイザー!

《常闇モジュール》ダークアビスリーパー(極)!

《八百万モジュール)アーセナルオードナンス!

《上鳴モジュール》ボルトジェノサイダー!

《峰田モジュール》ビッグ・モギ・バインドクラッシャー!

《砂藤モジュール》シュガーフィストブレイカー!

《葉隠モジュール》ステルスインフィルレーター!

《口田モジュール》アニマルドミネイター!

《障子モジュール》マルチアームデストロイヤー!

《耳朗モジュール》ソニックレゾナイザー!

《瀬呂モジュール》テープバインドストーム!

《尾白モジュール》テイルハザードスイング!

《蛙吹モジュール》アシッドリープクラッシャー!

《青山モジュール》

キラキラキラ!星降りの光束〜それはまるで流星のような美しさ〜

 

装填完了……カウントダウン開始!オールグリーンだよ!!

3……2……1……!!」

 

ほぼ同時に、作身も準備を終える。

 

「マス・デバイス起動!

戦闘用ユニット《MAS-X01》から《MAS-XX0020》を展開!

コードカウント:ギア・EX・リミットブレイクVerⅣ!

VRED(ヴレッド)重複起動!!

プラズマエネルギー収束弾、装填確認!

ツインアビリティ・シグナル解放!!

オーバーリミットスタイルへ強制置換!!!

インサイト確認完了!!

 

いっくよ――!!

 

シン・ニュートリノ・ガン・ブラスター……!」

「「発射ああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

『全部使うんですか!?

詰め込みすぎです!!!!』

 

作身とカタチの最大・最多・最高火力に、エルクレスが思わずツッコミを入れる。

 

 

作戦名――【コレだけ詰め込めばどれかは効くでしょ】。

 

 

 

同時に仲間たちも総攻撃準備が終わる。

 

緑谷がワン・フォー・オール・フルカウル150%。十本の黒鞭に“加速”と“発勁”を重ね、威力を増強。

質量を持った煙幕を浮遊で固定し、力のブレを防ぎ、最大効率で振り抜く。さらに危機察知で「避けられること」を危機と定義し、逃げ場を予測。

 

十本の強化された黒鞭すべてが必中の軌跡を描いた。

「追撃します!

O・F・A150%――リミットブレイク・テンフォールド・スラッシャーーー!!!」

 

 

爆豪が両手を合わせ、そこに全身の汗を凝縮させる。ゴポゴポと泡立ち、ギュアァ!!と爆発直前のように波打つ炎球が姿を現す。

身体中の水分が掌に集まったかのような、超高密度の熱量。

「爆ぜろやぁ!!テメェの時代は終わりだ……逝けぇぇ!!

オブリタレイト・ジ・リジェスター!!!」

 

直径が身の丈を超える巨大な炎球――小さな太陽の如きそれは、《無》すら焼き払わんと超高速で打ち出される。

 

 

青山は腹部の“制御盤”を外し、捨て去る。

ギイイィイイン……!

その光は発するためではない。周囲の光を吸い取り、臨界点まで収束・凝縮していく。

 

「当たるから消される……なら!極小で極彩色の弾を多数放てば……いつか、どれかは当たるんじゃないかな!?

これが僕のラストナンバー――そして、ダンス・ア・ロング・ショー!!

 

プリズミック・レ⤴︎・ヴォ⤵︎・リュ→・ショォ↗︎↗︎ン!!!」

 

ピピピピピピピピピピーー!!!

豆粒以下の超高火力粒子弾が、極彩色に煌めきながら無数に射出された。

 

 

轟は切り札を切る。

「アニキ……アンタがオヤジと世界を殺そうとした技で……俺は世界を救うよ」

壊れた荼毘のベルトに手をかける。……カチン、と意味のない小さな音。だがそれが焦凍に勇気を与えた。

 

「変身……《氷天化・瑞花と鱗》」

 

――キン!!

 

全身が氷そのものへと変わり、身体が透ける。再現するのは、世界を変えた“あの”大爆発の原型。

荼毘の技《天灯・堕冴》。

 

天へ向けて氷の華が咲き、茎状のエネルギー波がAFOただ一人を狙う。

 

「(個性にも限界がある……!いつまでも消し続けられるものかよ!!!)」

 

シュウウゥゥゥ……ズドオオォォォーーーン!!!!

 

華から吸い上げたエネルギーが茎状の放出口から噴き出し、零炎エネルギーを放射し続ける。黒い太陽である獄陽からもエネルギーを得ているため、その放射時間は脅威の5分間。

 

必中の刺突。爆発しそうな極小太陽。微小広範囲。長時間攻放射。

この攻撃を浴びせられた者は、AFOでなければ絶望しか覚えないだろう。

 

 

そのAFOでさえも――「これで決着」と感じ、全身全霊で迎え撃つ。

 

「くくく……ははははははは!! これは死んで若返ったかいがあったよ! こんなに全身全霊で全力を尽くせるなんてね!

黎明期ですらここまで追い込まれたことはなかった……熱い展開だな。

 

行くぜ?

 

《重力で押し潰し、風圧で吹き飛ばし、電撃で貫き、炎で焼き尽くし、氷で縫い止め、刃で切り裂き、毒で蝕み、爪で突き貫き、無で消滅》

 

さらに――

 

《圧縮》 《膂力》 《分裂》 《振動》 《多重投射》

《硬質化》 《腐食》 《衝撃波》 《再生阻害》 《炎熱》

《収束》 《弾性》 《拡散》 《透過》 《吸収》 《冷凍》

《爆裂》 《鎖縛》 《腐敗》 《熱線》 《磁力》 《雷電》

《遮断》 《侵蝕》 《凝固》 《伸縮》 《粉砕》 《疾風》

《切断》 《麻痺》 《爆進》 《嵐圧》 《暗黒》 《地爆》

 

……幾重にも力が折り重なり、攻防一体の“絶対領域”を築く!

抗う者は存在そのものを押し流され、叩き伏せられ、絶望の中で恐怖に怯えて消え去れ!!

 

つまり――

 

死ねぇ!!!!」

 

ッ!!!!!!!!!!!!!!

 

全ての色がぶつかり、全ての音が響き合うような衝突。

 

「っ………ぁ……ッ……!!!」

 

轟音と閃光の嵐が吹き荒れ、若き英雄たちの全力を限界以上に引き出す。

白熱、黒鞭、爆炎、氷の花びら――そして支援機フラクタと愛砲『ディアッカ』が絞り出す終端攻撃。

それらすべてが一点に収束した瞬間、世界が爆ぜたように見えた。

 

――

 

紫と黒の波動が歪み、裂ける。

だが、いつものように即座に再生しない。

AFOの顔が「驚愕」と「愉悦」に歪んだ。

 

「く……ッ……くは!!」

 

マスコーダーの青白い身体は、VREDの副作用で燃え尽き寸前。端末は空白の表示を示し、彼女を支えるシステムが焦りを吐き出す。

 

「エネルギーゲージの減る勢いが早すぎる!! このままじゃ……」

『エネルギー残滓を急速再利用します。

しかし――わずかな時間稼ぎにしかなりません。浄化不足で使用機器にも影響が!』

 

それでも、どれだけ限界を迎えても譲れないものがあった。

 

「わた……し……がぁ!!」

 

マスコーダーの声が震え、フラクタはいくつもオーバーヒートし、高熱を帯びて空中で爆破する。AFOの余波に巻き込まれ、ヒーローコスチュームも破壊されていく。

 

「い……く……からァ!!!!」

 

それでも――自分にできる精一杯を尽くす。

なぜなら、全てのヒーローが“オリジン”だから。

それはプロだけでなく、ヒーローを目指す先輩や後輩も含めて――。

 

「大……丈夫……ってええぇぇ!!」

 

私のオリジンは増え続けている。それはつまり、新しい自分に進化し続けるってことだ。成長するってことだ。前に進まない理由なんてない。

 

「言った……ッ……んだあぁぁぁ!!!」

 

もっと言えば――ヒーローだけじゃない。

 

アンタもなんだよ、AFO。

 

アンタみたいには死んでもならない。

誰にもなってほしくない。

反面教師として、こんなに分かりやすい悪の見本が目の前にあるんだ。

ならば活用しない手はない。

 

だから――絶対倒す。けど、意地でも殺さない!

 

アンタの“悪意”と“悍ましさ”が生み出した結果は、凄惨で悲しみに満ちすぎている。

だからこそ、もっとアンタという存在が知られるべきなんだ!

 

隠されていたから、ここまで大事になった。

 

これからはいろんな人に、アンタのやったことを知ってもらえ!

 

沢山の人に沢山責められろ!

 

生きて――善意の糧となれ!!!!!!

 

……

 

AFOの身体に亀裂のような“塗りつぶし”が走る。

消去の波が逆流する瞬間、彼の再生は遅延し、最も脅威である“クリア”は個性ではなく、“非殺傷”という設定に上書きされた。

 

「はっ……はーーーはっはっは! なんだそれは!?

“非殺傷設定”? そんなものここで使う奴がいるなんて誰が思う!?

しかも“クリア”が無効化されるなんて、そんなことがあるとは!!」

 

笑い声は震え、かつてないほど音が薄くなる。

 

だが、お互いに攻撃の手を緩めはしない。

 

緑谷のテンフォールド・スマッシャー。

爆豪のオブリタレイト・ジ・リジェスター。

青山のプリズミック・レヴァリューション。

轟の天灯・墜牙。

 

マスコーダーの“非殺傷”が重なり、不殺の脅威がAFOを襲った。

 

そして――マスコーダーのシン・ニュートリノ・ガン・ブラスターが軌道を抉る。

幾重にも重なった攻撃がAFOの“存在”を揺さぶった。

 

「!!」

 

AFOの姿勢が崩れ、黒紫のオーラが縮小し、空間の歪みが弱まる。

思わず息を呑むほどの静寂――

 

そして。

 

若AFOの発した全ての個性は、“クリア”を筆頭に正面から破壊され、五人の全力をその身で受けた。

 

「は……これまでかよ……まぁ……悪くない戦いだったよ」

 

その言葉は、ひどく耳に残った。

 

ズガアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァ……

 

………

……

 

 

 

 

シュン……

 

「えっぐ……え? これ、もしかしなくても……地面削れて日本の形、変わったんじゃね?」

 

「ふむ、変わってるね。いやはや、物理的に国の形を変えるなんて、僕ですらやったことのない悪行だよ」

 

「悪行っていうか……もう、なんて言うか……」

 

――その時。

月面基地で対峙する老AFOと死柄木葬華の前に、若AFOが転送されてきた。

 

……………シュン。

 

「あっはっはっは、いやー、負けた負けた」

 

「おいおい。“僕”が負けてスッキリ顔なんてやめてくれよ。同じ自分なのに神経を疑うぜ」

 

「いやいや。“俺”が負けて不貞腐れるなんてのもごめんだね。戦闘はあくまでプロセスの一つだろ?」

 

「……若い先生、なんでここに? 転送されるようなことされた?」

 

「されたさ。確か名前はニュートリノ・ガン・ブラスターだったかな? あれは一定ダメージを受けるとここに転送される仕様らしいね」

 

「ふーん……チートだ……」

 

「「あれだけの戦いだ。俗な言い方をすれば、チートと言われても仕方ないね。それに、星の形が変わらなかったことには不服を感じるよ。“僕(俺)”に勝ったんだ。そのくらいはやってほしかった、やれやれだ」」

 

「……その長文を一語一句揃えて喋れるあたり……やっぱ同一人物なんだなって実感するわ。先生ながら怖い〜」

 

そこへ会話に割り込む声。

 

「んー、老若魔王二人とその生徒の葬華ちゃんが揃ってると、何でもできそうで怖い怖い。……あ、紅茶とコーヒーどちらにします? 冷たい飲み物もありますよ。軽食もどうぞ」

 

現れたのはMr.コンプレス。

圧縮していた飲み物や食事を惜しげもなく取り出し、魔王二人に対しても全く物怖じしない。

 

「「ありがとう。熱いコーヒーとサンドイッチをもらおう」」

 

気づけば二人は立派な椅子に腰掛け、いつの間にかフォーマルな服装へと着替え、当然のようにブレイクタイムに入っていた。

 

「あ、私にもお願い」

 

そう言って顔を出したのはVet阿賀月。

 

「またコ◯ラですかな?」

 

「ペプ◯とプリンと、生きた裂きイカ」

 

「「趣味悪いなぁ」」

 

葬華とコンプレスが声を揃える。

 

「ひ、ひどい!」

 

――今回の“戦争”。地球から見たその戦いは、どれも身震いするものばかりだった。

 

葬華は思う。

自分なら崩せる、なんて――簡単には言えない。

そもそも、個性を一つ二つ持っていたところで相手にならないだろう。

 

「ギャハハー……主よ、まさかアイツらと戦うつもりか?」

黙っていたレフターが口を開いた。

 

「そのつもりだったけどね。このままじゃ一人二人なら崩せても、そのうち対策を取られて、まとまって動かれたら結局勝てないだろうなぁ」

 

「「では、どうする?」」

先生二人が期待のこもった視線を向けてくる。

 

やめてくれ。

 

「……試したいことがあるんですよねー」

 

「「そうか。やってみなさい」」

 

……? アンタら、なんか憑き物落ちてない?

 

葬華は月面基地の窓から地球を見つめ、右手に個性を発動させる。

 

「およ? 葬華。まさか地球を崩すつもり?」

ピョコっとVet阿賀月が肩から顔を覗かせる。

 

「“崩界”はさ、簡単に言うと、視界に入った対象を右手の崩壊空間に映して握り潰す技なのよ」

 

「うん、知ってる。それを地球に使ったら面白そうだなって? 反動やばそうじゃない?」

 

「だろうねー。でも、地球が完全に崩れるとは思ってない。私らの目標は“継続可能な虐殺と略奪”だからさ。それは本心で思ってる。だから個性にも出ると思うわけ。……ただの好奇心。“どうなるかな”って」

 

「ふむ、素晴らしい。疑問解決のために自己犠牲を厭わない行動力は評価すべきだ」

「あぁ? 結果を考えずに好奇心で突っ走れば身を滅ぼす。身の丈に合ったことをするべきだな」

 

初めて老若AFOの意見が割れた。

 

「あれ? 二人でも食い違うことあるんだ」

首を傾げる葬華。

 

「……ふむ、若い頃は仲間の行動には今より慎重だったかもしれないな」

「はぁ……歳を取ると寿命の分だけ破滅的な考えに傾くのか……嫌になる」

 

「まぁまぁ。こちらをどうぞ。さっきより濃いコーヒーと甘い焼き菓子。お好きでしょ?」

 

「「もらおう」」

 

「悪の魔王って余裕あるのね」

 

「「当然だ」」

 

そんなやり取りを切り上げるように。

 

「長くなりそうだし……うん、さっさとやっちゃおう。鉄は熱いうちに打てってね!

“地球崩界”……おりゃ!」

 

死柄木葬華は――

 

右手に映る地球を握り潰した。

 

――パリン。

 

 

その日、地球の全生物が“何かが割れる音”を聞き、そして感じた。

 

 

 

 

 

――個性が

 

 

 

 

 

                          無くなった。

 




さーて、さて。

どんな最終回にしようかな?

無計画(笑
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