「…ここ、は」
俺の旅がやっと終わる。その感情を抱いてからいくら時間が経っただろう。深い深い暗闇の中を彷徨っていたような、今までに積み上げてきた
「…何処かの、家?………また旅が始まったのか…?」
そう、声を出してみて違和感に気づく。声が明らかに
「……縮んでいる、だと?」
背丈が中学生1年生ほどになっている。どういうことだ、今までも役割によって服装が変わることはあった、だとしてもこのように身体そのものが変化することはなかった。ただ困惑に頭を塗りつぶされていた時、1つの考えがよぎる。
転生。インドや日本などに存在する哲学的、宗教的な考えの1つ。死んだ後、魂のみが残って生まれ変わることを指す。…もしも本当にそうだとして、いったいなぜ記憶があるのか。徳を積んだから、などではないだろう。そもそも仮面ライダーとはいえ破壊者が積むのはむしろ罪の方だ。…ともかく、まずはここが何処の世界かだ。オーロラカーテンは…使えない。それどころか
「…この家、他に住んでるやつは居ないのか…?」
どうやら探索してみた所無人らしく、俺以外に人が居る気配はない。金庫にいくら使ってもなくならさそうな金と、大量の食材や生活用品、それと俺が普段使っていたトイカメラがある辺り、生活は出来るだろうが…
「…持ち物はスマホだけ、か…」
そのスマホのパスワードが何故か自然と分かってしまう。「2009」のパスワードを入力すると、出てきた年月は2007年。
…おかしい。スマートフォンの普及は2010年頃からのはずだ。この時代はスマホが発売したばかり、だというのに機種は最後に見た世代と同じ。そういう世界なのか、と自分を納得させる。
今度はテレビを付けてみることにした。そして、そこで見た光景は、この世界の特異性を俺に見せつけるには十分なものだった。
『デスゾーン!』
『フルパワーシールド!』
『ジャッジスルー!』
『キラースライド!』
「…なんだ、これは?」
明らかに人間が出来る領域を超えている、「超次元」としか言えない行動の数々。まずそもそも明らかにファウルだというのにスルーする審判。これで中学サッカーだと言うのだから、プロリーグなどは一体どうなっているのか。
「…仮面ライダーの存在は、少なくとも調べられる限りではなし、か…」
次にこの世界に仮面ライダーが存在するか粗方調べてみるが、成果はなし。スーパー戦隊に該当する存在もいない辺り、ここは仮面ライダーやスーパー戦隊の変わりにあの超次元サッカーとしか言えない何かがある世界なのかもしれない。
「…『超次元サッカーの世界』とでもしておくか」
とにかく情報はある程度手に入った。これからどうするか…と思いながら、カレンダーを見る。するとそこには翌日の日付に「雷門中入学式」と書いてあった。
「…この世界の役割だと思って、行くとするか…」
そうして、入学から暫く経ち。ふと思った。
「……やることがないな。」
そう。この世界は平和でしかなく、本当にやることがない。ただこのまま写真を撮りながら過ごすというのも無くはないが、戦いに慣れすぎた精神が「せめて体育よりもっと激しく身体を動かしたい」と言う。…この世界でスポーツをやるとするなら、当然選択肢は1個しかない。
「……サッカー部の部室はここでいいんだな?」
「……!もしかして!入部希望者か!?」
…この選択から俺は、少なくとも今までの世界からしたら普通じゃないサッカーに、足を踏み入れることになった。
と言っても、そこから特に進展はなかった。この学校のサッカー部は人数がまともに居なく、翌年になっても最低人数の11人すら揃わない始末。入ったのを間違いだったかとも思いつつも、仕方なく部長の円堂と河川敷で練習を続ける日々。稲妻KFCという小学生チームと一緒に練習をするものの、必殺技とやらが使われることはなく。物足りない、と感じる日々を過ごしていた。…こうも戦いに毒されすぎるといっそ自分に呆れすら感じてくる。これが本来のサッカーだろうに。…そして暫くして、転機があった。俺がいない日に円堂が練習していたところ、強烈なシュートを打つ奴に出会ったらしい。程なくしてソイツが転校生の豪炎寺修也、木戸川清修という名門のエースストライカーだと知り、そして…
「…帝国と試合し、負けたら廃部…か。また理不尽な条件を…とうとうサッカー部を潰しに来たか。やるのか、その試合?」
「やるさ!廃部になんかさせない、きっちり11人揃えてやる!」
「相手は帝国ですよ、無理、絶対無理。」
「ボコボコにされて恥かくだけですよー。」
「…結局廃部ってことか…」
「この部室ともおさらばっすね…」
「お前らなあ!サッカーを愛する気持ちがあれば、不可能だって可能になる!何も始まってないのに、諦めちゃダメだ!諦めちゃダメなんだよ!」
ちなみに、帝国とは帝国学園。中学サッカーにて40年間無敗を誇る現在の最強チームだ。…何故俺たちのような弱小チームと試合を組んだのかは分からないが、恐らく何か狙いがあるのは確かだろう。
それから、円堂がタイヤを使った大方正気でない特訓をしている中、円堂の幼馴染である風丸が助っ人に参加を決め、部員がやる気を出し…他にも助っ人3人が入部と、試合の準備は整った。そして、ついに試合を開始することになったはいいが…なんだ奴らは。なんだあの戦争に使うような装甲車は。奴らが放ったシュートを止めた円堂の手から煙が出たがどんな威力だ…やはりこの世界はよくわからない。今思えば、何か世界の輪郭というか、根本的なものが他の世界と違う気がしてならない。おっと、壁山。悪いが逃がしはしない。お前が元来弱気な性格なのは知っている。…にしてはやる気がない頃は先輩に対してふてぶてしかった気もするが。…何故将棋部が実況をしている?
「行くぜ…!」
「ついに始まりましたー!まずは染岡、松野にボールを預け自分は帝国ゴールに上がっていったー!」
相手のスライディングを明らかに高すぎるジャンプでかわし、ゴールへと攻め上がる…
ダメだな、奴ら手を抜いている。弱小には当然というべきか、恐らく本気ではないだろう。…だが、その油断は命取りだ。
「宍戸、こっちだ。」
「はい、士先輩!」
「させるか!」
「クロックアップ!」
「何!?」
タキオン粒子の力により加速し、一気にゴールへと近づく。そして…
「……ディメンションキック!」
ボールを上へと蹴り上げると、10枚ほどの巨大なカード型エネルギーが現れる。俺は高く飛び上がり、ボールと共にそのカードへと突っ込んでいく。するとボールと俺はカードの中を瞬間移動で通っていき、勢いを増していく。最後のカードを通った辺りで後方宙返りをし、ボールのみがシュートへと勢い良く向かっていく。
「必殺技を持っているやつが居たか、だが関係ない!パワーシールド!」
相手のキーパーが飛び上がり、地面を叩くと衝撃波のバリアが発生。俺のシュートを弾き返そうとし…
罅が入る。そのまま罅は大きくなり…
「何…!?」
『ゴーール!!門矢、なんと帝国から先制点をもぎ取ったー!』
俺のシュートは、40年間無敗のチームから1点を叩き込んだ。
多分続きません。