エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー 作:蒼色ノ狐
ユーリたちがビーストたちが住処で戦いを開始した頃、連邦と協力関係を結ぶ次元のとある場所にエデンの関係者が集結。
その場所は大都市を飲み込む程の大穴であり、よく見れば金属で補強されている事が分かる。
大穴から遠くない位置に設けられた監視施設にて、エデン議会重鎮である元国王と元皇帝が二人並んでいた。
「作戦は順調のようだ」
「当然であろう。始まったばかりで挫けていたら、これを起動させる意味もない」
「正論だな」
傍から見れば落ち着いて会話しているように見えるが、二人とも表情は固い。
目の前にはコンソールが設置されており、二つの鍵穴が空けられていた。
そしてユリウスとエーデン。
アーストンとガスアという二強であった国を束ねていた二人の首には、それぞれ金と銀に装飾された鍵がかけられている。
対ビーストにおける切り札の一つである、特大型エーテル式殲滅砲『オリオン』。
一撃で超広範囲の敵を消し去る兵器の起動を行う為に来た二人。
しばらく穴を眺めている様子であったが、やがてユリウスが固く閉ざされた口を開く。
「どうなると思う?」
「ビーストとの戦いがか?」
「いや。オリオンの事だ」
「……」
「もしオリオンを残しておけば、次元間での同盟関係の火種になる。だがまた今回のような事例が起こるかも知れん」
そもそもオリオンの建造にはエデン内でも反対意見が多かった。
それを押し切ったのがユリウスがトップを務める派閥であり、反対派を纏めていたのがエーデンなのである。
「アナタが迷うな。建造した以上、後々の事はこれから考えればいい。今はビーストとの戦いに勝たねば」
「……すまん。甘えだったな」
「お互い国の頂点から何年も経つ。多少の寝言ぐらいは聞き流すさ」
以前より皺の増えた顔で笑うエーデンに釣られ、ユリウスの表情も柔らかくなる。
そこにエデン軍人が駆け寄り、敬礼をしつつ声を張り上げ報告を開始した。
「報告します! 『アルテミス』起動完了! 座標軸も固定し終え、オリオンからの贈り物を待つとの事です!」
「うむ。ではやるとするか、エーデン・ニコラウス議員」
「勿論だとも。ユリウス・ヴァン・アーストン三世議員」
互いに頷き合うと、示し合わせたかのような歩幅でコンソールに近づいていく二人。
指定の鍵穴の前に立つと、鍵を取り出し突き刺す。
そして最後に一度顔を見合わせ、鍵を回しオリオンのシステムを起動させた。
起動と同時に別の場所に貯蔵されているエーテルが、次々にオリオンに回され光輝いていく。
そして頭上ではオリオンよりも大きな直径を持つ機械仕掛けのリングが浮かんでおり、その中心を軸に重力場の変動が起こっていた。
オリオンが究極の矢と例えるならば、アルテミスは究極の弓。
転移にてどのような場所であろうと、正確に撃つ事ができる装置。
この二つが揃えば次元を超えた狙撃が行えるという、事が終われば封印必至の代物であった。
「……願わくば。この破滅の光が戦士たちにとって希望になるよう願う」
充填が終わり極大の赤いエーテル光が天に向かって放たれるのを見て、そう思うユリウス。
そして赤き光は、確かに次元を超えていくのである。
オリオンとアルテミスという、この作品最大の兵器が登場しました
狐的には設定が気に入っており、ここまで書けた事を嬉しく思います
ですが戦いはまだまだ続きますので、皆さんの応援をお待ちしております!