悪魔と呼ばれ慣れて 2nd   作:ボルメテウスさん

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通りすがりの仮面ライダー

 戦いが終わった雄英は、奇妙なほど静かだった。

 瓦礫は片付き、校庭には日常が戻りつつある。だが、あの夜に生まれた決断と覚悟は、まだ空気の奥に沈んでいる。

 

 俺は校舎の外れに立ち、風を受けていた。

 この世界に留まる理由は、もうない。

 

「……師匠」

 

 背後から声がする。

 振り返ると、轟が立っていた。変身を解いた姿はいつもの生徒だが、その眼は、確かに一歩先を見ている。

 

「行くんですね」

 

「ああ」

 

 短い返事。

 世界を渡る以上、再会の保証なんてどこにもない。

 

「……もう、会えないかもしれませんよね」

 

 その言葉に、俺は否定も肯定もしなかった。

 

「可能性は低いな」

 

 だからこそ、伝える。

 

「轟。俺が教えたのは、力の使い方じゃない」

 

 一歩、近づく。

 

「自分の中の悪魔に聞け。

 お前が背けてきた醜い部分、認めたくなかった本心……

 そこに、本当の答えがある」

 

 轟は静かに頷いた。

 

「……はい」

 

 そして、はっきりと言う。

 

「自分の中の悪魔と向き合うこと。

 それも、ヒーローであるってことなんですよね」

 

 その理解に、胸の奥が少しだけ熱くなる。

 

「そうだ」

 

 俺は告げる。

 

「お前なら、行ける。

 No.1にだ」

 

 轟は一瞬、言葉を失い、それから真っ直ぐに答えた。

 

「俺は、あなたに恥じないヒーローになります。

 自分の悪魔から目を逸らさず……

 誰かを、救えるヒーローに」

 

 その言葉で、もう十分だった。

 

 その時――

 俺の前に、オーロラカーテンが現れる。

 七色に揺らめき、まるで虹のように輝く、次の世界への扉。

 

「……来たか」

 

 そこへ、足音が重なった。

 

「ボース!早く!早く!」

 

 デルタが大きく手を振る。

 相変わらず緊張感の欠片もない。

 

「……お前は緊張しろ」

 

 ゼータが腕を組み、淡々と言う。

 

「まあ、こういうの、見た事ないし」

 

 イータはマイペースに空を見上げていた。

 

 俺は小さく息を吐く。

 

「相変わらずだな、お前ら」

 

 最後に、轟を見る。

 

「じゃあな。

 胸を張れ、轟焦凍」

 

「……行ってらっしゃい、師匠」

 

 俺はオーロラカーテンへ歩き出す。

 虹色の光が、視界を包む。

 

 振り返らない。

 それが、通りすがりの流儀だ。

 

 俺たちは、そのままオーロラの向こうへ消えた。

 

 ――数日後。

 

 轟は、一人でディケイド事務所を訪れていた。

 そこは、かつてツカサが“通りすがりながらも立ち寄った場所”。

 

 室内には、写真や記録、そして人の気配が残っている。

 ここには、道を外れかけながらも、救われた者たちがいた。

 

 仲間を得たトゥワイス。

 ヒーローに絶望しかけたレディ・ナガン。

 

(……俺だけじゃなかった)

 

 ツカサは、選ばなかった。

 善と悪を単純に切り分けず、

 “自分の中の悪魔と向き合った者”に手を差し伸べてきた。

 

 轟は、静かに拳を握る。

 

(師匠……)

 

 自分も、そうなりたい。

 誰かの背中を追うのではなく、

 誰かの行き止まりに立てるヒーローに。

 

 窓から差し込む光が、床に長い影を落とす。

 

 轟は顔を上げた。

 

「……行こう」

 

 もう迷わない。

 

 彼は、次の一歩を踏み出す。

 通りすがりの背中が残した“答え”を胸に。

 

 ――いつか、誰かを救うために。

 

 ディケイド事務所を出た轟は、しばらく空を見上げていた。

 あの日、虹色に輝いて消えていったオーロラカーテンの残像が、まだ瞼の裏に焼き付いている。

 

(師匠は……もう、別の世界か)

 

 胸の奥が、わずかに痛んだ。

 だが、それは喪失ではない。

 託されたものの重さだ。

 

 歩き出すと、街の向こうからサイレンの音が聞こえてくる。

 小さな事件。

 だが、誰かにとっては、人生を左右する一瞬だ。

 

 轟は立ち止まり、深く息を吸った。

 

(自分の中の悪魔に聞け)

 

 恐れ。

 怒り。

 そして、否定したくなる弱さ。

 

 それらを切り捨てるのではなく、

 引き連れて進む。

 それが、ツカサから学んだ答えだった。

 

「……行くぞ」

 

 誰に聞かせるでもなく呟き、轟は走り出す。

 炎と氷を同時に宿すその背中は、もう迷わない。

 

 ――いつか、名前を呼ばれる存在になるために。

 

 No.1ヒーローとは、

 最も強い者ではない。

 最も正しい者でもない。

 

 最も多くの“立ち止まりかけた誰か”に、次の一歩を渡せる者。

 

 轟焦凍は、その道を選んだ。

 

 遠い世界のどこかで、

 通りすがりの仮面ライダーが、ふと微笑んだ気がした。

 

 物語は、まだ続いていく。




今回の話をもって、悪魔と呼ばれ慣れて 2ndは、無事に最終回を迎えました。ここでは、本来ならば起きるはずだった、最終決戦は行いませんでしたが、それを行う場合に必要なレディ・ナガンを初めとした要素も書けていた為、省かせて貰いました。また、本来ならばメインだった弔を初めとした面々や、A組の面々もあまり出番はありませんでしたので、ヒロアカらしくないSSかもしれませんでしたが、ここまで、書けたのは、皆様のおかげです。
そして、明日からは、3rd。つまりは新たな世界が舞台となります。
そこでの活躍もぜひ、お楽しみに。

3rd舞台となる世界は?

  • 魔法少女リリカルなのは
  • 魔法少女まどか☆マギカ
  • アカメが斬る!
  • ブルーアーカイブ
  • 戦隊レッド異世界で冒険者になる
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