Re Take of Evangelion   作:Air1204

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長らく期間を開けてすみません。
なんでって?配信業がいそがしくってつい…。
まぁなんとはなしに書けたので投稿投稿っと…。


第14話 Air 急 ②

「…結局あのバカ褒めてくれなかったじゃない。」

 

重苦しい会議も終わりベタつく髪の毛が気持ち悪くて直ぐにシャワールームへと足を運んだ。L.C.Lガス、真弐とのシンクロの際、液体のL.C.Lでは邪魔になると判断した、真弐の中に眠る新2の記憶を頼りに生み出したそれは、今のアタシには充分過ぎる代物でもあった。

アタシはシャワーの音で掻き消えるくらいの声量でシンジへの呪いの言葉を呟く。その声に隣でシャワーを浴びていたヤツに届く。

 

「今のシンジ君にその余裕は無いよ。姫だって分かってるでしょ…。」

 

「…態々聞いてなくていいのよ。この地獄耳。」

 

「仕方ないじゃん…。私だって凹んでんだよ?それくらいわかって欲しいにゃあん…。」

 

珍しく声のトーンが下がっているコネメガネ。余っ程あの勢いでシンジの頬を叩いたのが自分の中でダメージになっているようで、今までに見たことないくらいに凹んでいる。

 

「そんなに凹むなんて思ってなかったわよ…。」

 

「仮にも自分の好きだった人の息子だしさ?恋愛感情的なモンは無いにしても好きだし気にかけるじゃん?自分の息子かなって思ってるんだよ。というより、ユイさんにそう託されたからね。この世界、もうー号機にはユイさんも居ないし。余計に?」

 

「バカね、この世界にはシンジラブのお父様が居るんだからそんなこと考えなくていいのよ。」

 

「そうも言ってらんないじゃないのさ。あんな状態だよ?それこそ放って置いたら何しでかすか…。つか、」

 

「確かに、それは言えてるかも。何より、どこからどこまでが副司令の手の内か…。定かじゃないから余計にね…。」

 

シンジ1人背負うものが多すぎる。一緒に背負ってあげたくても当の本人が望んでいないならそれはしてあげられない。

 

「…本来僕が担うはずの役割も彼が担っているからね。困ったものだよ…。」

 

…?さも当たり前かのように女性用シャワールームに居るコイツは何よ…。変態極まればここまで自然に溶け込むもんなの…?

 

「ホントはカヲルちゃがちゃんと見てなきゃダメなんだゾ?」

 

「それに関しては申し訳ないと思っているよ。」

 

「…うん。渚アンタここ男子禁制だけど?普通に居るのは…なんで?そういう趣味?」

 

「失礼な…。僕だってちゃんとした女だよ。」

 

「はぁ?嘘おっしゃい!そんな見え透いた嘘つくなんて…とんだ…変…態…。」

 

ムカついたので覗いてやる事にした。でも…あるはずの無いそのふくよかな胸とボディーライン。そしてあるべきものがそこには無い。アレ?アタシが変なだけ…?

 

「な…無い!?どういう事なの!?な、なな渚。アンタ男じゃ!?」

 

「どういう訳かこの世界では女性、としてデザインされたみたいなんだ…。ああ、今まで通りの接し方で構わないよ。」

 

「いやいやいや…。アンタ男子の制服着てるじゃ無い!?しかもその胸どうやって隠してんのよ!?え?」

 

「ぷくく…面白いなぁ姫は…。今まで気付いてなかったの??」

 

「き、気付くわけ無いでしょ!?元々コイツは美形だし…!ま、マリアンタ気づいてたってーの!?」

 

「うん。最初から。不思議なこともあるんだなー程度だったし。トウジも気付いてるよ?あぁ、てか逆に、アスカの場合は面識があるから先入観かね?柔軟にいかないとダメだよー。」

 

ぐぬぬ…。でも言われてみれば…ボディーラインは女性らしかったような…。あと目元も…まつ毛は長いし…。声も…高い?

 

「まぁそういう事さ。式波君。だから君の…カマホモという表現は…間違っているのかもしれないね?」

 

「た、ただの恋敵じゃないのよ!!シンジは渡さないわよ!?これ以上増えたら対応しきれないじゃない!!」

 

「ははっ…気にしなくていいよ。確かにシンジ君の事は好きだけれど、君達の邪魔をするつもりもないしね。」

 

「ほんっと自由なやつね…。でも、あのきな臭女…シンジをどこに連れていくつもりなの…?」

 

「さぁね?でも縁が彼らを導くよ。それじゃあお先に。」

 

そう言い残してそそくさとシャワールームを後にする渚を横目で見やる。畜生、アイツ…エロい身体してやがって…。シンジに色目使ったら許してやんないんだからねっ!

 

「リンネちゃん、ブリテン島に行くって言ってたかな?何やら確かめたいものがあるって。」

 

「わざわざ行ったところであそこにゃ何も無いわよ。第一にエヴァから引き離すって言ったのに根城もいい所じゃないの。」

 

「姫…それマジで言ってる?SEELEでもあそこには手出できないんだよ?」

 

「え?ブリテンに手ぇ出せないって…なんか理由でもあんの?」

 

「マジか…。アスカなら知ってると思ってたのに…。あそこは、昔っから重要な遺跡が出てくるので有名なんだよ〜。」

 

「勿体ぶらないで早く言いなさいよ!!」

 

「遺跡がね見つかったんだよ。ウェールズの地下深くにね…。そこからでてきた石碑が問題なんだよ。」

 

「石碑…?大方アーサー王とか円卓関連じゃなくて?」

 

「それどころじゃないよ。その年代より地下深くに裏死海文書とは異なる新たな外典が出てきたんだ。…それでその石碑を見つけた一族が問題でね…。ユイさんの母方の実家、それがグレートブリテンでは絶大な権力を有しているのさ!だからゼーレでもその石碑には触れられてない。」

 

「?それがなんの話に繋がるわけ?全くもって理解できないんだけど…。」

 

「ゲンドウ君。そこに行ってたんだって、ユイから託された最後の夢を受け取りにって言ってたかな?」

 

「最後の…夢?」

 

「そ、最後の夢。死海文書に記されたそれとは全く別の根源を持つそれ。詳しくは分からない…。それでもひとつわかっているのは、向方はそれを託す相手にユイさんの忘れ形見であるシンジ君を指名した。」

 

「それって…。結局あのバカはエヴァ絡みの運命からは逃れられないって事じゃない…。」

 

あきれた…結局、元司令から連れて行ってくれと頼まれてブリテン島に連れていくなんて誰でも出来るじゃない!

…?流石、きな臭い女ね…他にも裏があるに違いない。とはいえ、アタシたちがそれで手を出すのは宜しくはない。

大人しく任せておくべきか…。

 

「ま、そゆことん…。へっくちっ!おぉ、さっぶ…。」

 

「…そりゃお湯も出さず素っ裸で突っ立ってりゃ寒いに決まってんじゃない…。バカなの?」

 

「それもそうか…。ところでアスカ、この後暇?」

 

「何?艦長代理はそんな暇なんて無いわよ?まぁ奢ってくれんなら行かないこともないけど。」

 

「私より高給取りのくせによく言うよね〜。まー、積もる話もあるし…久々に1杯行こうよ?ね?」

 

「…まぁまだ話の途中だし、聞かないわけにいかないもんね…。しっかし…また変な所で話を切り上げるんだから…。」

 

「…誰が聞いてるか分からないからね〜。まだまだユダは居るかもしれないからね?さーてっさっさと浴びてぱぁーっと肉でも食いに行くかぁ…。」

 

「…よくあんたあんな惨状を見て肉だなんて言えるわね…。まぁ食べてやらんこともないけど。」

 

兎に角、今は考え込んでいても仕方ない。何をするのも資本は身体だ。老いない、食事をとる必要が無いとしても、QOLを上げておけばメンタル的な健康は保てるはずだ。

それに、シンジだけじゃない。鈴原のやつも精神的に参っている。あれだけ気丈に振る舞って居られるのは痩せ我慢をしているに違いない。まぁ…なにかしてやれる訳でもないけど…。

兎に角、ウチの男陣の動向は気にしてやらないと…。

 

「…アスカって優しいよね。」

 

「人の頭ん中を勝手に覗くなって言ってんでしょ!?ホンットにデリカシー無いわね!!」

 

 

 

「…なんや。また結局ワシ1人かい…。」

 

1人佇むエヴァ4号機の収容ブロック。見上げたそれを見て呟く。

 

「母ちゃんなんやろ…?別れて別んとこで暮らしとると聞かされとったけど…こないところで生きとるとは夢にも思わんやろ…。」

 

憂いを帯びた面持ちで話しかける。応え等返って来なくともトウジそれで充分だった。

幼い頃の記憶の中。顔も朧気ながらもその優しさだけは覚えていた。父に聞かされたのは馬が合わず別れてしまったと。幼い妹と自分を残して居なくなった母親を憎んでさえいた。

だが、4号機とシンクロをする中、微かに母の温かさを感じた。

それは、シンジやアスカがエヴァに乗る際に祈りのように呟いていた母への思い。その言葉の真意は分からなかった、けど、ウルトビーズ、ヒカリと再会した際の4号機のそれは空耳とは言い難かった。

 

「『ダメよ』か。オトンが言うとったな…オカンは生まれも育ちも関東やって…。なんか懐かしゅう感じたわ。」

 

ぽんっとコアの部分に手を置く。色々な感情が押し寄せては入れ替わる。怒り、悲しみ、そして安堵…。

 

「サクラも大きくなりよったで…。ワシは高校生じゃ。4つも違うのにアイツは強う育っとるで。ワシも大きなったやろ?」

 

ぼうっと双眼に光が点る。

 

「友達も、恋人もワシには守れんやった。気が付いたら敵やと…ワシはどないしたらええんじゃ…。ワシがもっと強かったら…こないな事にならんで済んだんか…?」

 

4号機は動かない。ただ、トウジを見つめているだけ。

それでも子の想いは母を動かすには充分だった。天を仰ぎ大きく咆哮をする4号機。

その場に居たトウジは蹲り耳を塞ぐ。

何事かと技術部の連中も顔を覗かせた。そこにはコアを剥き出しに悶え白煙を纏う4号機の姿が目に入る。

胸元のブリッジには4号機のパイロットが蹲って耳を塞ぐ。

やがて白煙は球状に纏まり、初号機よろしく擬似的な白き月を形成し大きく鼓動を鳴らし始めた。

 

 

空を漂うAAAヴンダーの主翼、その傍ら有人観測室が設けられている。現状、人員が足りない為にそこの部屋は使われることは無い。だが、そこを自室代わりに使う彼女はその部屋ので窓を開けて空に木霊する4号機の咆哮に1人耳を傾ける。

 

「4号機も覚醒の時か…。遅かれ、そうなる未来は目に見えていたね…。完成されたヱヴァシリーズ。決戦の日は近いか…。君もそう思うだろう?」

 

虚空に向けてそう呟く彼女の瞳は赤く揺らめく。その呟きに応えるように空の裂け目から瞳を覗かせるのはMark6でも第13号機でもないエヴァンゲリオンらしき何か。

赤く染まりつつある大地を一瞥するとそれはまた裂け目の奥へと溶けるように消える。

 

「彼が望むのなら、僕は君を使ってこの世界の未来を紡ぐよ。」

 

「まーたよく分からないもん引っ張り出して…天使ちゃんも良くやるにゃあ…。」

 

部屋からやれやれと額に手を当てて話しかけるのはマリ。

既に地上に降りたはずだと思っていた彼女はびっくりしたと言わんばかりの表情を浮かべた。

 

「もう地上に降りたと思っていたけど…。何してるんだい?真希波君。」

 

「姫のおめかしターイム。第2東京の方だから少しは気合い入れないと笑われるわ!なんて意気込んでたよ。…それでさっきのあれ、何?計器も反応してないし。」

 

「太古からこの星に眠る本来の王さ。姿も形も僕たちのよく知るエヴァンゲリオンによく似ているが…根源を別にした全く異なる存在、単独の生命としてこの星に根付いた本来の宿主だよ。」

 

「…シンジ君に託される最後の夢って…。」

 

「うん、そうだね。彼女達は最初からこうなる事を知っているからね。ループをしている僕達でさえ対応しきれないそれを対する抑止力としてそれを用いることを模索した。だからリリンの王女たるシンジ君の母上は彼をこのループに巻き込んだんだ、彼自身がその世界の礎になる事さえ厭わずにね。」

 

「まぁまぁ壮大な物語だけど、更に拗れると余計にややこしいね…。」

 

マリは片手に持つ缶コーヒーを揺らす。もうひとつをカヲルに差し出す。それを受け取ったカヲルはプルタブを開けて1口煽る。

ふうっと一息漏らすと言葉を並べる。

 

「演者である彼等には無理を強いているね。最も、語り部である僕と真希波君もだが…。何より、僕らのエヴァンゲリオンで彼らにどれだけ太刀打ち出来るか、未知数だからね。だが、舞台装置でしか無かったはずの初号機以外のエヴァンゲリオンも自我を持ち、彼等を守る為に道具ではなく生命として振る舞い始めている。」

 

「王たる初号機に追従する形で自我を獲得するなんて研究段階じゃわかっちゃいなかったからねぇ…。」

 

「彼がこの世界の存続を望んでいるからね。居場所が無い彼なりにもこの世界を愛しているんだよ。」

 

「だからこそ、世界の破壊者なんて役回り可哀想だよ。台本通りに進まない世界を築いた結果どの世界でも爪弾きにされるなんて…。」

 

悲しげなマリの表情、それを見たカヲルも憂うような表情を浮かべて空を見つめた。

先刻飛び立ったVTOL機、その中に眠るシンジを思い浮かべながら。時を同じく、着替えると言ったアスカも窓から先刻の事を思い浮かべながら4号機の咆哮を、そして、カヲルの呼び出した何かの姿を見た。

 

「シンジ、アンタが帰ってくるまで私が此処を居場所として守ってあげるわ。どんな手を用いてもね…。この身も(ココロ)も獣に堕ちようとも…ね?」

 

そう小さく呟くアスカの瞳に紫の光が灯る。

決意とは裏腹にその表情は酷く曇っていた。

それは、これからの戦禍が更に激化していくのを理解しているかのように。

 

 

1週間後

 

使徒は全て退けた。筈であった。

だが、警報(第一種戦闘配置)は鳴り響く。

第4の使徒の襲来を彷彿とさせるような真昼の襲来。

 

「何事よ!?」

 

「副艦長!それが…。」

 

真っ青な表情を浮かべたマヤがモニターを震える手で指を指す。そこに映るのは黒い巨躯。初号機によく似た姿を模したそれが突然姿を表したのだ。リリスの骸も無くなった以上、NERV本部を目指す理由も無くなった筈だが…。

何かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡すのだ。

 

「いい度胸ね…。初号機の真似事だなんて…。」

 

酷く歪んだ顔でそれを睨むアスカはミサトに視線を移す。

ぶっちゃけた話、この2人、帰ってきた彼氏とまともにイチャつくことも出来ず、ヤることすら出来ず先の戦役の後処理をさせられていたためにストレスが溜まりに溜まっていた。

そんな中に現れた自分達の男の使うそれによく似た姿を見て大爆発しない訳もなく……。

 

「何を探してるんだか知ら無いけど明らかに害なのは間違いなさそうね。」

 

一応組織のトップとしてその体裁は保ちつつも内心はアスカにぶっ飛ばして分解して予備パーツとして掻っ攫って来いとでも言いたげな表情を浮かべているのがミサト。かえって、アスカは…。

 

「塵も残さずぶっ飛ばしてやる。動きまでシンジを真似してたら2度殺す。」

 

とオペレーター一同、顔面が真っ青になるような宣言をしたのである。

心情としては理解が出来ないわけではない、綾波レイに続いてシンジまでもが再起不能ともなれば怒りを顕にしていてもおかしくはないからだ。

 

「分析パターン≒初号機か。-号機判定されていないだけまだマシね。」

 

幼子が初めておもちゃを手にしたように辺りを破壊して回るそれがモニターへと映る。

苛立ちを募らせるアスカとミサトはキッとそれを睨む。

 

「アタシが出る。」

 

「ダメよ。貴方が出たら貴重なサンプルがパーだわ。鈴原くんは?」

 

「肆号機にて待機中。シン化をしてから初のシンクロなので緊張しているみたいですがかねがね問題はありません。」

 

「チッ…。仕方ない。ここは譲ってやっても構わないわ。今のアタシが出たら何しでかすか分からないしね。」

 

「…聞き分け良いのね?ありがと。マヤ、肆号機に繋いで。」

 

「はい!」

 

4号機から肆号機へのシン化。F型装備の初号機が繭を作り進化したようにアダムの系譜である4号機もその姿を作り替えた。カラーリングは変わらずに、肩のパイロンが増設され可動式へと成った。-号機のスペックには届かないものの真弐と同等レベルのスペックを確保するに至ったのだ。

魂の座(インテリア)は無く、L.C.Lガスによるシンクロ補助、並びに極地での活動の利を得た4号機は真弐よろしく、その名前を旧数字へと変更された。

 

「鈴原くん。肆号機での初戦闘、このカタログスペックを活かすのは難しいかもしれないけれど頼んだわよ。」

 

「承知しました。今や男手1つや、ワシが頑張らんないかんけ、やれるだけの事はやったりますよ。」

 

「はっ!いくらスペックが真弐に追いつこうがパイロットがどうしようもなきゃ使いこなせないのよ!」

 

「心配すんなや式波…。ワシもすぐお前に追いついたる。」

 

「うぐぐ…。ここまで食ってかかって来ないと…変な感じ…。は、はん!アンタがアタシに追いつこうなんて1000年早いっての!」

 

「そか…。ミサトさん、ワシは何したらええですか?」

 

「出来るなら動力源を潰して鹵獲、と言いたいけれど、あの感じだと難しそうね…。」

 

「しかもあの装甲から漏れ出ている赤い(モヤ)。あれからL結界と同じ反応が出てる。放置して置くのも危険って話よ。早急に対処願いたいわね。」

 

「あい。わかりました。真希波も渚も不在け…。ホ使徒の次に戦わないかんのはエヴァ…ヒトかいな…嫌んなるで…。」

 

「『真・トリスタン』のスタンバイOKです!先輩!ですが…あの肆号機にマウント出来ると思えないのですが…。」

 

「…まぁマヤ見てなさい。ー号機はエヴァすら自身の一部として取り込んでいる、あのレベルに到達しかけている肆号機に有機物を使った生態ユニットを取り込めない訳ないのよ。」

 

「あ…えー…でも取り込んじゃったら…またケイジ補修しないとじゃ…」

 

「「あ」」

 

なんとも間抜けな話である。

静止しようと思ったのもつかの間、既に肆号機に取り付けられピッタリと融合を果たしてしまっていた。

 

「あぁー!!待ってって言ったのに!!」

 

「そんなこと言ったって機械に言ったところで止まるわけないじゃないっすか…。」

 

「うぐぐ…じ、時間も無いから出撃!」

 

なんとも不格好な出撃となったが今までの射出カタパルトとは違い空中からの強襲。

パイロンを大きく広げ白い粒子が翼を展開する。

ー号機は黒い粒子、リリスに由来する黒き月の力によって形成されていたが、肆号機は白き月由来の力である。

紛うことなき純白の翼、その出で立ちはまるで天使でも思い浮かばせるかのようだった。

エンジェル・ハイロゥを煌々と光らせ大きく跳躍した肆号機は地を目指す。

 

「目標補足。近くで見れば見るほど初号機そっくりやな…。」

 

それも肆号機に気付いたのか、空を見上げそこに佇む。

重力に身を任せ、降下するポイントへの調整を翼に任せる。

『真・トリスタン』かの空から落ちる使徒との戦いに用いられたそれをー号機と真弐のデータを用いて改修を施されたそれは脚部を支えるアンカーは取り払われケンタウロスのような後脚へと作り替えられた。空中では翼のように展開し空を縦横無尽に駆け回る様はさながら翼竜を彷彿とさせた。

それに生態ユニット、簡潔に言えば8号機の改修に用いた第10の使徒の絞りカスから再生成されたS2機関を搭載させたのが【真・トリスタン】翼としての権能だけでは無く、簡易的なアズマテラスの再現を可能としたこれを文字通り取り込んだ肆号機は降下しながら狙いを定めトリガーを引き絞る。

降り注ぐ光矢がその漆黒の体躯を貫く。

 

「な、なんや!?呆気な!」

 

「ッ!鈴原くん!ダメよ!気を抜かないでッ!」

 

貫かれ穴が空いた胸部がボコボコと沸騰するように黒い液体が泡立つ。周囲に飛び散ったそれが地に触れるとコア化が加速する。

やがて泡だったそこからは新たな顔が現れる。歪な頭部はなんとも形容しがたい形をしている。

 

「うげっ…気持ち悪いのう…。ミサトさっ!どないしたらええ!?」

 

「とりあえず距離をとって。動向を伺いなさいっ!」

 

「あの攻撃を受けてまだ反撃の姿勢を取らずにこちらを観察している…?目的は…何?」

 

訝しむリツコ、その目的も存在理由も何も分からないそれをどう撃退すればいいのかも分からない。

ましてや先程の、予備パーツとしての確保など以ての外だと今起きた事象を目の当たりにしてそんな悠長なことは言っていられなくなった。むしろ殲滅できないにしろ無力化を図る他ない。攻撃をして無駄にあの液体を飛び散らせる訳にもいかない、直接触れるのすらどんな影響があるかも分からない。無意識に少年の名前を呼ぶ。

 

「…シンジ君。彼ならどんな方法…思いつくかしら…。」

 

ミサト、アスカでさえもそう思った。彼が居てくれればどんなに楽に解決できたのか、打開策を打ち出したのか。と脳裏を過ぎった。だがトウジはその幻想に縛られない。Wエースであるシンジとアスカの裏に隠された秘密兵器(シークレットウェポン)が舵を切る。

簡易型アズマテラスをもう一度構え直し、2度、3度とトリガーを引き絞り頭部、コアがあるであろう鳩尾撃ち抜く。飛び散るそれが大地を侵食していく。

 

「鈴原くん!?無闇に撃ったところで…。辺に被害を拡げるだけよ!やめなさいっ!」

 

「黙ってみてろ言うんもちゃいますよね!?多少の被害は覚悟の上でも甚大な被害だけは避けんなシンジに笑われますわ!!」

 

痛みか欝陶しさからさ、漸く肆号機を敵として認めた黒いそれは掴みかかるように肆号機に向け駆け出す。

それを避け慣性の法則のままに後頭部を掴み地面に叩く伏せる。

 

「肆号機右腕に侵食を確認!」

 

「バカ!!言わんこっちゃないじゃ無い!!」

 

-号機は超普遍的(オールラウンダー)。真弐は超自由(スーパーフリーダム)ならば肆号機の権能は。

 

「!?侵食箇所にATフィールドの発生を確認。超高速で再生していきます!?」

 

肆号機の権能は超回復。S2機関での再生能力とは比べもにならない

 

「まあイチかバチか言うて、シンジや式波が滅茶苦茶しよってもエヴァがそれを叶えてくれよったからの…。」

 

仁王立ちで掌の感覚を確認する。感覚のズレも痺れも特には感じられない。

地に伏したソレの後頭部を踏み抜く。

その感覚は慣れないが、人が乗っていると思わなければどうということもない、ゴボゴボと泡立ち黒い飛沫を吹き上げながらも再生しようとするソレ。何か違和感を感じたトウジは徐ろに背面、エントリープラグの挿入箇所である装甲を無理やり引き剥がす。

 

「おぉ!!大当たりや!」

 

エントリープラグいや、形状はそれに似ているとはいえこの輝きは使徒やエヴァが持つコアと形容するのが正しい。

徐ろに掴みかかる。

生命の危機を感じたそれは肆号機の拘束を振りほどこうと藻掻くも無意味なものとなる。

ギチギチと嫌な音を立て引き抜かれたそれを握りつぶす肆号機。

程なく活動の限界を迎えたそれは素体であろう骨と神経を残してドロドロと溶けだした。

 

「状況終了。なんやあんま手応えのないやっちゃな…。」

 

「…なんというか…戦い方がアスカやマリに似てきたわね…。」

 

「手本にできるのが今やそれしかないって言うのが現状ね。」

 

「「2人してあーあみたいな表情やめてくれない??」」

 

 

 

ところ代わり、SEELE本拠地。秘匿されたこの場所に集うのはSEELEーNERVの選ばれし子供(チルドレン)達。

捕縛された綾波もその1席へと座らせられる。

 

「悪いな綾波。捕虜、と言うよりもお前にはこっち側でこの場に立ってもらうよ。」

 

3日会わざればとよく言うが、3年もあれば人もここまで変わる。身長が伸びここまで顔つきが変わった、それでもこの飄々とした性格は変わらずなようだ。

 

「嫌よ。私はWILLE所属、エヴァンゲリオン玖号機パイロット、綾波レイよ。SEELEじゃない。」

 

「強情だなぁ…綾波も。もっと聞き分けがいいものだと思ってたけどな…しかたがない、委員長がどんな目にあってもいいって言うんなら好きにしなよ。」

 

「…卑怯者。」

 

後ろに回された手に掛けられた手錠が食い込むほどに身動ぎをするがそれを見てケラケラと笑うケンスケ。それを見て嘲笑う霧島マナ。隅の方で縮こまるアスカによく似た幼い女の子、そして中心に座るは自分の愛した男によく似た何者か

第二使徒(リリス)としての本能か、それともヒトとしての感性か。見た目がよく似ていてもそれが碇シンジでは無いと全力で否定してくる。

だからこそ綾波は周りには目もくれずただ虚ろに椅子に腰掛ける洞木ヒカリを気にかけた。ユーロNERV及び、SEELEが彼女に対して何をしたのか綾波は理解出来なかった、それでも、自分の戦友、そしてWILLEのパイロット達の為に自分が盾になることを選んだ。

覚悟を決めた綾波はシンジによく似たソレを睨みつける。

 

「…ケンスケ、あんまり綾波を虐めないであげてよ。」

 

「ん?あぁ、悪い悪い。あまりに反応が面白いからさ…霧島だってそう思うだろ?」

 

「…私に振らないで貰っても良いかしら?貴方と仲良しこよしするつもりは無いから。」

 

「はぁ…全く…なんでこんなに仲が悪いのか…困ったなぁ…。」

 

よく似た顔の少年が口を開く、その声色も抑揚もすべて自分の知る少年と同じ。違うところを探そうにも見当たらず、強いて言うのであれば黒を基調とし、彼のプラグスーツを反転させた色合いと表現すればわかりやすいだろう。

鋭い表情は崩さずに綾波は口を開く。

 

「貴方は…誰?」

 

「初めまして…でいいのかな?僕は『碇シンジ』宜しくね。」

 

「巫山戯たこと言わないで。貴方は『碇シンジ』じゃない。姿形も喋り方もそっくりだけど、間違いなく貴方は碇くんじゃないわ。」

 

「…失礼だな。僕だって『碇シンジ』だよ。最も、君が知っている彼、では無いけどね。うーん…めんどくさいなぁ…。」

 

ポリポリと頭を搔く仕草さえもそっくりでそれがいっそう綾波の不快感を煽る。

 

「まぁとにかく、君には協力して貰わないと困るんだ。」

 

「…何故?」

 

「委員長はほら…大事な捕虜でこっちのパイロットだろ?綾波が離反して委員長を傷付けるような事はこっちとしても避けたいんだよ。戦力が減るのは困るし、まぁ顔馴染みでも有るからね。それに、この世界を在るべき姿に戻さなくちゃならない。」

 

「…在るべき姿…?」

 

「うん。そうだね。少し真面目な話をしようか。ケンスケ、マナ、アスカ君達は解散してくれて大丈夫。後は僕が引き受けるよ。」

 

「了解、行こうぜ霧島。どうせ隅っこのアイツも委員長も俺達に付いてくるつもりはないみたいだしな。」

 

「少なからず私は着いてくるって認識は如何なものかしら…。でも仕方ないわね。奢りよ。」

 

「はいはい、わがままなお姫様だことで。」

 

「自由な二人で助かるよ。あの二人は自分の意思で僕のそばに居てくれて居るからね。こっちとしても無駄に命令をしない分助かるんだ。あぁ、マナとは初対面だっけ?あの子は霧島マナ、元々自衛隊に居たんだけどパイロット適性があってね、態々引っ張ってきたんだよ。」

 

「…そう。」

 

「うーん…ツれないなぁ…。…あそこに居るのがシキナミシリーズのロストナンバー。投げっぱなしになった未完成の個体なんだけど、中々悲惨な事になっててね。まだ8歳くらいなのに奴隷として慰みものにされてた所を助けたんだ。と言っても、あんな調子だから…少し心配では有るんだけどね。君がよく知る式波・アスカ・ラングレー、まぁ中身は別人みたいだけど、彼女はれっきとしたオリジナルだよ。彼女を元に生み出されたシキナミシリーズは君達アヤナミ型より感情的だからね、機械的ではない情動に任せた戦いが出来るんだよ。この間のエヴァシリーズみたいにね。何人か生き残ってくれればよかったんだけど…アスカとマリさん容赦なく全部潰しちゃうから…。いくらか予備の個体は居るけど、あんまり前線には立たせたく無いからねぇ…。ああ、そうだ…ここじゃなんだしちょっと着いてきてよ。君に見せたいものがあるんだ。」

 

 

 

 

「ここって…。」

 

「カルヴァリー・ベース。呪われたセカンドインパクトの爆心地。まぁ、今となっては意味のない場所では有るけどね。それにキミ達アヤナミシリーズの生まれた場所でも有るわけだ。」

 

突き立てられた少年の言葉にたじろぐ綾波。

 

「…知らない。こんなところなんて…。」

 

「いや、君は知っているはずだよ。アダムスの器であるヱヴァンゲリヲンシリーズの生まれたこの場所を。」

 

「知らない…知らない…。」

 

脳裏を過ぎるのは封印された記憶、自分が何のために生み出されたのか、そしてこれから何をするべきなのかを明確に押し付けてくる白昼夢。目の前の少年は自分と同じだと。同じ星の元に生まれた渚カヲル、綾波レイ、そして目の前の少年。信じたくなくとも突き付けられた現実。自分の愛した少年はこの世界が望んだ幻影であると言うことは鮮明に叩きつけられた。

 

「これでわかっただろう?君がいるべきはこっちだよ。」

 

振り払いたくても払えない現実に、妖しく輝く少年の瞳。限界を迎えた少女は心を深く閉ざす。そのまま崩れるように倒れた綾波を少年は抱き抱え綾波の顔を見つめる。

 

「綾波らしい選択だね。素直なのはいいことさ。おっと…。」

 

突如として現れた巨大な掌が少年を襲うがそれをひらりと躱す。極地作業用としてこの少年に使役されるインフィニティ。元が人のココロの集合体だからか、稀に離反を起こすモノが出てくる。だが、少年は慌てることはない。むしろ眼前に迫るそれに対して不敵に微笑み余裕の表情を浮かべる。

 

「ごめん、そうなってしまった以上もう壊すしかないんだよ…。」

 

表情と反するように声色は憂うようにも聞こえた。刹那、首を掴む深紫の腕、地面へと叩き下ろされたインフィニティのコアへと振り下ろされる足。

やがて活動の一切を停止した成れの果てはLCLへと還元された。

 

「少し手荒すぎるんじゃないかな…?███号機。」

 

深紫色の巨躯は少年を覗き込むように跪く。その瞳は次の獲物はお前だと言わんばかりに綾波を見据える。それに気づいた少年は優しく子供を諭すように███号機と呼ばれたそれを諭す。

 

「ダメだよ。君だって散々世話になったじゃないか…。リリスの残滓を取り込みたい気持ちも分かるけどそれは後さ。」

 

グルルと獣の如き声を上げる███号機は諦めたように目を細める。その姿は極致へと到達したー号機にも良く似ていた。だがその禍々しい深紫の体躯に走る橙色のラインはかつての覚醒した初号機を思わせる。だが、禍々しさは███号機の方が上、ー号機のように背面に増設されたパイロンがある訳でもなく、肩のパイロンは従来のエヴァと同じような形をとる。そして特筆すべきはその背面に携えた6枚の純白の翼は、まるで熾天使(ルシフェル)とでも呼ぶべきだろうか。

 

「さてっと…君たちがどれだけ抗えるか試させてもらうよ。いずれ来る終末の為にもね…。」

 

少年が見下ろすのは轟々と音を立てる地獄の門。描かれた生命の樹(クリフォト)は妖しく輝きを放つ。

そして、三本の槍で磔にされた巨人。それは第13号機やアルマロスよりも禍々しくその拘束を打ち破ろうと身を震わせる。

 

「そうだよね、君も早く会いたいよね。でも君の出番は終焉の獣の幕引き以降だよ。会える時が楽しみだね、もう1人の僕…。」

 

気を失った綾波を抱きとめ目を細めるもう1人の碇シンジ。何故彼は2人もこの世界に存在するのか、そして彼の目的とは何かそれは誰も知る由もなく。一つ言えるのはかつてのSEELEは見る影もなく、彼に乗っ取られたと言うことだけだ。

 

「先生も人が悪いや…。いずれこうなることをわかっていた上で向こうの僕に優しくしていたんだから…。」

 

「君に先生と言われるあれは無いんだがね…。昔のように副司令とは呼んでくれないのかね?」

 

「…貴方はもう副司令じゃないでしょ…。SEELE_NERV統括 冬月コウゾウ。実質、貴方の願いの為に僕達は動いてるようなものじゃないか。」

 

「老後の囁かな願いだ、若人が必死になって私の願いを叶えようとしてくれている、それだけで私は願ったりだがね。しかし、君の腹の底だけは未だに見えていないのが事実だ。」

 

「無駄に腹の中を見せて裏切られるよりは利害関係がはっきりしてる内は協力していた方がいいって話だよ。何より向こうには今後の計画の為に僕に必要なキーパーソンが2人も残ってる。それを手に入れないことには僕の計画も貴方の計画も全て意味が無くなってしまうからね。」

 

赤黒い積雲が立ち込めるカルヴァリー・ベース。2人の来訪者は各自の願いを話す。

かくして、不穏に満ちた第2節の幕開けとなる。碇シンジ再起不能の今、WILLEがSEELE_NERVに、そして、謎の黒きエヴァに勝利を掴み、希望のコンテニューとなるのか。そしてもう1人のシンジの願いとは何か…。まだ見ぬ夜明けの為に、子供達は走り続けるのであった…。




思い付いたらあとがきは書きますでわでわ。
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