■ ■
「では改めてお家の話なんだけどさ」
「ちょっと待てぃ!!!!!」
なんてこともなく、すらりすらりと話を進めようとするカズマに対して、めぐみんはそれはもう某逆転弁護士の如き感情の籠った『待った!!!!』を言い放った。
冬将軍との戦いを終え、カズマが地獄から帰還して僅か1週間くらいが過ぎた頃である。
死にかけた……というか実際に死んだ本人であるカズマは、その初日こそ全身痛くて動く事もままならない様な状態だったが、アクアの介抱のお陰もあってか、3日程度で回復した。
そこまでは良かったのだが……
「なんだよ、急に大声出すんじゃないよ。カズマさんびっくりするだろうが。病み上がりだぞこちとら」
「それはごめんなさいですが、まず待ちなさい! 何を『別に何事も起きてない』みたいなテンションで話を進めているんですかっ!?」
「いや別になんもないだろ」
「貴方つい数日前まで死んでいた自覚ありますかっ!?!?!?」
いくら回復したとは言えども、しかしカズマはつい数日前まで完全に死亡状態であった訳である。
それが回復して間もなく、冬将軍戦前の会話を普通に割り出してくるものだから、めぐみんとしては我慢ならなかった。
アクアとダクネスは勿論、その場に居合わせたミツルギ達もうんうんと強く首を縦に振った。
「回復したとは言え、まだ安静にしておくべきだと僕も思うよ。君、しっかり両断されてたんだぞ」
「しっかり両断されてたって言うなよ。魚じゃねぇんだぞ俺は。別に平気だよ、もう痛くもないし。クエスト受けようって話でもないんだから」
「ダメよ」
「アクアさんや、そこをどうか……」
「ダメよ。絶対———ダメよ」
あ、ダメだこれ。カズマは即座に理解した。
もはやゼロ距離も同然で、ちょっとでも動いたら唇が触れてしまいそうな、如何にもロマンスっぽいシーンに傍から見えるのだろうが、しかしアクアの目は全く笑っていない。
もう何言ったって絶対に宿に連行されるパターンのやつである。もはやこれヤンデレではなかろうか? そう思わずにはいられないが、残念ながらアクアには無縁も良い属性である。
「ルシファーさぁぁぁぁん!!!!! この頑固女神のこと説得するの手伝ってぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
「無茶なことを言う。オレも原因の一人だというに」
家に持ち帰るのが我慢出来なかったのか、カズマを送って早々にコミケに参加して戦利品を諸々獲得し、異世界で読み漁るルシファーは、思わずため息を零した。
そもそもアクアがここまでカズマに過保護気味になったのは、ルシファーがカズマを地獄に送った事に起因するのだ。
もはやある意味で犯人みたいなルシファーがどうこう言おうが、アクアから飛んでくるのは正論と拳のみである。
勿論、1番悪いのはあの邪神だが。
まぁ、閑話休題。
はい、とめぐみんが突如として挙手をした。
「というか、さっきから気になっていましたが、そのルシファーとやらは何処のどちら様なのですか? なにやら親しげですが」
「えーと……」
(アクア、どうしよう? 俺なんて説明すればいい?)
(あたしに聞かないでよ……ルシファーが来るなんて予想もしてなかったのよ? 設定なんか考えてないわ)
カズマが地獄に連れて行かれたのも、そしてそのカズマを地上に連れ戻す際にルシファーまで上がってくる事も、全て想定外の事態であった。
あの時は、カズマが帰ってきてくれた事で頭がいっぱいいっぱいで、もうずっと泣き着いて離れなかったから気にする余裕もなかったが、いざ冷静になるとどうしたものか……アクアは頭を捻っていた。
(というか、もうルシファー本人に聞きなさいよ)
(ではオレが直接脳内に語り掛けてやろう)
(こいつ直接脳内に…!?)
(もう古いわよ、そのネタ)
(なんだと…? 仲間内では通じるのだが……)
それは単純に仲良しなだけである。
下界においては、ルシファーにとっての『いつメン』になるバイト仲間達。ゲームにTRPGに遊びにと既に色々やってる仲なのだから、そりゃ通じて当然である。
しかしこの場は異世界。ファンタジーな世界である。天使も悪魔も神も認知している彼等に、バカ正直に「地獄を統べる堕天の王」なんて名乗れば、絶対に怪しまれる。
まぁ、厨二病の爆裂娘はもしかしたら勘違いしてノってくれるかもしれないけれども。
(誤魔化してもいいが、別に明かしても構わんぞ。ルシファーだサタンだ言おうが、この世界ではオレの存在は広く知られていないからな。地獄から連れ出してくれた親切な堕天使とでも言っておけ)
(えぇ……そんな雑でいいの?)
(この人、人間相手にはそういうの気にしないのよ。だからカズマも気にすることないわ。どうせ長居はしないんでしょ?)
(うむ。同志の顔とカズマの安否も確認出来た。地獄をあのザマにした手前、あまり長居し過ぎるとサリエルの奴に何をされるか、あるいはガブリエルが何処から天界に情報をリークするやら分からんからな……ガブリエルはともかくとして、サリエルを敵に回すのは気が乗らん)
天界に存在し、唯一神の遣いとして様々な雑事・管理を任される天使達。その存在はあくまでも神の遣いであり、決して力量において神を超える者はほぼ居ないのが常識だ。
しかし、こと大天使———すなわち、熾天使の領域に立つ天使となれば話は別だ。
ありとあらゆる力を扱う権能を有す、守護の大天使ミカエル。
唯一神より自らの代行を賜った、契約の大天使メタトロン。
世界の終末である黙示録をもたらす、啓示の大天使ガブリエル。
この4人の天使だけは例外であり、それぞれが神に届きうる存在として、他の神話群においても広く知れ渡っている。
ガブリエルは天使時代から交流がある数少ない存在だ。妹であるミカエルを除けば、ルシファーと最も付き合いが長い天使と言って良いだろう。
アレは出会う度になにかとルシファーに先行リークをバラまいて来る為、ルシファーはその都度ブチ切れている。最近の被害で言えば、プロキシ業に専念している事を知っていたのか、次バージョンの情報をお出ししてきやがった。
一方サリエルは生と死を司る大天使であり、ルシファーが地獄に堕ちてようやくその存在を認知できた唯一無二の天使である。その権能の性質上、些かやりづらい相手だ。
ルシファーにとっても、あまり地獄を空けすぎるのも問題ではある。これでも地獄の王なのだ、ベルゼブブが反旗でも翻そうものなら即座にすり潰せるとは言え、そういう手間は省きたいのが彼である。
「えー……この方はルシファーさん。俺を地獄から連れ出す手伝いをしてくれた……堕天使です」
「カズマ……君はなんというか、とても運が良いんだね?」
「おう慰めるな? 慰めって時には刃物になるんだぞお前?」
「だ、堕天使が地獄から連れ出してくれたのですか…? いやまぁ、アクアが正真正銘の女神だった訳ですから、もう驚くも無しと言いますか……しかしアレですね、何故だかその名前には高揚感を覚えずにはいられませんね」
内なる厨二病は、やはりルシファーの名に反応を示した様だ。まぁ、厨二病なら誰しも一度はルシファーの名を聞いたろうし、憧れもしただろう。
唯一絶対の神に叛逆して天使から魔王になりました、なんて背景は男の子なら誰もが熱を抱かざるを得ないというものだ。
まぁ、その魔王様はバイト戦士な上にオタクなのが現実なので、おそらく全厨二病罹患者の心をバキバキにへし折る事間違いなしなのだが。
「はぁ、だいぶ話が脱線しちゃったわね……取り敢えず、カズマは戻るわよ」
「くそぅ有耶無耶に出来なかったっ!? ちょ、マジで大丈夫だって! 俺めっちゃ元気だって!」
「表面がそうでも中身がそうとは限らないわ。魂さらけ出した状態で地獄を歩き回って、魔力で守られていて目を閉じていたとは言え、《
「ルシファー助けて! 俺このままだとアクアに甘やかされるだけのニートになっちゃうぅぅぅぅぅ!!!!!!」
「幸せならOKです」
「裏切り者がァァァァ!!!!!」
「いや、先も言ったがオレがどうこう言える事ではない故な」
実際、アクアからヒシヒシと「余計な事言うんじゃないわよ」という目線が突き刺さっている訳で、残念ながらルシファーにはカズマへの手助けなど出来る筈もなかった。
とは言え、ただ見過ごすというのも悪いか。ルシファーは仕方ないと言わんばかりに肩を揺らした。
「まぁ、なんだ。我が同志は長い年月の中でようやく貴様という拠り所を見付けたのだ。それが
「なっ———」
「愛されている証拠というやつだな。まぁ、しかしだ、同志よ。やはり新居は必要ではないか? 介抱は勿論、
「ばっ、な、なにを言ってるのよっ!!!」
「ふっ……カズマよ。地獄に連れてきた身で言うのもなんだが、あまり同志を泣かせてくれるなよ。ここまでギャップ萌えする良い女も中々居らんぞ」
ぶんっ! と振り抜かれる拳を容易くいなしながら、ルシファーは戦利品を抱えて出口へと踵を返した。
「あれ、もう帰るのか?」
「用は済んだからな。それに、これらの戦利品を急ぎ自宅に飾らねばならんし、ログボの回収もせねばならん。やる事は山積みなのだ」
「主にゲームじゃない……」
「それがオタクというものだ」
「———ではな、我が同志、そして新たなる我が友よ。もしもの事があれば、いつでも我を頼るがいい。例え地獄の底であろうと、或いは天界の外であろうと、貴様らの頼みとあらば、ルシファーは如何なる時もこの翼を
◆
ルシファーが帰って暫くが経った後、ミツルギ達はアクセルを見て回ると言ってギルドを出た為、久しぶりにカズマ一行が揃い踏みのターンである。
結局、アクアはルシファーの要らぬ助言に色々と悩みまくった結果、戦闘に関わらないのであれば良しという結論を出し、カズマはなんとか甘やかしを回避する事が出来た。
ぶっちゃけ介抱の時点でだいぶカズマの男心がでろでろに溶かされかけていた為、カズマ的にはめちゃくちゃに助かっている訳ではあるのだが、まぁそれは暫く胸の内に収めておくとして。
「冬将軍の討伐で、俺たちの資金はちょっとした貴族並になった訳だが……そうなると、やっぱ予定通り家を買いたい」
「豪邸! 豪邸にしましょう、カズマ!」
「バカ言うな! それだと金がめっちゃ減るだろうが! こういうのは出来る限り残しとくもんなの!」
「うむ、あまり使い過ぎるのも良くはないからな……とは言え、部屋が広いというのはいい案だと思うぞ。広いに越したことはないからな」
「でも、部屋が広いとなるとやっぱりお金は増えるわよ。そもそも空いてる家があるかどうかも分からないわ」
「そこだよなぁ……」
アクセルは広い。そこから空いている家を探すのも時間は掛かるだろうし、かと言って新たな家を建てるともなれば、やはりお金も掛かってくる。
ちょっとやそっと使った程度では揺るがないくらいの金が懐にありはするものの、しかし建築で大量消費するのはカズマとしては実に避けたい所である。
しかしやはり家は欲しい。となると、どうしても空いた家を探すしかない訳で。
「そもそもの冬だし、わざわざ外で探すのもな……もう暫く出たくない。雪精とか罠も良いところだろ……俺らの知らない所でも、多分被害が出てるんだろうなぁ」
「それなんだけど……その、アクセル周辺…というか全域は問題無いと思うわ」
「ん? どういう事だ?」
何処か気まずそうなアクアに対し、カズマははてと首を傾げる。
まぁ、冬将軍なんて大ボスを倒した訳だし、一応立場上は眷属という括りになる雪精が、ボスが居なくなって逃げましたなら珍しい話でもない。
だが、アクアの反応を見るにそういう訳ではなさそうだ。しかし、何か言い難い様な状況なんて全く想像が付かない。
「まぁ、なんと言うか……うちの子達が、ね」
「うちの子達…? アクシズ教の事か? それがなんか関係あるのか?」
「…ちょっと外に出ましょう。説明するより見た方が早いわ」
「……なんでしょう、とても嫌な予感がします。まさか
「え、なに急に?」
めぐみんがあからさまに嫌な顔をする。尚のこと疑問符が増えるカズマだが、それも当然である。今のところ、カズマはアクシズ教のヤバさというものを知らない訳なのだ。
だが、これから嫌でもそれを目にする。アクアに連れられるまま、防寒装備を重ねてギルドから出立し、見るも懐かしい門まで歩いていく。
そこで、ふと違和感を覚える。
随分とアクセルの街が静かである。冬将軍も倒されて、寒さも全然マシになっているというのにも関わらず、しかしアクセルの街は喧騒とは無縁も良いところの静寂にあった。
なんでこうも静かなんだろう? カズマが頭を捻って間もなく、
「燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ」
おぞましい呪言をつらつらと吐き出しながら、雪原を聖なる炎で溶かし回る聖職者と燃え尽きた灰のような剣をぶん回す男が目に映った。
「はい帰ろう皆さっさと帰ろう新しい家を探しに戻ろうレッツゴー」
「今回ばかりはカズマに同意です。アクアがあんなに泣いたんですから何もしない訳ですよね彼等が。見付かったら絶対に面倒ですよ」
「あれは……
「———おぉ、これはめぐみんさんではありませんか」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?」
踵を返した時には既に遅く、めぐみんとカズマの眼前には先の聖職者が立ち塞がっていた。
紺色の衣装の上に純白の布を被り、その腰には燃え尽きた灰のように色褪せた武骨な剣を差した、凡そ普通の聖職者には見えない格好の男であった。
しかし、その雰囲気は実に清廉で、ついさっきまでの様子のおかしい人間らしさは欠片も感じられなかった。まぁ、カズマは逆にそれが怖いと思ったのだが。
「お久しぶりですね、アルカンレティア以来でしょうか?」
「そ、そうですね……アルカンレティアでは、色々とお世話になりました…」
「いえいえ。隣人は大切にせよ、と言いますから。手を貸すのは当然の事。聞いておりますよ、件の冬将軍との戦いでは一層ご活躍なされたと。ゼスタ様とセシリーもお喜びになるでしょう」
「それは全く嬉しくないのですが……」
「ご謙遜を———失礼。挨拶が遅れてしまいました、御仲間の皆様」
アクシズ教は、最も異質な宗教だと言われている。その要因は、彼等の異常なまでの歪な信仰心とおぞましいとまで形容される行動力にこそあった。
それはある人間の行為と言説に始まった。
母なるアクアは己が神である事を厭っておられる。なれば我らが彼女を神と讃えるは、彼女に苦痛を与えるのと同義ではないのか?
彼女は人を愛し、人に憧れ、人に焦がれておられるのだ。しかし己が在り方に縛られ、人と関わるすら控えておられる。それは彼女の善性の現れであり、その慈悲深きを嘲笑う者共を野放しにしておくのは、即ち害悪に他ならぬのでは?
母なるアクアは我らを子と呼んでくださった。ならば我らは子として母に報いなければなるまいに、我らに出来るのはただ彼女を神ではなく、敬愛する母と呼んで扱うのみではないか。
否、断じて否である。他にもある筈だ、我らに出来る事が。我らのみに、我らだから、我らであるが故に、我らが我ら足りえるからこそ為せる事がある筈だ。
嗚呼、我らの母よ。魔族や悪魔はおろか、貴方の愛する人でさえも、その一部が貴方の在り方を嗤うのです。我らは耐え難いのです。
だからどうか赦してください。貴方の本意に背けれど、しかしそれが貴方の為であるが故に、我らの自罰をお赦しください。
「私は、ヘイル。アクシズ教徒の一人であり、祓魔師の階級に就いております。世間では、なにやらヘイル分派などという組織の長『司祭』として有名になりつつある様ですが……私は一介の聖職者。どうか、お気になさる事なく接してください」
———ヘイル分派。いつからか、そう呼ばれる組織が出来上がった。
アクシズ教の総本山であるアルカンレティア、その最高責任者として司祭の立場に着く男ゼスタを差し置いて、『司祭』と呼ばれる男———ヘイルを中心として活動する、アクシズ教の分派組織。
女神アクアの名を穢した者の前に現れては、その悉くを惨殺し、浄化して去るという犯行を繰り返し、アクシズ教が危険な宗教だと認識される要因となった。
魔王軍の前線部隊の壊滅、王都の一部貴族の暗殺、エリス教の教会の焼き討ち、顕現した悪魔の滅殺、魔王軍幹部の
「———アクア様。どうかお赦しを。我らは、貴方の窮地に駆け付けられませんでした」
「……いいの、気にしないで。あたし達の油断が原因だった———仕方のない事だったのよ。貴方が背負う必要はないわ。その気持ちだけで十分よ」
「っ———そうですか。分かりました、貴方がそう言ってくさだるのであれば、私共はそれを受け入れます」
おぉ、なんと…!
我らの母が、こんなにも感情を顕にしておられる! なんという事だ、こんな奇跡を目にして良いものか!?
嗚呼、これも全てはこの御仁———カズマ殿とお陰なのか? なんと素晴らしい御人だ! 是非とも感謝を伝えたい所だが、しかし今は仕事の身……それに、なにやら警戒されている様子。ここはまた日を改めるべきか……
「ですが、せめてもの償いをさせてください。私共に出来ることがあれば、何なりと」
「本当にいいのに……でも、そうね。なら、この近くで空いた家はないかしら? あたし達、家を買おうと思ってるの」
「であれば、ここから然程遠くない場所に屋敷がございます。なにやら訳ありとの事で、アクセルの掲示板にもクエストとして貼られておりました。おそらく、霊絡みかと」
「れ、霊…? それって、なにか? つまり幽霊とかそういう…?」
「えぇ、おそらく。しかしご安心ください、カズマ殿。我々のような聖職者にとっては専門も良いところ———ましてアクア様はアークプリーストですから」
「お、おう……それはまぁ、確かに」
言われてみれば、その通りではある。
悪魔や幽霊といった、要するに『この世ならざる者』という括りであれば、アークプリーストであるアクアはまさに専門。
そもそも其処に居るだけで浄化の力が作用するのがアクアなのだし、別にこれといって変な事も起きる訳もないというものだろう。カズマは心から安堵した、日本人の性とでも言うのか、やはりファンタジーも幽霊は怖いものだ。
「出来る事なら、私共も協力したいのですが……何分、今は取り込んでおりまして」
「……えっと、一応聞くんだけど何やってんの?」
「掃除でございます———我らの母を涙させる様な害悪ゴミカス妖精と概念の分際で将軍の名を語る不届き者なぞ燃やして灰にしてさらりと流して消し去るが当然の報い故」
「アッハイ」
万死を以てようやく釣り合う所業、許すまじ———ガンギマった眼で説く狂人を前に、カズマはささっとアクアの背に隠れた。
やべぇ、コイツはヤベェ。絶対に関わっちゃいけないタイプの人間と関わってしまった……!!!!!
「———では、皆様。我らは掃除を続けますので、申し訳ございませんがここでお暇させていただきます。少なくともアクセル全域の雪精は根絶致しますので、ご安心して冬をお過ごしください。貴方達の新たな住居での生活が、安らかなものであることを祈っております」
———Aquae.
・ヘイル
アクシズ教徒の一人であり、世間で『ヘイル分派』と呼ばれ恐怖されている組織の長を務めているアクシズ教徒の祓魔師———宗教における階級———。組織内部の教徒達からゼスタを差し置いて『司祭』と呼ばれている。
普段は敬虔な信者として清廉な雰囲気を漂わせるが、『司祭』として活動する際は地獄の悪鬼も逃げ出しかねない鋭い殺気を放つ冷徹な狂人へと変貌を遂げる。また、アクシズ教随一の剣の達人でもあり、その腕前は某暗殺教団の長が見ても賞賛に値する程。
アクアの悪口を叩いた王都のエリス教徒の貴族を暗殺した際にたまたま神器を見付け、それを得物として扱っている。
神器は転生者が残したもので、本来なら能力は扱えない筈だが、ヘイルは狂気的な信仰心で神器を屈服させ、その力を自在に引き出している。
ちなみに神器の名前は聖剣レーヴァテイン。固有能力として、大抵のものは焼き尽くせる炎が扱える。ちょこっとだけ自我があるが、ヘイルを怖がって出てくることはない。