カスなお姉さんとやさいせいかつ。   作:ひつまぶし太郎

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お久しぶりです。
FGОの小説書きたくてインプット期間を設けてたら結構間が空いてしまいました。
もはや全員の記憶から消えてるかもですけど、とりあえずこれにて本作は最終回です。
ごめんリンリン。活躍書く隙間とかなかった。
あと一章の1話と6話と10話とリンクさせてる描写があります。
たぶん記憶の彼方なので読み返してもらえると没入感が1%くらい増えるかもしれません。


⑩ゆめのはてに(終)

 

 

「なるほど、学校でそんなことがあったんですね」

「うん、すごかった」

 

ふぅむ、と。

少年の目の前で深く頷くのは、教会で小さい頃から共に過ごしてきたクロエという少女である。

 

つい先日判明したことなのだが、少年がなんでもない妹分として接していた彼女は、政府から差し向けられた監視員だった。

少年と同じ遺伝子を受け継いだデザイナーベビー。

急に日常の象徴に重たい設定はやされても少年は困惑するばかりなのだが、逆に言えば妹分がどんなに重たい設定があったとしても特に変わらないということでもある。

 

とはいえ、ゴールデンウィークに入って教会に戻った瞬間いきなり目の前で誘拐されたときはびっくりした。

何か思い詰めてるな、と感じ取って話を聞こうと一人に意識を集中させたのがいけなかった。

 

…否。

少年の特性をひそかに調べ上げ、研究していた相手なのだから、これを油断と責めるのはさすがに酷だろう。

 

必死で追いすがる少年を嘲笑うように突き放す一騎のIS。

誘い込まれるように廃墟に辿り着いた少年は上空から降り注ぐ極大ビームに撃ち抜かれた。

 

『私に歯向かった罰だ……。その望みを……絶つ……!!星見ノアァ!何故君が革命前から……ISを使用することできたのか。何故特異なエスパー能力を持っていたのか。何故赤子の悪夢を見るのかァ!』

 

生体融合型のISエクスカリバー。

及び過去に宇宙鯨研究所を襲撃したテロリストが所属していた亡国企業。

あと政府高官を務める少年の()()の陰謀。

 

『その答えはただ一つ……。君が、数多の失敗の上で成り立つ、私が生み出したデザインベイビーだから…というわけ()()()()のだぁーーっははははははっ!』

『は?』

『はぁーはははは!!なんで君にそんな能力があるのか父親である私も知らん!なんでそんな力あるの?こわ…だが、お前のその能力の研究は実に有意義だった!生まれたときからいつでもバイタルを測れるようにしておいてよかったよ!男性でありながらISを使える能力!生まれついての異端者や機械と心を繋げることのできるその能力は、人類を次のステージに連れていける!戦争が変わる!技術が変わる!世界を変える起爆剤が君なのだよ!!だから、さぁ!君の身体を私に寄越せ!解剖し、研究し、君を人類の進化の礎にしてあげよう!!私の息子だろう?なら、私の所有物のはずなのだから!!!』

 

それはもうなんか一話くらいなら話を膨らませられそうな要素と、ないでもなかった伏線の回収時は全て天災と世界最強によってぶち壊された。

鬱々展開なんてなかった。

 

『お父さん、あなたの息子さんを私にください!まぁ!もう束さんのものなんだけどネ☆少年の息子さんももう私にメロメロというか、少年のエクスカリバーは私という鞘に収まったというか!少年の息子は私が産むし、私が少年の息子になるし、少年は私が産んだんだけどね!!!つまりこれがほんとのエクスカリバー編ってわけなんだよねぇ!!』

『貴様は何を言っている!?』

『そうだぞ黙れ元鞘』

『元カノのことち◯ぽケースみたいな言い方するのよくないよちーちゃん。というかまだ私のだから!まだっていうかずっとだから!』

『ふっ、今に見てろ。人類最強の絶技を前にお前は負けるんだよ』

『じゃんねんでしたぁ〜!少年は童顔巨乳エキセントリックお姉さんっていうただ一つの性癖しか愛せないんですぅ〜!!!』

 

エクスカリバー撃ち抜かれ、深刻なダメージを負ったボイジャーと少年。

しかし、2人は諦めなかった。

あとカスなお姉さんたちの通信が全世界に垂れ流しになっているという事実なんてないという自己暗示も頑張った。

 

『…行くよボイジャー』

『───!!!』

 

2人は覚醒した。

むしろこれだけ通じ合ってるのになんでしてなかったと言われても、必要なかったからとしか言えないのだが、ここ最近辛勝が増えてきたことで2人でどういう進化を話し合っていた新しい姿(セカンドシフト)

 

フルアーマーボイジャー・アストラ。

 

カスなお姉さんたちは強いが、ISを操縦してるところを見たことがないのでなんとも言えないので保留にするとして、ボイジャーと少年がイメージする最強とは更識楯無だ。

ボイジャーの盾をぶち抜き、果ては左腕と本体をほぼ全壊させたあの貫通力を2人は最強と定義していた。

そして、その最強を打ち破った真っすぐ行ってぶっ飛ばすという戦術こそが最強であると信じてやまない二人は、少年が得意な射撃や便利なテールアンカーは残しつつも、盾を強化した。

 

大盾とハンドガンが一体化した巨腕は、内蔵された薬莢を瞬間的な推力として利用し、打撃の威力を上げたり急制動を可能とする。

見た目の変化は武装の一本化だけではあるが、大盾の防御力がそのまま本体にも適用されているため、身軽になり、最高速度が上がったうえで、防御力が大幅に引き上げられていた。

 

もともとISの中でも最高レベルの硬さだったくせに防御力高めるとかバカかよお前らは、というツッコミするやつはいない。

なにせ。

 

『ふざけるなぁ!何だその硬さは!!!』

『負けない』

『そういう気持ちの話をしているのではなぁい!』

 

エクスカリバーの攻撃に晒されてなお無傷なのだから。

バカ防御力。

敵の攻撃が効かなかったら勝てるみたいな、一周回ってやっぱり馬鹿だろみたいな論理は、相手の策を全て無意味にした。

手が付けられない、という意味では生身の天災と同等である。

 

『気持ちをないがしろにするから、お前は負けるんだ。これは、束お姉さんが夢を見た自由の翼。可能性の種。この手は、何処までだって届く…!宇宙の果だって!!』

『クソが、ワープとかふざけてるのか!!』

 

しかもワンオフアビリティでワープができるようになっていたのだからもう、現役のIS搭乗者では間違いなく最強格だろう。

 

その後、妹を助けてくれてありがとうと頭を下げる転校生ラウラと、そういうものして目の前の出来事をあるがままに受け入れるせいで男装に気が付かなかった転校生とかが転入してきた訳だが、少年を取り巻く話は一旦ここまでである。

なにせこれは普通の少年とカスなお姉さんが織りなす、たまにカスなお姉さんはいなかったりする、普通の少年の少しだけ優しい世界の日常の寄せ集めではあるものの、成就した恋ほど語るに値しないものは無いのだから。

 

「…きっと、あなたはこれからも色んな経験して、乗り越えていくんでしょうね」

「そうかな…」

「ええ…また、いつでも帰ってきてくださいね。そして話を聞かせてください」

 

微笑むクロエに照れたように少年は頬かく。

 

季節は夏。

セミは元気に鳴き喚き、何軒かに一軒くらいは風鈴が飾られていて、涼し気な音色を奏でている。

遠く風鈴の音を聞きながら眺める夏の街は、どこか全体的にいつもより青い気がする。

 

そして、かつては周りに人がいるのに孤独の象徴ですらあった教会すらも少年にとっては大切な場所と思えるようになっていた。

 

距離感を感じていたのは、少年が心をつなぐことを諦めていたから。

繋がることを、繋がってまた失うことを怖がっていたから。

魂を縛る重力なんて、存在しない。

 

強い日差しと濃い日陰のコントラストに目を細め、少年は暑さを前に少しだけ閉口する。

 

今日の予定のために出かけようとした少年は思わぬ暑さを前に外に出ることを躊躇していた。

 

その横で、蚊取り線香の煙が揺れているが、もう少年がその香りに気持ちを揺さぶられることはもうない。

 

人はそれを成長というのだろう。

だけどなんだか、大切な何かを失ったような気もして寂しい気持ちもあった。

成長と喪失は表裏一体。

去年のこの日、少年がした決意は、痛みを伴う諦めだった。

だが、少年は痛みを堪えて前に進んでいくことの大切さを学んできた。

だからきっと、この寂しさもいつかきっと愛せる日が来るのだろう。

 

「行くんですね」

「うん、行ってくる。…クロエはいいの?」

「ええ。今日はシスターの手伝いをする約束でしたし。まだ攫われたときに負った傷も全快してはいません…また、誘ってください」

「そっか」

 

気温は35度。

ここ最近の地球温暖化っぷりを考えれば、少しマシに感じるのは毒されすぎているかもしれない。

 

「じゃあ改めて」

「はい」

「行ってきます!」

 

少年の体温よりも高い温度の世界は、少し先が陽炎によって揺れていたりするくらいには蒸し暑い。

少年は、陽炎の中をわざと通って駆けていく。

夏の足。

そんな嘘すらも懐かしい。

 

うさ耳が出るように穴の空けられた麦わら帽子を被り、虫取り網を背中にくくりつけ、虫かごを肩から下げ、浮き輪を腰の位置で抱えるという、夏としての作法があるなら百点満点な装いの少年は、今日の予定に胸を躍らせていた。

そして、妹になにかお土産を持って帰ってあげようなんて計画も追加する。

 

今日は、一夏や箒といったクラスでも仲のいい数名や、隣のクラスの鈴と一緒に、カスなお姉さん2号…もとい千冬が海に連れて行ってくれるという。

束お姉さんも来るらしい。

珍しい。

いつもはだいたいクーラーの効いた部屋に引きこもって少年から離れようとしないし、世の中への文句と千冬さん含め他の女への牽制と言う名の妄言ばかりを垂れ流し、他人との交流は最低限しかしない、およそ生産的な活動とは無縁なお姉さんだというのに、一体どういう風の吹き回しなのだろうか。

 

少年は疑問に思ったが、まぁもう気まぐれなんていつものことか。

 

───それに一緒にいれるのは嬉しいし。

 

この街に海はない。

だから大きな車でみんなで行くことになる。

一夏さんの家に大半の人たちが集まって、その後その隣のこの街に寄ってから海に向かうんだとか。 

学校の行事としても海に行ったばかりだけれど、仲のいい新しい友人たちと遊びに行くのだから気になるはずもなかった。

 

やがて、息も切れ始めた頃に、見慣れた影が見えてくる。

派手なピンクのオープンカーにもたれかかり、サングラスをかけて、大人なお姉さんを演出するそのカスなお姉さんは、最近溺愛している少年の視線を釘付けにしようとして、胸もとを緩める。

 

「おーい少年!こっちの準備はばっちりだよ!」

「…他の皆さんは…?」

「ああ!それってハネクリボー?」

「………………」

「なんでだろうねー?遅刻かなー?これは私たちだけで行くっきゃないよね!あ、ご、ごめんって!ちょっと2人きりのドライブしたくて少年に嘘の時間を教えたの謝るから流れるように110番しないで!こないだ全世界に少年の愛を叫んだせいで世間の風当たりが強いんだよぅ!お巡りさんの目も厳しいし!!」

 

崩れ落ちて、コンクリートのシミになるお姉さんを見下ろしながら少年は考える。

現在気温は先程より少し上がって37度。

コンクリートの暑さは、スーパーで買ったお肉が焼けてステーキに進化するレベルまで上がってきている。

それを素肌で受け止めるお姉さんのイカれた耐久性を見た少年は、まぁ少しは反省のために焼けててもらおうとスルーして、保冷バックを取り出す。

 

「…去年と同じ作り方でサンドイッチ作ってきましたけど()()()()()()()はそのへんのコンビニで適当に買ってくださいね」

「そんな殺生な!?」

「それが嫌なら、早くその焼き土下寝やめて運転してください。…一夏さんたちには先に行くってメールしとくので」

「…さぁいざいかん!海へ!なにしてんの少年!準備遅いよ!弾幕も薄いよ!ほら早く早く!シートベルトはいい?室内温度は大丈夫!?行くぜベイビー!」

 

気がついたら車にエンジンがかかっていて、お姉さんは運転席で少年に向かってサムズアップしていた。

まばたきで目を閉じる前は、コンクリートのシミになっていたというのに、相変わらずとんでもない素早さである。

 

「…まだ車に乗ってもないです」

「たはー!お姉さん失敗!つい宇宙速度超えちゃったよ!ほら、乗って!お姉さんの膝の上でもいいよ!いっぱい抱きしめてあげる!お姉さんと夏の暑さで溶けて一つになろう!」

「じゃ、お言葉に甘えて」

「ふっふー!やっぱり少年も二人きりになりたかったんじゃん?」

「これでお巡りさんに見られたら逮捕確定ですね」

「それはまずい!」

 

少年はハイテンションイカれ女の上から横にズレて助手席に座り直すと、麦わら帽子の下から夏の青空を見上げる。

首が痛くなるほど大きく高く膨らんだ入道雲とツンとした潮の香りを運んでくる風に、少年は自然と胸が高鳴るのを感じた。

 

「ねえねえ少年!あの雲ちんちんみたいだねぇ!」

「だまってください、ほんと。カスなお姉さんはほんとにカスなお姉さんですね」

 

 

───その日の夜、遊び疲れて深い眠りにつく少年は夢を見た。

 

 

宇宙を自由に突き進んでいく大きな船。

その夢で、少年はボイジャーの新しい力を借りて、果てを目指す人類の最先端の冒険家だった。

隣には2人のカスなお姉さんや、妹、親しい友人たちがいる。

 

その微笑みに背中を押されるように前を向く少年とその船の鼻先を、星よりも大きな鯨の群れが悠然と泳いでいく。

 

初めてその鳴き声を聞くはずなのに聞き覚えのある気がするのは、ラジオから聞こえていたあの呼び声なのだろうか。

 

少年は歌った。

鯨の鳴き声に合わせて、宇宙と溶け合うように。

空気のない宇宙では声はどこにも届かない。

それでも、伝わっているという確信がノアにはあった。

 

青く輝く惑星の光と友人、新しい友人に昔の家族、その全てがノアを優しく抱きしめていた。

 

 

 

他には、何もなかった。

 

 

 

だから少年は宇宙が好きだと、愛を叫んだ。

 

 

泣きたくなるほど、美しい夢だった。

 

 

 

 

「トゥトゥトゥトゥトゥトゥ───」

 

「こちら地球。こちら地球、聞こえますか?」

「ただ今、9月1日日曜日。午前0時29分27秒、28秒、29秒…」

「気温31度、星空、晴天、微風───」

 

「聞こえますか」

 

「こちら地球」

 

 

「みんながひとりぼっちのこの星は、静かなのにいつもうるさくて、にぎやかで、さびしがってるひまもありません」

 

 

「宇宙はどうですか」

 

 

 

「…こちら、地球」

 

 

 

「───いつか、会いに行きます」

 

 

 

 

 




これにて終了!閉廷!
というわけで、最後まで本当にお世話になりました。
作者の性癖発表作品でしかなかった本作が予想外に多くの方に見ていただけで感無量です。

現在若干放置しているハイキューを差し置いてFGОの男の娘主人公によるおねショタ下ネタ小説を書いてるので気が向いたら見ていただけると幸いです。
あと、別枠でセッシールートのエロ版も書いてみてます。
気が向いたらどうぞがっかりしてください。
https://syosetu.org/novel/387596/
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