何故かダクソの世界にとんでしまったアリスの話。
気紛れ投稿
ゲームの描写と違う! という所はすみません、あんまり気にしないでください
「うわああー! また負けた〜!」
平和な世界。
その隅っこで、一人喚いていた。
「モモイ、格ゲーではボタンをただ押すだけでは駄目です! ちゃんと相手の動きを見てコマンドを使いましょう!」
「でもぉ〜……」
レトロなゲーム機に、電子音。数々のテレビゲームが詰まった夢の様な場所、ゲーム開発部の部室にて。今日も部員らは懸命にゲームの研究──もとい、ゲームを遊んでいた。
彼女ら、と言っても、今ここには3人しか居ない。部長である花岡ユズがロッカーに、才羽モモイと天童アリスが対戦をしていた。残り1人の部員、才羽ミドリはシャーレの当番だ。ユズは滅多な事ではロッカーから出てきたりはしないので、ここに居るのは実質モモイとアリスの2人、と言う事になる。
「そろそろ、流石に休憩しよー!」
「はい、アリスは構いませんが……」と、アリスは言った。すると、モモイは何かを閃いた様に言い始めた。
「じゃあ休憩! そうだ、じゃんけんで負けたほうがジュース奢りね!」
強引だが、面白くない訳ではない。
「はい、分かりました! さいしょはグー、じゃんけん……」
ポイ、と言って、2人とも手を出した。アリスはグー、モモイはパー。
「ま、負けました……」と、アリスは言う。その言葉からは、悔しさが滲み出ていた。
「へへーん、私の勝ちー! じゃあアリス、コーラ買って来て〜」
勝ち誇った様にそう胸を張ってモモイは言う。いじめのようだが、モモイは無害なのでそんな事はない。
「うう、アリスのゴールドが……」と、アリスは残念そうに呟く。ちゃりちゃり、と薄くなった財布を振るアリス。少し前に、あるゲーム会社が新機種を発売したおかげで、今のアリスの貯金は少ない。そこから200円ほど引かれる(勿論アリス自身も飲み物を買うから)のは痛手と言っても過言では無い。
ガラリ、とゲーム開発部部室のドアを開け、ミレニアム内の自販機に向かう。ミレニアム内の物は、外の物より少し安い、という事をアリスは知っていたからだ。
(ゼロコーラでいいでしょうか……あれ?)
アリスは思案する。コーラの種類についてではない。
道端に、何かタブレット端末のようなものが落ちていたからだ。
それを見たアリスのテンションは、
「新しいアイテム、発見です!」
とてもアガっていた。
道端に物が落ちているなんて言うのは面白いし、それがタブレット端末だと言うのなら尚のこと面白い。
だから、アリスは。
その
「あえ──────」
視界が歪んでいく。貧血で立ちくらみがした時のような不安と恐怖。
それに逆らう術は無く、アリスは気を失った。
気付けば、牢屋の中に居た。
そうとしか形容出来ない、絶望的な状況。
「なっ、何が起きて──」と、アリスは言った。戸惑うのも当たり前。ここは石で囲まれ、驚くほどに錆びた鉄格子の扉で閉じ込められている、牢屋だったからだ。石の天井には亀裂が入り、曇っている空がよく見えた。
この状況に困惑する間も無く、ドサリと上から何かが落ちて来た。人間程の大きさのそれは──
「ひっ……」
まさしくミイラだった。
上を見れば、
「騎士で……しょうか……?」
中世ヨーロッパを感じさせる鎧を着たひとが居た。彼がこのミイラを投げ捨てたのだと、理解することが出来た。
そんな騎士は、戸惑うアリスを尻目に、何も言わずに去っていく。
彼を追えば、何か分かるかも知れない。彼に聞けば、この場所の事を知れるかも知れない。そんな考えがアリスの脳裏をよぎる。
しかし。
どうすれば良いのか、分からない。
彼が投げ入れたミイラは何なのか? なぜ自分が牢屋に居るのか? それを知るために彼を追う必要があって、それで……。これではいたちごっこだ。
まず、あの人を追いかければいいのではないか。アリスはそういう結論に至った。
なら、とりあえずこの牢屋から出なければいけない。
今までゲームで培ってきた知識を最大限利用する。
恐らく、このミイラに何かがある。そうアリスの直感は言う。
ミイラの服の中をまさぐる。すると、何か硬いものに触れた。
「これは……」
取り出すと、鉄の鍵が手に握られていた。
鉄格子の扉の鍵穴に鍵を入れる。するりと入ったそれを回すと、簡単に鍵が開いた。
扉を押すと、キイという音と共に、簡単に開いた。
しかし、牢屋を出ても続いているのは石の道。暗い通路に、松明の光が少しだけ揺れる。
そこしか通れる所が無いことは、アリスでも分かる。
慎重に、一歩を踏み出した。
そこは暗い、暗い廊下。
石のブロックを積み上げて作り上げたような通路に、錆びた鉄格子が等間隔に嵌められている。一歩踏み出すたびにカツン、と硬い音が響く。
何か恐ろしい雰囲気にあてられ、アリスは武器を取り出す。
それは、光の剣:スーパーノヴァ。
光の剣:スーパーノヴァ
勇者アリスが保持している
遥か遠くの世界の銃器
その一撃は岩を砕き、地を裂き
光と共に全てを消し去るだろう
人の身では扱えない重量だが
それを利用した打撃攻撃も強力である
それの持ち手を握りながら、暗い廊下を行く。等間隔にある牢屋の中には、助けを求めるようなポーズをしたミイラが何体も居た。
ごくり、と唾を呑む。
恐怖と好奇心が織り成すこの感情を、アリスは知らなかった。
歩いていくと、体育座りをして俯いているミイラが見えた。それは牢屋の中では無く、外に居た。
それが何を意味するか。
それも──アリスは、知らなかった。
「え──」
アリスは驚く。
何故なら、その
そのミイラを観察している暇は無かった。何故なら、それは何処から持ち出したのか分からないナイフのような物を持っていたからだ。
「ど、どういう──」
アリスは戸惑う。当たり前だ、ミイラが立ち上がったのだから。
そんなアリスの戸惑いも知らず、
それは、アリスめがけてナイフを振るった。
「きゃっ!」
アリス咄嗟に光の剣:スーパーノヴァを持ち上げ、身を守る。カキン、と硬い音がした。ミイラのナイフがアリスの武器にぶつかったのだ。
「やめて──ください!」
彼女は、そのまま押し倒すようにして前に倒れ込む。そうすると、ミイラは光の剣:スーパーノヴァとアリスの下敷きになる。
「グオオッ……」
と、そのミイラはうめき声を上げた。
それが最後。
「え──?」と、アリスは再度戸惑いの声を出す。それも当たり前、物質が消滅してしまったのだから。アリスの居たキヴォトスでは、物質が消滅するなんて──しかも、押し倒しただけで──あり得ない。ミレニアムのトンデモナイ発明品なら或いは可能だろうが、ここはミレニアムではない。
そんな疑問が、アリスの頭をよぎった。
しかし、今やるべき事は彼──ミイラを投げ入れたあの騎士──を追いかける事だろう。
アリスは立ち上がり、廊下を進んだ。
先程よりも歩く速度が速くなっているのは、少し恐怖に背中を押されているからなのか。
石の廊下を進んで行くと、水場に出た。靴が濡れるのも厭わず、そのまま進む。ばしゃりばしゃりと、水が音を立てる。
梯子があった。鉄の梯子だ。これもまた錆びついている。使えはしそうだ。
梯子に手をかけ、登る。カツンカツンという硬い音しか聞こえない。
梯子を登りきると、アーチ形の通路のようなものがあった。そこを通過すると、恐らく外に出た。
「ここは……」と、アリスは疑問を呟く。見える景色が、異様なものだったからだ。まず、芝のような背の低い草が生えた広場。その中央にある、短剣の刺さった焚き火のような物。さらにその先には、大きな木製の扉。広場の周りは、石造りの建物でぐるりと一周囲まれていた。
その中で一際目を引いたのが、短剣の刺さった焚き火だった。それの近くまで歩いていく。
その焚き火から火は消え、微かな残り火が燻っていた。仄かな温かみが感じられる。
その
その瞬間、ボウッと火が再び付いた。
「……温かいです……」と、アリスは誰に言うともなしに呟いた。それは、心の底から湧き上がってくるような安心感を与えてくれた。だから、温かさを感じることが出来たのだろう。
光の剣:スーパーノヴァを地面に置いて、篝火の近くに座る。
ずっとここに居たいという気持ちが、頭を支配する。
だってそうだろう、自ら望んでここまで来たわけじゃないのだから。アリス自身、怖いのだ。異世界転生モノのゲームやアニメは見た事はあるが、こんなに不気味な世界は見たことが無かった。
あのミイラは何なのだろう。
ここは何処なのだろう。
ミレニアムへは、どうすれば帰れるのだろう。
そんな思案の末に辿り着いた考えは、一つ。
アリスは立ち上がり、光の剣:スーパーノヴァを持ち上げた。
先に進む道は一つしかない──目の前の扉だ。鍵がかかっていなければ、余裕で開けられるだろう。
胸の奥に現れた「温かさ」を確かめながら、その木製の扉を開けた。
目の前に続くのは、石の広場。石のブロックが組み合わさって出来たようなその広場には、幾つかの壺などが置いてあった。何に使うのだろう? 壊したらお金が出てきたりするのだろうか?
そんな事を思いながら、一歩を踏み出していく。
その途端。
陰が、降ってきた。
「きゃあああっ!?」
ドオン、と空気を震わせてそれは落ちて来た。
緑色の皮膚。短い尻尾。小さな翼に、小さな角。持っている物は歪な形の棍棒。全長軽く十メートルはあるであろうそれを見上げる。
──見た瞬間に分かってしまった。
逃げるしか、ないと。
「いやあああああ!!」
走る。
来た道を引き返すように。
しかし、あの巨体はそれを見逃さない。
あれは棍棒を振り下ろす。
「ぁ──」
アリスの頭上から降ってきたそれを避ける術は、今は無い。
ドオン、という衝撃音。
それと共に、ぐちゃぐちゃになった天童アリスが、床に散らばった。
目が覚めると、篝火のそばで座っていた。
温かな火に照らされながら、アリスはぼうとしていた。
「なにが……起きて……」
単純に言えば、キャパオーバーだろう。
あの瞬間、アリスは死んだ筈だった。ぺたんこにされ、死んだ筈だったのだ。しかし、天童アリスはここに居る。
さらに、あのでかい化け物の事もあるのだろう。アリスの脳(CPU)は、ショートしていた。
「夢……だったのでしょうか……」と、アリスはぼうとしたまま呟く。その言葉には、希望的観測の要素が多く含まれていた。
だが、あり得ない話では無い。
もし、あの時篝火の近くで座った時に眠っていたとしたら。
いや、そもそもこの情景自体が夢なのだとしたら。
さっきのアレは、夢ではないのか。
けれど、あの痛みは。
あの恐怖は。
夢のモノでは、無い。
「……っ、そんな……」
アリスは泣きそうになりながらそう言う。
だが、これはほんの最初のストーリー。
この先に待ち受ける展開を、彼女は──天童アリスは。
受け止められるのだろうか。