フィールドの女神   作:Rin1411

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秘伝所はどこだ!

 「伯母さん、味噌汁できました」

 

 「ありがとう美兎ちゃん。それじゃあ盛りつけちゃおっか」

 

 「はい」

 

 私は今、伯母さんと朝食の準備をしている。元々料理は好きだし、私の我儘で居候しているわけだからこれくらいはしないとね。

 

 「にしても守はいつまで寝てんだか…」

 

 「私、起こしてきます」

 

 「それじゃあお願いしようかしら。ごめんなさいね、足も治ったばかりなのに」

 

 「いえいえ」

 

 そして二階に上がって守君の部屋の前に立つとドアをノックする。

 

 「守君、朝だよ〜」

 

 案の定返答なしで終わった…

 

 「入るね〜」

 

 一言断って中に入ったけどやっぱり爆睡している。

 

 「守君、起きて」

 

 少し強めに揺するが反応なし。

 溜息をつくと最終手段を使うことにした。

 

 「試合始まるよ!」

 「試合‼︎」

 

 あっさり飛び起きた。

 

 「あれ?試合は?」

 

 守君は周囲を見渡して困惑した。

 

 「試合の前に朝ごはんね」

 

 「あ、はい…」

 

 状況を理解した守君であった。

 

 

 

 「ついに始まるんだ‼」

 

 「今からそんなわくわくしてたら、試合始まる前に疲れちゃうよ」

 

 まぁ、私も楽しみだけど。

 この前の試合は出られなかったし、フットボールフロンティアではたくさん活躍したいな。

 

 「おはよ」

 

 秋ちゃん。

 

 「「おはよう」」

 

 「フットボールフロンティアだ‼」

 

 「ちょっ、守君⁉」

 

 そのまま学校に走っていった。

 

 「張り切ってるね、円堂君」

 

 「もう怪我しなきゃそれでいいか…」

 

 私と秋ちゃんは会話を弾ませながら通学した。

 

 

 

 そして放課後になり…

 

 「みんな‼わかってんな‼」

 

 「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」」」」

 

 「とうとうフットボールフロンティアが始まるんだ‼」

 

 皆も気合十分だね。

 

 「で、相手はどこなんだ?」

 

 対戦校か、冬海先生が抽選に行ってたっけ…

 

 「相手は!」

 

 守君が知ってるの⁉

 

 部室の空気が張り詰める。

 

 「知らない‼」

 

 デスヨネー…

 

 「野生中ですよ」

 

 冬海先生がやって対戦校を教えてくれた。

 

 「野生中って確か…」

 

 「昨年の地区予選の決勝で、帝国と戦っていますね」

 

 春奈ちゃんナイス!

 

 「スッゲー!そんな強いチームと戦えるのか⁉」

 

 「初戦大差で敗退なんてことは、勘弁してほしいですね」

 

 仮にも監督なのに…

 

 「あぁ、それから…」

 「チィーッス!俺、土門飛鳥!一応DF希望ね!」

 

 褐色肌の人が現れた。

 土門君か…

 

 「君も物好きですね、こんな弱小クラブにわざわざ入部したいなんて」

 

 新しい監督探そうかな…

 

 「土門君」

 

 秋ちゃん?

 

 「あれ?秋じゃない!お前雷門中だったの?」

 

 「知り会い?」

 

 「うん、昔ね」

 

 昔?

 

 「土門、歓迎するよ!フットボールフロンティアに向けて、一緒に頑張ろう‼」

 

 守君の熱意に押されている。まぁ初見じゃそりゃそうか。

 

 「でも、相手野生中だろ?大丈夫かな?」

 

 「なんだよ、新入りが偉そうに」

 

 土門君の言葉に染岡君がくいついた。

 

 「前の中学で戦ったことあるからね。瞬発力、機動力共に大会屈指だ。特に高さ勝負にはめっぽう強いのが特徴だ」

 

 「そうね、私も去年見たんだけど、ジャンプ力だけなら帝国を上回ってるかも」

 

 土門君と私の言葉に皆息をのんだ。

 

 「大丈夫だ!俺たちにはファイアトルネード、ドラゴンクラッシュ、ドラゴントルネード、それに美兎も復帰したから、バウンサーラビットだってあるんだぜ‼」

 

 「どうかな?あいつらのジャンプ力、とんでもないよ。ドラゴントルネードやバウンサーラビットだって、上から抑え込まれちゃうかも」

 

 「んなわけないだろ」

 

 染岡君がそれを否定した。だけど…

 

 「土門の言うとおりだ」

 

 豪炎寺君も土門君の意見に賛同した。

 

 「俺もあいつらと戦ったことがある、神風も言ったが、帝国をも凌ぐあのジャンプ力で上を取られたら…」

 

 「そんな…」

 「ドラゴントルネードが効かないかもしれないなんて…」

 

 部室の空気が沈み始める。

 

 「俺、ちょっとトイ「新!」!」

 

 「必殺技だ‼」

 

 壁山君が立ち上がろうとしたところで守君の声が響き渡った。

 

 「新しい必殺技を生み出すんだよ!空を制するんだ‼」

 

 空を制する必殺技かぁ…

 

 

 

 

 「いっくぞー!」

 「おう!」

 

 それから守君はどこからか借りて来たクレーン車の上からボールを掲げていた。下では染岡君が構えている。

 

 そのクレーン車どこから借りて来たの?

 

 守君が下にボールを投げると染岡君はジャンプしてボールを蹴るが力が入らず勢いがない。

 

 「もっと強くだ!」

 「おっしゃ!もういっちょ来い‼」

 「お~し!」

 

 気合は十分なんだけどなぁ…

 

 「神風」

 

 考え込んでいると豪炎寺君が話しかけて来た。

 

 「どうしたの?」

 

 「野生中との試合、お前はどう見る?」

 

 やっぱりか。

 

 「いかにして得点を決めるかにかかってるかな。守君のゴッドハンドなら帝国戦の時みたいに何度も連続で使ったりしなければそう簡単に破られないし、尾刈斗中との練習試合で習得した熱血パンチもあるからディフェンスにある程度力を入れれば簡単に点は取られないと思う」

 

 今回は攻めを豪炎寺君と染岡君に任せられるから私が守りに専念できるのは大きい。

 けど…

 

 「いくら守れても点を取れないと勝てない。結局のところは攻撃手段なんだよね…」

 

 「お前のジャンプ力でも、やはり厳しいか?」

 

 「うん、私もジャンプ力に自信はある方なんだけど、野生中に対抗するには心もとないかな」

 

 「そうか…」

 

 どうしたものかと考え込む。

 

 「よう、精が出るな」

 

 声がする方を見ると、古株さんが来ていた。

 

 「こないだの尾刈斗中との試合、見せてもらったよ。よかったなぁ、まるでイナズマイレブンの再来だなぁ」

 

 「イナズマイレブン?」

 

 「おいおい、円堂大介の孫が知らないのか?嬢ちゃんもか?」

 

 「はい、私は守君といとこではあるんですけど、父方なんで大介さんのことはあまり…」

 

 そういえば伯母さん、大介さんのことはあまり話してくれないな…

 

 「イナズマイレブンってのはな、40年前にこの中学にあった伝説のサッカーチームだ。フットボールフロンティア優勝目前だったのに、あんなことがあって…」

 

 「え?」

 

 「あ、いや、なんでもない。とにかくすごい連中だった!」

 

 あんなこと、という言葉に守君が反応したが、古株さんがごまかした。

 

 「あいつらなら、世界を相手にしたって戦えたはずだ!」

 

 世界をあいてに!

 

 「くうぅぅぅぅううっ!かっこいい!超絶対かっこいい‼イナズマイレブンか」

 

 「そおさぁ、お前さんは、伝説のチームの血を受け継いでるんだ」

 

 「爺ちゃんも?」

 

 「円堂大介は、イナズマイレブンの監督だ!まさに、サッカーそのもののような男だったよ!」

 

 大介さんってここの監督だったんだ…

 

 「よーし絶対、イナズマイレブンみたいになってやる、爺ちゃんみたいに!」

 

 「一人でなる気かよ?」

 

 風丸君の言葉で守君は私たちチームメイトを見回す。

 

 「もちろん、みんなでさ!な!」

 

 「「「「おぉ‼」」」」

 

 「俺たち、イナズマイレブンみたいになって見せる‼」

 

 イナズマイレブンか、それにしても、あんなことって一体…

 

 

 

 

 その後、練習が終わり解散して帰宅し、私は夕食後部屋でイナズマイレブンについて調べていた。

 

 「あった」

 

 そして見つけたのは、当時の雷門中サッカー部の関係した二つの事故についてだった。

 

 「フットボールフロンティア決勝に向かう雷門中サッカー部を乗せたバスが事故を起こしたことにより雷門の欠場で相手中学の不戦勝、そして数日後に監督の円堂大介が交通事故で死亡」

 

 だから伯母さんはサッカーを…

 そういえば40年前って…

 

 「帝国の不敗伝説が始まった年」

 

 それに去年の夕香ちゃんの事故も木戸川と帝国の決勝戦当日。

 そしていままであった有望校の帝国との試合前の不可解な脱落。

 

 「まさか…」

 

 偶然にしてはできすぎてる。

 

 「帝国学園に、一連の黒幕がいるってこと?」

 

 これは誰にも言えない、もし黒幕に気づかれでもしたら…

 

 

 

 

 

 

 

 「ごめんねみんな、野生中との試合が近いのに」

 

 「気にすんなよ、何か調べたいことがあったんだろ?」

 

 「うん、結局見つからなかったけどね」

 

 翌日の練習時間も終わって守君と豪炎寺君、風丸君に誘われて四人で雷雷軒に来ていた。

 あれから放課後になって、私は練習を休んで当時の雷門と帝国について調べたけど結局黒幕の手掛かりになるようなものは何もなかった。

 40年も前のことだし、あんなことする以上簡単に痕跡なんて残すわけないか…

 

 「しかし円堂、野生中相手に新必殺技もなしにどうやって戦うんだよ」

 

 「俺はみんなを信じる」

 

 「は?」

 

 守君の返答に風丸君が困惑する。

 

 「たとえ新必殺技がなくたって、やってくれるよ!思い出せよ、俺たち、イナズマイレブンになるんだぜ!」

 

 イナズマイレブンという単語に、先に来ていた人が一瞬だけ視線を向けていた。

 

 「どうした、神風」

 

 今の人を気にしていると豪炎寺君が話しかけてくる。

 

 「あ…ううん、何でもない」

 

 「そうか、それより伸びるぞ、ラーメン」

 

 「ヤバ…」

 

 危ない危ない。

 

 「それにしても、イナズマイレブンか…」

 

 「爺ちゃんたち、どんな必殺技持ってたんだろう、知りたいなぁ…」

 

 「40年も前だとね…」

 

 当時のイナズマイレブンのメンバーを探すしかないかな…

 

 「…イナズマイレブンの秘伝書がある」

 

 「へぇ…秘伝書なんてあるんだ…」

 

 「何かいてあるんだろう…」

 

 え?店主さん?

 

 「ええええ⁉秘伝書だって⁉」

 

 遅れて守君と風丸君も驚愕する。

 

 「ノートじゃないの?スゴ技特訓ノートなら、俺ん家にあるよ?」

 

 「ノートは秘伝書の一部にすぎん…」

 

 店主さんは一言いうと守君を見る。

 

 「お前、円堂大介の孫か?」

 

 「うん!」

 

 「そうか!大介さんの孫か!はっはっはっ…」

 

 この人もしかして…

 

 「大介さんの孫かぁ‼」

 

 「うわっ…」

 

 店主さんは言い終わると同時に守君にお玉を突き出した。

 驚いた守君はしりもちをつく。

 

 「なにすんだ!い…」

 

 守君は文句を言おうとしたがまたもお玉を眼前に突き出される。

 

 「秘伝書はお前に災いをもたらすかもしれんぞ?それでも見たいか?」

 

 「あぁ‼」

 

 即答する守君に店主さんはニヤリとする。

 

 

 

 

 

 

 「…というわけで、理事長室の金庫にイナズマイレブンの秘伝書があるみたいなの。見せてくれないかな?夏未ちゃん」

 

 「何がというわけよ…」

 

 翌日の昼休みに早速夏未ちゃんに頼んでみるが呆れられた。

 

 「まぁいいわ、ちょっと待ってなさい」

 

 夏未ちゃんは教室を出て、少しすると古びたノートを一冊持って戻ってきた。

 

 「あなたが言ってる秘伝書っていうのは、多分これね」

 

 「ありがとう、夏未ちゃん」

 

 受け取って早速開いてみた。

 

 「これって…」

 

 「そうね、なんて書いてるのかさっぱりよ」

 

 特訓ノートの大本って時点で予想はしてたけど…

 

 「…夏未ちゃん、これ持って行っていい?」

 

 「好きにしなさい、あっても邪魔なだけだし」

 

 だよね…

 

 

 

 

 

 そして放課後に部室に秘伝書を持って行った。最初はみんな喜んでたけどノートを開いた瞬間、約一名を除いてみんなの顔が引きつっていく… 

 

 「暗号で書かれてるのか?」

 

 「外国の文字っすかね?」

 

 もはや暗号とも呼べる文字や図にみんな困惑している

 

 「えっと…恐ろしく汚い字…なんだ…よね…」

 

 期待させてた分すごく言いずらい…

 まぁ…

 

 「すっげぇ!ゴッドハンドの極意だって!」

 

 特訓ノートを読んでた守君は当然読めるわけで…

 

 「うん、相手の高さに勝つにはこれだ、イナズマ落とし!」

 

 希望が見えてきたことで部室の中の空気が明るくなる。

 

 「一人がビョーンと飛ぶ、もう一人がそのうえでバーンって、くるってなってなってズバーン!これぞ、イナズマ落としの極意!…え?」

 

 守君の目が点になり、ほとんどの人たちがずっこけた。

 

 「円堂、お前の爺さん、国語の成績よかったのか?」

 

 「さぁ…サッカー一筋の人だったらしいから…」

 

 つまり、このままじゃ守君もこうなるってこと?

 

 

 

 

 「本日のメインイベントはこれ、敵のスゴ技を受ける特訓だ!」

 

 練習に戻り、染岡君が丘の上で木に吊るしたタイヤを抱えて構えていた。

 

 「「「そろ~」」」

 

 みんな離れていき、唯一宍戸君だけが取り残された。

 

 「ん?え?」

 

 宍戸君は遅れて取り残されたことを理解し始める。

 

 「行くぞ!」

 

 染岡君はお構いなしにタイヤを放った。

 

 「俺⁉いきなり無理‼」

 

 そのまま吹き飛ばされていった。

 

 「いいねぇ、特訓だねぇ」

 

 「特訓、なのかな…」

 

 「円堂、神風ちょっといいか?」

 

 豪炎寺君?

 

 「さっきの秘伝書の件なんだが」

 

 「何かわかったの?」

 

 「あぁ、まずは一人が飛ぶ、もう一人がそいつを踏み台にしてさらに高さを稼ぐ、十分な高さに達したところで、オーバーヘッドキック。どうだ?」

 

 確かに、これならノートに書かれていたものと一致する。

 

 「豪炎寺、これだよ、多分その通りだよ!すごいなお前!」

 

 「でも、本当にその通りなら不安定な足場からの正確なシュートが必要になるから、難易度は結構高そう…」

 

 え、なんで二人とも私を見るの?

 

 「そんな不安定な足場からオーバーヘッドキックを出せるのは、美兎、お前だよ!」

 

 「確かに神風のバウンサーラビットは、イナズマ落としに通じるものがある、お前ほどの適任はいないだろう」

 

 え、私?

 

 「そして踏み台になれる奴は、壁山だな!」

 

 なんかあっさりと決まったな…




今更ですがフットボールフロンティアには女子選手も参加可能ということにしています。
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