狐人と物狂いの帝 ~二人で一人の安倍晴明、仇を探す旅路にて空海と出会い、暴悪無双の上皇と相対する事~ 作:木下望太郎
何らかの
京に『あわわの辻』があり、百の鬼がそこを行く。そのことはもう語られた。
同じく四国各地には『マショウモンミチ』『縄目筋』と呼ばれる場所がある。
その場所では、あるいは妖異らが夜を練り歩き、あるいはその地に住む人間に不幸が続き、家が絶えるなどという。
そのマショウモンミチの一つが、
墨を塗りたくったような、
その夜の中を迷いもせずに、ひょこひょこひょこと鬼が歩く。雨もないのに
「
蓑笠の鬼に声をかけられた、たむろする鬼どもの一体が振り向く。
「おう、
他の鬼どものうち、
「何や、近頃はえらい物騒での。鬼でも
「ほうなぁ……そらまた
坊主のつもりか
「それどころか
小蓑の鬼が身を震わす。
「何とな! 木ぃの神さんまで討たれたとな……
下帯一丁の黄鬼が顔をしかめる。
「そなに
「そしたらまさか鬼、妖が……わしらの誰ぞがやったっちゅうんか!」
鬼どもがそれぞれにうなずく。
「
「いや、騒ごうやないか」
低い声を響かせたのは、鬼どもよりも頭二つ大きな緑の鬼。角の突き出た頭には、烏帽子代わりのように釜を載せていた。
「そななとき
鬼どもは顔を見合わせたが、中にはうなずく者もぽつぽつとあった。
烏天狗の中に咳払いをし、胸を張る者がいた。
「では
しばらくの手ほどきの後、鬼どもが不揃いながらも唄い出す。
――お
鬼どもが列をなしてゆく中、道から外れた木立の下で。落ち葉の山が音を立てた。その下の地面が身を震わせたかのように。
――
鬼どもの身振りが唄が、だんだんと揃いゆく中。落ち葉の山がまた震えた。
――
鬼どもが上手く拍子をつかみ、見交わす顔に笑みが浮かび出した頃。
「……やめろ」
落ち葉の山が立ち上がった。いや、落ち葉の下にいたもの、それを夜具代わりにかぶっていた者が立ち上がった。頭も髪も隠れるほどに、狩衣も半ば隠れるほどに落ち葉がまとわりついたまま。
「……やめろ。その
狐火のように光る青い目、その軌跡を揺らしながら。童子丸が、狐火のようにふらふらと、