2話~月神竜セレーネ~
「さて、お前はどうやってこの場所へ来た?人間の子よ」
月明かりに照らされ、美しい女性、セレーネは目の前に居る少年、ジョゼを見ながら話す。
少年ジョゼは、目の前のセレーネという女性の圧倒的な魔力に当てられながらも、臆することなく対峙する。
少年ジョゼは、直感する。
人間の魔力ではない。
人間を遥かに越える強大な魔力。
セレーネが竜だというのは間違いではないだろう。
月神竜を前にして、少年ジョゼの鼓動は高鳴る。
なぜならば、失なわれた魔法には滅竜魔法というスレイヤー系魔法がある。
力が欲しい少年ジョゼには、目の前に居るセレーネは仲良くなりたい存在。
竜に教わり、滅竜魔導師になる。
最強の魔導師への第1歩。
少年ジョゼは、行動する。
「すいません、空間のアークという魔法を使ったらたまたま、繋がってしまい……まだ、習得したばかりで申し訳ありません」
ジョゼはとりあえず、セレーネを怒らせないように下手に出てヘコヘコする。
「ほう……空間を繋げる魔法か?冗談はよせ……この月神竜セレーネの空間に偶然たまたま繋げることなど、できまい。習得したばかりならば尚更のこと…………誰の差し金だ?」
セレーネは、少年ジョゼの言葉を信用せず、にらみつける。
少年ジョゼは、まあそれはそうかと、この強大な魔力を持つセレーネの空間に繋がってしまったのだ習得したばかりの子供ができるはずがない……まぁ、少年ジョゼはやってしまった訳だが。
少年ジョゼは考える。
こんな時は、子供であることを使って。
「ぐすっ……本当なんです……ぐすっ……本当に本当に偶然なんです……うぅぅごめんなさい!ぐすっ」
少年ジョゼは、泣き落としすることにする。
少年ジョゼが泣きながら謝る姿に、セレーネはキョトンとした顔からあたふたとし始めた。
「な、泣くことはないであろう?わ、私もすまなかった!か弱い人間の子ならば、私が凄んだらびびってしまうな……ほら……な、泣くな!」
セレーネは、初めてなのだろう。
人間の子供が号泣して謝って居る姿は。
先ほどまでと、違ってセレーネは焦っている。
どうする?どうすれば泣きやむ?
脅してみるか?
しかし、それは逆効果か?
セレーネは、考える。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ぐすっ……うぅぅ……ごめんなさいぃぃぃ!」
少年ジョゼは、さらに泣く。
それはもう、狂ったように泣く。
「わ、わかった!たまたま偶然に繋がってしまったのだな!ならば仕方ない……だから泣くな!人間の子よ!」
月神竜セレーネというほどの竜が目の前の人間の子供に翻弄される。
最初は少しからかってやろうとしたぐらいなのに、こんなことになるとは
セレーネは声をかけたことに後悔する。
どうする始末するか?
だが、久しぶりに退屈しのぎになりそうな存在……もったいない気もする。
セレーネは、どうしたものかと頭をかしげる。
同時に思いだす。
自分の子供達にはどうしていただろう?
セレーネ自身の子供の竜達を思いだすが……。
「あ奴らは泣かなかったな」
竜の子育てする、期間は短い。
自立し旅立って行くのはもっと早い。
「そういえば……泣いているのを見たのはクルヌギだけであったな……」
セレーネは、自身の子で末っ子の竜。
剣聖竜クルヌギを思いだす。
剣聖竜クルヌギは、竜には珍しく親離れできない息子であった。
巣立ちの別れ際は、大号泣していたものだ。
その時はどうしたものだろうか?
そうだ……私は……
と、クルヌギとの別れ際のことを思いだした。
セレーネは、少年ジョゼに向かって歩みだし。
「ほら、泣くではない……泣かなくともよいのだ……少し話をしよう」
と、大号泣している少年ジョゼを優しく抱きしめるのであった。
息子クルヌギの時もそうであった。
泣きわめく我が子をこうやって抱きしめたのだとセレーネは感傷に浸る。
同時にクルヌギは元気であろうか?
数は少なくなったとはいえ世界は広い、どこかで元気にしているだろうか?
セレーネは、少年ジョゼを強く抱きしめる。
大号泣していた少年ジョゼは
「(こ、こいつ……力が強い……正気か?頭がイカれてやがる……あぁ……呼吸ができない……意識が……)」
母性を思いだし始めたセレーネとは裏腹に、少年ジョゼは強い力に気絶するのだった。
少年ジョゼは、目論見通り滅竜魔法を習得できるのか?
母性に再び目覚めた月神竜セレーネの運命は?
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