【我が名はジョゼ・ポーラ】   作:ハルマキトカラ

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5話~人間に戻れない竜~

5話~人間に戻れない竜~

 

 

 

 少年ジョゼは、月神竜セレーネとの出会いから月日が流れた。

 

 美少年と呼ばれた少年だった、ジョゼもたくましく成長して青年へと変わる。

 

 青年となったジョゼは、その美しき姿も健在で美丈夫と呼ばれている。

 

 そして、青年ジョゼは月神竜セレーネの元で修行をしながら、各地を転々と渡っていた。

 

 ちなみに、幽鬼の支配者にはたまに顔を出すが、父には強くなるため武者修行の旅に出ていると告げている。

 

 近い将来、父から幽鬼の支配者を奪い、ジョゼが率いる新たな幽鬼の支配者のギルドを作るため。

 

 

 

 青年ジョゼは、空間のアークを使い各地を転々としていた。

 

 未完成の空間のアークは、月神竜セレーネの助言もあり完璧と呼べるほど魔法をマスターしている。

 

 それだけではない、様々な失なわれた魔法(ロストマジック)も、習得しており、日々、魔法を磨く努力をしている。

 

 こんなにも、努力することはジョゼにとっては初めてである。

 

 前世は、若い頃から天才と呼ばれ聖天大魔導に選ばれたジョゼ。

 

 才能のみで天才と呼ばれたが、今回は違う。

 才能だけでは、越えられない壁があることを前世のジョゼは痛感していた。

 

 幼き日から血反吐が出るほど努力する。

 全てはジョゼ・ポーラの人生をやり直すため。

 

 もう2度と、表舞台から消えて、陰でひっそりと妖精の尻尾の活躍を見ながら生きるのは嫌だ。

 

 やり直した世界ではジョゼ自身が主役となるのだと……ジョゼはただ、それだけを目指して第2の人生を送る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……始めてくる場所だな」

 

 空間のアークの魔法を使い、新たな大陸へと足を運ぶ青年ジョゼ。

 

 新たな大陸……すなわち今だ知らぬ地は、青年ジョゼを強くしてくれる。

 

 世界は広い。

 フィオーレ王国がある、イシュガル大陸以外の地にも青年ジョゼが見たこともない魔法がたくさんある。

 

 それらを経験して、努力をしてさらなる進化を遂げるのだ。

 

 それだけではない。

 新たな地には新たな出逢いもある。

 

 

 青年ジョゼは、何やら不思議な気配がする森の中を散策する。

 

 奇妙な気配になぜか呼ばれている気がして、青年ジョゼは導かれるように森の奥へと進む。

 

 青年ジョゼの勘は間違ってはいなかった。

 そんなに大きくはないが綺麗な湖がある。

 

 その近くで青年ジョゼは、ある生き物と遭遇するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「…………あれは?竜なのか?」

 

 青年ジョゼは、物陰に隠れながら、1匹の竜を見つける。

 

 その姿は美しく。

 しかし、どことなく儚げな竜であった。

 

 

「(私は運が良い……セレーネの元で磨き上げた太陽竜の力を竜で試せるとは…………世界は広い。滅んだと思われた竜が生きているのだから)」

 

 青年ジョゼは様子を見る。

 正直、竜に単騎で挑むのは腰が引ける。

 

 月神竜セレーネという、竜の強さを知っているジョゼは竜の危険性も知っている。

 

 しかし、努力して磨き上げた滅竜魔法を試したい気持ちもある。

 

 そして、今の自分は竜とどれ程の差があるのかと……ジョゼは興味津々であった。

 

 

「(不意を突き……滅竜の奥義を放つか?)」

 

 そんな時であった。

 目の前に居る、竜がジッとジョゼが居る方を見ている。

 

 竜も何かを感じ取ったのであろうか?

 

 

「(気づかれたか?……仕方ない)」

 

 ジョゼは物陰から飛び出し、右手に太陽の竜の力を纏わせて、こちらを見る竜に向かって走る。

 

「太陽竜の…………!?」

 

 しかし、その瞬間

 

 ウォォォーー!!!

 

 竜が咆哮する。

 ただ、咆哮しただけなのに、空気は振動し、圧倒的な魔力が放たれ、青年ジョゼを襲う。

 

 

 その瞬間に青年ジョゼは理解する。

 

「(やはり……化け物か……竜は)」

 

 圧倒的な存在の前に青年ジョゼは、足がすくみ立ち尽くす。

 

 気高き竜は、悠々とその巨体を動かし、ジョゼに近づいてくる。

 

「(何もできん…………私はまだ……この程度か……)」

 

 徐々に近づく竜にジョゼは何もできない。

 滅竜魔法を習得したからといって、目の前の大いなる存在には逆らえないと。

 

 それと、同時に思うのは、月神竜セレーネと初めて対峙したこと……。

 

 そうか、セレーネは初めから遊んでいた。

 暇潰しをするために、少年だった自分を手のひらの上で転がしていたのかと。

 

 敵対心を剥き出しの竜を目の前に青年ジョゼはただ、己の無力さに立ち尽くすだけだった。

 

 そして、やられると思った瞬間

 

 目の前の竜がポツリと呟くのが聞こえる。

 

「……助けて……誰でもいい……誰か……わたしを助けて…………助けて…………」

 

 

 同時にジョゼは、己の目を疑う。

 一瞬だったが、竜が人間の女性に見えた。

 

 緋色の髪を持つ、ボロボロの女性に。

 

「人間……なのか?」

 

 

 青年ジョゼと人間の姿に戻れなくなった竜の出逢いである。

 

 

 

 そして、竜は姿を消す。

 しかし、青年ジョゼの脳裏には

 

 あの緋色の髪の女性が頭から離れないのであった。

 

 

 

 

 

  




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