7話~アイリーンの願い~
「月の魔力よ……月神竜セレーネの名のもとに……
月光の光で、竜の本来の姿を照らせ」
月神竜セレーネの魔力は、1匹の竜を月明かりに照らす。
月の光に照らされた竜。
アイリーン・ベルセリオンは本来の姿を現す。
「……!?体が……わたしの体が……」
竜は徐々に姿を変えて、人間の女性へと変わる。
「わたしの体が……あぁ……わたしは人間に……」
アイリーンは、涙を流し。
手渡された鏡を見ながら、自分の顔、体を見ていく。
竜の姿となり、人間に戻れなくなり数百年。
孤独の中アイリーンは1人、生きてきた。
自分を救ってくれたのは、憎むべき存在だった竜と1人の青年。
「こ、これを……羽織るといい!……早く!」
人間の姿になったアイリーンは、何も着ていなく裸である。
そんな、アイリーンを見かねた、ジェントルマンのジョゼが体を隠せる羽織を渡す。
もちろん、ジェントルマン。
裸の女性の体を許可なく見ることはない。
顔を背け、アイリーンに手渡す。
「……あっ!?…………あ、ありがとう…………ございます……」
アイリーンは、自分の姿に気づき恥ずかしそうに顔を赤くして、ジョゼから受け取った羽織を纏う。
「ほう……人間の男女とは初々しいものだな」
セレーネは、ニヤニヤしながら、2人を見るのだった。
同時にセレーネは告げる。
「アイリーンといったな?私の月の魔力ではお前の姿しか人間には戻せない。見た目は人間……中身は…………分かるであろう?」
セレーネは、完全にアイリーンを人間に戻せたわけではない…………アイリーンの人間の姿もかりそめの姿でしかない。
「はい……分かっております。……ですが、今は良いのです……人間の姿に戻れただけで……」
完全な人間ではなくても、数百年も苦しんだアイリーンにとっては、人間の姿だけでもいいのだ。
「ふむ……まぁ……気が向いたら私もお前が完全な人間に戻れる方法を探してやろう…………今日は休むがよい、部屋を用意した」
「ありがとうございます……月神竜セレーネ様」
「かまわん……ただの暇つぶしだ」
アイリーンはお礼を告げるとセレーネの従者に連れられて部屋へと案内されるのだった。
その後、セレーネとジョゼは話をする。
「セレーネ感謝する」
「借りにしといてやろう……それはそうと、今後、アイリーンの世話はお前がしろジョゼ?」
「私が?」
「当然だ、拾ってきたのはお主であろう?それはそうと…………アイリーンはまだ、何か隠しているぞ?」
セレーネは、アイリーンの体内にある事に気づいていた。
アイリーンがまだ、話さなかったため話題には出さなかったが
「隠し事?」
「心を開いてくれれば、そのうち話してくれるであろう……まぁ、頑張るがよい?」
セレーネの言葉に、何か引っ掛かるが仕方ないとジョゼは承諾するのだった。
「私は疲れた……しばし休むとするぞ?」
「分かりました……私はアイリーンの様子でも見てきましょう」
ジョゼは、アイリーンが居る部屋へと向かう。
セレーネが思い出したかのようにジョゼを呼び止める。
「ジョゼ、アイリーンを襲うではないぞ?」
「私はジェントルマン!!!そんなことはしない!!」
「ふふふ…………だが、覚えておけ?ジョゼ、そなたはこの月神竜セレーネの物だということを?」
色艶やかなセレーネの言葉に、一瞬ドキッとするがジョゼは、無視しながらアイリーンの部屋へと歩きだすのだった。
「………………無視か?人間をからかうのも面白い」
セレーネは、ジョゼの後ろ姿を見ながら呟くのだった。
部屋に案内された、アイリーンは、セレーネの従者達が食事などを用意してくれて、久しぶりの人間の食事をしていた。
「………………」
だが、アイリーンは絶望する。
人間の姿には戻れたが
「……味がしない。……何も感じない……暖かさも……何も……満たされない!!!」
人間の食事を食べるが味も臭いも暖かさも何も感じない。
ただ、満たされることがない空腹感。
「やはり……わたしは……化け物のままなの……」
さらには、痛みや苦しみ。
終わることのない悪寒や倦怠感。
「わたしは…………人間だ!!!」
分かっていたとはいえ、人間の姿だけ戻ったアイリーン……その悲しみは怒りとなり、怒りをぶつけるかのように、部屋中の物を壊す。
「わたしは……どうすれば…………」
1人、荒れた部屋の中。
アイリーンは座り込み自らのお腹をさするのだった。
その時だった。
部屋の扉が開き
「ずいぶんと荒れてるようだな?」
「…………ジョゼ?」
涙を流した、その目に映るのは青年ジョゼであった。
「事情は知らぬが……今は……ただ、泣くといい」
ジョゼは、アイリーンに寄り添いながら、不慣れな手つきでアイリーンを、抱きしめる。
ジョゼはジェントルマン。
泣いてる女性を放っておけない。
「っ…………うっ……少しだけ…………胸をお貸しください……」
ジョゼは、アイリーンが泣きやむまで、寄り添い続けるのだった。
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アイリーン
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セレーネ
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ミストラル(ウルティア)