【我が名はジョゼ・ポーラ】   作:ハルマキトカラ

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8話~アイリーンの覚悟~

8話~アイリーンの覚悟~

 

 

 あれから月日が流れ。

 

 光輝く満月の夜。

 セレーネの館にて、元気な産声が鳴り響く。

 

 

 あれから、ジョゼとアイリーンは、月日が流れるうちに心を打ち解けさせて、アイリーンの秘密を知ることとなった。

 

 アイリーンは身籠っていた。

 アイリーンの力によって、ずっと大切に守り続けてきた大切な存在。

 

 そして、セレーネやジョゼの協力を得て無事にアイリーンは、元気な赤ちゃんを出産した。

 

 

「アイリーン?無事に産まれたぞ?元気な人間の女の子だ」

 

 意外にもセレーネは、こういった知識がありアイリーンの赤ちゃんを無事に取り上げたのだった。

 

 ジョゼは、ひたすらあたふたしているだけで、途中からセレーネに閉め出された。

 

「男は人間も竜も、子の出産の時は頼りにならぬものだな?」

 

 笑いながら、セレーネは抱き上げた元気な赤ちゃんをアイリーンに見せる。

 

 

「わたしの……赤ちゃん……わたしの可愛い赤ちゃん……ようやく会えた……」

 

 出産の、疲労感はあるが無事に産まれた赤ちゃんを見て、アイリーンは微笑みながら、抱きしめる。

 

 数百年、自らのお腹で大切にしてきた子供。

 この時ばかりは、アイリーンは久しぶりに人の暖かさを感じるのだった。

 

「産まれたか!?」

 

 閉め出された、ジョゼが現れる。

 初めてアイリーンに子を身籠っていると知らされたときは驚いたが、今は無事に産まれたことに安堵している。

 

 自分の子供ではないのに、こんなに嬉しいとはジョゼも自分自身に驚いている。

 

 

「で、名はなんと?」

 

 セレーネは、アイリーンに問う。

 まずは、名をつけなければと

 

 ジョゼが口を挟む。

 

「ジョゼとアイリーンを足して、ジョリーンなどはどうだ?可愛い名前だと思うが?」

 

「却下」

 

 セレーネは、即座に却下する。

 同時にジョゼの首を掴み持ち上げる。

 

「黙っていろ、ジョゼ」

 

「ぐぬぬ……」

 

 セレーネには頭が上がらないジョゼなのである。

 

 

 その光景を見ながらアイリーンは微笑み、そして告げる。

 

「この子は……エルザ。ずっと考えていました」

 

 アイリーンは、産まれた赤ちゃんにエルザと名付けて抱きしめる。

 

「エルザか……よい名前だ」

 

 セレーネも思い出す。

 自信が産んだ子達に名付ける時のことを

 

「………………………………」

 

 ジョゼは、絶句する。

 なぜならば

 

 エルザ。

 

 聞いたことのある名前。

 そして、いろいろと合点する。

 

 アイリーン譲りの緋色の髪色に目や顔つき。

 そして、エルザという名前。

 

 

 エルザ・スカーレット。

 妖精の尻尾の最強魔導師候補。

 

 妖精女王。

 

 

 

 

「やはり、ジョリーンにしませんか?」

 

 冷や汗を流すジョゼ。

 

「……黙れ」

 

 セレーネに圧がジョゼを黙らせるのだった。

 

 

 

 その後は、元気な赤ちゃんこと、エルザが泣き出し、搾乳の時間だとジョゼはセレーネに閉め出されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エルザが誕生してから、しばらく月日が流れた時であった。

 

 母である、アイリーンの様子が変わっていたのであった。

 

 

 

 

「…………この子に……わたしの人格を付加(エンチャント)すれば……わたしは…………完璧な……人間に……」

 

 我が子を抱っこしていたアイリーンの頭では、決してしてしてはならぬ考えが

 

「ダメ!……わたしは……何を考えて……ダメ!この子はわたしが守らないと…………ダメだと分かってるのに…………わたしの頭の中に嫌な考えが……」

 

 アイリーンは今も、苦しんでいる。

 満たされない心。

 痛み、苦しみ続ける体。

 

 その痛みに耐える日々。

 

 そして、目の前に現れた、完璧な人間になれるための存在。

 

 ダメだと思いつつも……ふとした瞬間に考えてしまう。

 

「ごめんね……エルザ……ごめんね……母を許して、エルザ」

 

 このままではダメだと。

 愛しい娘が、自身の闇に染まる前に。

 

 

 

 アイリーンは、覚悟を決める。

 そして、信頼できる、ジョゼにある頼み事をするのだった。

 

 

 母親であり続けるため、アイリーンは涙を流す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「呼んだかアイリーン?」

 

 ジョゼがアイリーンの前に現れる。

 その手には様々な、赤ちゃんである、おもちゃを手にしながら。

 

 ちなみにいまだに抱っこすると、ギャン泣きされるため、あれやこれやと様々な手を尽くし好かれようとしている。

 

 しかし、結果は惨敗。

 

 やはり、運命なのか、若き日のジョゼであっても、赤ちゃんエルザに嫌われる。

 

「よちよち、ジョゼおじちゃんでちゅよー」

 

 エルザをあやすが

 

「おぎゃぁぁー!」

 

 ギャン泣きである。

 これも、前世での行いのせいなのか。

 

「ふぅ……まったく、子供というのはこれだから好かんのだ」

 

「そんなこと、エルザの前で言うから、余計に嫌われるのですよ」

 

 アイリーンは、ジョゼに対して物腰柔らかくなっていた、人間の姿に戻って以来、ジョゼはずっとアイリーンのそばで支え続けた。

 

 恋愛感情とは違うが、ジェントルマンのジョゼは困っている女性を放っておけない。

 

 

「で、私に相談とは?」

 

 ジョゼは、アイリーンに呼ばれた理由はある、相談事。

 

「……はい……ジョゼ殿に頼みごとがあります」

 

 

 アイリーンは、涙を流しながら、ジョゼにあることをお願いするのだ。

 

「エルザを……この子を…………………………」

 

 アイリーンの言葉に、ジョゼは戸惑う。

 だが、アイリーンの願い、そして覚悟を受けとめる。

 

 

「本当によいのだな?アイリーン?」

 

「……はい。母親失格なのは分かってます……けれど、このままではわたしはそれ以上にこの子に酷いことをしてしまう…………だから…………」

 

「…………分かった。アイリーン、あなたのその業を私も共に背負いましょう…………今夜はエルザと共に過ごしなさい」

 

 ジョゼは、覚悟を決め。

 アイリーンの部屋を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 母と娘。

 

 最後の夜を。

 

 残酷な運命が2人を引き裂く。

 

 

 

 

 

  

 




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  • セレーネ
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