9話~ローズマリー村~
「ごめんなさい……エルザ……ダメなお母さんでごめんなさい。……必ず、完璧な人間になって、迎えに行くから……絶対に迎えに行くから……わたしの大事な娘、エルザ」
母と娘のあまりにも早い別れ。
アイリーンとエルザ。
全ては自分の弱さのせいと、自分を責めるアイリーン、けれど彼女も被害者である。
人間を竜達から守るため、王国の守護竜と力を合わせて、滅竜魔法を産みだした。
だが、あまりにも代償が大きかった。
竜の姿に変わり始めて、守ってきた人間達から化け物の罵られ……愛したはずの夫に命を狙われ、授かった娘と過ごす人生を失くし。
運命はアイリーンを嘲笑うかのように翻弄する。
アイリーンにも生きる希望ができた、それは、娘のエルザだ。
今はまだ、共に過ごすことはできない。
アイリーンの闇はそれほど強大なのだ。
だが、いつの日か、闇を克服し完璧な人間となった時、必ずエルザを迎えに行く。
それが、アイリーンの生きる希望。
親子仲良く暮らす日が来ることを祈り、娘を手放す。
「ジョゼ……この娘をお願いします。……頼ってばかりでごめんなさい」
アイリーンは、母の腕の中で眠りにつくエルザをジョゼに託す。
「分かっている……場所はあの場所でよいのだな?」
「はい、お願いします」
ジョゼはエルザを抱き抱えたまま、空間のアークを発動する。
目の前に現れたゲートに歩み始めるジョゼ。
アイリーンは、ただジョゼとエルザの後ろ姿を見守ることしかできない。
そして、ゲートは閉じた。
母と娘の別れ。
「エルザぁぁ…………エル……ザぁぁ!……」
アイリーンの悲痛の叫び。
娘を思う母の叫び。
「必ず……迎えに行くから……母はあなたを愛しているわ……」
アイリーンは、涙を流し決意する。
どんな苦難が待っていても必ず人間となりて、エルザを迎えに行く。
強く、強く。
抱きしめると。
ジョゼはある村に来ていた。
村の名前はローズマリー村。
アイリーンが見つけた、穏やかな村である。
眠っているエルザを抱き抱えたままジョゼはローズマリー村の教会へと歩く。
眠っている赤ん坊のエルザを見ながら
「まさか……妖精女王エルザをこの手に抱いている日が来るとは、人生何があるか分からぬものだ」
ジョゼはあることを考えていた。
「いっそのこと……私の娘として育てるか?……いや……それではダメだ。私の野望が叶わんか」
ジョゼの野望。
幽鬼の支配者を大陸1番のギルドにすること。
最強の妖精の尻尾を潰すのではなく、正々堂々と妖精の伝説を越えること。
卑怯の手は使わず、幽鬼の支配者のメンバーと共に最強のギルドとなる。
そのためにはエルザは、妖精の尻尾に必要不可欠。
最強となる妖精の尻尾を越えるため。
同時にジョゼは、思う。
このローズマリー村に預けて大丈夫なのか?
いっそのこと、妖精の尻尾のギルドの前に置いてきた方がと考えるが、アイリーンと約束をした手前、アイリーンの言う通りにするしかない。
「あなたも苦労しますね。エルザ…………このまた、村娘となるか、どんな因果か妖精女王となるか…………天頼みの運試しだな」
ジョゼは、エルザの過去を知らない。
エルザは、ローズマリー村で育ち、子供狩りの果て奴隷となる、その後は妖精の尻尾の魔導師となるのだ。
少なからず、ジョゼの判断が、ジョゼ自身が待ちわびる結果となるのだった。
「エルザ……母を恨むでないぞ?……大人になれば人それぞれ様々な事情がある。…………たまに、様子ぐらいは見に来てあげましょう」
ジョゼは、エルザに語りかけるのだった。
そして、ローズマリー村の教会。
捨て子を拾ったと、教会のシスターにエルザを預ける。
名前だけをシスターに伝えて、ジョゼはローズマリー村を後にするのだった。
「嫌な役目であったな……少しばかり、エルザに情が沸いてしまうとは…………まぁ、少しぐらいならいいでしょう?」
ジョゼは、報告をするためアイリーンが待つ場所へと向かう。
ジョゼがシスターに告げた娘の名前。
【エルザ・ベルセリオン】
ただ一つだけ、エルザとアイリーンを繋ぐ絆。
感想、評価、お気に入りよろしくお願い致します!
ヒロイン誰が良い?
-
アイリーン
-
セレーネ
-
ミストラル(ウルティア)